SCP-5437
評価: +11

クレジット

翻訳責任者: Tetsu1 Tetsu1
翻訳年: 2023
著作権者: J Dune J Dune
原題: A Beast Cast From Heaven
作成年: 2020
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-5437

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by J Dune

SCP-5437 -


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Image Credits


翻訳:

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アイテム番号: 5437
レベル5
収容クラス:
safe
副次クラス:
none
撹乱クラス:
vlam
リスククラス:
caution

temple.jpg

SCP-5437の外観


サイト割り当て サイト管理官 研究主任 部隊割り当て
仮設サイト-5437 T. イセロ博士 E. メトカーフ研究員 サイト警備部

foot.jpg

仮設サイト-5437入口

特別収容プロトコル: 仮設サイト-5437の周辺区域は、財団のフロント企業"バータック・エクスペディションズ"の所有する考古学上の遺跡を名目に立入禁止とされています。標準セキュリティ/不法侵入プロトコルが適用されています。

SCP-5437-1の死骸は研究を目的に財団施設サイト-40に移送されました。

説明: SCP-5437は、パラグアイのパラグアリ西方約30キロメートルに位置する先史時代の宗教施設です。SCP-5437の外観は、初期の第五主義建築と前古典のメソアメリカ建築の既知の要素が組み合わされています。SCP-5437は紀元前4100年から紀元前3100年の間に建設され、紀元前3千年紀の初頭まで使用されていたという仮説が立てられています。研究によると、SCP-5437の唯一の異常性は、生物由来の物質を異常な長期間保存し、腐敗の進行を極めて低速にする能力であることが示されています。

SCP-5437のおおよそのサイズは不明です。構造の大部分は地中に埋没しており、多層の壁の背部に複数の隠し部屋と廊下が発見されています。これらの分岐部屋を別として、SCP-5437は主に地下約86メートルの広々としたロビーにつながる螺旋階段で構成されています。

ロビーの壁には着色された壁画が並んでおり、宗教的な物語を示すように順番に配置されています。これらのペトログラフの分析は補遺.5437.1を参照してください。未知の音節と表語を有する表記体系が壁画の下に刻まれています。これらは未だ翻訳されておらず、絵画の内容の分析はおおむね推測の域を出ません。この大聖堂区画の仮説上の目的は、SCP-5437-1の礼拝の場として機能することだと考えられています。

SCP-5437-1は大型侵略者Large-Scale Agressor(LSA)に分類される、巨大なクモヒトデ型実体の死骸です。実体は緑色の体色をしており、中心部からはそれぞれ約20メートルの長さを持つ5本の細い腕が生えています。SCP-5437-1はおおむねクモヒトデに似ていますが、身体中央部の円盤に数百の目を持っています。年代測定技術ではSCP-5437-1の年齢に関する識別可能な情報は得られませんでした。SCP-5437-1の皮膚は、たとえ異常な手段を用いても貫通することはできません。そのため、SCP-5437-1の生物学的構造を解剖または検査する試みはすべて失敗しました。二次的な異常な影響は観測されていません。

補遺.5437.1: ペトログラフ分析

ペトログラフ-01


説明: LSA-Brasil-01に類似した実体が、4本の触手のみが描かれた触手を有するフレーム外の実体と戦闘を行っている。この場面の下では、空から触手が現れ、LSAと仮定されている複数の実体が地面に倒れていく様子が描かれている。



ペトログラフ-02


説明: 空から落下してきた存在が先史文明によって崇拝されている様子を描いた複数の場面。ウナギのような実体が、海中に建てられた生贄の祭壇の上に浮かんでいる。火山の頂上にアンキロサウルス様の動物が立っており、それを人間たちが取り囲んでいる。大規模な人間の集団が、SCP-5437-1の周囲にSCP-5437と思われるものを建築している。5人の人間がSCP-5437-1の腕の近くに立って、頭の先端に触れているのが見られる。



ペトログラフ-03


説明: 各実体は静止している状態で描かれている。その下には、SCP-5437を建築した人間が仰向けになって死んでいる様子が示されている。SCP-5437-1は目を閉じている。LSA-Brasil-01 の顔が壁画の残りの部分を覆っている。



