SCP-4338。1974年04月09日、事象DN-4338-33の最中に撮影された画像。
特別収容プロトコル: 6隻のFHT保安フリゲート艦が、水上研究船ヘロンと共同し、モアハ島の周囲に7点封鎖網を維持します。太陰暦の始まりごとに、様々な種類の食物をこの島の噴火口に投入しなければいけません。投入される食物には以下が含まれます。
- 40-50kgの野菜 (例: キャッサバ、タロイモ、スイートポテト、ダイジョ)
- 30-40kgの果物 (例: マンゴー、パイナップル、チェリモヤ、パラミツ)
- 50-80kgの魚類 (例: マグロ、サケ、カジキ、シイラ)
- 40-80kgの様々な種実類、ハーブ、海藻
- 60-80kgの細かく刻んだ/燻製にした豚肉
これらの食糧は太平洋/オセアニア先住民社会の主食に基づいており、SCP-4338から78-83%の確率で許容されます。投入物が拒絶された場合、財団資産の破壊や更なる人命損失を避けるために、任命された"指導者"は孤立した地点へ移動すべきです。詳細は下記の"4338-DN事象の概要"を参照してください。
説明: SCP-4338はモアハ島直下のマグマ溜まりに生息する、知性と空中浮遊能力を帯びた2.3km3の火山岩の球体です。複数のアーティファクトや口頭伝承において、この実体は"オーソビゥエ"Ōsobiue、"イルナチャ"Irn'acha、或いは"炎上する海の神"の名で言及され、19種類の初期オセアニア文化の創世神話 — そして絶滅事象 — の中心的存在として扱われています。
4338-DN事象 — "供物拒絶"事象としても知られる — の最初の予兆は、モアハ火山の大規模な噴火です。噴火から間もなく、SCP-4338は火道から出現し、最も近隣に位置するヒトの社会的集団の指導者に向かって移動し始めます。SCP-4338は集団内の階層構造を明確に察知しており、Dクラス職員をデコイ指導者として用いる試みには効果が無いと証明されています。移動中、SCP-4338の外殻は崩れて、溶融した岩石と金属鉱石から成る長大な触手を露出させます。これらの付属器官は専ら、SCP-4338が指導者の追跡中に遭遇した障害物を破壊するために使用されます。SCP-4338の追跡行動は以下2つの条件のどちらかが満たされるまで停止しません。
(A) 3-5人の生きた健康な人間が火口に投下される。
(B) "指導者"が死亡する。
死因は重視されませんが、指導者は通常SCP-4338から触手で捕獲される時に死亡します。SCP-4338はその後、指導者の死体を自らの核に吸収し、退却します。20分以内に、吸収された指導者の複製体を内包する溶岩の塊がSCP-4338から落下します。外見上は同一ですが、この複製体は完全な非有機物であり、体内には自律性を持つ過熱した鉱物の核があります。このプロセスが完了すると、それ以前に生成された複製体は崩壊して火山ガラスの破片に変化します。これらの複製体は、SCP-4338が自意識を憑依させて意思疎通を行うための端末機として機能します。SCP-4338は正式に即位宣言した次代の"指導者"以外とは会話しません。
事象DN-4338-41。マスターズ警備員(死亡)のボディカメラで撮影された静止映像。
73年間の収容期間で初めて、SCP-4338は太陰暦の半ばに出現しました。当時の"指導者"であったモルガン・ローウェル管理官は土壌サンプルを採取するため既にモアハ島に上陸していました。ローウェル管理官を含む3名の財団職員がこの事象によって死亡しました。
ローウェル管理官を複製した端末実例は僅か14分後に出現しました。更なる前例の無い行動として、ローウェル/SCP-4338は意思疎通対象の幅を広げ、新しい"指導者"と遅滞なく会話することを要求しました。便宜の必要性を鑑みて、アメリア・ソーンボロー主任研究員が志願しました。
回答者: モルガン・ローウェル / SCP-4338。
質問者: アメリア・ソーンボロー管理官(代理)。
序: ローウェル/SCP-4338は、過去の端末機が4-8ヶ月経ってから初めて示した特徴的な"ひび割れた"外見を即座に呈し始めた。目、唇、指爪の周りの皮膚にできた小さな亀裂は、その下を流れる溶融した元素が着実に"マグマドーム"へと硬化しつつあることを示す。プロトコルに則り、ローウェル女史の手首と足首は厚さ8cmのタングステン枷で拘束された。
ソーンボロー: 何故我々を襲ったのか教えなさい。
ローウェル/4338: 不遜であるぞ。お前には平伏して慈悲を乞うつもりが無いのか? 何ゆえ己の神に対して怒りを覚える?
