自然コロニーに加わったSCP-4075-a (左端)。キューバ、リオ・マキシモ野生動物保護区にて。
アイテム番号: SCP-4075
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-4075-1は財団によって買収され、周辺地域は民間人の立ち入りを防ぐために確保されています。フェンスが境界線に確立され、現在進行中の改修工事を名目とする立ち入り禁止の警告表示が設けられています。
SCP-4075個体の異常な移動を追跡する試みが進行中です。補遺4075.04での観測事例と類似する大規模な異常活動が発生した場合は、コロニーの変則的な渡りに関するカバーストーリーを流布し、それと矛盾するメディアやオンライン上の報道を抑制します。
説明: SCP-4075はペルーのリマ市に位置する放棄されたオフィスビル、以下SCP-4075-1に生息するフラミンゴのコロニーです。フラミンゴの既知の全ての種が、世界的な各種の生息数統計と概ね一致する比率でコロニーを構成しています。如何なる時点でも、約500羽のSCP-4075個体がSCP-4075-1に存在します。
SCP-4075-1の内部に居る間、SCP-4075個体は複数の異常性を獲得します — 最も特筆すべき点は、人間と口頭で意思疎通する能力です。SCP-4075個体の発話は、聴取者が最も慣れ親しんだ言語で認識されます。
SCP-4075は"フラミンゴ出入国管理庁"を自称しています。SCP-4075の目的は、SCP-4075-2と指定される特定の書類を処理し、書類を提出したとされるコロニーに結果を配送することのようです。SCP-4075は世界各国にある全てのフラミンゴのコロニーにおいて統治的役割を果たしていると主張します。SCP-4075-2は読者の母国語で書かれているように見えますが、書類の画像には文章が映りません。更なる研究のためにSCP-4075-1からSCP-4075-2を持ち出す試みは失敗に終わりました。
SCP-4075個体には、世界中に位置する非異常なフラミンゴのコロニーに瞬間移動し、同様の手段でSCP-4075-1に帰還する能力があります。SCP-4075個体は睡眠、栄養摂取、交尾のために他のコロニーへ移動するのが確認されています。また、コロニーとSCP-4075-1の往復は、SCP-4075-2を収集する役割も果たしているように思われます。SCP-4075-1に瞬間移動で帰還するSCP-4075個体の大多数は嘴に書類を咥えています。
瞬間移動能力を除けば、SCP-4075個体はSCP-4075-1の外部で異常な特性を示しておらず、SCP-4075コロニーを構成しないフラミンゴは全く異常な振る舞いを見せません。
補遺4075.01: 初期探査
SCP-4075-1内の異常活動に関する地元住民の通報の後、財団エージェント マルケッティ及びペラルタがSCP-4075-1に派遣されました。エージェント2名は受付エリアを通ってビル内に入り、6羽のSCP-4075個体がオフィスデスクの前に待機しているのを発見しました。SCP-4075個体群が人間の言葉で意思疎通するのを見て、エージェントたちは司令部に接触許可を求め、承認されました。
5羽の個体はエージェントを無視し、会話の試みに反応しませんでした。6羽目の個体であるベニイロフラミンゴ、以下SCP-4075-aがエージェントたちとの会話に応じました。
インタビューログ 1:
エージェント2名がSCP-4075-aに接近する。SCP-4075-aは嘴にゴム印を咥え、目の前のデスクの書類に判を押している。エージェントたちが近付くと、SCP-4075-aはゴム印を置いて向き直る。
SCP-4075-a: あぁ、またか。今月だけでアンタらのお仲間はもう3人か4人ぐらいここに来てるな。何の用だ?
エージェント マルケッティ: アリーナ・マルケッティと申します。こちらは同僚のマウリシオ・ペラルタ。宜しければ-
SCP-4075-a: 書類は?
