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クレジット
タイトル: SCP-6036 - 片手だけの花嫁
著者: Jack Waltz Jack Waltz Machen2 Machen2 Cremo Cremo
作成年: 2021
最初の発見時に撮影されたSCP-6036。
特別収容プロトコル: SCP-6036はサイト-228に位置する標準生物実体収容ユニットに収容されます。SCP-6407は職員との遊戯活動を楽しんでおり、実体との日常的な交流が許可されています。
補遺6036.2に詳述されたイベントを考慮し、男性はSCP-6407と交流せず、すべての管理業務は女性職員により遂行されなければなりません。SCP-6036-A実体は職員による管理の必要はありません。
説明: SCP-6036は故ジャクリーン・ヴァルツァーから分離した右手です。手首から切断され、その基部は皮膚で覆われています。SCP-6036は不明な手段によって生存しており、視覚器官が欠けているにもかかわらず周囲の状況を感知します。移動やその他作業に五指を使用する能力を有します。
SCP-6036-AはSCP-6036と同様に活動するやや小さい実例群です。しかし、それらの能力はSCP-6036に劣るようです。
発見: ルーカス・ヴァルツァー、ジャクリーン・ヴァルツァー夫妻の失踪に関する調査の後、SCP-6036が財団の注意を惹きました。現地当局が彼らの住居に立ち入り、地下室で両名の死体を発見しました。
特筆すべきことにヴァルツァー夫人は右手が欠損した状態でした。現場を「歩いて逃げ回る手」に言及する警察からの報告に加え、奇跡論儀式に関係する複数の文書と道具の発見を受けて財団職員が捜査を引き継ぎました。当該アノマリーは回収され、適切な記憶処理措置が取られました。
文書には情報災害が埋め込まれており、これは閲覧者に任意の奇跡論のテーマに沿ったテキストを閲覧していると思わせる物であることが財団の奇跡論学者の調査により明らかになりました。精密な知覚フィルタリングにより、当文書は完全に白紙であると判明しました。
補遺6036.1: 以下は住居から発見、回収されたジャクリーン・ヴァルツァーの日記における最新の記述です。
家はどこもかしこも寒い。まるで氷でできているみたい。
もちろんルークはそんなこと気にもとめない。全然気にしない、彼はただそういう人だから。いざというときにはいつも粘り強い。決してくじけず、常に目の前のことに打ちこむ。私が少しでも彼に似ていたらよかったのに。彼はずっとキッチンでさがしものをしているけど、そこにはガラクタひとつないと思う。彼は昨日紙束を持ってきた。全体的に古びてボロボロの。どこから手に入れたのか教えてくれなかったけど、最近知り合った奴らからかもしれない。とにかく、彼はゆうべから一睡もせず地下室でゴソゴソやっている。
これは全部私たちに子どもができないせいだと思う。私たちはずっと子どもがほしかった。人生って残酷じゃない? 私たちの世界を台無しにするすべてのものを打ち負かすことができたらいいのに。でもそれはどうしようもないことで、ただそこに存在する。これまで私たちにできることは何もなかった。私はいつもそれに腹を立てているし憎んでいる。
私はただルークの重荷になっていて、彼を説得してやめさせることもできないのは分かっている。
うまくいくだろうか? 彼を疑いたくないけれど、でも......彼は熟練の魔法使いでもなんでもない。
面倒ごとに近づかないでルーク。私たちにいまあるものだけで満足しましょう、面倒ことに近づかないで......
ルークはとても晴れ晴れとして見える。地下室から出てきてくれた。彼は今までにないくらいニコニコしている。心から笑っているようにみえるのは、私たちが問題に気づいた日以来はじめて。彼は私にキスした。うまくいくよと言った。私たちは二度と離ればなれにならないと。彼はすぐ地下へ戻って、呼んだら降りてくるよう私に言った。
どんなことを考えていればいいかわからない。
子どもがほしい。彼らを育てて、その成長を誇りに思うの。私が死ぬとき見守ってくれて、それから土に還るとき私のことを思い出してくれるでしょう。ちょうどお母さんがかつて私にそうしてくれたように。
私はルークを信じる。完全に彼を信じる。私は彼を愛していて、彼は私を愛している。彼を疑うことはできない。決して疑わない。彼が全部終わらせた後で、私に何ができるだろう? わずかな疑いも全て振り払って、彼のことを完全に信じよう。
いま私はとても幸せ。
赤ちゃんには何て名前を付けよう? 男の子はジャックがいい。女の子なら、そうね......女の子はサラ。それかリリーね。
お母さん、私はきっと彼女のようになる、優しくて面倒見がいい母親に。
彼が私を呼んでいる。
私たちはずっと手を取り合っていよう。
補遺6036.2 (インシデント報告): 最初の収容から1週間後、SCP-6036の管理責任を負っていたマシュー・チェン博士がSCP-6036の収容ユニットに入ったところ、実体は通常よりはるかに不安定で愛情深い態度を示しました。SCP-6036はチェン博士の左手にきつく握り付きました。数分後に到着した警備員の助力でチェン博士からSCP-6036が引き離されました。その後インシデントの影響を分析するためにチェン博士は医務室へ搬送されましたが、彼にはいかなる異状も発見されませんでした。
その後9時間かけてSCP-6036の手の平で嚢胞に類似する腫瘍が増殖し始め、実体は通常より不活発になりました。当該アノマリーを担当する研究員らは増殖速度の加速を懸念し、原因を究明するため緊急プロトコルが計画されました。しかしプロトコルに先んじて研究員らは嚢内に活動物が存在することを発見しました。数分後、SCP-6036は痙攣し始め、腫瘍が決壊して内容物が流出しました。羊水と成分が一致する液体と、SCP-6036と概ね同箇所で切断された2つの手が回収されました。
当該実体らは新生児の手に類似し、生物学的に女性であると確認されました。遺伝子検査から、生物学上の父親がチェン博士であることが判明しました。実体らはSCP-6036-A実例として分類され、SCP-6036の収容プロトコルが改定されました。それらはSCP-6036と同ユニットに収容され、SCP-6036が世話をする様子が観察されています。