SCP-4206

153歳のお誕生日おめでとうございます、アロイス博士。

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このフィクション作品には、一部の読者にとって特に心苦しい可能性のあるトピックを描写もしくは暗示するシーンが含まれます。

  • 動物虐待

タイトル: SCP-4206 - 心臓の秤
翻訳責任者: walksoldi walksoldi
翻訳年: 2021
原題: SCP-4206 - The Weighing of the Heart
著作権者: Uncle Nicolini Uncle Nicolini DrAnnoyingDog DrAnnoyingDog
作成年: 2019
初訳時参照リビジョン: 9
元記事リンク: SCP-4206


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注記

以下のアノマリーは部分的にNeutralizedとなっています。現状に即さなくなった情報は緑色で記載されています。


SCP-4206

アイテム番号: SCP-4206

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-4206は低優先度異常オブジェクトロッカーに保管します。

56体のSCP-4206-1がサイト-19の集中動物治療ユニットに収容されています。SCP-4206-1個体にはピュレ状の乾燥したドッグフードを与え、水中トレッドミルで1日20分間歩かせます。

臓器提供の依頼は全てSCP-4206-1外科チームに毎日転送されます。

説明: SCP-4206は古代エジプトの神格であるアヌビスを模した造形の、遺体衛生保全用のマスクです。カルトナージュで構成されており、のぞき穴が存在しないことを特徴としています。SCP-4206の10 m圏内に死体が持ち込まれると、死体に向かって自律的に念動力で移動し、頭部に張り付きます。

張り付いたSCP-4206は上向きに傾き、死体に現存する内臓を鼻腔から排出します。この過程は通常20〜35分継続します。SCP-4206の影響を受けた死体は急速に水分を失い、ミイラ化します。SCP-4206の10 m圏内に死体が複数体存在する場合は、範囲内の死体が全てミイラ化するまでこの過程を繰り返します。

この過程で排出された臓器は急速にSCP-4206-1に変形します。

SCP-4206-1はアフリカンゴールデンウルフ (Canis anthus) と遺伝的に同一ですが、本来備わっているべき内臓が存在しません。代わりに、SCP-4206-1個体の内臓は、排出元に対応する人間の臓器1種のみから成ります。しかしながら、SCP-4206-1個体は日々の食事を必要とし、排泄物を出します。

SCP-4206-1個体から収集した臓器の血液型は排出元の死体と同一です。身体から取り除かれた臓器は2〜3週間以内に再生します。これにより、負傷者や病気の財団職員に必要な臓器移植が容易となりました。血液型ごとに心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、腸、胃に対応するSCP-4206-1個体が1体存在します。脳から生成された個体は全て人間の手で安楽死させられます。

本日の外科手術予定


臓器 数量 個体番号 名前 付記
腎臓 32 -14 "チャンプ" 健康状態: イヌの認知障害症候群、筋萎縮症、失明、難聴
心臓 23 -50 "クイニー" 健康状態: 筋萎縮症、失明、難聴
13 -32 "ビーンズ" 健康状態: イヌの認知障害症候群、筋萎縮症、失明、難聴、関節炎、神経皮膚炎

日付: 2120年9月21日
裁定人: アトラス・キーストーン倫理委員会リエゾン
申立人: アリアン・アロイス博士

<ログ開始>

キーストーン: ただ今より、倫理委員会はSCP-4206およびSCP-4206-1に関するアロイス博士の申し立てを聴取いたします。申し立て番号はEC-1298-ZRです。アロイス博士、壇上にお立ちください。

[複数の評議会メンバーが独り言を言う。]

キーストーン: 静粛に。アロイス博士に主張をさせるように。

アロイス: ご機嫌よう、キーストーンさん、そして倫理委員会の皆さん。私がここにいる理由は既にご存知でしょうから、要点だけ言います。これは長続きしません。2200年までに、彼らは需要に追いつく速さですら臓器を再生できなくなるでしょう。前回来た時には、現行の10年プランに身体増強の研究が含まれているとおっしゃいましたね。こちらです。未だに増強がどこにも見当たりませんがね。今度の計画は何だというのですか?

キーストーン: トランスヒューマニズムこそがこのシナリオの唯一の長期的解決策です。臓器を必要としなくなれば、そのオブジェクトに侵襲手術を繰り返し行う必要もなくなる。アンダーソン・ロボティクスはブテオ・スーツで驚異的な躍進を遂げていますが、このテクノロジーを完璧に複製し、大量生産できるまでは、今のままで続けるしかないのです。

アロイス: ああ、あなた方は遥か未来に目を向けていて現在のことが見えていない。安楽死できないのは分かりますが、5分ごとに切り込まなくするだけでも、彼らの悲惨な生涯から少しは悲惨さを減らせるでしょう。

キーストーン: オブジェクトは財団に貴重な資源を提供しており、全身増強スーツのプログラムに参加する方々が健康でいられるよう手助けを —

アロイス: 彼らはそれについていけてない! 傷も治っていない頃にまた切り開かねばならず、麻酔をかけることだってできないのです!

