SCP-4040

SCP-4040, At The Bottom Of A Bottomless Pit / 底なし穴の底で



{$comments2}

{$doesthisfixthebug}

[フレーム]

[フレーム]

評価: +40
アイテム番号: SCP-4040
レベル3
収容クラス:
keter
副次クラス:
none
撹乱クラス:
keneq
リスククラス:
warning

特別収容プロトコル: SCP-4040に遭遇したフィールド職員は、サイト-87司令部からの指示がない限りSCP-4040と関わらないでください。SCP-4040の調査に派遣される遠征チームは、最低でも4名のエージェントから構成されなければならず、いかなるメンバーも長時間放置されるべきではありません。SCP-4040の調査に送られる職員は、ミーム抵抗指数の評価が72以上である必要があります。

SCP-4040は人間が作り出した説話から力を引き出していると考えられるため、ネクサス-0018内の財団職員は、SCP-4040に関連する不必要な会話を避けてください。加えて、ネクサス-0018に居住している民間人には、SCP-4040を取り巻く説話の創作や流布をしないよう警告してください。

説明: SCP-4040はウィスコンシン州、スロースピットのスロースフォレスト (ネクサス-0018) に所在する、深さ不明の陥没穴です。SCP-4040は直径が30.48 mと測定されており、前方には木製の段が1つあります。SCP-4040の正確な位置は不明ですが、これはSCP-4040が実際に転移しているためなのか、単にアノマリーの超ミーム的効果によるものなのかは未だ断定されていません。

Nx-18の伝承によれば、同一の人物がSCP-4040を2度発見することは不可能であるとされています。これはスロースフォレストへの財団の遠征により実証されています。SCP-4040を発見したエージェントは、いずれも後の調査時にSCP-4040を発見できず、追加の人員をその場所に呼ぶことも不可能でした。GPS信号および無線追跡は正確な位置を提供できませんでした。また、近隣にいる職員は発見者の声を絞り込めず、その声が全方位から聞こえてくると述べました。Nx-18の主要な異常は、その効果範囲内に流布されている説話を顕在化させることであるため、SCP-4040を取り巻く伝承が、財団がSCP-4040の位置を特定できない重要な要因であると考えられています。

ドローンによるSCP-4040の探査は、陥没穴の内部へ30 m以上進むと無線信号が消失し、全自動ドローンが帰還に失敗するため、実行不可能であると示されています。レーザーレンジファインダーや、さほど高度でない手段を用いたSCP-4040の深さの推定もまた不確定であると判明しています。UAEチャップマン-341 (ゴートマン) に関連する伝承によれば、かつてゴートマンは無力化を試みられてSCP-4040の内部へと誘き寄せられたものの、2日後に外へ這い出てきたとされています。これはスロースピットの伝承が空想科学的に顕在化したものと考えられており、深さを推定する手段として有用ではありません。

SCP-4040に遭遇した経験がある財団職員ないしNx-18の居住者は、陥没穴から微かに聞こえる囁き声や、典型的に "ホラー映画のワンシーンにいるよう" だと形容される現実感の顕著な喪失と同時に、周囲が無音になることを報告しています。SCP-4040は、その近辺からでは暗闇しか観測できません。しかしながら、前方の段からの観測は様々な結果を残しています (遠征ログ参照)。

歴史的記録によると、SCP-4040は1890年のクリスマスの日に、ジャクソン・スロースの屋敷の真下に形成されたようです。この屋敷はジャクソン・スロース、妻のイモージェン・スロース、息子のジャスパー・スロースと共に完全に呑み込まれました。加えて、これがスロースピットで発生した最初の大規模な異常であり、最終的に街をネクサス-0018として分類させた異常現象の兆候は、SCP-4040が出現した直後に観測され始めました。それゆえに、SCP-4040はスロースピットがネクサスに変容した原因である空想科学的効果の発生地だと推測されています。

補遺、抜粋されたSCP-4040探査ログ:

