現地において確認されたSCP-4750
アイテム番号: SCP-4750
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 再確保が行われた場合、SCP-4750は補助サイト-25-デルタの標準ヒト型収容チャンバーに収容された上で、標準的な手順に則った食事が与えられます。当該サイトはその他の財団ないしは民間の建築物から、少なくとも100mは離れている状態が維持されなければなりません。
SCP-4750の全担当職員は、配置転換が行われるまで補助サイト-25-デルタで生活しなければなりません。職員が必要とする物資は全てカートか手で持つことによって運搬されなければならず、ハーネスやホルスター、バックパック、ランヤード、ないしはそれに類するものの使用は一切認められません。補助サイト-25-デルタにおいては毛布やタオルは使用されるべきではなく、いかなる場合であっても温度調整機並びに空気乾燥機が利用されます。
補助サイト-25-デルタに勤務する職員は常に裸体でいなければなりません。
説明: SCP-4750はスワヒリ系の高齢男性に類似した人型実体です。SCP-4750は知性を有し、スワヒリ語、アラビア語、古ノルド語、並びに英語を話すことが可能です。
SCP-4750はヒトの皮膚から真皮及び表皮を剥離させることが可能です。これが行われる過程は直接観察されたことがないために、現時点では不明です。全事例において、剥離させられた皮膚は衣服の内側に存在していたものでした。
補遺4750-1: 確認されている記録
財団のエージェントはタンザニア、ザンジバルのストーン・タウンにおける皮を剥がされた死体に関する記録の調査を行いました。人皮から製作されたジャケットが発見されたことを機に、調査の目は近隣の多数の狭い路地が密集する地区に潜伏していた、1人のオーダーメイドの仕立て職人に向けられることとなりました。
財団エージェント、アルンファスト・ハラルドソン(SCP-4242-Thor出身)は調査チームへの参加を強く希望しました。なお後に彼は自身の提出した公式報告書には記載されていない詳細な情報を含む私的な調査日誌を保有していたことが判明しました。当該記録の内容はSCP-4750の人格を洞察する際の補助となる可能性から機密指定を解除されました。(以下がその内容です。なお原文は古ノルド語です。):
ストーン・タウンにおいて噂の調査を行っているエージェント・ハラルドソン
ここでは困惑させられてばかりだ。
未来を初めて訪れたとき、私は自国の広大さとその財宝たちに愕然とさせられた。しかしそこにあった数多の巨大な建造物たちの存在を以てしても、ザンジバルの凄まじい混沌に対して備えておくことは出来なかった。家々は互いに積み重なりあっていた。商人たちは皆同じことをした。互いに押し合いへし合いしながらこちらの注意を引こうとするのだ。財団はこの地の人々は観光客に慣れていると言っていた。ありがたいことに、溶け込む必要はなさそうだ。
私が話した人々の大半からは手掛かりは得られなかった。私が変わった服が欲しいと言えば、彼らは私を曲がり角の近くの押しの強い男 - 決まってその兄弟かいとこである - のところまで引っ張って行って、この布だとかあの帽子だとかいったものを売りつけようとするだろう。そのようなことが実によく起こるのである。私は彼らから離れるために路地の奥深くへと踏み入った。すると1人の少年が「その場所を知っている」と私に声をかけてきた。彼は「誰にも話さないと約束しなければならない」とも言った。ひしめき合う屋根のせいで薄暗い路地をとぼとぼと歩く少年は物憂げそうだった。彼は私を突き当りの小さな店へと案内した。店の入り口には1人の老人が腰掛け、縫物をしていた。私は少年に小遣いをやろうと思ったが、彼は既に光の中へと逃げ出していた。
男の指が素早く巧みに動くと、針がさながら酔っ払いの耳の近くの蚊のごとく、飛んでいるかのように布地から出入りした。私に目線を合わせてほほ笑むために頭を上げるその時間で、彼はどのようにしてかその針仕事を終わらせてしまった。彼は未来で誰もが話しているサクソン人の新しい言葉で、私に入ってくるように言った。
