クレジット
タイトル: SCP-4166 - かつて年頃のサキュバスだったもの
著者: DolphinSlugchugger DolphinSlugchugger
作成年: 2025
翻訳責任者: Yamano_Nakano_Kemono Yamano_Nakano_Kemono
翻訳年: 2025
著作権者: DolphinSlugchugger DolphinSlugchugger
原題: SCP-4166 - (Former) Teenage Succubus
作成年: 2022
初訳時参照リビジョン: 25
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-4166
SCP-4166-1のノートから回収されたSCP-4166-2の実体化の描写。文面は『ヨブ記』第10章21〜22節。
アイテム番号: SCP-4166
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-4166-1は標準人型収容セルに収容されます。該当するセルには以下の改造を行う必要があります。
- 隣接するセルを有人の監視/警備室に改装し、24時間体制で監視を行うこと。
- セルの窓を除去すること。
- SCP-4166-1の収容室内に宗教的および/または男性的な外見の人物が立ち入ることを厳重に禁止する警告表示を設置すること。
私物の持ち込みには█████ 研究員および██████ ███ 次席心理士による許可が必要です。これまでのSCP-4166-1による要求は以下の通りです。
- 食事を1日5回 (2008年07月26日付で却下)
- 食事を1日3回 (2008年07月26日付で許可)
- 拳銃1丁 (2008年07月26日付で却下)
- テーザー銃1丁 (2008年07月27日付で許可)
- 紙巻きタバコおよびマリファナ(2008年07月30日付で却下)
- ブタンガスライター1つ (2008年07月30日付および2008年08月02日付で却下)
- 書籍、雑誌およびビデオゲーム数種類(2008年07月31日付で許可、内容の精査が終了するまで保留)
- 聖書(ドゥアイ=リームズ版、シャロナー改訂版)1部 (2008年08月01日付で許可、2008年08月02日付で要求により撤去、2008年08月04日付で再度許可)
実体化したSCP-4166-2はただちに終了されます。その後、SCP-4166-1にはクラス-Aϛ 記憶処理/鎮静処置が施されます。
SCP-4166-1には1週間に1回、食事とともにカプセルの形で 1ccのヒトの精液が提供されます。回復不可能な障害を引き起こさない限りにおいて、SCP-4166-1は1か月に1回までこの提供を拒否することが認められます。これらの目的のために、現地の精子バンクとの間に契約が締結されています。精神医学的治療の効果をモニタリングするため、SCP-4166-1に対して1週間に1回の心理学的評価が実施されます。
SCP-4166-1のノートから回収されたSCP-4166-3第2期の描写。文面は『マタイによる福音書』第6章9〜12節で、「主の祈り」として知られている。
説明: SCP-4166-1は人間の女性であり、SCP-4166-2およびSCP-4166-3を創出する能力を有するクラス-C現実改変能力者です。SCP-4166-1は複数の精神医学的不調(男性に対する嫌悪感、眠ることに対する恐怖、心的外傷後ストレス障害(PTSD)および希死念慮を含む)を呈しています。
医学的検査の結果、SCP-4166-1の掌部、足部および外陰部には顕著な瘢痕が認められます。それに加え、1週間に1度、1ccのヒトの精液が提供されない場合、SCP-4166-1は悪液質カヘキシーの症状を呈します。
7日ごと、あるいは強度のストレスを感じた場合に、SCP-4166-1は(その時点で存在していない場合)1体のSCP-4166-2を実体化させます。
SCP-4166-2は言葉を発しない、影状のヒト型実体で、典型的な人間の特徴を示しますが、顔貌は識別することができません。実体化後、SCP-4166-2は障害物の有無にかかわらず基本的な侵入経路をとってSCP-4166-1が収容されている室内に侵入し、SCP-4166-1に接近しようと試みます。
SCP-4166-1がSCP-4166-2の過去の収容についての記憶を保持している場合、SCP-4166-2は以前の収容手法に対抗するような行動を示し、武器の実体化が行われる場合もあります。
