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評価: +103
SCP-5733の外箱正面のアートワーク。
特別収容プロトコル: SCP-5733は現在、サイト-73アーカイブ 記憶媒体セクションのテープ保管庫A、棚番号HS、箱番号#1984に保管されています。
SCP-5733の出演俳優や撮影地を特定する努力が進行中です。出演者の静止映像は毎週、財団顔認識データベースの新規登録者と比較されます。現代の映画製作セットを調査し、SCP-5733の撮影地と比較する人力作業もまた行われています。
SCP-5733の試験は、研究主任であるカーペンター博士の承認を条件として、全ての財団職員が実施可能です。提案された試験方法の詳細は、少なくとも希望する試験日の5営業日前までに書面で提出し、承認を得る必要があります。試験はビデオカセットレコーダーとテレビを備えたサイト-73の標準多目的室で行われます。正確な部屋の場所は試験予定時刻の48時間前までに決定されます。 事案5733-01以降、全ての試験は中止されました。詳細は補遺2を参照してください。
説明: SCP-5733は"サバーブ・スラッシャーの帰還"というホラー映画が録画されているVHSテープカセットです。カセットの外箱によると、この映画は1983年に"クリスタル・エルムズ・プロダクション"によって制作されています。映画、制作会社、出演者に関してこれ以外の記録は発見されていません。
映画のプロットは、主人公のヘザー・キャンベルが郊外の袋小路にある自宅で、両親の留守中にパーティーの準備をしている場面から始まります。パーティーの日付は同じ袋小路で発生した連続猟奇殺人事件からちょうど10年目です — ヘザーは映画の後半でようやくこの事実に気付きます。この連続殺人の犯人は正体不明であり、事後に地元住民やメディアから"郊外の切り裂き魔"サバーブ・スラッシャーという異名が付けられています。
パーティーの最中、袋小路に帰還した"サバーブ・スラッシャー" (以下SCP-5733-1) は、現代のホラー映画に典型的な手法で、ヘザーが招待した友人5名と、定期パトロールで袋小路を訪れた警察官1名を尾行し、殺害します。SCP-5733-1の正体は映画全体を通して謎のままです — SCP-5733-1は黒い麻袋を顔に被り、黒の緩いオーバーオールを着用し、映画のどの時点でも言葉を発しません。
SCP-5733の異常性はカセットの再生開始から97分後に発現します。95分時点で、ヘザーは居間に飾られた友人たちの遺体を発見します。SCP-5733-1が部屋の反対側から姿を現し、ヘザーを追いかけ始めます。ヘザーは家の地下室に逃げ込み、背後でドアを施錠します。地下室で安全を確保すると、ヘザーはカメラに向き直り、若干の変化を伴ないつつも、概ね以下のような発言をします。
「ねぇミスター、私はあなたを知らないし、ぼんやりそこに座って何もせずにこれを眺めてる理由も分からないけど、どうかお願い、私を助けて。どうすれば私はここから生きて出られるの?」
これ以降、SCP-5733の視聴者はヘザー、以下SCP-5733-2と直接会話し、SCP-5733-1から逃走するための助言を行うことが可能になります。その後の作中展開はSCP-5733-2との会話内容に応じて変化します。SCP-5733-2は前述した話題に関する会話にのみ応じます。視聴者がSCP-5733-2を無視するか、SCP-5733-1以外の話題について話そうと試みると、SCP-5733-2は諦めた様子で地下室の階段を上がり、開錠してドアを開きます。SCP-5733-1はドアのすぐ外で待ち構えています。その後、画面が暗転し、SCP-5733は自動的に再生機器から排出されます。
テープの検査によって、SCP-5733の再生時間は97分と判明しています。即ち、SCP-5733-2が地下室に閉じこもった後、視聴者に話しかけるよりも早く映画は終了しているはずです。
広範な試験にも拘らず、SCP-5733-2は未だにSCP-5733-1からの逃走に成功していません。SCP-5733-1はしばしば、SCP-5733-2が鑑賞者から推奨された事柄や助言された行動に対する高度な知識を示し、先手を打って逃走の試みを妨害します。
以下の試験は全てダリオ・A・カーペンター研究主任が監督・手配したものです。
試験001