私は彼の店へと足を踏み入れた。そこにはリネン・革・羊毛・木の羊毛などといった、あらゆる布地が積み重なっていた。針が卓上のクッションから咲き、柱や垂木から釣り下がっていた。糸が天井から垂れ下がっていた。そしてその蜘蛛の巣の中心に立つ仕立て屋は、既に私を入念に観察していた。彼は私に何を求めているのか尋ねた。
私はそう言うように教えられたことについて考えを巡らせた。その場では、それでは内容に乏しいように思えた。皮剥ぎ人は確かにすぐそこにいたのかもしれない。しかし私にはこの任務を欲した理由があった。私にはそれに加えて欲するものがあったのだ、そしてそれは皮剥ぎ人が提供しているのかもしれないものであった。私は私に富をもたらしてくれる衣服が欲しかった。
彼は陳列台を引き出した。その上には全体が金の糸で作られた信じられないほど素晴らしいジャケットがあった。彼は陳列台からジャケットを手に取って私に手渡してくれただけでなく、それを身に着ける手伝いまでしてくれた。美しい衣服だった。それは薄暗い店の明かりの中でさえ輝いていた。春の滝の中で水浴びをする女性よりも優美だった。しかしそれは私の欲していたものではなかった。
私の反応を見て、仕立て屋は私の手よりも幅のある、銀と宝石で作られているベルトを引っ張り出した。彼が私の腰にそれを巻いて留め金を留めると、赤に緑に青、さらには燃えるようなオレンジまでもが部屋中に反射して煌めいた。漂う埃という埃はこのベルトに捕らえられた上で1ダースもの色合いで切り分けられ、光は壁を塗ってあらゆるものの表面で踊った。それは宝石の中で噴火している火山の上を吹く夏のそよ風よりも魅力的なものであった。しかしそれは私の欲していたものではなかった。
彼は私の腰からベルトを取り外した。それから私の方へと体を寄せると、私に古い言葉、我が故郷の言葉であるノルド語を使って、私の耳元でひそひそと囁いた。「お前さんはナブロクが欲しいんだな」
仕立て屋はここにいた。
そこから私たちは私の言葉で話した。彼がナブロクを知っていたことには驚かされた。彼は両手を広げた。その細い指は加齢のせいで震えて痙攣していた。衣服があるところには仕立て屋が必要なのだ、と彼は説明した。曰く、私の助けがあればそれを仕立てることが出来るとのことだ。ナブロクを作るのには2つの貴重な物品が必要である。自ら進んで生贄として捧げられた男の下半身の切れ目のない皮膚から作られたズボン。貧しい未亡人から盗んだコイン。これをそのズボンのポケットに入れる。それらは結果的に自らの肌と同じくらい滑らかで、貧しい未亡人のコインが残っている限り常に金を引き寄せる1本のズボンになるだろう。彼は皮膚を手に入れて、それを着心地の良いものにすることは出来ると言った。しかし未亡人のコインは自力で盗み取らなければならないだろう。
私はやり遂げることは出来るのかと彼に疑問を投げかけた。老人は歯を剥き出しにして笑った。すると長くて捻じ曲がっている汚れた歯が彼の口から、あたかも彼自身の唇に馴染みがないかのように姿を現した。ザンジバルにはたくさんの不幸がある、彼は甲高い笑い声を上げながら言った。たくさんの未亡人も、とも。彼は革の山を持ち上げると、一揃いの手袋を見せてくれた。いや、それは手袋ではなく、中身のない両手の皮膚だった。「皮膚を失うことを厭わないたくさんの男たちも、な」
補遺4750-2: 回収された記録
任務内容: SCP-4750の確保
担当職員: エージェント・アルンファスト・ハラルドソン、機動部隊パイ-1("シティ・スリッカーズ")
<ログ開始>
アルファ: オーケー、マイクチェック。
ウルフ: このそよ風の囁きが我が家にもあればよいのだが。
ブラヴォー: さあ、仕事だ、兄弟。こちら、ブラヴォー。
チャーリー: チャーリー。
デルタ: デルタ、問題ありません。
司令部: 全員いますね。状況は次の通りです。活動的な敵性現実改変能力者がストーン・タウンの裏通りに潜伏しており、ハラルドソンがターゲットまでの道のりを知っています。あらゆる戦闘行為は非致死的なものでなければなりません。アルファ、全員のテーザーが機能していることを確認してください。
アルファ: テーザーのチェック並びに充電・配備を完了した。アルンファスト、これまでにテーザーは使ったことは?