エージェント マルケッティ: 書類? 失礼ですが、何の事か-
SCP-4075-a: 書類。インタビューを希望するなら書類を記入してもらわんと困るね。
エージェント マルケッティはエージェント ペラルタを一瞥する。
SCP-4075-a: *溜め息* 3階だ。従業員N38795DD号に聞いてくれ。そうでなきゃ、クラレンスを出せと言えばいい。
エージェント ペラルタ: どうして君たちがここに居るかを聞きたいだけなんだが... 或いは、今こうして我々が会話できている仕組みについて。
SCP-4075-a: あのな、アンタらが書類を持ってないなら俺は会話できない。書類が無けりゃ、話も無し。俺の一存じゃなくて、そういう規則なんだ。このまま話し続けたら俺は言動裁判所送りになっちまうし、今年はそんな暇無いんだよ。
SCP-4075-aはこの時点以降エージェントとの会話を拒否しました。エージェント2名は3階へ向かい、指定された個体を特定しました。エージェントたちは"外部関係者 - 保安クリアランス及び対話要請の許可"と題された書類を発行されました。この書類では以下のような様々な情報の記入が求められました。
- 庁内識別番号
- 訪問の目的
- 申請者が会話を意図しているSCP-4075個体の識別番号
- 問題の個体と話し合う話題の概要
- 雇用者名
- 話せる言語、並びに各言語の習熟度
- 発話時の平均デシベル値 (判明している場合)
"庁内識別番号"に何を記入すべきかを質問したところ、エージェントたちは過去にSCP-4075-1を訪れた経験があるかを訊ねられました。エージェントたちはこれを否定し、"庁内登録及び全体統計学的評価"と題された書類を発行されました。この書類は両面印刷、標準A4サイズの5枚綴りでした。要求された詳細情報には以下が含まれます。
- 名前
- 誕生日
- 国籍
- 訪問の目的
- 母の旧姓
- 祖母の旧姓
- 過去8年、7ヶ月、2週間の具体的な住所。
- 申請者が鳥インフルエンザに罹患した経験があるか否か。
- 申請者がそれと知りつつ、鳥インフルエンザに罹患した個人と接触した経験があるか否か。
- 3種類の身分証明書のスキャン。リストアップされた許容可能例には出生証明書、死亡証明書、パスポート、運転免許証(過去6ヶ月以内に発行された場合のみ)、社会保障カード、アマチュア無線免許証が含まれます。
また、エージェントたちは"外部関係者 - 処理同意書"を4枚ずつ提出することを求められました。
司令部と連絡を取り、エージェント マルケッティ及びペラルタは書類を完成させて提出しました。2名は書類の処理に5〜75営業日(火曜日を除く)かかる旨を通達されました。
2名は返信用紙を73日後に受け取りました。エージェント マルケッティの申請は承認され、彼女はID番号を受け取りました。エージェント ペラルタは住所の詳細を求められ、残る2日間でそれらを記入できませんでした。彼の申請は却下されましたが、新たに空白の書類が提供されました。
補遺4075.02: インタビューログ 2
SCP-4075-aが既にエージェントと対面したため、当該個体へのインタビューを実施することが決定しました。エージェント マルケッティは別の書類、"外部関係者 - イベント調整 - 対面双方向性意思疎通申請書 - インタビュー(質問者用)"を通してSCP-4075-aへのインタビューを手配しました。SCP-4075-aは"外部関係者 - イベント調整 - 対面双方向性意思疎通申請書 - インタビュー(回答者用)"という書類に記入したことが確認されています。
エージェント マルケッティはSCP-4075-aに最大4回までの質問を許可されました。インタビュー当日までに、エージェント ペラルタもID番号を発行されました。彼はインタビューを観察することができましたが、参加は認められませんでした。インタビューはSCP-4075-1の1階で実施されました。
エージェント マルケッティ: おはようございます、従業員G9898CX号。我々のインタビューにまだ応じていただけますか?
SCP-4075-a: ああ、今は大丈夫だ - これで1つ目の質問は終了。早めに済ませちまおう、俺の翼幅の検証申請書がまだ未処理でね。
エージェント マルケッティは小声で悪態を吐き、インタビューログの質問の1つに取り消し線を引く。
エージェント マルケッティ: 私の望んでいた始まり方とは違いましたが、ともあれ、ありがとうございます。まず初めに、皆さんの... 群れがここで何をしているかを説明していただけますか?