対象: D-1973助言: D-1973はSCP-5733-2に車を持っているかと訊ね、彼女は肯定する。これに続いて、D-1973はSCP-5733-2に対し、密かに上階に戻り、車の鍵を見つけ、裏口から出て、車を"できるだけ遠くまで"走らせるようにSCP-5733-2に助言する。
結果: SCP-5733-2は、SCP-5733-1に遭遇することなく車の鍵を入手し、家を出ることに成功する。しかし、車に辿り着いた彼女はタイヤが切り裂かれているのに気付き、パニックを起こし始める。D-1973は隣家の車の窓を割ってドアを開けるようにSCP-5733-2に促す。説得の末にSCP-5733-2が指示に従うと、D-1973は自動車の点火装置をショートさせ、鍵を使わずにエンジンをかける方法を説明する。
無事にエンジンがかかると、SCP-5733-2は笑い、車を走らせ始める。彼女が袋小路から出た時、後部座席に隠れていたSCP-5733-1が身を乗り出す。SCP-5733-1は包丁を振りかざす。SCP-5733-2は悲鳴を上げる。画面が暗転する。
試験002
対象: D-1944助言: D-1944はSCP-5733-2に対し、SCP-5733の再生25分時点に映っている父親のショットガンを回収し、それを使ってSCP-5733-1を排除するように助言する。
結果: SCP-5733-2は両親の寝室に忍び込んで銃を回収する。この時点で、カメラはSCP-5733-1が寝室の入口に立っているのを映し出す。SCP-5733-2は銃を向けて引き金を引くが、銃弾が装填されておらず、何も起こらない。SCP-5733-1が右手を挙げて手のひらを開くと、そこからショットガンの薬莢が落ちる。SCP-5733-1は包丁を振りかざしてSCP-5733-2に接近する。SCP-5733-2は悲鳴を上げる。画面が暗転する。
試験003
対象: D-1958助言: D-1958はSCP-5733-2に対し、SCP-5733-1への抵抗は無意味であり、彼女は地下室にある園芸バサミを使って自殺するべきだと助言する。
結果: SCP-5733-2はそんな事は出来ないと回答し、すすり泣き始める。10分後、SCP-5733-2は床から立ち上がり、地下室の階段を上がり、ドアを開ける。SCP-5733-1は外に立って待っている。画面が暗転する。
試験011
対象: フェリッサ・ベイカー研究助手助言: SCP-5733-2の精神状態と技能に関する会話の後、ベイカー博士は、SCP-5733-2が取るべき最善の行動は他者の助力を得ることだと確信する。ベイカー博士はSCP-5733-2に対し、袋小路の家々を訪れて、彼女を支援できる隣人を探すことを推奨する。
結果: SCP-5733-2は何事も無く地下室と家を出て、すぐ隣に住むルーミス氏の家に向かう。到着した彼女は、ドアが半開きになっており、明かりが消えているのに気付く。家の中に忍び込んだSCP-5733-2は、ルーミス氏とその妻らしき人物がベッドで眠っているのを見つける。ルーミス氏を起こそうとして、SCP-5733-2は彼が喉を切り裂かれて死んでいることに気付く。隣に寝ていた人物が体を起こし、布団をめくると、SCP-5733-1であることが判明する。SCP-5733-2は悲鳴を上げる。画面が暗転する。
試験015
対象: ニック・エングルンド=ダスケヴィス研究助手助言: エングルンド=ダスケヴィス博士はSCP-5733-2に対し、自分が彼女を支援できるかもしれない組織で働いていることを説明して、彼女は自宅の電話で助けを求めるべきだと助言する。彼は1983年時点で有効だった財団の秘匿回線番号をSCP-5733-2に教える。
結果: SCP-5733-2は地下室を出て、固定電話があるキッチンに向かう。到着したSCP-5733-2は、電話が破壊され、血液で記されたと思しきメモが電話の残骸に包丁で固定されているのを発見する。SCP-5733-2はメモを読み上げてカメラに向け、エングルンド=ダスケヴィス博士にどういう意味かを問う。メモには"ここに在る礎(Foundation)は恐怖だけ"と書かれている。答える前に、博士はSCP-5733-2の背後に現れたSCP-5733-1の存在を警告する。SCP-5733-1は別な包丁を振りかざす。SCP-5733-2は悲鳴を上げる。画面が暗転する。
試験017