SCP-4166-2の実体は、終了後すみやかに消失します。
SCP-4166-3はSCP-4166-2の実体を観察した者に出現する精神病的症状であり、3つの段階に区分されます。SCP-4166-3はSCP-4166-2の実体化が継続している限り持続します。
SCP-4166-1のノートから回収されたSCP-4166-3第3期の描写。文面は『詩編』第138章1〜5節。
SCP-4166-3の第1期は典型的には2か月間持続し、その後第2期に移行します。症状には以下のものが含まれます。
- 焦燥感の亢進
- 一人でいることに対する不安感
- 扉に鍵が掛かっているかどうかについての強迫観念
- 驚愕反応の亢進
- 視野周辺部に何かが見えるような錯覚
SCP-4166-3の第2期は典型的には1か月間持続し、その後第3期に移行します。症状には第1期のものに加えて以下のものが含まれます。
- 重大なライフイベント(誕生日あるいは結婚式など)において火あぶりにされたという確信(これは相反する根拠が示されても訂正されません。)
- ドアノブを目視した際に起こる、影のような手の幻視(およそ1秒間持続します。)
- 宗教的な儀式および男性的な外見の人物に対する嫌悪感
- 睡眠麻痺
SCP-4166-3の第3期はSCP-4166-2が終了されるまで持続します。症状は第1期および第2期のものに加えて以下のものが含まれます。
- 体幹部を人の手がつかんでいるという幻触(特定のパターンを示しません。)
- 開けられた戸口におけるSCP-4166-2の幻視
- 身体全体における焼けつくような感覚
- 死後に永遠の苦しみを受けるという確信および恐怖
SCP-4166-1は12年間、カトリック系の孤児院で養育されていました。 █████ 神父が明らかな自然発火現象により入院した6日後の2008年7月24日、SCP-4166-2の実体化が初めて発生しました。その際、銃声を聞きつけた修道女が部屋に入ったところ、SCP-4166-1が一人で部屋の入口に銃を向けているのが発見されました。この事件が関係者の関心を引き、SCP-4166が発見されるに至りました。
インタビュアー: ██████ ███ 次席心理士
前言: 導入セッションは収容直後の2008年07月26日に実施された。
<記録開始 13:21>
███: こんにちは、SCP-4166-1。
SCP-4166-1: あの、私は......。そうしてほしくない。そう呼ばないで。お願い。
███: お詫びします。どういうふうに呼んで欲しいですか?
SCP-4166-1: 私は......クソッ。
███: 何ですか?
SCP-4166-1: 違うの。その、つまり私は、別にどういう風に呼ばれたいとかじゃなくて。つまり......。
[SCP-4166-1は数分間沈黙する。]
SCP-4166-1: じゃあ、ただ私を、その、[SCP-4166-1]でいい? ただの名字だけど。ほかにいいのが思いつかない。
███: いいですよ。よろしくお願いします、[SCP-4166-1]。
[SCP-4166-1は1分間沈黙したままである。]
███: [SCP-4166-1]? どうしました?
[SCP-4166-1は10分間沈黙し続ける。███ 次席研究員はその間ノートをとり続ける。]
SCP-4166-1: ハハハッ。はあ、やっぱり話さなきゃいけないのね。
███: 時間は自由に使ってかまいませんよ。あなたが必要な限り私はここにいます。
SCP-4166-1: その......ありがとう。でも、やっぱり......話しておきたいわ。私は......導入っていうのよね? 私の取引について知りたいんでしょう? 私を助けたいのね? 私はあなたを助けることをしたい。つまり、その......覚悟はできてる? つまり、そうすべきだと思う。
███: もちろんですよ、[SCP-4166-1]。
[10秒が経過する。]
███: いいですよ。準備ができたら、始めてください。
[20秒が経過する。]
███: [SCP-4166-1]?
SCP-4166-1: 私は、その......かつてそうだった、わかる? 私が何を言いたいか?
███: ごめんなさい。......私にはわかりません。
SCP-4166-1: ああ、もう。ああ、ごめんなさい。
███: 大丈夫ですよ。時間はまだあります。
SCP-4166-1: ええ、分かってる。分かってるの。ただ私は。ああもう。言えない。言えっこないの。私がどんなに傷ついているか、あなたに見えればいいのに。見えっこないのよね。私のことはシスターから聞いているんでしょう?