ウルフ: トールの射出機のことか?ああ、あるとも。
<ブラヴォーの笑い声>
ブラヴォー: トールの射出機?そりゃいい。あんた最高の言葉を思いついたな。
チャーリー: 心配するなよ、お嬢さん。
アルファ: 全員集中しろ、任務中だ。アルンファスト、俺たちはお前をウルフと呼ぶことになっている。お前はブラヴォーとチャーリーを仕立て屋まで案内する。仕立て屋の姿を確認したら、トールの射出機を抜け。デルタ、配置についているか?
デルタ: ばっちりです。メインストリートまでの射線は通っています。この道を来た奴さんを黙らせる準備は出来てますよ。
アルファ: 上出来だ、総員行動開始!
ウルフ: 何、今からだと?
アルファ: どうかしたのか、ウルフ?
ウルフ: 本当に今から彼を攻撃しなければならないのか?
司令部: 私たちは夜明け前、つまり人通りが制限されている時間帯の中で、最大限周囲が明るい時間帯に決行することにしたのです。私たちの行動が遅れるほど人通りは増えていく一方ですから。そうなれば民間人に死傷者が出る危険性が高まります。ターゲットは典型的な活動的敵性実体です。私たちが素早く行動しなかった場合、どれだけ多くの人々が皮を剥がされることになるのか分かったものではありません。任務を遅延させる理由はありますか、ウルフ?
ウルフ: 私は...いや。理由はないな。君たちを連れて行こう、ブラヴォーにチャーリー。
アルファ: それでいい。では時間を無駄にするのはこれくらいにして行くぞ。
ウルフ、ブラヴォー、チャーリーはストーン・タウンに進入する。
ウルフ: ここだ。彼の店はこの路地の突き当りにある。
チャーリー: 上出来だ。俺はここに路地の入口をまたぐようにテスラ・ゲートを設置する。お前さんのIDが入力されたならば、こいつはお前さんを守り、一方でターゲットには手痛い衝撃を与えてくれるだろう。
司令部: 細心の注意を払ってください。我々は未だターゲットがどのようにして犠牲者の皮を剥ぐのか知りません。検死解剖の結果から分かっているのは、道具を使用した痕跡は確認されなかったということだけです。まるで皮が1枚の布のように剥がれ落ちたとでもいったかのように。
<ウルフは唸っている。>
ウルフ: 1人で行かせてくれ。彼は私を知っている。何も疑わないだろう。
ブラヴォー: 俺はすぐ外にいるとするよ。あんたに何かあったら中に入る。あんたの皮を盗み取る前にターゲットを無力化することを忘れるなよ、いいかい?素早く静かにやるんだ、そうすれば俺たちは全員ここからすぐにでも立ち去れる。
<ウルフは唸り続けている。>
アルファ: お前が緊張しているのは分かった。だがそうやって唸るのは間違いなくやめたほうが良い、ウルフ。俺たち全員にお前の唸り声が聞こえている。隠密行動の妨げだ。
ウルフ: ああ。分かった。
チャーリーとデルタが配置につき、ウルフとブラヴォーは店舗に接近する。
ブラヴォー: ウルフ?あんた、またそいつをいじってるじゃないか。本当に大丈夫なのか?
ウルフ: コインは重要なんだ。彼はこれがどのような意味を持つのか知っている。
ブラヴォー: まぁ...いいだろう。気を引き締めなよ、兄弟。あんたに怪我をして欲しくはないんだ。
ブラヴォー: ウルフが店の中に入った。
<ウルフのチャンネルの音が弱まる。カサカサという音だけが聞こえる。>
アルファ: ウルフ、お前のチャンネルは正常に機能していない。これが聞こえるか確認しろ。
<ウルフのチャンネルに変化は見られない。>
ブラヴォー: あいつは中で誰かと話しているようです。あいつが何と言ってるのかは分かりません。しっかりしろ、兄弟、そいつを撃って家に帰るぞ...