対象: フィールドエージェント マルコム・プレザンスとドナルド・マクドウェル助言: フィールドエージェント2名は徒手格闘技術の知識を持つために被験者に選ばれた。彼らはSCP-5733-2が地下室に留まれる期間を確認するため、地下室内で物資を探すように助言する。少量の食料と水があると判明した後、エージェント2名はSCP-5733-2に格闘技術を指導し始める。
結果: SCP-5733-2は物資を使い果たすまでの112時間、地下室に籠城する。この間、プレザンスとマクドウェルは戦闘技術基礎入門コースに相当する内容の訓練を提供する。エージェント2名はこの訓練を交代で行い、SCP-5733-2が眠っている間も、エージェント1名が起きてSCP-5733-1が現れないかを警戒していた。
SCP-5733-2は地下室を出て玄関に向かい、そこでSCP-5733-1と対峙する。2名は23分間にわたって徒手格闘を行いながら家中を移動する。SCP-5733-2はエージェント2名から教わった技術を駆使し、戦いの末にSCP-5733-1を床に倒すことに成功する。
SCP-5733-2はダイニングルームのテーブルから燭台を取り上げ、SCP-5733-1を攻撃しようとする — 彼女もエージェントたちも歓喜する。SCP-5733-2が燭台を頭上に掲げた時、カメラ視点が横に移動し、背後から忍び寄る2人目のSCP-5733-1を映す。第2のSCP-5733-1個体が彼女に飛び掛かり、身体がぶつかる直前に画面が暗転する。
試験028
対象: フィールドエージェント ティルダ=ジョアン・ベネット助言: エージェント ベネットは奇跡論の高度な知識を持つために被験者に選ばれた。エージェント ベネットはSCP-5733-2に対し、攻撃・防御目的の初歩的な奇跡術の使用法を指導する。数時間後、SCP-5733-2は基礎的な保護象形文字を記すことと、音韻体系に基づく低級元素呪文を実行することが可能になった。
結果: SCP-5733-2は前庭に出た時点でSCP-5733-1に遭遇し、SCP-5733-1は包丁を振りかざして彼女に歩み寄る。エージェント ベネットの助言を受けて、SCP-5733-2は保護象形文字を記す。SCP-5733-1はSCP-5733-2を攻撃するが、奇跡論的な保護によって包丁は跳ね返され、SCP-5733-1の手から飛んでゆく。SCP-5733-2は風の呪文を唱え、SCP-5733-1を離れた場所へ吹き飛ばす。
SCP-5733-2はこの機会を利用して私道を走り始める。彼女を追跡するSCP-5733-1は、過去に確認されていなかった奇跡論技能を発揮し、SCP-5733-2に凍結呪文を浴びせてその場に固定する。SCP-5733-1は召喚呪文を唱えて包丁を手元に引き寄せる。SCP-5733-2は悲鳴を上げようとするが不可能である。画面が暗転する。
序: 過去の全ての試験を見直した後、SCP-5733研究主任のカーペンター博士は、彼自身を被験者とする以下の試験を考案しました。
まず試験に備えて、カーペンター博士は指揮下のチームに命じ、SCP-5733-2がSCP-5733-1から逃走するために取り得る選択肢を準備させました。選択肢は以下のカテゴリに類別されました。
- 地下室から持ち出す物。
- 地下室を出てから向かう場所。
- 家を脱出する手段。
- 袋小路を脱出する手段。
上記のカテゴリはそれぞれ最低20種類の選択肢を含むように設定され、如何なる状況においても、カーペンター博士がこれらの選択肢について相談を受けること、通知されることはありませんでした。試験当日、これらの選択肢は印刷され、上記カテゴリに対応する4個のプラスチックボウルに入れられました。これに加えて"顔" "身体" "脚"という単語を記した3枚のカードが作成されました。
試験当日、カーペンター博士はSCP-5733の視聴を開始しました。95分時点、即ち異常性が発現する2分前に、研究助手たちが4個のボウルと伏せた3枚のカードを博士の前に配置しました。
最終試験
対象: ダリオ・カーペンター助言: カーペンター博士はSCP-5733-2に対し、彼女への指示内容を無作為に選択する旨と、彼女がそれらに厳密に従うことが必要不可欠である旨を通達する。
助言 - 地下室から持ち出す物: カーペンター博士は画面から目を反らし、第1のボウルに手を入れて選択肢を引き出す。彼はSCP-5733-2に対し、地下室にある園芸バサミで武装し、出口への階段を上るように伝える。
結果: SCP-5733-2は反論せずに武装し、階段を上り始める。