███: ええ、皆さんからあなたのことはよくお聞きしましたよ。あなたがどれだけ勉強熱心で、信心深いか、それなのに時おり理由もなく恐怖にかられる時がある。皆さん......。
SCP-4166-1: じゃあ、要するにあなたに話してないのね? その...私のことを? クソッ、つまり私が...何者なのか? 何者だったのか? 私は今もそうなの、それともかつてそういうものだっただけ? 分からない......ああもう。あのこと......あれについては何か言ってた?
███: 「あれ」というのは何ですか?
SCP-4166-1: ......言えないわ。
███: 分かりました。
[SCP-4166-1は1分間沈黙したままである。]
SCP-4166-1: ......ごめんなさい。私、役立たずよね。超みじめよね。なんで? ただ言いたいことをさっさと言うだけのことなのに、どうしてこんなにクソ難しいわけ? 私はただ......それに向き合えればいいのに、ただ。その......ペンあるかしら?
███: あー、ちょっと確認させてください。ええ、いいですよ。でもその前にまずこれだけは聞いてください。大丈夫です。あなたは口にできないようなことを話すことができないからといって、自分をひどく責めすぎです。私の仕事は、人が経験してきたことを言い表す言葉を見つける手助けをすること、そしてそれを乗り越えて前に進むことを手伝うことです。あなたは役立たずでもみじめでもない。ペンをどうぞ。準備ができたら、始められるところから始めてかまいません。
[SCP-4166-1はノートを開き、白紙のページをしばらく見つめ、それから書き込み始める。]
F5EA1E3B-ABB8-44F1-8904-CB9A1CD625D7.jpeg 心理セッション166-A中にSCP-4166-1によって描画された画像。 SCP-4166-1: 私......教会がキライだった。いたくなかった。教会にいると自分が罪のような気がする。罪の受肉incarnateのような気がするから。みんな私をそういうふうに扱う。わかる? 5歳の時だったわ。私に「症状が現れ」だした時、みんなは私をどう扱えばいいかわからなかった。[SCP-4166-1が顔をしかめる。]肉の弱さ weakness of the flesh だって。泣いたり、しちゃいけないことをしたり、それに、あの、年にふさわしくないことをしたりしたら。ぶたれる。のけものにされる。悔い改めなさいって言われる。
[SCP-4166-1の手が止まる。]
SCP-4166-1: 私はここにいる値打ちがなかった。私は魔物デーモンだった。毎週日曜日に、教会の会衆席に座らせられて、聞かされるの。魔物は、悪魔サタンは退けられなければならない、取り除かれなくてはいけない、憎まれなくてはならない......。だから私は、たった一人話をしてくれそうな相手と話すようになった......。私は悪魔と話すようになった......。
[SCP-4166-1の目から涙が流れる。]
SCP-4166-1: それから、何年も、何年もよ? たたかれたりよごされたりしたから、取引をしたの。わかる? あのクソを止めさせるために。あいつに償いをさせるために。私がされたようにあいつを燃やして、私がどんな気持ちだったか思い知らせてやるために。もちろん対価は必要だったわ。対価は週に1度誰かを誘惑してそいつと寝ることだった......。あの頃の私は、 – ごめんなさい、汚い言葉を使って – クソヤリマン女だった......。サイテーだわ。マジサイテー。神様。神様。でもそんなのどうでもよかった。 私にはあれがたったひとつの救いだったの。 ああ。神様。お願いです。私を許して。
[SCP-4166-1が手のひらを左右のこめかみに当て、強く押し付け始める。]
SCP-4166-1: クソッ、生まれて初めて力があることを感じたわ。何でも思いのままにできた。あいつを殺す力だって手に入れたけど、そんなこともうまくいかなかった。わかってなきゃいけなかったのよ、悪魔がそう簡単に死にっこないことなんて。
[SCP-4166-2が実体化する。]
SCP-4166-1: ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい......。
[SCP-4166-2がSCP-4166-1に接近しようとする。緊急収容プロトコルECP-166が発動される。] ......取り乱してしまって。もっとうまくできたはず。やらなくちゃいけないのに。今日はここまでにして。これでおしまいにして。
<記録終了 14:04>