ペトログラフ-04


説明: 暦法を表すシンボルが壁一面を覆っており、円形に書かれている。使用されているシステムは識別不能だが、農業、太陽、数秘術に関連する複数の重要なシンボルは壁画が暦を表していることを示している。壁画の中央にはLSA-Brasil-01がおり、人間の集落の上に立っている。暦の下部には、死亡した状態のLSA-Brasil-01 が描かれている。数人の人物が実体の死骸の周囲に集まり、それぞれが人間の頭蓋骨、儀式用のナイフ、血の入った椀などのオカルト儀式に関連するアイテムを持っている。



ペトログラフ-05


説明: 人工建造物がLSAによって燃やされ、破壊される場面が壁画を構成している。中央には、以前よりも大型化したLSA-Brasil-01 が、静止しているように描かれていたLSA実体と戦闘を行っている様子が描かれている。戦闘の上には雷雨が描かれている。その下には、LSA-Brasil-01がヘビ様実体を触手で引き裂き、その体を太陽に投げ込む様子が描かれている。死亡していないように描かれた実体数体がLSA-Brasil-01の周囲に立っている。最後の場面では、LSA-Brasil-01 が大規模な集落の頂上に座っており、人間たちがその実体の前で自分たちに敬意を表している。

補遺.5437.2: インタビューログ

音声記録


日付: 1998年04月17日


前記: SCP-5437の探索および壁画の分析中に第五教会のモチーフが観察された後、サイト管理官のトビアス・イセロ博士は元財団歴史家であるエミール・メトカーフ研究員に意見を求めました。メトカーフは、1969年にこの信念体系が発見されて以来、30年近くにわたり第五主義の研究を専門としてきました。メトカーフは、1991年に第五主義による神経障害の兆候を示した事件を受けて有給休暇を取得しました。その後数年間にわたりメトカーフは有効な心理療法と治療を受け、1997年には職務遂行に適していると宣言されました。


»記録開始«

イセロ博士は部屋に入る。メトカーフは立ち上がり握手をするが、すぐに身を引いて座り直す。

イセロ博士: お久しぶりです。

メトカーフ研究員: すでに説明は受けている。どういう話になるのかは知っている。トビー、私はこのがらくたには全く関わりたくないと言ったはずだぞ。これ以上。

イセロ博士: それは…私が要請したのではありません。第五主義の専門家が必要で、あなたがそれに一番近かったというわけです。

メトカーフ研究員: それで何故君はこれが第五教会だとそんなに自信を持って言えるんだ?写真は見た。五つの壁画、クモヒトデの死体。表面的で、見かけだけで、第五教会じゃない。

イセロ博士: それこそがあなたが呼ばれている理由なのです。我々はあなたを仲間に加え、このアノマリーの分析を支え、真相が何なのか明らかにしたいのです。認めなければなりませんよ、あなたは美的な関係だってきっと—

メトカーフ研究員: まさにそれが私がこれを第五教会の作ったものだと思わない理由だよ。ついて行ってはやるけど、君の上司は期待してるようなものは何も得られまい。アノマリーの古代の起源に関するある偉大なる第五主義者の啓示とかはね。第五主義の考え方そのものに反直感的すぎて笑えてくる。ヒトデを見ただけで私を呼び寄せているようじゃ、このテーマに関して私が書いたものが読まれたかどうかも疑問に思わざるを得ないな。

イセロ博士: ええと、何年も前のことになりますが、私はブリュッセルで少し読んだことがあり、それが印象深かったことを覚えています。ハイ・ブラジルについてはどうですか?その絵は見たことがあるでしょう。あれがワニイカです。5本の触手に、5つの目?お願いします。

メトカーフ研究員: 私はそこにいた。それが私がここにいる本当の理由じゃないのか?

イセロ博士: そこに…いたと?1988年に?

メトカーフ研究員: 質問する前に、私に…私に起きた事件はそれより後のことなんだ。私は問題ない。

イセロ博士: (休止) 申し訳ありません。全く知りませんでした。

メトカーフ研究員: 悲劇だと思わないか?ハイ・ブラジルは。

イセロ博士: 何ですって?

メトカーフ研究員: 他と一緒に死んでしまっていたほうが良かったとは思わないか?