<ウルフのチャンネルからはカサカサという音が聞こえ続けている。>
ブラヴォー: あいつは聞いてもいなければ、ターゲットを撃とうともしていません。突入します。
<木製のドアが開け放たれる。ブラヴォーのチャンネルからウルフの抗議が聞こえる。ゴボゴボというような悲鳴(SCP-4750のものと推測される)が聞こえる。テーザーが発射される。木製のドアが勢いよく閉まる。>
ブラヴォー: ウルフ!あんたの耳の中のそよ風の囁きを復旧させな!あんたはヤツを見つけた!どうして撃たなかったんだ?
<ウルフのチャンネルからカサカサという音がしなくなる。>
ウルフ: 私は...私たちは今から彼を追う。
アルファ: ブラヴォー、報告しろ。ターゲットには命中したのか?
ブラヴォー: 残念ながら。ヤツは奥の部屋へ逃げ込んだ。ヤツの動きは本当に年寄りの...
<チャーリーの息を呑む音と呻き声>
アルファ: チャーリー!状況!
<チャーリーのゴボゴボという声>
アルファ: ウルフ、チャーリーの状態を確認してくれ。ブラヴォーは追跡を。
ブラヴォー: ターゲットはここに引き返してきてはいません。
ウルフ: チャーリー!彼の皮膚はあそこだ!
ブラヴォー: 何だって?嘘だろう!すぐに引き返す!
アルファ: チャーリーのために出来ることはあるか?
ウルフ: 後で彼に栄誉を授けることが出来る。
ブラヴォー: ああ、神よ。チャーリー...ああ、彼は逝ってしまった。ターゲットはどうやってゲートを通過したっていうんだ?
アルファ: ゲートのところには俺が行く。ターゲットの後を追え。デルタ、人通りはどうか?
デルタ: まだまばらです、大半は店を開けている店主たちですね。待ってください!ターゲットが見えます!
アルファ: ターゲットを捉えたら撃て。ブラヴォー、ウルフ、デルタのもとへ向かえ。
デルタ: ヤツは何人かの絨毯売りのすぐ後ろにいます...いいぞ、兄弟たち、絨毯売りたちが動い...そこだ!ヤツには俺が見えている?
<デルタのチャンネルからさえずるような音に続き、濡れた毛布が落ちたような音がする。>
アルファ: デルタ!全員デルタのところへ行け!
<ブラヴォーとウルフは外階段を上る。>
ウルフ: 手遅れだった。デルタは皮を剥がされている。
ブラヴォー: なんだっていうんだ?ここは屋上だぞ!
アルファ: ターゲットはまだ遠くには行っていないはずだ。周囲の路地を確認しろ。
ウルフ: 彼を見つけた!許さんぞ、悪党め!
ブラヴォー: ちょっと待て...ああ...
アルファ: ブラヴォー?一体どうしたんだ?
<ブラヴォーが階段を駆け下りる。>
ブラヴォー: たった今ウルフが自分のシャツを引き裂いてから向こう側へ飛び出したかと思うと、自分のシャツと一緒に電源ケーブルを掴んで路地へ駈け込んだんです。
アルファ: うむ...その2つを見つけてから...
<ウルフが苦痛に絶叫を上げる>
ブラヴォー: ウルフ!
ウルフ: (SCP-4750の声で)ハァァァ...自分のシャツを!どうして自分のシャツを脱いだんだ!
ウルフ: お前に教えてやる必要は...
ウルフ: (SCP-4750の声で)わしにお前さんのコインを渡しな。
<ブラヴォーのチャンネルからテーザーの発射音が聞こえる。SCP-4750は息を吐き出すと倒れ伏す。>
ブラヴォー: ターゲット沈黙。ウルフ...神よ...