機動部隊シグマ-10のエージェント・アリソン・キャロルとエージェント・ロバート・トッフルマイアは、スロースフォレスト内のアノマリーの計画された捜索の際にSCP-4040に遭遇した。財団職員によって記録された6回目のSCP-4040との遭遇であることに加え、SCP-4040の底に到達し、生還が報告されたことで知られている非異常な人物はこの2人だけである。

<ログ開始>

[SCP-4040の前方に立っているカメラにエージェント・ロバート・トッフルマイアが映る。エージェント・アリソン・キャロルはカメラを操作していると推測される。]

エージェント・キャロル: カメラをオン、と。

エージェント・トッフルマイア: 「ウチにはでかい穴が沢山あるんだ。一番深いのはこの底なし穴だ。何たって、底なしだからな。」

キャロル: ねえ、カートゥーンの引用は暇な時にやって。これは大事な仕事なんだから。

トッフルマイア: 実を言うと、俺はどちらかと言やあ休暇中の仕事だと思ってる。でもな、ただ監督官らを喜ばせるためだけに楽しみを全部奪いたいってんなら、そりゃお前の悪いトコだぞ。

キャロル: ああもう。記録のために、私達は機動部隊シグマ10のエージェント・アリソン・キャロルとエージェント・ロバート・トッフルマイア -

トッフルマイア: 俺達は思考実験でしょっちゅう挙げられるあのアリスとボブだぜ。

キャロル: - で、私達はSCP-4040の発見に成功した。

トッフルマイア: こりゃマジにスロースピットだぜ! スロースピットの街はこの穴に因んで名付けられたんだな!

キャロル: 以前このアノマリーと遭遇した時と同様に、GPSと通信ユニットは両方ともスロースフォレスト以上の具体的な場所を示せなかった。ロバートは数分もの間目一杯叫んでみたけど、私達の部隊の誰からも反応はなかった。

[注記: 当時エリア内にいた隊員は、エージェント・トッフルマイアの叫び声を耳にしたと報告している。しかしながら、トッフルマイアは彼らが返した叫び声に反応しなかった。]

トッフルマイア: ああ、俺達がこの穴を見つけてすぐに、この場所全体が不気味なほど静かになりやがった。鳥も、虫も、葉っぱの擦れる音も、何もしねえ。

[注記: カメラはシグマ-10の隊員の遠く離れた叫び声を含め、森林地帯でよく耳にする環境雑音を記録している。]

キャロル: 以前の遭遇と一致するわね。全てが非現実的であるようなこの感じも。明晰夢を見ているか、物語の中にいるように少し感じる。

トッフルマイア: 言ってしまえば、俺達は第四の壁の破壊者になったってところだな。俺達はデッドプールのSCP財団版ってか。

キャロル: ロバート、未収容Keterの真正面に立っているつもりで行動しないと、来月はホダッグの卵を磨かせるわよ! (咳払いをする) 必要最小限のキャンピング用品に生活必需品、それと2週間分の食料を準備してある。私達の主な任務はSCP-4040の張り込みと、此処にいる間にSCP-4040が転移するかどうかの観察。私達は交代で睡眠をとって、今後2週間はSCP-4040の可視範囲から離れないようにするの。

トッフルマイア: こっちに来て、ソイツ等がこの穴の中を詳しく眺められるようにしようぜ。

[エージェント・キャロルがSCP-4040の端まで歩き、カメラを下向きに固定する。SCP-4040は地中にある深さ不明の天然のシャフトであるように見え、明白な異常は見当たらない]

キャロル: 大して見えないわね、そっちが私達とは異なる何かを見てない限りは。でも此処からだと、只の大きな穴のようにしか見えない。

トッフルマイア: 何か、コイツからも木霊みてえな囁き声が聞こえるな。お前はどうだ? アリス。

キャロル: ええ。何となく、此処の下に風が吹いているような音ね。風が話そうとしてる。

[カメラの音声は何の音も拾っていない。]

トッフルマイア: 前方の段からコイツを見ねえか? 街の伝承によると、最低な悪夢が見えるんだとよ。

キャロル: それをしない理由がないわね。アンタが先に行って。

[エージェント・トッフルマイアが段に立ち、SCP-4040を覗き込む。彼の顔が目に見えて青くなる。]

キャロル: 何か見える?

