POI-4696-1の寝室のおもちゃ箱で発見されたSCP-4696のポラロイド写真。
アイテム番号: SCP-4696
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: 実験中以外のSCP-4696は安全保管庫4K-34Sに収容しなければいけません。実験はエドルストン主任研究員の承認を受け、少なくとも1名の保安スタッフの監督下で実施しなければいけません。
説明: SCP-4696は大きな、奇妙な形状のゴリラに似た動物のぬいぐるみです。現在は身長73cm、重量3kgです。内部検査によって、ぬいぐるみ玩具に典型的な各種の詰め物で構成されていることが判明しています。SCP-4696の外面には経年劣化、裂け目、詰め物の過充填による膨張の痕跡が見られます。SCP-4696から識別タグや製造元を示すラベルは見つかっていません。
異常性は他の動物ぬいぐるみの半径1m以内に配置されると発現します。この条件が満たされると、SCP-4696と近傍にあるぬいぐるみ(以下SCP-4696-1と指定)の両方が自我と感覚の兆候を示し始めます。
SCP-4696は例外無くSCP-4696-1実例を破壊しようと試み、成功した場合は、犠牲者から詰め物を取り除いて自身の質量に追加します。SCP-4696とSCP-4696-1はどちらも発声できませんが、SCP-4696-1はSCP-4696を非常に恐れている様子が確認できます。
SCP-4696は、YouTubeアカウント"ジェイミーの動物トーナメント"にアップロードされた動画が、オンライン検索によってフラグ付けされた後に発見されました。
POI-4696-1、本名ジェイミー・ミラー(10歳)は、SCP-4696の以前の所持者であり、YouTubeアカウント"ジェイミーの動物トーナメント"の作成者です。複数回のインタビューで異常な能力は無いと確認されており、POI-4696-1は学校の外の路上でSCP-4696を発見したと主張しています。将来的な異常活動の可能性を警戒して、ミラー一家は一定の監視下に置かれています。
以下はSCP-4696が登場するPOI-4696-1の最初の動画の転写である。
動画は背景に様々な動物ぬいぐるみが並んでいる少年の部屋を映す画面から始まる。
POI-4696-1: 「—画撮ってるんだよママ!」
くぐもった女性の声。
POI-4696-1: 「はーい! やぁ! 僕の— 僕のチャンネルにまた来てくれたんだね! チャンネル登録してくれた18人と、前回の"タイガーX VS キロアラ"の動画にコメントしてくれたみんな、ありがとう!」
POI-4696-1は4秒間カメラから離れる。
POI-4696-1: 「今日はビックリな発表があるんだ。新しい戦士を見つけた!」
POI-4696-1はカメラの視界にSCP-4696を配置する。SCP-4696は口元の小さな裂け目以外は良好な状態に見える。
POI-4696-1: 「こいつはグロンク! アフリカの野生のジャングルから来た。誰も及ばない力持ちで、ジェイミーの動物トーナメントでデスマッチに挑む準備も万端!」
POI-4696-1は群衆の喝采を真似る。
POI-4696-1: 「この動画はただ彼を紹介するのと、あと告知のつもり。新しいトーナメントはまだほとんど進んでないから、それを — もう一回やり直すことにしたんだ、そうすればグロンクが参加できるしね。まぁそういう事!」
POI-4696-1: 「動画はここで終わるけど、晩ご飯の後に一試合録画して明日アップロードするよ! それじゃまた次回! ガオーッ!」
POI-4696-1は動画のアウトロとして咆哮する。SCP-4696は微かに首をかしげているように見える。
以下は"グロンク VS ライノー!! どっちらかの(原文ママ)腕が取れるよ!!!"と題された動画の転写である。