<ログ終了>
追記: SCP-4750は拘束されました。エージェント・ハラルドソンの腰部より下部の皮膚は剥がされており、エージェント・ハラルドソンはその負傷が原因となって24時間内に死亡しました。エージェント・ハラルドソンの下半身の皮膚からは、陰嚢内に入った100タンザニア・シリング硬貨が発見されました。この皮膚は保存され、調査のためにサイト-17に送られました。
補遺4750-3: 初期収容インタビュー
インタビュアー: エージェント・ラシャウン・ワシントン
対象: SCP-4750
付記: 回収作戦時の経験に基づき、エージェント・ワシントンはSCP-4750との対面に際して皮膚を除去される可能性を排除するために、裸体でインタビューを実施することを要求されました。エージェントは自衛のために拳銃を要求し、これは承認されました。インタビューは監視室からの監視が可能な、テーブル及び2脚の椅子を備えた尋問室において実施されました。
<ログ開始>
SCP-4750: やあ、御機嫌よう!さあ、中へ入って、腰を下ろして、楽にしとくれ。何か着るものは要らんかね?わしはわし自身の手であんたにシャツを提供することが出来る。ナイル川沿いで育った超長綿を使って、わしがこの手で作ったものだ。とても柔らかいぞ。お前さんがそんなものがあるだなんて知りもしなかったものだ。
ワシントン: ありがとうございます、しかし結構です。私はあなたに████/██/██に発生したイベントについてお聞きするためにここにいます。何が起きたのかあなたの見解をお聞かせしていただけますか?
SCP-4750: 何だって?年内の話かね?それほど前の話じゃないはずだが?
ワシントン: 記録のためです。
<SCP-4750は部屋を見回す>
SCP-4750: ふむ?つまりこれは記録されているのかね?そうだな...わしが思うにだな。実のところ、お前さんは何も怖がることなんかないんだ。わしにはお前さんを傷つける理由はない。お前さんは銃を持ってはいるが、わしからすればそんなものは少しも恐ろしくはない。ただの素っ裸で恥ずかしそうに、そして心地悪そうにしている男というだけのことだ。全くもって無理もないことだな。お前さんがわしのズボンを気に入ることがないと確信を持って言えるかね?ゆったりとした亜麻、素晴らしい通気性、それに締められた長い引き紐。そいつはお前さんの腰回りにいつだってぴったりと馴染むことだろう。
ワシントン: 結構です。我々はあなたがあの日、我々のエージェントに何をしたのかということが知りたいのです。協力してください、そうすれば我々はより互いを助け合うことが出来るようになるでしょう。
SCP-4750: 協力?もちろんだとも。わしはお前さんとこの基地にいる全員に着心地の良い制服を提供することが出来るだろう。今まさに何も身に着けていないということは、お前さんにしてみればひどく妙に感じられることのはずだ。白いコットンを綾織りしたボタンダウンのシャツだな、首周りは40cm、袖丈は90cm、ボタンダウンの襟に、2つのボタンカフス。しかしだな、正直に言えば、39.5cmの首回りと89cmの袖丈ならもっと自由に動けるものを作ってやれるんだ。生地が少ない分、お前さんはそいつをより自分の肌のように動かすことが出来る。
ワシントン: それには問題がありますね、違いますか?幾人かのエージェントは皮膚を失い遺体袋に入ってザンジバルを離れました。そして我々はあなたがそのことに関与していたことを知っています。
SCP-4750: 黒いコットンの厚手のチノ生地、ウェストは86cm、股下は92cm。脚に対して少しゆったりとしすぎているかもしれんが、右の太腿の周りを曲がるように外側の縫い目に沿って隠しポケットを付けておくつもりなら、おそらくだが必要だ。これならいつだって少しばかりのシャキッとした威厳を感じさせられるようにするには十分だろうし、いかなる政府や準軍事組織の軍隊に間違えられるようなことも決してないだろう。その服を着て人並外れた身のこなしをすればお前さんたちの能力を示せるはずだ。
ワシントン: 私たちは着てもいない制服について話し合うためにここにいるのではありません。あなたはどのようにして、そして何故あの男たちの皮を剥いだのですか?それから何を得ているのですか?そして何故剥がされた皮膚がそれほどまでに衣服にとって重要なのですか?