SCP-4075-a: 俺も正確には知らない、訊ねる必要が無かったからな。俺たちは暫く前からここに居るが、物事が形式化され始めたのは、アンタらの種族が世界のこの辺に姿を見せて、俺たちが北米を離れなきゃならなくなった時期だ。確実に全員一緒にここに降り立てるように、何かしらの組織が必要だった。以来、俺たちは世界中のコロニーを統制してる。これ以上の詳細を知りたけりゃ、歴史的事項及び記録用記録課に問い合わせてくれ。
エージェント マルケッティ: ここでのあなたの役割は何ですか?
SCP-4075-a: 俺たちの最初の主な仕事は移民だったが、既に大幅に拡張してる。俺の所属は検証課でね - 書類を受け取って、内容を確かめて、もう一度確認してもらうために再検証課に引き渡す。書類がその先どう扱われるかは知らん - 改めて言うが、俺は今までそんな事を質問しなくて済んでた。
処理する書類は山ほどあるが、大体は出生証明書、死亡証明書、移民申請書、あとは季節的な渡りの申請書だ。この手の申請はほぼ常に却下される。カマルグ地方の奴らは、書類をいつもしっかり整えて提出する数少ないコロニーの1つだ。
まぁでも繁殖期が一番の繁忙期だな、間違いなく。求愛申請書にかかり切りになるし、その求愛が成功すれば交尾申請書、それから間もなくして妊娠通達書が来る。大変な作業だが、そういうもんだから仕方ない。こういう書類は書くのも処理すんのもそう難しくないんだ。ややこしいのは再交尾申請書だよ。毎年、あぶれ者の雄や不満を抱えた雌から、新しい伴侶と交尾する申請がドッと雪崩れ込んできやがる。そんで毎年、書類の記入ミスとか、基準を満たさないとかの理由でクソほど大量に却下しなきゃならん。コロニーに帰るまでに数週間泊まり込みで働くことだってある。
で、繁殖期の後は、出生証明書をどっさり発行して、新生児が全員正しいコロニーに割り当てられるようにするんだ... 自分のコロニーの情報ぐらいはちゃんと把握しておきたいしな。
エージェント マルケッティはクリップボードの端に走り書きをする。
エージェント マルケッティ: 失礼、ペンのインクが切れたようです。 (エージェント ペラルタに向き直る) 予備を借りてもいいですか?
SCP-4075-a: 俺は構わないけど、まずウチの課長に"文房具貸与申請書"を承認してもらう必要がある。それが3、4週間ぐらいで-エージェント マルケッティ: いえ、あの、違います、今のはあなたへの質問じゃありません! お訊きしたいのは、その... 私には、あなた方がそもそもどうしてここに居るかを上手く理解できないのです。あなた方がこのような業務を行っている理由もです。これら全てにどのような意味があるのですか?
SCP-4075-a: 悪いけど、俺にもよく分からん。よしんば分かってたとしても、アンタは保安クリアランスを持ってないし、俺はもう二度と鳥材課と関わりたくない。前に1回、ミスのある書類をうっかり正しいもんだと判断して、懲戒聴聞会に出頭させられた。30羽の陪審員が全会一致の結論を出さないと終わらないから、後にも先にも進まない。俺が有罪だって意見は一致したが、謹慎期間を80日にするか81日にするかが決まらなかったんだ。終わるまで5年もかかった...