トッフルマイア: ああ。俺のダチは6年程前に、オールドマンの "隠れ家" に引きずり込まれたんだ。ソイツがそこでまだ生きてる。

キャロル: ロバート、今すぐ離れて。

[エージェント・トッフルマイアが命令に従う。]

キャロル: それは絶対に現実のものではないわ。ていうか、どうしてそうだと分かるの?

トッフルマイア: そうか、そうだな。あー、それでも見てみたいか…

キャロル: そうするべきだと思う。

[エージェント・キャロルが段に立ち、SCP-4040を覗き込む。カメラは何も目ぼしいものを記録していない。]

トッフルマイア: 何が見えるんだ? アリス。

キャロル: 最後のハロウィーンのそれを1000倍悪化させたような、スロースピットのあらゆる未確認生物と思念形態が、街全体を狂わせて引き裂いているのが見える。それは私達のせい、私達がSCP-4040を収容しようと試みたせい。私達はただ、いつものように事態を悪化させた。ああ神様、私そんなこと言ったかしら?

[エージェント・キャロルがSCP-4040から離れる。]

キャロル: あの段に立っても、これ以上有益な情報が得られるとは思えないわ。

トッフルマイア: 同感だ。先ず仮設テントを張るか?それとも境界線を張るか?

キャロル: そうね、境界線からにしましょう。おっと、これを見てる人達へ。私達は張り込みの任務に加えて、SCP-4040の周りに、様々なトランスポンダーやその他色々なものを埋め込んだ小型のフェンスも設置するの。この次にSCP-4040が見つかった時に、フェンスが残っているか確認できるように。

トッフルマイア: ついでに、コイツにピッタリな警告標識も作ってやったぜ。

[エージェント・トッフルマイアが 'ボトムレス・ピット (とトップレス・ダンサー)' と書かれた小さな木製の標識を持ち上げる。]

キャロル: そんなもん立てるわけないでしょ。

トッフルマイア: 何でだよ? 低俗で良いじゃんか、街のツーリストトラップで売ってあったクソみたいで。

キャロル: 司令部が認めないわ。それにバカ丸出しで性差別的。

トッフルマイア: 分かったよ。実のところ、最後の部分なら修正が効くんだ。

[エージェント・トッフルマイアがシャーペンを取り出して標識に手を加える。標識には現在、'ボトムレス・ピット (とトップレスフリー・ダンサー)' と書かれている。]

トッフルマイア: どうだ、推奨されてるポリティカル・コレクトネス的な言い回しだぜ。俺が思うにな。しかしこれだと 'ボトムレス・ピット' に上手く合わねえな。ボトムレスからボトムフリーに変えるべきだと思うか?

キャロル: バッカじゃないの。

<ログ終了>


<ログ開始>

[エージェント・キャロルがテント内で自身のスリーピングバッグに背筋を伸ばして座っていると見られる。外は暗いが、キャンプファイアの明かりが多少ある。]

エージェント・キャロル: こちらエージェント・キャロル、1日目のSCP-4040の張り込みが終わるところ。眠る前にちょっとだけ話したいことがあって。トッフルマイアは最初に交代を取ってるわ。状況は何も変わってない。この森は今も異常に静かだし、私達2人とも、現状について未だに奇妙で非現実的な感覚を抱いてる。説明し辛いけど、 たった今起きているのが現実に感じないってだけじゃなくて。穴から聞こえてくる声、まあ何だっていいけど、アレは弱まっても増してもない。私達はSCP-4040の周辺にフェンスを巡らせたわ。それと結局、ロバートにあのバカ丸出しな標識を立てさせてあげた。私達はいつもの実験をもう一度やったわ。無線ドローンとか、自動ドローンとか、レーザーレンジファインダーとか、重りを括り付けた釣り糸とか。これまでの実験と全く同じように、ドローンは両方とも失われて、距離計測器も両方ともダメだった。私達は仮設テントを設営したわ。それとキャンプファイアも。張り込みのために明かりが必要だし、火は肉食動物や腐食動物、それと未確認動物を遠ざけるのに長けて -

エージェント・トッフルマイア: (カメラの範囲外から叫ぶ) あとスモアも作ったぞ!

