SCP財団

以下の文書は取扱説明書に同封されていたものです。

都市探検家により、マイアミ・デイド郡の放棄された住宅で発見。テープが入っていたビデオカメラはテレビの画面を記録していたが、テレビは発見当時既に燃え尽きていた。

後ほど、ビデオ修復サービスを装った財団フロント企業がテープを押収した。

録画テープの復元は進行中である。少数の断片的な映像のみが明瞭に視聴できる。

<ログA開始>

(ゲーム世界に3体のスプライトが現れ、続いて2体が後を追う。5体のスプライトは動き続け、やがてゲーム世界の中心部にある3本の木に到着する。)

対象5757-1: ウソダロ

対象5757-2: ナニガ ?

対象5757-1: アノキダ

対象5757-3: エッ ? マサカ

対象5757-1: ソウダヨ ! カバーイラストノ キダヨ

(沈黙。)

対象5757-1: ホラナ ? カンゼンニ オナジダ

(沈黙。)

対象5757-4: スゲー

(沈黙。)

対象5757-1: アアアアアアアア

(他4体のスプライトが対象5757-1を取り囲む。プレイヤーカーソルが初めて画面上で動き始め、集団の上に移動する。)

対象5757-5: オイ コイツ テンカンカ ナニカ オコシテンジャ ナイカ ?

対象5757-2: シラナイヨ ! トリアエズ シンセンナ クウキヲ

対象5757-1: マジダ

対象5757-2: エッ ?

(プレイヤーカーソルが全てのスプライトをクリックして"資源"に指定する。)

対象5757-1: マジダッタンダ !

<ログ終了>

注記: このテープはログAの数日後、または数ヶ月後の出来事を記録したものと考えられる。正確な時間経過は断定されていない。

この時点で、対象5757-1はSCP-5757-Aを使用し、共にSCP-5757-Bに入った人物らを制御していると思われる。

<ログB開始>

(対象5757-2は対象5757-1のスプライトが位置する小屋に入る。)

対象5757-2: カート

対象5757-2: カート ッテバ !

対象5757-1: ナンダ オレハ カンガエゴト シテンダヨ

対象5757-2: ボクタチ イエニ カエラナキャ

(沈黙。)

対象5757-1: ナンダト ?

対象5757-2: ココハ アンゼンジャ ナイ

対象5757-1: イイヤ アンゼンダ オレタチハ アノ ワニヲ カンタンニ ブチノメシタ

対象5757-2: マージー ガ ビョウキ ナンダ

対象5757-1: ダイジョウブダ ジキニ ビョウキヘノ タイセイヲ アンロック スル

対象5757-2: キケヨ !

対象5757-2: ボクニハ カゾクガ イル ! コノサキ ジンセイヲ ヌマチノ ドマンナカデ イキテイク ナンテ ゴメンダ

対象5757-1: ワガママモ イイカゲンニ シロヨ

(沈黙。)

対象5757-2: オマエ ホンキデ イッテルノカ ?

対象5757-1: オマエハ ジンセイヲ スキナダケ オウカシテ イラレル ダロウヨ ! ジブンガ コドモヲ ハグ デキレバ オレガ コールセンターデ マケイヌ ジンセイヲ オクロウガ ドウデモ イインダロウ ?

対象5757-1: イマノ オレハ オマエヲ テンカラ ミオロシテルンダゼ、 マット ! ソンナ メツキヲ シタッテ モウ ナンノ イミモ ネエ

対象5757-1: オレハ ヨウヤク ヤリタイ コトガ デキル ナノニ オマエハ ソレヲ オレカラ ウバウノカ ? オレガ ソンナ コトヲ ユルスト オモウカ ?

(沈黙。)

対象5757-2: オマエハ イカレテル

対象5757-1: ダマレ

対象5757-2: ボクラヲ イエニ カエセヨ チクショウ !

対象5757-1: ダマレッテ イッテンダ !

(プレイヤーカーソルが対象5757-2をクリックして"食料"に指定する。)

対象5757-2: ナニヲ シタ ?

対象5757-1: ワルイナ オレハ モウ イクゼ

(他のスプライトが小屋に入り、対象5757-2を取り巻く。)

対象5757-5: イヤダ イヤダ コンナコト シタクナイ !

対象5757-4: スマネエ ! スマネエ !