ソーンボロー: あなたが被っているその顔は死んだ友人のものです。私にとって喜ばしい事ではありません。
ローウェル/4338: 喜ぶのを学ぶことだ、子よ。それとも私が大いなる岸辺まで出向いて、お前たちのS C Pに炎と岩を降り注いでもよいのだぞ。お前の自尊心には何人の命の価値があるかな、アム・イール・ヤ?
ソーンボロー管理官は数秒間無言のまま、手を握りしめてからほどく。
ソーンボロー: 何故我々を攻撃したのですか? 我々はあなたの指示に正確に従って—
ローウェル/4338: お前は私を侮辱している。モル・ガンも私を侮辱した。私は実りの頂点にあるものを求めたはずだ、だが今となって、私はお前たちが乾いた最下等の供物を与えていると知った!
ソーンボロー: よく分かりません。我々が提供している食物は全て最高品質の—
ローウェル/4338は突然、下唇を噛み切り、溶融液をインタビュー用テーブルの上に吐き出す。この物質を指先に塗り付け、ローウェル/4338はテーブルの金属表面に1つの単語を記す。単語の文字は全て様式的な丸みを帯びた筆記体である。
ローウェル/4338: これが欲しい。
ソーンボロー: C-... ええと、これは... C-ad... キャドバリーCadbury? 誰が—
ローウェル/4338: 私はお前たちの言葉を話すのみ。記号までいちいち覚える気は無い。もしこれが"キャドバリー"を意味するならば、そうだ、私はキャドバリーが欲しい。この甘く蕩けるような脂が欲しい。
ソーンボロー: ま、待ってください... この記号はある種の反射シートの上に記されていましたか? それはこの"キャドバリー"を小さく、茶色の四角にして包んでいましたか?
ローウェル/4338: ああ。お前の従者の一人がこれを私に捧げた。粗末な量ではあったが、味は実に豊かなものだった。この"キャドバリー"をより多く私に捧げよ、或いはそれが可能な者を連れて来い!
回答者: ケビン・エマーソン、地質学部門の次席研究員。現在SCP-4338に配属中。
質問者: エージェント ロードス。
エージェント ロードスはノートパソコンの"一時停止"をクリックして、前述のインタビューの再生を止める。
エージェント ロードス: 火山にチョコレートを捨てたな。
エマーソン: ...証明できないだろう。
エージェント ロードス: 全ての船は徹底的に捜索したんだ、エマーソン。お前の所持品からはスーツケース一杯の-
エマーソン: そうかい、私がジャンクフードを好むから全部私のせいになったのか?
エージェント ロードス: 何もお前の食生活をとやかく言ってるんじゃない、ケビン — 火山の神を覚醒させた責任を追及してるんだ! さぁ、ここで公式な尋問を開始しなきゃダメなのか、それとも-
エマーソン: 言うよ、言うとも! 捨てた! 収容違反を引き起こすつもりなんか無かった。ただ暇だったんだ、分かるか!? ここに着いてから私はシルトの篩い分けしかしてないんだぞ!
ロードス: ...お前は地質学者だろ。
エマーソン: 異常地質学者だ。ここの地質に異常性は無い。財団はこの島で異常なのが例の球コロだけだと50年代にはとっくに知っていた。なのに司令部はウチの部門に仕事を持ち込み続ける。今月の貧乏くじを引いたのが私だった。
ロードス: まだ何故そんな事をしたかの説明には-
エマーソン: いや — それは — ちょっとした出来心だったんだ、な? 私は昼飯を食べようと外に出て — つまりだ、今まで我々は4338と繋がっているのは火口だけだと完全に思い込んでいて、溶岩流が一つ残らず奴との接点だとは知らなかった! だから技術的に見ると、私がこう、残り物を"廃棄"したのはプロトコル違反じゃない。
エージェント ロードスは鼻梁をつまんでうなだれる。
ロードス: プロトコルはそう単純なものじゃ- ...おい、"残り物"? "残り物"ってのはどういう意味だ? チョコレートだけじゃなかったのか?
エマーソン: それはその、いや、要するに、幾つか... 別な... 物も...
エマーソン氏は手を膝に置き、唇をすぼめ、エージェント ロードスから目を逸らす。
ロードス: どういう"別な物"だ?
エマーソン氏は答えない。
ロードス: ケビン、お前は他に何を溶岩に投げ込んだ?
回答者: モルガン・ローウェル / SCP-4338。
質問者: アメリア・ソーンボロー管理官(代理)。
ローウェル/4338: — あの金色のパリパリした三角形と、夜ほどに暗い色をした泡立つジュースを要求する! 果実の練り物を詰めた噛みごたえのあるふわふわしたスポンジを要求する! 香辛料と塩をまぶした乾燥肉を要求する! 小さな動物の形にくり抜いた甘い色とりどりの蜜を要求する! そして—
ソーンボロー: はい — ええ、我々 — 我々は — 分かりました、すぐに — ねぇちょっと、誰か兵站部門に電話繋いでもらえる!?