キャロル: …うん、まあそんなわけで、此処で割といい感じに落ち着いてる。無線機や衛星電話は使い物にならないけど、他の備品は機能してる。カント計数機はヒューム値が正常であることを示してる。それか、スロースピットにとっては正常であるってことか。VERITASもSCP-4040からは異常なEVEの放出を何ら感知してないし、ミンコフスキー時空モニタも時空の歪みは検知してない。シンチレーションカウンターやEMDメーターも全て正常、マルチスペクトルカメラを用いたスイープも代わり映えしないものしか発見しなかった。私は精密な測定値を用紙に全て書き留めた。正直、もしコレが留まってて、実際には底なしじゃないって確かめられてたら、私達がコレを異常と考える理由は何も無かったでしょうね。此処にいる間は、1日に数回は環境確認をする予定よ。もしかすると、トッフルマイアの言う通り、お化けの森にある底なし穴の側でただ平穏なキャンプをするだけになるのかも。

[エージェント・キャロルが、突然の災害を期待しているかのように休止する。]

キャロル: どっちみち、充電を節約するためにカメラは切るつもり。何か興味深いことが起こったりとか、他にも何か報告があったらまた電源を入れるわ。こちらシグマ-10のエージェント・キャロル、以上。

<ログ終了>


<ログ開始>

[カメラの電源が入り、その持ち主は夜に外にいると思われる。明かりは非常に乏しいが、エージェント・トッフルマイアがSCP-4040の前方の段に立っていることが分かる。]

エージェント・キャロル: (カメラの範囲外から) ロバート! ロバート、どれだけの間そこに立ってたの? そんな、ロバート、アンタが見ているのは現実でも何でもないのよ! アンタの友人は苦しめられてないの!

エージェント・トッフルマイア: それはもう見えねえよ。

[巨大な人型実体がSCP-4040から上昇し始める。明かりが乏しいため、僅かにしか詳細が識別できない。]

キャロル: 嘘でしょ!

トッフルマイア: 今のうちに此処から逃げろ、アリス。

キャロル: ロバート、逃げるわよこのバカ! (エージェント・トッフルマイアは依然として無反応である) ロバート!

[実体がエージェント・トッフルマイアを右手で掴み、エージェント・キャロルに左手を伸ばす。]

キャロル: ヤバい!

[エージェント・キャロルが逃走を試みるが、実体に掴まれる。エージェント・キャロルとエージェント・トッフルマイアがSCP-4040に引き込まれる。カメラは自由落下状態となっている2人を写している。2人はこの間に何度か言葉を発そうと試みるが、突風により会話は聞こえない。およそ30分後、2人はSCP-4040の底と推測されるものに衝突する。]

キャロル: いたた。一体何がどうなってるの? 私達は殺されなかったの? 私達生きてるの? ロバート、大丈夫? トッフルマイア、報告して!

トッフルマイア: (笑い声を上げる)「落ち続けていたぞ、30分もだ!」

キャロル: あー、大丈夫そうね。クソ、カメラもまだ機能してるわ。

[エージェント・キャロルがカメラを自身に向け、咳払いする。]

キャロル: こちら機動部隊シグマ-10のエージェント・アリソン・キャロル、報告。SCP-4040を見張るために交代を取ろうと起床した時、トッフルマイアが前方の段に立って、SCP-4040の内部をトランスじみた状態で凝視しているのを発見したの。ロバート、アレについて説明して頂戴。

トッフルマイア: そうだな。お前が眠りに就いて俺が独りになった後に、たくさんの変な考えが頭の中を駆け巡り始めた。それがSCP-4040の直接的な影響だったのか、単にこの手の奴と一緒にいる時に起こる類の出来事だったのかは知らん。それでも、この下にいるのが何なのかは知らなくちゃならんかった。

キャロル: それで、アイツが現れた時に逃げ出そうとしなかったのはどうして?