動画はテーブルの上を映す画面から始まる。SCP-4696が左側に、サイのような動物ぬいぐるみが右側に見える。
POI-4696-1: 「やぁみんな。チャンネル登録してくれた20人にお礼を言いたかったんだ。応援してくれてすごく嬉しいよ。あと、'Beepbeep55'から質問が来てた、"君の先生はどんな動物だと思う?"... 僕はねぇ... 先生はきっと —」
POI-4696-1は懸命に笑いを抑えようとしている。
POI-4696-1: 「あの人はシチメンチョウだと思うな。」
POI-4696-1は大笑いした後、数歩下がって居住まいを正す。
POI-4696-1: 「とにかく、試合始めよう。レディース・アンド・ジェントルメン、今日のバトルは新入りのグロンク... VS マイティ・ライノーだ! グロンクにとっては厳しい戦いになるだろう、何故ってライノーはもう少しで前回のトーナマ — トーナメント最終戦に勝ち進めたんだから!」
POI-4696-1は群衆の喝采を真似る。
POI-4696-1: 「さぁ、試合準備! スリー... トゥー... ワン... ファイト!」
POI-4696-1は自らの手を使って動物ぬいぐるみ2体の空想上の戦いを装い、アクロバティックな身のこなしや攻撃を強調しつつ、時折実況を差し挿む。
簡潔にするためデータを除去。
2:33時点で、SCP-4696が"命中"させたパンチによって、サイの腕が明白に破れて落ちる。
POI-4696-1: 「うわ、何だ?! こんなの今まで一回も無かったぞ! ハハハ」
面白がっている様子のPOI-4696-1は、SCP-4696をサイに向かって動かし、咀嚼音を真似つつSCP-4696の口近くにある既存の裂け目に少量の詰め物を押し込むことで、サイの中身を"食べる"振舞いをさせる。
POI-4696-1: 「なんてことだ! グロンクはライノーの腕の中身を食べ尽くそうとしてる! 誰もこのモンスターを止められない!」
POI-4696-1は一般的なレスリングの試合に似たやり方でサイを"固定"する。
POI-4696-1: 「ワン! トゥー! スリーーー! グロンクの勝ち!」
POI-4696-1は群衆の喝采を真似る。
POI-4696-1: 「ご視聴、いいね、チャンネル登録ありがとう! ジェイミーの動物トーナメント、次の戦いもお見逃しなく!」
POI-4696-1は動画のアウトロとして咆哮する。
以下はSCP-4696が登場する4本目の動画、"グロンク VS タイガーX!! 元チャンピオンが試合い(原文ママ)に挑む!!"の転写である。
動画は何も無いテーブルの上を映す画面から始まる。
POI-4696-1: 「レディース・アンド・ジェントルメン、今日の試合は飛びっきりだよ! 元トーナメントチャンピオン、タイガーXが、歯止む — 歯止めの利かない殺戮マシーン、グロンクと戦うんだ!」
POI-4696-1は画面左からトラのぬいぐるみを持ち込む。
POI-4696-1/"タイガーX": 「お前の話は色々と聞いてるぜ、グロンク。だが今日は勝たせねぇぞ!」
POI-4696-1は画面右から、見たところ顕著に大型化しているSCP-4696を持ち込む。
POI-4696-1/"グロンク": 「グロンク ハラワタ ホシイ! グロンク ハラワタ ホシイ!」
POI-4696-1/"タイガーX": 「そうはいくか、ケダモノめ!」
POI-4696-1: 「ようし、諸君... 決着を付ける方法はただ一つだ! スリー... トゥー... ワン... ファイト!」
簡潔にするためデータを除去。
2:01時点で、POI-4696-1はSCP-4696を、テーブル上に靴箱で演出した"トップロープ"に配置する。
POI-4696-1: 大変だ! グロンクは新しい必殺技を決めようとしているらしい! ガット・スカッシュ!