イセロ博士: 仰っている意味がよくわかりません。

メトカーフ研究員: 君にはわからないさ、トビー。多分私は理由があってここにいるんだろう。数か月以内に君は結論が出るだろう。

沈黙。

メトカーフ研究員: 私が君たちを補助しよう。どんなことであっても、望めば手伝ってあげよう。私があれを見たり…よし。 (休止) おそらく、ここに何かある。

イセロ博士: ありがとうございます。研究主任というのはどう思いますか?多少の増減はありますが、25人くらいの人員がいます。管理することもそれほど多くはなく、私の負担も軽くなるでしょう。つまり、お望みであればロビーにあなたのオフィスだって用意できます。

メトカーフ研究員: 一番効率的に私の仕事をこなせるなら寝泊りする場所はどんなでも構わない。

»記録終了«


補遺.5437.3: 収集されたメトカーフ研究員の日誌エントリ


1998年04月19日

ダーネルは私の持ち物の大半を大聖堂区画に移動させるのを手伝ってくれた。ベッド、机、アーカイブ、そして必要になるだろう適切な設備がすべて揃っている。ここで私が何をすべきなのか、まだ完全にはわからない。写真を撮り、メモを取り、マーカーをつけながら、建物を半分ほど見学した。 「第五教会の切り口を見つけてください」と私は言われた。探せというのか、それとも勝手に作れというのか?この建造物と10年前に亡くなった命との不可解な結びつきを思い出す。

天が下界へと流れだしてきたとき、私にはその眼も、腕も見えなかった。私が生涯尽くしてきた職務に反し、私の思考は、心に巣くうウイルスとか、それが変容する方法だとか、我々の世界を超えた別世界だとかいったことを浮かべることはなかった。私は、ヨーロッパの征服者の有する技術を目の当たりにしたときの、アステカの恐怖に直面した。初めて異常な世界に足を踏み入れた者の恐怖に。自分が狩ることのできないほど大きな獣を見たネアンデルタール人の恐怖に直面した。異常とか正常とかといった観点では考えていなかった。一切考えていなかった。

私の知る真実は

やるべき仕事がある。



1998年04月21日

カタコンベでのいろいろあった一日。いろいろあった夜?私は奇妙な「隠し」通路や部屋も含め、発見されたものを一通り歩いた。私は、時間のほとんどを発掘された遺物のカタログ作成、年代測定、観察に費やしている。私のこれまでの分野を考えると、これは非常に快適な仕事だ。あからさまに新米で、親切なマイテという娘は、私が一度に何時間も空けたりしないオフィスに物を持ってくるのを手伝ってくれる。長い廊下のアーチの間のこの場所にいると、まるで一生ここに住んでいるかのような気分になってくる。ここに移動させるという要求が承認されたことには驚いた。私に仕事に没頭する傾向があることを踏まえ、これまでの経験が考慮されたのかもしれない。

この場所と通常の考古学の発掘との間に違いはほとんどない。続き物のジャングル映画やコミックのように、若いころの空想を現実にしているように感じる。勇敢なサファリのリーダーの代わりに、私は年老いた教授役を引き受けた。その役らしい恰好をし始めだってしたよ。



1998年04月22日

壁画についてがまだ残っている。私はその研究のために、研究主任として許されるだけその日の職務を延期した。壁画の語る物語は明白だ。天を追われた獣の軍勢が、神として崇拝されるために地上に降り立つ。何らかの理由により、彼らは集団で冬眠する。彼らは時間の犠牲となるのだろうか、それとも審判を待っているのだろうか?より大きな獣が到来するとともに、彼らは目覚める。戦争が勃発し、下等の獣たちは人類自身と同様に、新たな指導者を崇拝する。もちろん、私は他の宗教神話と同じように、歴史家の目を通して観察はしている。しかしそれは、未知の世界に身を置く者にはめったに達成できない贅沢だ。

私は死体を見た。それまでは避けていたが。



1998年04月24日

記念日おめでとう、パトリシア。今でも愛してるよ。



1998年04月27日

普段から同僚と会話をしているはずなのに、ここ数週間誰一人として会っていない気がする。マイテは私に食事を持ってきてくれるようになった。彼女は一流の料理人だ。

このアノマリーのもたらす影響には興味深い点がある。物質が普通よりも遅い速度で腐敗する。死は、一時的には延長される。思い返してみると、ここに滞在するのを許されたことには驚くことだ。まあ私自身は被験者になることは構わないが、最近財団内部でより倫理的な実験の条件を求める動きがあった。今でも起こっていると思う。



1998年04月30日

あの死骸はどれだけの時間をかけて死んだものなのだろう?この実体たちは間違いなく大抵の生物よりは長生きで、さらにこの建造物の影響を考えると、私にはただ推測するしかできない。