トッフルマイア: そりゃあ…プロットを進めるためにSCP-4040に落下する必要があったからだよ。

キャロル: 何ですって? ひょっとしたら、冷静にさせる人物がいない状態でSCP-4040の前方に独りでいると、現実感の喪失の効果が酷くなるのかも。このビデオを見てる誰かへ、次からはSCP-4040の張り込みは4人チームで行うよう私から助言を送るわ。見張りの交代がペアで取れるから。

トッフルマイア: アリス、この穴から今まで抜け出せたのはゴートマンの奴しかいねえんだぜ。そのビデオを見る奴はいねえだろ。

キャロル: そのゴートマンとやらが此処から抜け出せたのなら、私達にもできるはず! 立ち上がりなさい、エージェント! 周囲の状況を把握しないと。

トッフルマイア: 俺達は底なし穴の底にいるんだぜ。エンドロールさ。

キャロル: カメラの小さなLED以外に明かりは無いけど、此処に私達を放り込んだ奴の形跡は何も見られない。地面は普通の土のようだし、正直私達がどうやって今も呼吸してるのか全く分からない。私達は実に30分間落下していた。終端速度で落下していたと仮定すると、私達は地下100 kmぐらいにいるってことになる。

トッフルマイア: そりゃゴートマンの奴は1時間に2 kmぐらい登れるってことだと思うぜ。俺達がそんなに速く登れるか疑わしいし、あの野郎には食事や休息の必要がねえ。俺達じゃ頂上に辿り着く前に渇き死んじまうし、それよりももっと前に疲労で落下しちまうかもな。俺達は此処で詰みなんだよ、アリス。

キャロル: ロバート、コレは只の穴じゃない、アノマリーよ。知っている限りでは…待って、何か聞こえない?

[呼吸や労作時の唸り声と共に、何者かがシャベルで穴を掘っている音が遠方から聞こえる。]

トッフルマイア: 何てこった、こんな所に誰かいるぞ! おーい!

キャロル: おーい!

[エージェント・キャロルとエージェント・トッフルマイアが雑音源に向かって歩く。約1分後、汚れた白いワイシャツとサスペンダーを着用した男が視野に入る。この実体はSCP-4040-01と指定された。休みなく掘削しながら、実体はエージェントの方に顔を上げる。]

SCP-4040-01 おはよ。

キャロル: …おはようございます。私の名前はアリス、こっちはロバートと言います。彼と私は共にS&Cプラスチック会社の -

SCP-4040-01: (ほくそ笑む) 別に穴の底にいるからと言っても、文明社会から離れて暮らしてきたわけではないさ。S&Cプラスチックが何なのかは知っているよ、エージェント君

キャロル: この辺りの方にはよく知られてますからね。くだらない与太話で貴方の知性を侮辱するつもりはありません。貴方が何者で、此処で何をしているのか教えて頂けませんか?

SCP-4040-01: 私が誰か分からないってことかい? そいつは残念だな。

トッフルマイア: 俺は知ってますよ。犬の同伴が許可された公園で貴方の銅像を見たことがある。ジャクソン・スロースですね。

SCP-4040-01: その通りだ、坊や。私の名はスロース、そしてこれは私のピットさ。

キャロル: 貴方があの、スロースピットの創立者であるジャクソン・スロースなのですか? こんな所に130年間も?

SCP-4040-01: 今日は何月何日かな?

トッフルマイア: 7月1日、カナダの日ですね。2018年の。

SCP-4040-01: じゃあ違うな。私は127年と6ヶ月と6日、こんな所にいる。

キャロル: 穴を掘って?

SCP-4040-01: (掘削を一時中断し、顔を上げる) それはメタファーだよ (掘削を再開する)

キャロル: どうやって生き延びてきたのですか?