緊密な検査の結果、POI-4696-1がトラのぬいぐるみに向かってSCP-4696を空中で動かしている際、トラのぬいぐるみは身動きして進路から外れようと試みているらしいと判明している。
POI-4696-1: 「ドーーーーン!」
トラのぬいぐるみの縫い目から詰め物の綿が噴き出し、POI-4696-1が飛びのく。
POI-4696-1: 「な — 何これ?」
緊密な検査の結果、POI-4696-1がSCP-4696の位置をずらす前に、詰め物はSCP-4696の内部に引き込まれているらしいと判明している。POI-4696-1はカメラを持ち上げてトラのぬいぐるみに近付ける — トラの生地はずたずたに引き裂かれている。
POI-4696-1: 「うわぁ... タイガーXを完全に爆殺しちゃった... これでグロンクの勝ちだと思うけど... タイガーXはお気に入りの動物だったんだ。だから何かガッカリだよ。」
POI-4696-1: 「オーケイ、また次回のバトルで会おうね。ご視聴、チャンネル登録ありがとう... それと、うん... オーケイ、じゃ。」
POI-4696-1は普段のアウトロを実行しない。
YouTubeアカウント"ジェイミーの動物トーナメント"にアップロードされた最後の動画、 "VID_20101004_1330.mp4"
動画は背景にごく少数の動物ぬいぐるみが並んでいる少年の部屋を映す画面から始まる。POI-4696-1がカメラと直接向き合って話している。
POI-4696-1: 「やぁみんな。もう動画を投稿できなくなったって知らせたくて... グロンクがね... うーん。」
POI-4696-1は画面の左側を見る。
POI-4696-1: 「他の動物たちを傷付けるから、グロンクはクローゼットに閉じ込めなきゃいけなかった。ママに言うべきかどうか分からない、動物たちが壊れてるのを見たらきっとすごく怒るだろうし... しばらく動画を撮るのは止めるけど、もしグロンクが落ち着いたら、ひょっとするともっと良い動—」
何かを叩くようなくぐもった音が画面左側から聞こえる。POI-4696-1は動揺しているように見える。
POI-4696-1: 「オーケイ、もう行くね。」
動画終了。
POI-4696-1は、この動画を撮影した後、住居からSCP-4696を持ち出して、近所のショッピングモールにある大型ゴミ箱の傍に廃棄したと主張しています。本稿執筆現在、最後の動画から収容日までの2ヶ月間におけるSCP-4696の動向を追跡できる記録は存在していません。
事案-4696-A: SCP-4696は、カーニバルでクマのぬいぐるみを攻撃する様子がFacebookのライブ配信に捉えられた後に収容されました。収容チームが現場へ向かうよう指示され、無力化されたSCP-4696-1実例の横で、SCP-4696が不活性化しているのを発見しました。ライブ配信は検閲され、一連の事件は新しい玩具のバイラル・マーケティングを意図したスタントであったとするカバーストーリーが流布されました。事件の信憑性をさらに曖昧にするため、目撃者はインタビュー後に記憶処理されました。
以下は、エージェント ラニスター(AL)による、SCP-4696が関与した事案のライブ配信を行った10代男性、テレンス・ウェルディング(TW)への尋問の音声転写である。
AL: オーケイ、もう一度最初から辿っていこう。君はガールフレンドと一緒にそこにいて —
TW: あいつはガールフレンドじゃない... 込み入った事情があるんだ。
AL: ああ、分かったとも少年。いいかい、君が見たものをもう一度初めから説明してくれ。
TW: (溜め息) とにかく、俺はサーシャにカメラを向けてたわけ。ちょうど大観覧車を降りたばかりで、俺は... そう、ゲームでぬいぐるみを1つ取ってプレゼントしようって決めた。例のデカめのやつだよ?
AL: ああ、勿論、女の子はああいうのが好きだからね。
TW: そうなんだよ! だからアレ、輪っかを投げてソーダ瓶に通すのをやってる出店に向かうところだったんだ。
AL: それは輪投げと言うんだ。
TW: そうそう、輪投げ。その時、小さい女の子が叫ぶのが聞こえた。
AL: 何を見たのかね?
TW: 行ってみたら、例のデカいテディベアの1つがさ — 地面でのたうち回ってたんだ。出店の兄ちゃんなんか、ポカッと口開けて突っ立ってた。
AL: それで、何が起きた?
TW: いやその、最初はウエッて感じだった... でその後、多分中の人がいるんじゃないかって考えた。YouTubeでそういうバカみたいなのを見た気がする。
AL: 言葉に気をつけなさい。
TW: ゴメン。とにかく、そう考えてたら、デカいクマは立ち上がって — 背中に手を伸ばそうとした。届いてなかったけど。だから、何だ、その場でグルグル回り続けて、そのうちに背中からあのクソッたれのぬいぐるみゴリラが出てきたんだよ!