キーストーン: お怒りは分かります、博士。痛みに苦しむ患者はとても見ていられない、それがイヌのように愛おしければ尚更です。麻酔が効かないのは知っていますが、局所麻酔なら十分効くのですよね?

アロイス: ですが目を覚ましたままです。血の匂いがすれば悲鳴を上げて蹴り始めます。これが彼らを苦しめていることをご存知ですか? 私のスタッフを苦しめていることを?

キーストーン: サイトの医療棟なら手軽に精神医療職員をご利用できます。聞くところによると、あなた方チームは頻繁に医療棟をご利用なさっているそうですね。そのオブジェクトにも同じようにケアできる手段があればいいのですが...... 単純に我々はそういう手段を持ち合わせていないので。

アロイス: ここにもよく戻ってきますよ。倫理的に間違っているとは言わないのですか? いい加減仕事をするべきではないので?

キーストーン: ご安心くださいアロイス博士、倫理委員会は仕事をしています。我々は職員への悪影響をなるべく抑えつつ、財団と職員の短期的なニーズを満たし、同時に長期的な目標を損なわないようにしています。我々はこの問題を解決できうるあらゆる策を検討してきました。

アロイス: それでも —

キーストーン: 話は終わっていません。我々はこの問題を解決できうるあらゆる策を検討してきた、それこそ我々より先にあなたがこれを提起してからずっと。そして、現状が最も倫理的であると見なしました。優れてもいなければ喜ばしくもありませんが、これこそが不幸な真実です。

アロイス: それが最も倫理的であるのなら、他の選択肢は一体どういうものだと言うのです?

キーストーン: ふむ、ではアロイス博士、あなた自身の提案を検証しましょうか。

[アロイスが冷笑する。]

キーストーン: では見ていきましょう。ご提案の内容を私が理解しているならば、あなたは必要に応じて特定の不可欠な身体部位を複製することを提言しているようですね。合っていますか?

アロイス: 何が言いたいので? 答えもなくあしらうつもりですか。

キーストーン: いえ、違います。あなたが今日もまた同じ主張を持ち出してくるのは分かっていました。ずっと目を付けているのですよ。あなたが全く同じ提案書を持ってきたのはこれで3回目です。なぜ分かるのかというと、最初のページの第2パラグラフにスペルミスがあるので。いずれにせよ、今はご回答の件ですね。現時点で財団には生物のクローンを作る手段はありますが、無から臓器を作るというのは危うい行為です。

アロイス: ですが可能性はあります。

キーストーン: 無関係な人間での実験と、作成に適する生きた宿主が必要でしょう。さらに言えば、完全に機能する成人の臓器を制御された環境下で成長させるのにどれくらい時間がかかるかご存知ですか?

アロイス: 説明を。

キーストーン: 数年ですよ、博士。我々にはたっぷりと時間があるかもしれませんが、オオカミと外科医療スタッフのたった数時間の苦痛を避けるためだけに、2人の人間を10年近く苦しませるというのは倫理的ではありません。

アロイス: しかし、そちらが研究への出資に焦点を当てさえすれば、より迅速かつ容易にできる技術を実現できます!

キーストーン: ええ、その可能性はありますね。

アロイス: なら取り組む価値がないとでも?

キーストーン: 我々が取り組むのは実現できる可能性があるものです。保証はありません。我々はSCP-4206-1が機能すると知っている。だからこそ我々は、それが不運な結果を産もうとも、利用の継続を決意したのです。

アロイス: それは倫理的とは到底言えない。

[15秒間の沈黙。]

キーストーン: 無愛想な態度は取りたくなかったのですが、あなたが雇われたのは何が倫理的で何が倫理的ではないかを気に病むためではないでしょう。あなたが雇われたのは、SCP-4206-1の臓器を摘出する過程を監視するためです。その仕事に精を出すことをお勧めします。加えて、私から提案をさせていただきますが、これ以上同じ論題に関する申し立てをしないほうがいいと思います。なにしろ委員会の時間を食い潰しているので。懲戒処分で脅したくはないのですが、残念なことに、あなたのやる気を削ぐ手段はほとんど残されていない。遺憾ながら、現時点ではこれ以上お役に立てません。

アロイス: 私が覚えている限りでは、臓器摘出の要請が予定される前に、書類に署名をして医師と倫理委員会リエゾンの承認を受けなければならなかったはずです。事前の手順を無視しても構わないと言うのですか?

キーストーン: 貴方も私も、今がもはやこれまで通りの世界とは違うと理解しているでしょう。事態は変化し、これからも変化し続けるのです。

アロイス: 信じられない。

キーストーン: おっと、それともう一つ。153歳のお誕生日おめでとうございます、アロイス博士。

[アロイスが壇上を去る。]

<ログ終了>

Footnotes
. 麻やパピルスを重ねて石膏で固めた素材。
ページリビジョン: 5, 最終更新: 19 May 2025 13:08
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