あれは死んでいるのだろうか、それとも単に今際にいるのだろうか?その最期の数秒は何百年にも延ばされたのだ。



1998年05月03日

トビーが間もなく休暇を取ると伝えてきた。いつになるかはわからない。彼は今夜だと言ったが、「今夜」が実際にはいつなのかは誰も知らない。どういった筋道なのかは思い出せないが、彼の上司と何か会議をしていたようだ。今では私はサイト管理官を務めている。想像できるかい?メトカーフ管理官なんてものを。そんなものを見たらすぐにでも連合に離反する者も出てくるだろうな。



1998年05月05日

私は何日も長い間眠れていない。照明のせいだとほぼ確信している。数日出ていくかもしれないが、私の体で試しているちょっとした実験に支障をきたしうることには気づいている。

例の死骸を見ると怒りがこみあげてくるようになった。内心、生きていたならばと願っている。そうだと望んでいる。あれが引き起こしうる死は、あれを脅威とする。連合がイカの頭に風穴を開けるのを目撃できたことを誇りに思う。我々でも同じことをしたのだろうか?

ヒトデの頭にぽっかり空いた穴。あれは死にたがっているが、あれ自身の神殿がそれを許さない。



1998年05月07日

キンバリーは今日で13歳になるはずだった。



1998年05月10日

マイテに怒鳴ってしまった。あの気の毒な娘に何と言ったかは定かではないが、恥ずかしくて考えたくもない。

絵に込められた物語が私の頭の中でますます形を帯びていく。

1978年、ロシア人は北極で、ある獣を発見した。彼らは墓の中で凍っていたその死骸を発見した。私たちはそれを建築した社会について何一つ知らない。彼らの唯一の遺物は死の遺物であり、獣のための霊廟だ。古代の建築者たちは、自分たちの成したことが忘れられることをわかっていたのか?すぐに死んでしまうのに、なぜこれほどまでに美しい作品を作り上げたのか?彼らの功績を総括すると死である。

私は不死の墓にいたのだ。



1998年05月13日

パトリシアが私に夕飯は何がいいか尋ねる。私は普通のもので構わないと答える。彼女は笑い、私に自分がどこにいるのかわかっているか尋ねる。キンバリーが入ってきて、冷光を放つ紫のアイスクリームを食べる。この娘は私を抱きしめ、入れてくれたことに感謝を述べる。

私は、今夜おおきなアリーナで開催されるダンスショーのチケットを予約していた。ポケットの中に半券があるのを感じる。それは内緒だ。誰も私がこれを買ったことを知らない。キミーの無限の山に追加してあげる、もう一つの誕生日プレゼント。

短い休息のため頭を横たえていると、温かなトゥアハのシルクを感じる。

この島は楽園だ。

そしてみんな死んだ。



1998年05月15日

平凡な一日。

新たに通路を見つけた。



1998年05月19日

昨夜は日中に目が覚めた。廊下を歩き始めた。隠し部屋に入ったところ、見えたのは死体だけだった。この神殿を建てた者、そうでない者。何マイルにもわたって続いていた。

彼らは自分たちが死ぬことを知っていたのだろうか?彼らは喜びを感じながら壁画を描いたのだろうか?死、破壊、避けえないもの。あるいは、彼らは救われるはずだと信じていたのだろうか?



1998/05/24 28

彼らが一緒に死ねたのは幸運だった。

彼らが死んだときに死ねたのは幸運だった。もし死んでいなかったら彼らは死んでいただろう。私は彼らに死ぬよう言っていたはずだから。



木曜日

わたしはかつては夢を見ていた。今は何か月も見ていない。

この神殿のありとあらゆる石を置いた者の名は永久に失われた。

今日は自らを省みた。私は財団の人間だ。私は物事が歪んでいるとき、そうだという事実を知るに足る知性を持っている。たとえ物事がそのように見えても、実際にはそうではない。私の体は仕事を効率的かつ効果的に行う。私はいつものように平静を保っている。マイテが像を落とし、それを百の破片へと砕いたとき、一瞬怒りが脳を貫いた。その千年に及ぶ死がついに終わりを迎えた。今日、この墓にまたひとり住人が増える。私は彼女に、それがお前だったらよかったのにと言う。



第五教会の概念は一見しただけでは第五教会の概念にはほとんど見えないが、ゆっくりと現実を超越していくのだ。私の最初の講義からの引用だ。少々言い換えがあるかもしれないが。