AL: 言葉に — いやいい、忘れてくれ。
TW: それで、ゴリラの奴はこう、クマを引き裂いてて、間違いなく中には誰も入ってなかった。クマから綿の塊を引き千切って、自分の脚に詰め込んでた。だから俺"そんなバカな!"って感じだったよ、まるでFive Nights at Freddy'sみたいなデタラメな事件だった。
AL: 何のナイツが何だって?
TW: ビデオゲームの名前。イカれたアニマトロニクスの動物が殺しに来るやつ。
AL: では今のところ、あれらはロボットだったと考えているんだね?
TW: ああ! だって他に考えようが無いだろ? とにかく、その時点で俺は配信を止めたし、そのすぐ後にクマとゴリラも地面に倒れたから、きっとバッテリー切れしたんだと思う。
AL: その通り、君はなかなか冴えているね。まぁ水でも飲みなさい、実に大変な話だった。
TW: いや、あんまり喉乾いてないんで。
AL: 飲みなさい、少年。
目撃者は成功裏に記憶処理を施され、解放された。
SCP-4696実験ログ
実験4696/01 | |
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状態 | SCP-4696は実験チャンバー内で、シマウマのぬいぐるみから3m離れた場所に配置される。 |
結果 | SCP-4696は3分間不活性状態に留まった後、素早く頭部を動かしてシマウマのぬいぐるみに向き合う。攻撃的な所作は見られず。 |
実験4696/02 | |
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状態 | SCP-4696は実験チャンバー内で、シマウマのぬいぐるみから1m離れた場所に配置される。 |
結果 | SCP-4696は立ち上がり、SCP-4696-1実例となったシマウマに接近する。SCP-4696-1は動き始め、自らの目を覆う。SCP-4696はSCP-4696-1の脚を掴み、微かに生地の断裂音が聞こえる中、両脚を広げてゆっくりと半分に裂き始める。SCP-4696-1は苦しげにもがく様子を見せるが、詰め物の大部分が落下した後に動かなくなったようである。SCP-4696は落下した詰め物を自らの腕に2分間押し込んだ後、実験チャンバーの床に倒れる。 |
実験4696/03 | |
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状態 | SCP-4696は実験チャンバー内で、"マックス・スティール"アクションフィギュアから1m離れた場所に配置される。 |
結果 | SCP-4696は立ち上がり、アクションフィギュアに接近する。アクションフィギュアは動かない。暫くして、SCP-4696はフィギュアを"嗅ぐ"様子を見せた後、"咆哮"する身振りをする。SCP-4696はアクションフィギュアを押し退け、座り込んでから倒れる。 |
実験4696/05 | |
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状態 | SCP-4696は実験チャンバー内で、"キャベッジ・パッチ・キッズ"人形から1m離れた場所に配置される。 |
結果 | SCP-4696は立ち上がり、SCP-4696-1実例となった人形に接近する。SCP-4696-1は床の上で身動きしている。SCP-4696は最近の詰め込み行為で伸長した左脚を引きずっているのが伺える。SCP-4696-1は顔を背けているため、すぐ傍にSCP-4696が立っているのに気付いていない。SCP-4696-1は自らの手足を調べる様子を見せた後、最終的にSCP-4696の存在に気付く。SCP-4696-1は怯えながら後ずさりし、SCP-4696はゆっくりと互いの距離を詰める。SCP-4696-1は収容チャンバーの後壁にぶつかった後、胸倉を掴まれる。SCP-4696は手をSCP-4696-1の腹部に突き入れて、大きな一塊の詰め物を引きずり出し、それをSCP-4696-1の口に押し込む。SCP-4696-1は苦しげに動き、SCP-4696を止めようともがいて顔を叩く。SCP-4696は身動きを止め、10秒間SCP-4696-1を睨み付けた後、SCP-4696-1のプラスチック成型された顔面を殴って穴を開ける。SCP-4696-1は床に倒れ、詰め物の塊で息を詰まらせる様子を見せながら腹部を押さえている。SCP-4696はSCP-4696-1の背中を蹴り飛ばした後、詰め物を引き出して自らの口の近くにある穴に押し込む。SCP-4696とSCP-4696-1は両方とも7分後に異常行動を停止する。 |