SCP-4040-01: 私は想像の産物さ。丁度、街にいる怪物共やこの穴みたいなね。

キャロル: あの、貴方は想像の産物などではありません。私達2人は貴方が見えていますし、それに貴方はカメラにも写っている。

トッフルマイア: ジャクソンさん、貴方はコレが地面に開いた只の穴ではないことをご存知で? その途方もない深さとか、誰もコレを2度見つけられないこととか、人々の現実感に干渉することとか -

SCP-4040-01: 息子であるこの場所のことは百も承知さ。2人とも、シャベルを取ってくれ。ちょっとした歴史を教えてあげよう。

[エージェント・キャロルとエージェント・トッフルマイアは向きを変え、穴の壁に寄り掛かった、それまで気付かれていなかった2つのシャベルに注目する。キャロルは自分達を記録可能な場所にカメラをセットし、両エージェントがSCP-4040-01の掘削を手伝う。]

SCP-4040-01: 私は幼い頃からずっと、想像がいかにして現実となるかをとても直感的に感じていた。私達が聞いては語る物語、私達が夢見ては恐れる物事、その全てが私達の思考や感情、延いては行動にまで影響を及ぼす。現実は想像の影響を受ける、それ故に想像は非現実的であるとは言えない。ついて来れてるかな?

キャロル: 私達はそれを空想科学と呼んでいます。

SCP-4040-01: よろしい。私には、現実を思い通りに形作る説話を創り出す才能があった。不可能なことではなく、幻想的なことでさえもなかったが、それでも私は見聞きした者の心に芽吹く説話の種を創り出せた。全ての種が芽を伸ばすわけではなく、全ての説話が私の意図通りに成長するわけでもなかった。だが試行錯誤を通して、私は上出来な種や影響力のある説話を創り出すのが上手くなった。だからこそ、西部に林業の街を作るために多くの人がついて来てくれたし、オレゴン州がどのくらい遠くにあるのかを知った時も、ウィスコンシン州に住み着くよう彼らを説得できたんだ。

キャロル: 何と言うか、単に貴方が良き演説者でいらしただけのように聞こえますが。

SCP-4040-01: 私もそう言っていたかもしれないね、1890年のクリスマスの日までの私なら。私は書斎で、ノートブックに殴り書きをしていたんだ。クリスマスを病院で過ごすキャロラインの為に、説話を思い起こそうとしてね。その時私は、越えてはいけない、目に見えない一線を越えてしまった。私の説話は総和がある種の臨界質量に達し、自ら崩壊した。私の家も、家の中の物も、その真下の大部分の土地も、想像の産物と化した。消失は噂を招き、この場所は人々が言うところの底なし穴になるまで、その噂の全てを呑み込んだ。

キャロル: 貴方の家を呑み込んだ底なし穴が、ある種の空想科学的特異性であると仰っているのですか?特異性singularityと言うのは -

SCP-4040-01: 私の科学的知識はまだまだ時代遅れではないようだな、お嬢さん。特異点singularityはそれを表すに相応しい言葉だと思うね。星が崩壊してもなお近くの宇宙空間を歪めるのに十分な重力を発生させているように、この穴もまた、スロースピットの現実性に深刻な影響を与えるほど十分な説話力を発生させている。それは何百ものタルパを支え、物理法則を軽々とぶち破るほどに強力な説話を創り出す。朝食前に6つもあり得ないことを、だったかな? アリス君。私がまだ実在していた頃に、そんな説話を創り出せていたならなあ!

トッフルマイア: 俺達を此処に引き込んだあの怪物はどうなのですか? アレは一体 -

[上方から苦悶の呻き声が反響し、穴が震動する。]

SCP-4040-01: 口にするな。ソイツはまだ現実には存在しない。でも十分な物語があれば現実となる。ただ無視して掘るのが一番だよ。けど今は君達がいるから、そっちが気にしないなら少し休ませてもらおうかな。

[SCP-4040-01が巨礫のすぐ近くに座り込み、ハンカチで額を拭く。]

キャロル: あの、この穴から抜け出る方法があるのかご存知でしょうか? ゴートマンが過去に一度抜け出せたのは知っているのですが、此処が現実を形作る想像の産物である場所ならば -

SCP-4040-01: 想像の産物じゃないよ、物語さ。物語が現実を形作る。ゴートマンが抜け出せたのは、そうすれば物語の出来が良くなるからだ。それは無慈悲な獣の何たるかを皆に示した。けど君が此処から抜け出したら? そうなったらほとんどの人達の不信の一時停止が途切れるだろうね。

トッフルマイア: それじゃあどうしろと?