対象5757-2: カート カート カート カート カート カート タスケテ !

(カーソルが上へと移動し、視点が居留地を通り過ぎて、川の中に立つ2羽のフラミンゴを映す。)

対象5757-1: オレニハ コンナ コトガ デキル !

対象5757-1: オレガ ジャガー キングダ

<記録終了>

我々は当初、対象5757-1が及ぼす脅威は、新しく手に入れた能力に慣れ親しむことで増大するとだけ想定していました。これらの能力が拡張する脅威を予想してはいませんでした。そうです、SCP-5757-Aのデータから発見されたスキル成長樹形図の話です。対象5757-1は居留地を拡張し、現地の野生動物を殺し続けることで"経験値"を獲得しています — そして、その経験値を使って自らをより強力な存在に変えています。

今のところ、我々は対象5757-1が以下のスキルを利用可能だと把握しています。

• スキル共有: 1体のユニットが所有するスキルは、全ての制御可能なユニットと共有されます。彼らが全員、利用できる武器を巧みに使いこなしているのはこれが原因です。
• バイタルブースト: 全てのユニットは普通の人間よりも遥かに耐久力があります — より素早く動き、より激しく攻撃することもできます。
• 蘇生: あるユニットが体力を全て消耗してから1分以内に、別なユニットがその場に到達できた場合、ダウンしたユニットを蘇生させられます。
• 精密制御: これは対象5757-1の最も新しいスキルのはずです。かつて、対象5757-1の指示は"ここへ行け、これをあそこに移動しろ、これを攻撃しろ"などの単純な事柄に限られていました。今となっては、奴がどこまでユニットを操れるか判然としません。

次に獲得されるスキルはアニマルコール - プレイヤーが人間ユニットと同じように動物ユニットを招集できる能力です。もし対象5757-1が現地のあらゆる野生動物を操作できるようになったら、どれほど収容が困難になるか、説明する必要はないと思います。

経験値の取得率から判断する限り、対象5757-1はほぼ確実にこのスキルを5日以内にアンロックするでしょう。この脅威を排除するならば、これが最後の機会です。

対象5757-1の終了命令を要請します。

レーゲル博士

2019年1月16日、機動部隊デルタ-43 "クォーター・ジャンキーズ"が対象5757-1の無力化を実行するために動員された。全ての意思疎通はマイク付きの遮音ヘッドホン越しに行われた。

任務の目標は、対象5757-1を発見し、ターゲットビーコンを作動させ、作戦本部がエリアを砲撃している間に安全な距離まで退避するというものだった。装備品は亜熱帯/ジャングル環境対応の標準であった。

<記録開始>

エージェント レント: 境界線を越えた。全員、点呼だ。

エージェント ディコーセイ: ワン・クォーター・ジャンキー、ケベック、ユニフォーム、アルファ、ロメオ、タンゴ、エコー、ロメオ...

エージェント デイビー: (遮る) チェックイン。ディコーセイ、いちいちフォネティックコードを覚えてるのはとても誇らしいと思うよ。

エージェント ジェサップ: ジェサップ、チェックイン。どうやら自分の名前を覚えてるのは私だけらしいな。

HQ: 了解。君たちの声は全て明快に聞こえている。

エージェント デイビー: ゲームには何が映ってる、司令部?

HQ: 注意深く先に進んでくれたまえ。

(約15分間の沈黙)

エージェント レント: 気を付けろ、ディク。ビックリして心臓が止まるかと思ったぞ。

エージェント ディコーセイ: 失礼。雑草のせいで枝が見えませんでした。聞かれましたかね?

エージェント デイビー: 司令部、ターゲットの様子はどうだ? まだお行儀良く座ってるか?

HQ: 行動に変化は認められない。まだ建物内にいるようだ。

エージェント ジェサップ: ストップ。デイビー、肩に妙な虫が止まってる。

エージェント レント: 潰せ。どうせこの服はドライクリーニングに出さなきゃいかん。

エージェント ジェサップ: 潰した。行こう。

(約1時間の沈黙)

エージェント レント: 司令部、問題が発生した。目的地に到着したが、ターゲットの姿が見当たらない。

エージェント ジェサップ: ここには100年、いや200年は人間が住んでないように見える。

エージェント ディコーセイ: 実に科学的な見解ですね。

エージェント ジェサップ: うるさいぞ、ディク。私は推測しようとしてるんだ。

エージェント レント: 静かにしろ。司令部、そちらは何が見える?