エージェント マルケッティ: では、我々が今こうして会話している仕組みはご存じですか? 野生環境にいるあなた方の種族は、皆さんがこの建造物の中にいる間に示す能力の半分も発揮していません。
SCP-4075-a: 繰り返すが、俺には分からん。これで4つ目の質問だな。俺は今からセネガルのコロニーの雛に発行する色彩証明書の束を検証しなきゃならないんだ。適切な書類さえ書いてもらえりゃ、喜んでもう一度話し相手になるぜ。念のため言っとくが、2回目の面談では別な書類を出す必要があるからな。
補遺4075.03: 文書4075-76: 再配属申請書
SCP-4075の研究期間を通して、私もチームメンバーも、未だに彼らから異常性の本質に関する有用な知識を得ていません。そして現時点では、彼らからどのような内容であろうと有用な情報を引き出す手段があるとは思われません。
IDを取得したという都合上、最初のうちは自分がインタビューに配属されるのも理解できました。しかし、我々はSCP-4075個体群との初期のインタビューで全く価値ある詳細情報を得られませんでした。その後のインタビューや調査でも、我々のチームや財団や世界全体の益となる情報は収集されていません。
SCP-4075が処理する書類は全て、非常にありふれた活動の規制にのみ関連します。彼らは我々が書類を調査するのを認めようとしないので、因果関係を確立する努力は大きく制限されています。
私はSCP-4075の階層構造や — 仮に存在するとして — どの個体がSCP-4075を全般的に運営し、目的を設定しているかについて、如何なる推測も導き出せていません。SCP-4075個体群はどうやら、単純にそれが業務だという理由で責任を全うしているようです。私個人としては、彼らの活動は全く無意味だと確信しています。
SCP-4075の書類から逃れるために財団の書類を記入しなければならないという皮肉が頭から離れません。唯一の慰めは、曾々々祖父の従弟の2人目の子供の血液サンプルとか、その他の鳥が求める下らない物を提出する必要が無いことです。
私のスキルと才能はこの業務において耐え難いほどに浪費されています。研究を打ち切って収容のみに切り替えるべきだと強く進言いたします。制服からこれ以上ピンクの羽を払い落とす必要があるなら、Dクラス業務への再配属申請も検討します。
補遺4075.04: 事案報告書4075-01
失踪した最大規模のコロニー、及びSCP-████-1の位置。クリックで拡大。
████/09/18、ベネズエラ北西部/コロンビア北東部のフラミンゴのコロニーが、ベネズエラのラ・シェネガ・デ・ロス・オリビトスに位置する9,000羽の大規模なコロニーも含めて、説明の付かない消失を遂げました。これに先立つ数日間、SCP-4075の活動は顕著に活発化していました。コロニーの失踪について話し合う試みは、財団職員が適切な保安クリアランスを有していないという理由で拒否されました。
コロニーの失踪は、現在SCP-████-1に分類されている、████/09/21から始まったSCP-████の活動震源地の半径200km以内に限定されていました。
これらの出来事の繋がりは、SCP-████の活動が████/09/25に潜在的XK-クラスシナリオの危険性をもたらすレベルまで激化し、無力化されるまで判明しませんでした。SCP-████の活動のピーク時には、全てのSCP-4075個体と、世界中の全てのフラミンゴもまた消失し、SCP-████の無力化に続いて帰還しました。エージェント マルケッティの再配属申請は却下されました。
財団エージェントが繰り返し質問を試みたにも拘らず、SCP-4075はこれらの出来事についての情報を開示しませんでした。これに加え、SCP-4075を早期警戒システムとして利用することの潜在的価値を踏まえて、強制的に情報を得るという決定が成されました。
エージェント マルケッティ及びペラルタが率いる機動部隊は、財団施設での更なる研究のため、████/11/01にSCP-4075-1に突入し、SCP-4075個体群とSCP-4075-2実例群の回収を試みました。この作戦は成功しませんでした。SCP-4075個体群はオフィス内を瞬間移動する能力を発揮し、財団工作員や飛翔体を回避しました。工作員たちはSCP-4075-2実例を回収できましたが、それらはSCP-4075-1から持ち出されると消失しました。
作戦開始から5分後、全ての財団工作員は未知の手段でSCP-4075-1の外部に転送され、再入場できなくなりました。作戦中、エージェント ペラルタはSCP-4075-2実例群を検査し、過去の探査で見覚えの無いタイプの書類 — "次元外避難勧告指示" — があると報告しました。
外部コロニーを訪問中のSCP-4075個体と接触する試みが現在進行中です。SCP-4075について異常性の無いフラミンゴにインタビューする試みは成功していません。
補遺4075.05: 事案報告書4075-02
████/12/21、エージェント マルケッティは点呼に出席せず、連絡が付かなくなりました。彼女は過去に再配属申請を出していたため、居室が捜索されるまでは脱走の可能性が考慮されていました。エージェント マルケッティの私物はいずれも持ち出されておらず、闘争の痕跡もありませんでした。
1枚のSCP-4075-2実例が、エージェント マルケッティのベッドの上で見つかりました。これはSCP-4075-1の外部で発見された最初の実例です。実例は標準的なA4用紙であり、中心に1文のみ記されていました。
"非自発的裁判所出頭命令 - アリーナ・マルケッティ、████/12/21"
更なる調査が進行中です。