これは第五教会の概念ではない。

私はここで起きていることを完全に認識しており、これが死体だということもわかっている。これに二次的な異常な影響はない。今日、私は少しだけ外に出た。私の心が、ここを立ち去ることと避けえないことに直面することの狭間で真っ二つになっていたからだ。それは夜だった、そして太陽はハイ・ブラジルのあの夜とまさに同じような姿を見せている。キンバリーとパトリシアは壁の下に閉じ込められた。血だまりが見えた。だが二人を救うことはできなかったし、救いたくもなかったのだろう。



私は、聴くべきでなかったテープに近づきすぎて、その内容をリピートし始めたために精神科に監視を受けるようになった。

私がこの日誌を書き始めたのは、私は飼うべきでなかった獣に近づきすぎて、その哲学をオウム返しし始めたからだ。もし私がここで死ぬならば、それは苦悶の中、長い時間をかけることになるだろう。もし仮にハイ・ブラジルの人々がここで死ぬとしたら、それは極めて急速に終わることになるだろう。あの夜の、誰よりも心から愛していた人たちの死とよく似ている。

それは起こったのだ。彼らは北極で獣を見つけた。大型侵略者がいる。怪獣たちがいる。私はベッドを離れ、自らそれを見ることができる。ロビーにある。壁に面するもの。私は壁に面した神殿にいる。壁にはイカがついている。それを否定して何の意味がある?これは起こったのだ。起きようとしているのだ。

その死体に何が起きた?獣が死んだとき、それは死んだのではなく命の次の段階、身体の復活へと移行したのだ。アナスタシス。実際に起こるだろう。それを否定してどうなる?

私は死を先延ばしにする。我々は皆、最終的に同じ運命にあるからだ。トビーが去ったのは、それを知っていたからだ。一緒に続けることもできるが、しかし

もうやめだ。



1998年06月17日

今朝はコーヒーが熱すぎた。いくつか新たに遺物を文書に起こした。尿瓶、一種の宗教的な像、儀式に用いる短剣。人の遺体の集団埋葬地の証拠がある。

もし建物内で殺されたとしたら、彼らは信じ難いほど長きにわたり苦しんだに違いない。彼らは、建物がその中の人体の物質、腐敗する物質に与える影響のせいで、最終的に息を引き取るまで何百年も生存していたかもしれない。もっと長いかもしれない。

死にたくない。死ぬのが怖い。



私は来るべき破滅の当事者となりたくはない。

愚か者のように、気の触れた狂人のように、制御不可能な何かの影響を受けた者のように、私は死骸に触れた。評議会に、上司に、そして最終的にこれを文書にまとめる人に伝えたい。私は自分の行動、体の動き、思考、そして愛する人の記憶は完璧に制御できている。

ある種の審判の時が来る。私はそれを見たくはない。そして私には逃げ道があることを知っている。

この逃げ道が素晴らしいのは、それが何も新しいものではないということだ。それはいつだって、始めは小さいが徐々に大きくなっていく穴のように、頭のすぐ後ろにあったのだ。どこへ行けばよいかは知っている。私はかつて行ったことがある。

この神殿を建てた文明など存在しない。存在しなかったのだ。彼らに名前はない。ハナから名前などなかったからだ。彼らはどこへ行ったのか?なぜ彼らは我々のもとを去ったのか?彼らも私のように恐れていたのだろうか?こんなのはフレーバーだ。あきれ返るほどに退屈だ。再びあの島にいられるときか、あの部屋にいるとき以外は、私はもう何も考えない。

これは何一つとして気に病むことではない。待ち受けていることに比べたら穏やかなことだ。

補遺.5437.4: 音声転写

以下は1998年06月27日の夜、メトカーフ研究員によって記録された音声の転写です。この音声を含むQFXテープレコーダーがSCP-5437-1の付近で発見されました。

よし。私は、あー、示したいことがあってこうしている。たぶん自分のため、うん(笑い)、おそらくこれを文字に起こして、そしてこれを…そしてこれを文書化する誰かのために。ところで、私は死体の前に立っている。すまない、オブジェクト、だな(笑い)。時折私がどこにいるのか、それから実際にこれが何なのかを無視しなければならないことを忘れてしまう。