> SCP-4750: 衣服というのはいつだって重要なものなんだよ、お前さんや。決してわしらの慎み深さを保ってくれていたり、港で雨風を寄せ付けないようにしてくれていたりするだけのものではないのさ。衣服というのはお前さん方が互いに話すための道具であり、他人に自分の重要さを知らしめるためのものなんだ。今の自分を見てみたまえ。お前さんは自分が慎み深さを保てているか心配している、お前さんはカメラがあらゆる角度からお前さんの体の隙間という隙間を撮影しているのを知っている。しかしそれ以上にだな、お前さんが心配しているのは自分の立場だ。小綺麗で清潔な制服こそがお前さんが人から恐れられ、そして尊敬されるべき人間であると示してくれる。お前さんが大きな組織に属していると周りに告げてくれる。お前さんが危害を加えられたならば報復が行われることを約束してくれる。そいつがお前さんの方が立場が上だということを、その親切さと残忍さが自分の手に委ねられた贈りものであることを、自分はインタビューを受ける側ではないということを教えてくれるのさ。しかし今は?わしは質素なシャツとズボン以外何も身に着けちゃいないが、お前さんが裸であることと比べたらどうだ?これはわしからの敬意なんだよ。さあ、せめてわしの帽子だけでも、善意の現れだということを理解して受け取ってはくれんかね?
ワシントン: そうしない限り私の身は安全です。それでは質問に答えていただけますか?あなたはどのようにして人々の皮を剥ぐのですか、どうして剥がれる皮は服の下に存在するものなのですか?
SCP-4750: 衣服とはだな、多くの意味において、皮膚のもう1つの形なんだ。少しばかり考えてみるといい。お前さんはしばらくそこに座っていた、そして今はわしの話を聞いている。お前さんは自分のあらゆるちょっとした身動きに応じて自分の衣服が擦れ合うということには慣れている。しかしとうとうこうしてある点において、お前さんは自分の肌もまたそれと同じだということに気が付き始める。肉を強く引っ張る箇所がどこか気づいているかね?それはチクチクするかね?もしかしたらそれが既にその下の筋肉から少し離れているとさえ感じるかもしれない。それがお前さんの肌に対して衣服が感じているものであり、お前さんの体から滑り落ちて脱ぎ捨てられる皮膚が感じるものでもあるのさ。ほらもう、お前さんにはどれが服でどれが皮膚なのか分からない。
<SCP-4750は自身の頬を一撫ですると摘まむ。>
SCP-4750: ともかく、わしも自分の制服を取り換える頃合いなのかもしれんな。こいつはいささかくたびれているようだ、そうは思わんかね?
<SCP-4750は椅子に身を沈める。その体は徐々に目に見えて小さくなっていき、そして自身の衣服に覆われていく。>
ワシントン: 何だ?止めなさい。私は裸です、あなたは私には何もできない。
SCP-4750: 気を付けたまえ。他人が見ているよ。
<エージェント・ワシントンは飛び掛かってSCP-4750に掴みかかる。それは椅子の上から飛び出して、床の上の山の中に落ちるという結果に終わる。山はSCP-4750の衣服、及び表皮と真皮から構成されている。真皮はシャツ及びズボンの内側に多数の革布を使って縫い付けられている。>
<ログ終了>
追記: 監視カメラの映像には、セヴェルスカヤ研究員が監視室から飛び出し、17-C号棟から退出した後に自身を一通り調べると、そのままサイト-19から急いで立ち去っていく様子が記録されていました。その後監視室に到着した警備員によって、自身の毛細血管を使って荒く縫い付けられた印刷用紙によって完全に覆われた、皮膚を剥がされた死体が発見されました。DNA検査によって、死体はセヴェルスカヤ研究員のものであることが確認されました。
███████大都市圏周辺では皮を剥がされた死体の報告が点在的になされています。機動部隊ニュー10("裸体主義者")はSCP-4750の追跡及び確保を目的として編成されました。