HQ: 既にターゲットの居留地は見えているはずだ。君たちには何が見えている?

エージェント ディコーセイ: マングローブ、イトスギの木、イトスギの根の出っ張り、近くにランの花1輪、それと蚊が沢山います。動物種は予想通りですが、人間が住んだ痕跡はありません。

エージェント レント: 待て、デイビーは何処だ?

HQ: デイビー、応答せよ。

(沈黙)

エージェント レント: やられた。やられたぞ。クソ。畜生。退却だ、これはマズい。

エージェント ジェサップ: 我々は留まらなければならない。

エージェント レント: ジェサップ、何を-

エージェント ディコーセイ: 我々は留まらなければならない。

<記録終了>

無線通信は一時的に途絶する。原因は不明。

<記録開始>

(エージェント レントはSCP-5757-B内部にある未知の構造物に入る。エージェント ディコーセイ、デイビー、ジェサップが付き添っているが、この3名は全員SCP-5757に影響されていると考えられる。)

対象5757-1: 役立たずを連れてこい。そいつのご主人様たちと交渉がしたい。

エージェント レント: どうも、カート。お前は-

対象5757-1: (遮る) その情報はもう古い。俺のことはジャガー・キングと呼べ。

(沈黙。)

エージェント レント: ...分かった。で、ジャガー・キング。話というのは... 君の沼地についてか?

対象5757-1: お前は実に傲慢だ -

エージェント ディコーセイ: (遮る) - 俺の王国に足を踏み入れて -

エージェント デイビー: (遮る) - 勝手に憶測までするとはな。

(沈黙。)

エージェント レント: 気の利いた手品だ。

対象5757-1: (叫ぶ) 黙れ!

エージェント ジェサップ: これはパーティーの余興じゃない。

全ての対象: (唱和する) ジャガー・キングの力に敬意を払え。

対象5757-1: ひれ伏せ。

(沈黙。)

エージェント レント: やめておく。

対象5757-1: 虫め。口を閉じろ。話しかけられた時以外は話すな。

エージェント ジェサップ: この土地では、お前は俺の望み通りに動く。お前が自力でできる以上に上手くやり遂げられる...

エージェント ディコーセイ: ...だったら、そもそも外の世界に産まれる意味なんかあったのか?

(沈黙。)

エージェント レント: それは大きな問題だな - 私にはどうも答えられそうにない。どっちみち、何の意味もない質問だ。ここで起こる事は全て無意味だ。

対象5757-1: この-

エージェント レント: (遮る) お前が仲間に引き入れたのは良い奴らだ、カート。彼らを解放しろ、そうすれば我々は全員歩いてここから出て行く。

(沈黙。)

(全ての対象が10秒間笑った後、唐突に静かになる。)

対象5757-1: そうかい? このユニットが俺にとって大切な物みたいな言い草だな。好きにしな。銃を抜け、そして俺の頭を撃てよ! 俺が動じるかどうか見てみろ。

エージェント レント: 認めよう、そうすればきっとスカッとする。だが我々にはまだ任務があるんだ。

エージェント ディコーセイ: ああ、成程、成程。

エージェント デイビー: 成程。

エージェント ジェサップ: 成程。

対象5757-1: 成程。実に高貴な犠牲だ。おまけに無益で、退屈だ。交渉する事が何も無いなら、お前にはもう用は無い。この場の全員を撃ち殺しても、それは俺が自由に使える資源の全てじゃない。俺がそこまでマヌケだと思ったか?

エージェント レント: イエスではない、という意味か?

対象5757-1: 当たり前だ、俺はそこまでマヌケじゃない!

エージェント レント: 違う - 私の申し出だ。断るつもりなのか? 慎重に考えろよ。

(沈黙)

対象5757-1: (静かに) 当然断るとも、マヌケ。

エージェント レント: 分かった。 (ターゲットビーコンを起動する) なら砲弾でも喰らえ、ゲス野郎。

対象5757-1: ジャガー・キングを脅す気か-

(映像途絶。)

<記録終了>

SCP-5757-Bへの砲撃は問題なく実行された。全ての対象は無力化したものと認定された。

エージェント レントには財団星章が死後授与された。