それはそうと、私はメトカーフ研究員だ。私が書いた文は少々美文臭くなってしまうから、それで…それでこういう手段をとっている。だから間違った印象を抱かれることもないだろうし、あー、私は問題ないということもわかるだろう。私がここに呼ばれたのは、私が第五主義の専門家だからだ。このアノマリーと第五主義には、うん、繋がりか何かがあるとかいう話だ。正直わからないし、気にもしていない。なぜなら見ての通り — (こすれる音)第五主義について考えると、頭の中にそれが本当は何であり、実際には…あー、実際には何でないかについてのこの考えを抱くからだ。

(音声の歪み)

真実はそうだ、キンバリー。キムと、あと…パトリシアがあの夜死んだとき、私は自分を騙していた。私が今日なん人と話したか信じられるかい?私が話した人の数を?(笑い)言いはしない。どれだけの物事が、そう望んだ時に意味を持ち始めるのかは信じられないほどだ。

私は今まさにこの死体を見つめている。この巨大な…水生生物を。これは死んでいる、少なくとも長い間そうなっている。私に何を望む?それが話しかけて何か伝えてきたとでも言い始めることか?それが生きているということか?私が予言することか?くだらない。これで全部だ。ここでの現実…現実は、ただそれは死んでいるということだ。この神殿内の命はみんな死んでいる。来世はない、超越の先にたどり着くべき第五世界もない、何もない。私は石棺の中にいて、死は…明白だ。それは特に壁にある。

(こすれる音)畜生。

私は、実際の年齢相応に老人のようなものの書き方をする。だから私はこの方法をとっている…この媒体を通して。それで、今なお死を、あー、引き伸ばす死者の家で、本当に恐ろしいのが何かわかるか?何かが帰ってくるという考えだ。それがあの獣を恐れる理由だ。なぜなら私は…GOCがそれを粉微塵に吹き飛ばすのを見た。その内臓が大地に、井戸に、そしてかつて大地だった場所に飛び散るのを見た。その全てを見た、そしてそれが今なお戻ってこようとするのだ。

第五主義とは…あー、言葉で表さねばならないとしたら、自分の幼い少女が瓦礫に押しつぶされ、一方自分は動けずにつっ立っている、そんな光景だ。それは自分の好きな数字や記号を用いて人をなじる獣だ。それは、それだけの数の身体部位を有することによって…によって自分がしていることを知る。それは延命のために造られた、死者で満杯の墓だ。世界の反対側にかけて同じことをしている二つの忘れられた社会だ。死者を蘇らせる力だ。眠りし者を目覚めさせる力だ。混ざり合い明確に色の違う部分もあるが…それでも見分けることのできるその血だ。

報いが訪れることを知っていて、両手を広げてそれから逃げ出すんだ。私は…君たち皆のことが心配だ。私は臆病者だ。私は君たちのいる世界で生きたくはないんだ。弱虫とでも言ってくれ(笑い)。

私が見た…アノマリーには、うん、かなりの違いがある。一体幾つ世界を終わらせられるものを見たことがあるだろうか?無数にある。それが現実にそうなると知っている場合と、終焉が訪れようとしていて、自分にできることは何もなくて、すでに一度起きているからそれを知っている場合とでは少し違う。私はそれを真正面から見つめているのだ。もし私が君なら、私だって自らを殺そう。

そんなところだと思う。

(音声の歪み)

相応しい場所と時間に書いておいてくれ。

補遺.5437.5: インシデント-5437

インシデント記録


日付: 1998年06月27日


aftermath.jpg

インシデント-5437発生後のSCP-5437の一部

1998年06月27日の00:12、SCP-5437-1は大量の第六生命エネルギー(EVE)を放出し、仮設サイト-5437に駐在していた職員全員を殺害し、SCP-5437の大部分を破壊しました。これは、メトカーフ研究員が上記の記録を作成した直後に発生したものと考えられています。さらなる調査により、SCP-5437-1の体内からメトカーフの無傷の死体が発見されました。

このインシデントは、プロメテウス・ラボによるLSA-Brasil-01の復活、およびその後の世界中での複数のLSAクラス実体の覚醒と同じ時間枠内で発生しました。この出来事はSCP-5391に登録されました。

ハイペリオン-5委員会の決定に従い、SCP-5437-1は研究目的で財団サイト-40に移送されました。SCP-5437に描かれているペトログラフに関する警戒態勢が敷かれています。

オブジェクトクラスのNeutralizedへの再分類は保留中です。


Footnotes
. 訳注: 先史時代に文字や文様が刻まれた彫刻。
ページリビジョン: 7, 最終更新: 17 Mar 2025 07:29
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