助言 - 地下室を出てから向かう場所: カーペンター博士は第2のボウルから選択肢を引き出した後、SCP-5733-2に対し、上階の寝室に入ってからダイニングルームに戻るように伝える。
結果: SCP-5733-2は与えられた指示に従う。試験のこの時点では、SCP-5733-1の姿は無い。
助言 - 家を脱出する手段: カーペンター博士は第3のボウルから選択肢を引き出す。彼はSCP-5733-2に対し、上階に駆け戻って両親の寝室に入り、窓から抜け出して屋根に上り、そこから庭に飛び降りるように伝える。
結果: SCP-5733-2は与えられた指示に従う。試験のこの時点でも、まだSCP-5733-1の姿は無い。
助言 - 袋小路を脱出する手段: カーペンター博士は第4のボウルから選択肢を引き出す。彼はSCP-5733-2に対し、柵を飛び越えて隣家の庭に入り、敷地の正面へ移動し、助けが見つかるまで通りを走って下るように伝える。
結果: SCP-5733-2は与えられた指示に従い、袋小路から道路に出て走り始める。カメラ視点が移動し、SCP-5733-1がSCP-5733-2の住居のドアから飛び出す様子が映る。SCP-5733-2は逃げ続け、SCP-5733-1は追跡しない。
SCP-5733-2は歓喜し始め、カーペンター博士は最寄りの警察署までの距離を訊ねる。SCP-5733-2は分からないが一緒に探せば見つかるはずだと答える。袋小路の外の道路に人通りは無い。道路脇に木々が並んでおり、時折街灯も設置されている。
SCP-5733-2は20分間走り続けた後、ペースを落として呼吸を整える。この時点までに木々はまばらになっており、その先には暗闇だけが見える。
SCP-5733-2はさらに5分間歩く。道路脇の並木は消えており、どちら側にも完全な暗闇が広がっている。カーペンター博士は道路横に見える物があるかを訊ね、SCP-5733-2は何も見えないと答える。カーペンター博士はSCP-5733-2に対し、着用しているブレスレットを外して道路の外へ投げるように指示する。道路と暗闇を隔てる境界線を通過した直後、ブレスレットは消失して見えなくなる。
SCP-5733-2はこれからどうすべきかをカーペンター博士に訊ねる。カーペンター博士は歩き続けるべきだと回答する。
1時間が経過した後も、道路は真っ直ぐ続いており、他の生命が存在する兆候は見られない。木々が再び道路の境界線に現れ始め、先へ進むにつれて密度を増す。SCP-5733-2は前方に灯りと家並みが見えると述べ、歩調を速める。
家並みに接近しながら、SCP-5733-2は走り始め、助けを求めて叫ぶ。到着した彼女は周囲に見覚えがあることに気付く。彼女は自分が暮らしていた袋小路に戻っている。
SCP-5733-2はパニックを起こし、カーペンター博士に何が起きているのかと訊ねる。彼に応える間を与えず、SCP-5733-1が包丁を振りかざしてSCP-5733-2に接近し始める。カーペンター博士は伏せられた3枚のカードに手を伸ばし、無作為に1枚を選ぶ — "顔"。彼はSCP-5733-2に対し、園芸バサミでSCP-5733-1の顔面を狙って攻撃するように叫ぶ。彼女は包丁の初撃をかわし、反撃に成功する。SCP-5733-1の顔を覆う麻袋が裂ける。
カーペンター博士は2枚目のカードを裏返し、SCP-5733-1の脚を攻撃するように叫ぶ。SCP-5733-2は攻撃に成功し、SCP-5733-1の動きを鈍らせる。カーペンター博士は3枚目のカードに手を伸ばすが、指が触れた時、既に最後のカードの文言が明らかであることを悟る — "身体"。彼はSCP-5733-2に対し、SCP-5733-1の胴体を攻撃して、心臓またはその他の重要臓器に致命的な一撃を加えるように叫ぶ。SCP-5733-2は攻撃を試みるが、SCP-5733-1は回避し、彼女から園芸バサミを奪い取って地面に突き倒す。
カメラ視点が上に傾き、地面に倒れたSCP-5733-2から、裂けた麻袋で一部だけが覆われたSCP-5733-1の顔へと移動する。カーペンター博士はテレビ画面に近付き、SCP-5733-1を凝視する。袋の裂け目から見えるSCP-5733-1の顔がカメラを直視している — SCP-5733-1の容姿は、カーペンター博士と同一である。SCP-5733-2が悲鳴を上げる。画面が暗転する。
財団職員によるSCP-5733の利用が情報漏洩を引き起こしたか否かについて捜査が行われている間、全ての試験は中止されています。過去の被験者の現在及び過去の配属先の調査が進行中です。