SCP-4040-01: ああ、私が君なら、ただ掘り続けるだろうね。どうせ、君達は物語に何が書かれているのか知っているのだろう。君達が十分深く掘ったら...

[エージェント・キャロルとエージェント・トッフルマイアの足元の地面が裂け始める。地面がこじ開けられ、両エージェントとカメラが垂直に落下する。]

SCP-4040-01: (上方から叫ぶ) ...中国まで掘り抜いちゃうだろうねえ!

<ログ終了>

エージェント・アリソン・キャロルとエージェント・ロバート・トッフルマイアは新たに開通した陥没穴に落下し、その後中国の宜賓竹林で救出されました。この陥没穴の位置を特定するその後の試みは成功していません。

エージェント・キャロルとエージェント・トッフルマイアがSCP-4040の周辺に設置したフェンスは、次の遭遇時には発見されませんでした。しかしながら、前方の段付近には、エージェント・トッフルマイアが設置した看板が残っていました。

SCP-4040への後の遠征で、バックミニスター・フィラメントおよび電動ウインチを用いた2つの誘導降下物は、論理的にキャロルとトッフルマイアが着地したであろう100 km地点を通過した後も、穴の底を発見できませんでした。またこの遠征では、SCP-4040-01や、エージェント・キャロルとエージェント・トッフルマイアを穴に引き込んだ実体と遭遇することもありませんでした。しかしながら現地職員は、SCP-4040から発せられている以前は不明瞭であった囁きが一貫していることを報告しています。報告によると、この囁きは以下の詩を永久に繰り返しています。


暗闇は現実に非ず、然れども汝は光の無きめしいなり

冷気は現実に非ず、然れども汝は未だ夜に凍めり

言葉は現実に非ず、然れども汝は綴る術を存ぜり

ピットスロースは現実に非ず、然れども彼は未だ汝を脅かせり!

この変化の分析は現時点では為されていません。

Footnotes
. 穴の直径が正確に100フィートであるという当地域の伝承を裏付けています。
. 全ての既知の遭遇事例において、SCP-4040は段が真正面にある向きで発見されています。
. 主に説話上の規範に則して確率の法則を改変し、思念形態を有する実体を生成するという方法で顕在化させています。
. スロースピットの創始者であり、元々彼はこの地域をニュートロントと名付けていました。
. 訳注: 原文"In this land of ours, there are many great pits, but none more bottomless than the bottomless pit, which as you can see here is bottomless."。『怪奇ゾーン グラビティフォールズ』第14話のスタンリー・パインズの台詞から。また、当該訳文は同アニメの日本語吹替え版より引用。
. この実体は、正式な指定や非公式な名称を与えられるべきではなく、絶対的な必要性が生じない限り議論を行うべきではありません。
. 訳注: 原文"I've been falling for thirty minutes!"。『マイティ・ソー バトルロイヤル』のロキの台詞から。当該訳文は訳者の私訳。
. 訳注: 原文"Six impossible things before breakfast"。『鏡の国のアリス』の白の女王の台詞から。当該訳文は訳者の私訳。
ページリビジョン: 13, 最終更新: 21 Feb 2024 12:28
特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。
ページを編集するにはこのボタンをクリックしてください。
セクションごとの編集を切り替えるにはこのボタンをクリックしてください(ページにセクションが設定されている必要があります)。有効になった場合はセクションに"編集"ボタンが設置されます。
ページのソース全体を編集せずに、コンテンツを追加します。
このページが過去にどのように変化したかを調べることができます。
このページについて話をしたいときは、これを使うのが一番簡単な方法です。
このページに添付されたファイルの閲覧や管理を行うことができます。
サイトの管理についての便利なツール。
このページの名前(それに伴いURLやページのカテゴリも)を変更します。
編集せずにこのページのソースコードを閲覧します。
親ページを設定/閲覧できます(パンくずリストの作成やサイトの構造化に用いられます)
管理者にページの違反を通知する。
何か思い通りにいかないことがありますか? 何ができるか調べましょう。
Wikidot.comのシステム概要とヘルプセクションです。
Wikidot 利用規約 ― 何ができるか、何をすべきでないか etc.
Wikidot.com プライバシーポリシー

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /