財団記録・情報保安管理局より通達
SCP-4029の収容プロトコルと説明は現在、最近の進展を踏まえて修正中です。調査が完了し次第、改訂版がデータベースにアップロードされます。詳細は補遺1998年12月06日を参照してください。
— RAISA管理官、マリア・ジョーンズ
アイテム番号: SCP-4029
オブジェクトクラス: Keter
エジプト、アスワン。SCP-4029はサーモン色の建造物(右)の左側に位置していた。
特別収容プロトコル: 機動部隊ウプシロン-Peorð ("スリングズ・アンド・アロウズ")のユニットが、貫通性の無い鈍的攻撃、大きな音(130~140デシベルの間)、明るいストロボライト、その他様々な感覚刺激を組み合わせてSCP-4029を人口中心部から遠ざけます。SCP-4029が休眠状態に入った時は必ず反ミーム障壁をその周囲に構築します(説明を参照)。SCP-4029を移動不可能にする手段が現在研究されています。
説明: SCP-4029はかつて█████工業社の地域本部だった大規模オフィスビルで、体節がある機械仕掛けの脚10本(うち2本は先端にハサミが付いている)を使用した移動が可能です。SCP-4029は低レベルの自我の兆候を見せており、自己保存の本能を示し、外部からの刺激に反応します。SCP-4029は完全な水密性で、正面入口の代わりに設けられた単一のエアロックからのみ入場できます。構造の内部には透き通った栄養豊富な液体が充満しています。入口にアクセス可能なのはSCP-4029が休眠状態または不動の間だけです — 休眠する時のSCP-4029は、正面入口が地面と同じ高さになって脚が完全に隠れるまで、地中に脚を埋め込みます。
SCP-4029の内部は本来のレイアウトから殆ど変化していませんが、以下の注目すべき例外があります。
- 前述した液体から老廃物を抽出し、液体を再充填するために改造された空調システム。
- 照明やカメラなど、数多くの(全てではない)電気設備に施された防水処理。
- 4階と5階の中心部にある、何も無い広い空間(詳細は探索ログ4029-1を参照)。
- ワークステーションが密集した一区画。それぞれのワークステーションには小さな金属製のデスクと標準的なオフィス椅子(どちらも床にしっかり固定されている)、そして1970年代のマイクロコンピュータ1台が収容されている。マイクロコンピュータは製造元不明で、配線の束が背面から床、天井、壁の大きなポートまで延びている。これらのワークステーションの~98%は、首の後ろに挿入された透明なプラスチックチューブで酸素を供給されている人間が占有している。大多数の人物(SCP-4029-1と指定)は█████工業社の元・従業員のように見えるが、身元不明の個体もまた観察されている。
SCP-4029-1個体群は月曜日から金曜日(祝日を除く)、09:00から17:00まで、各々のワークステーションで基本的な計算(加算・減算・増分など)を行います。SCP-4029-1が活動していない期間のSCP-4029は完全に休止状態かつ無反応です。これはSCP-4029の知性がネットワークの創発特性である可能性を示唆しています。
以下はSCP-4029の出現を巡る時系列です。
日付 | 出来事 |
---|---|
1929年9月29日 | █████工業社が破産宣告を受ける。 |
1979年9月30日 | 過去に█████工業社が所有していたオフィスビルが隣の建物に向かって著しく傾いている様子を写した写真がエジプト、アスワン市の新聞に掲載される。 |
1979年10月3日 | SCP-4029は正午頃に自らを地面から引き抜き、20分以内に重大な物的損害、200名以上の負傷者、100名の死亡者をもたらす。SCP財団はエジプト軍が対応して境界を設定するまで関与できなかったが、暫定的な収容措置として反ミーム障壁を構築し、アスワン市内を逃げ惑うSCP-4029の知識を抑制することができた。 |
1979年10月4日 | 財団はすでに現地にいたエジプト軍と協力し、SCP-4029を市内から無人の砂漠地帯へ追い出す。11:00までにSCP-4029は無事アスワン市外へ出される。サイト-29でSCP-4029(当時はURA-2979)の収容を議論する会議が招集され、R&Cチームは2班に分けられる。一方の班はアスワン市内/周辺で記憶処理と偽情報作戦を展開し、もう一方の班はSCP-4029自体の収容を行う。 |
1979年10月5日 | 機動部隊ウプシロン-Peorðの活動休止ユニットが、SCP-4029をサハラ砂漠の遠隔地に誘導し続ける任務に割り当てられる。収容プロトコルが承認され、その後間もなく記憶処理作戦が開始される。 |
1979年10月10日 | SCP-4029は依然として未収容だが、休眠期間と容易に予測できる性質のために管理可能と見做される。SCP-4029の存在に関する知識が民間社会から一掃された時点で、SCP-4029は収容済の異常存在であると宣言され、現在の指定名称が与えられる。SCP-4029の収容は注意を要する状態が無期限に維持されており、新たなアイデアが出た場合には収容プロトコル改訂が予想される。 |
SCP-4029が█████工業社の破産後も探索されず無人のままだった理由は不明です。SCP-4029は現時点でミーム的/反ミーム的特性を帯びているとは考えられていませんが、1929年9月29日から1979年10月3日まではその類の異常性が存在した疑いがあります。█████工業社そのものに自己抑制的な情報性質があるという理論も調査中ですが、まだこの仮説を裏付ける証拠は発見されていません。
補遺1980年01月29日 | 探索ログ4029-001:
序: 1980年1月1日以降、ドローン探査では情報が得られなくなった。SCP-4029-1個体群(推定)はドローンを捜索し、破壊してエアロックから排出した。これに伴い、数機のドローンが唐突な通信断絶後にSCP-4029内部でロストした。SCP-4029の有人探索を実行するための機動部隊が設立された。
記録装置がロストした場合の予防策として、研究チームが暫定サイト-4029(SCP-4029は移動するので常設サイトを設けることができない)から映像を監視・記録した。
探索隊: 暫定機動部隊デュプリク-4("インナー・ワーキング")の隊員は以下の通りである。
- エージェント ジェシカ・ウォーターズ; 機動部隊ゼータ-9元・隊長、機動部隊アルファ-5隊員。異常空間の探査においてチームを指揮した実地経験あり。
- エージェント ラングドン・ファーマー; 機動部隊ゼータ-9ナビゲーター。異常空間で進路指示を行った実地経験あり。
- エージェント ジョン・ショルツ; 機動部隊ガンマ-6元・隊員。浸水環境その他の液体が充満した領域で進路指示を行った経験者。
- レスリー・ハリントン博士; 生化学者/超常物質研究者。
- D-004590; 3件の殺人罪で投獄されていた元・海洋写真家。発話障害者。
- エージェント 4-B-モーティス; 壊れた神の教会からの亡命者。フィールド任務に参加するという条件の下で財団に保護されている。酸素供給を必要とせず、大部分の毒性環境から影響を受けないために選抜された。
- エージェント ヴィンセント・ラフェリエール; 複数の機動部隊に所属し、幾つかの致命的ミッションに参加した経験豊富なエージェント。特にSCP-4029との関わりは無い。
ログの関連領域から回収された文書が各ログに添付されている。これらは全て以下の探索任務で発見された。これらは今日までに回収された唯一の書類であり、一部は水害を受けているが部分的に判読できる(転写に際し、水害を受けた部分は"[…]"で表されている)。
<初期記録開始>
[全隊員の映像には建造物の中央ロビーが映っている。ロビーは幾つかの蛍光灯で照らされているが、その大半はちらついているか点灯していない。室内は(予想通り)水害の兆候を示しており、カーペットが除去されて木材が剥き出しになっている。部屋の奥にはドアが取り外された備品クローゼットと、照明の点っていない廊下がある]
ウォーターズ: さて、全員準備は良い?
ファーマー: はい。
ハリントン: ええ。
ショルツ: おう。いつでもいけるぜ。
ラフェリエール: ああ。
D-004590: [確認の手話サイン]
モーティス: ええまぁ、はい。大丈夫です。
ウォーターズ: それなら安心ね。今回のプランは基本的な偵察。何でもいいからこれまで派遣されてたドローンが見逃した物を発見して、サンプルを採取し — あなたの役目よ、レスリー — そして業界用語っぽく言うと、さっさとずらかる。理解できた?
モーティス: はい、事前指令書は全員読んでいます。出て入るだけですよね?
ウォーターズ: 運が良ければ、その通り。この建物は厳密に言えば生き物だから、何が起こるかはっきりとは — レスリー?
ハリントン: あの、ええっと、ちょっと疑問がありまして。私たちより先にドローンが派遣されたというお話でしたけど、指令書の中には映像記録の書き起こしがありませんでした。意図的にそうしたんですか、それとも...
[沈黙]
ウォータース: ええ、その、なかなか良い点を突いてる。指令書に映像記録は含まれてなかった。掻い摘んで言うと、複雑な状況のせいで、監視チームは信号途絶の時点で機材の放棄を余儀なくされたの。
ショルツ: だから代わりに俺たちを生き地獄に派遣しようってんだな。 [含み笑い] 名案だよ。
ウォーターズ: そういう表現はどうかと-
モーティス: [深い溜息]
ウォーターズ: 何か問題でも?
モーティス: はい? あ、いやその、何しろこれが初めての探査なので。
ファーマー: 個人の意見ですが、司令官、俺もこの機械男に同意します。背筋がゾッとするような状況だ。
[沈黙]
ウォーターズ: 心配する必要ないわよ。ドローンの信号途絶が危険なものだったと信じる理由は無いんだから — 何だって起こり得るじゃない... 故障とか、あと、ほら、特殊な異常存在とか、そういう筋の通った出来事。前代未聞の出来事じゃないわ。こいつは有機体よりもテクノロジーを嫌ってるだけで、私たちは安全かもしれないしね。異常知性体のかなり一般的な特徴よ。
ファーマー: お言葉を返すようですが、マム、俺たちは深海探査スーツを着込んでオフィスビルの1階にいるんですよ。この建物には半径10キロ圏内の何処よりも多く技術装置が詰まっています。
ウォーターズ: とにかく私たちは既に入場してる。最後まで頑張り抜く以外にできる事はそう多くない。もし他に何か言いたい人がいなければ、最初の記録を終了するわよ。
[沈黙]
D-004590: [卑猥な身振り]
ウォーターズ: 成程ね。記録終了。
<初期記録終了>
<関連文書>
- 文書4029-01:
1929年12月29日
R・ベントレー副社長へ
やぁ、ロバート。こんな個人的な手紙を書いてすまない、でもどうやら近頃の僕らは総出であれこれ整理する中で少しの間プロ意識の仮面を脱いでいるらしい。それは別としても、僕らはお互いに良く知った仲だ。僕は君の思いやりに訴えるためにこの手紙を書いている。かつて君の地位に就いていた者として、こういう時期、上司はどうしたって自分の肩に圧し掛かるストレスを部下に流すのが普通だと僕は理解している。言ってみれば、君の怒りとか、欲求不満とか、もしかしたら困惑とか、そういうのを下っ端にぶつけないようにするのが難しいのは当たり前だ。でも僕らは皆感じている。変だよ、ロブ。僕らは皆何かがおかしいのに気付いている。
僕がこれを書いているのは、君が自分の仕事をしなくなることや物事が二度と普通に進まなくなることを恐れているからじゃないと思う。でも多分、普通に戻るために大きな過渡期を迎えなきゃならないのが不安なんだろう。昔みたいな[…]できない。要するに、僕らが今必要としているのは上司よりもむしろリーダーだと言いたいんだ。
頼む、もし会議か何かを招集できるなら、そこで会社の士気を評価して、皆の気持ちを表明させてほしい — それか、何故僕らがこれを通して力を発揮できるのかについて君に大々的なスピーチをしてもらえれば、沢山の人が安心すると思う。こういう試練の時には皆、導きの光を必要としているんだよ。
とにかく、手紙を読んでくれてありがとう。
懸念を抱えた市民、
バート・スタントン
- 文書4029-02:
休業; 士気高揚会議のため第8重役会議室に集合
全ての従業員は、本日、第8重役会議室で開かれるストレス解消およびチーム構築の会議に参加することが推奨されます。有給休暇を取得することも可能ですが、あなたの出席が求められています。無料の昼食が正午に提供されます。
会議室でお会いしましょう!
より良き職場への橋を掛ける、
-副社長、R・ベントレー
<関連文書終了>
[PTF D-4は2班に分けられた。第1班(ラフェリエール、ハリントン、ショルツ)がエレベーターで上階へのアクセスを試みている間、第2班(ウォーターズ、モーティス、ファーマー、D-004590)は廊下の先を探索している]
<ログ1.1開始>
ラフェリエール: エレベーターを見つけたぞ。
[ハリントンとショルツがエレベーターまで泳いでくる]
ショルツ: いつも火事の時は階段を使えって言われるけどよ、建物が水没したらどうするかって話は絶対に出てこないよな。
ハリントン: 水中で電気設備を使うというのは、あまり素晴らしいアイデアじゃないと思いますよ...
ショルツ: だが俺たちは上に行かなきゃならん。ともかく報告書によれば、機械は概ね防水されてるそうだ。
[3人は既に開いているエレベーターに泳いで乗り込む]
ラフェリエール: お好みの階数は?
ショルツ: 俺のラッキーナンバーは4なんだ。やってみないか?
ラフェリエール: いいだろう、それ相応の理由だ。 [沈黙] 上へ!
[ラフェリエールは操作パネルの4階ボタンを押すが、何も起こらない。ラフェリエールは再びボタンを押し、同じ結果に終わる。ラフェリエールは"閉"ボタンに強く指を押し付ける。何も起こらない]
ラフェリエール: パネルが故障してるらしい。
ショルツ: クソ。別のを試すか?
ハリントン: どうせダメでしょう。多分全部故障してます。
[ハリントンはエレベーターの天井まで泳ぎ、脱出ハッチを開ける]
ハリントン: うわぁ。
ラフェリエール: どうした?
[ハリントンは上部ハッチを通って泳ぎ出す]
ハリントン: 自分の目で見た方がいいでしょう。
[ラフェリエールとショルツはハリントンを追ってハッチを通る。エレベーターシャフトの内部に照明は無いが、チームの懐中電灯は、何本ものもつれた細いプラスチックチューブが上向きにシャフト内を延び、視界を遮っている様子を照らしている]
ラフェリエール: うわぁ、こりゃ確かに...
ショルツ: エレベーターが動かないのも当たり前だ。どうでもいいさ、泳いで行ける。
ラフェリエール: フン、他の選択肢は無さそうだな。まだ4階か?
ショルツ: 道が塞がってなければ。塞がってたら、向かえる限り高い階を目指す。
ラフェリエール: 一理ある。それで行こう。
[一行はチューブの塊の中を上向きに泳ぎ始める。間もなく、チューブが密集し始め、各メンバーは道筋から外れるのを避けるためにお互い手を繋ぐことを余儀なくされる。チームは約3分間、無言で上に泳ぎ続ける]
ショルツ: なぁおい、波を感じるか?
ハリントン: あなたもでしたか、ええ。何かが私たちの上で動いているような感じです。
ショルツ: だろうな...
ラフェリエール: かなり上昇したし、泳いで戻るのは気が進まないね。とにかく動きの原因を確かめに行こう。
ショルツ: あれはまるで... 何も無い空間? レスリー、少しだけあの角を電灯で照らしてくれないか?
[上部空間とシャフトの横壁が部分的に照らし出され、幅25m以上の広く何も無い空間があるのが分かる。ショルツは空間に近付き、通り過ぎる。カメラには通路のネットワークが映っており、その中心部では1つの白い袋(直径~14m)が何本もの複雑な機械仕掛けの腕によってリズミカルに圧迫されている。プラスチックチューブが袋の頂点から延び、エリアの壁の開口部を通してエレベーターシャフトに入り込むか、または機械を操作しているSCP-4029-1個体群に直接接続されている。エリアには床が無いらしく、下の空間は照らされていない]
ハリントン: 何これ。
<ログ1.1終了>
<関連文書>
- 文書4029-03:
文書4029-03は、SCP-4029の4階および5階の空きスペースにあるプラスチック空気袋の設計図のようである。設計図の一番下に以下のメモがある。
これで本当に動くのか? もしそうだとしても、こいつは俺たちが望む通りに動くだろうか? 俺たちはこいつに何をさせたい? こいつの機能は何だ? 何で俺はこんなもん作ってんだ? 何の意味がある?
<関連文書終了>
<ログ1.2開始>
[エージェント モーティスの頭部装着カメラには、推定200体のSCP-4029-1個体がいる広く開放的な部屋が映っている。部屋は殆ど照らされていないため視界は最小限だが、各SCP-4029-1個体の額には小さな電灯が外科的に埋め込まれている。SCP-4029-1個体群はモーティスの存在に反応しない]
モーティス: 指揮官? ファーマー? D-、えー、Dクラス?
ウォーターズ: どうかした?
モーティス: ここの部屋に... 人が大勢います。" -1 "ダッシュ・ワンだろうと思います。
ウォーターズ: ジャックポット。上出来、きっとあなた優秀なフィールドエージェントになるわよ。ファーマー、フレアの用意はできた?
ファーマー: ええ。準備万端です。
ウォーターズ: それじゃ、D、そこの入口に立って調査に備えてちょうだい。あいつらがどう反応するか全く分からないからね。
[沈黙]
ウォーターズ: D-004590?
D-004590: [呆れたような顔つき、親指を上げる]
ウォーターズ: 結構。モーティスは下がって。ファーマー、フレアを投げる準備を。
ファーマー: いつでもどうぞ、指揮官。
ウォーターズ: 投擲!
[フレアはゆっくりと弧を描いて部屋を横切り、あるSCP-4029-1個体の机に落ちる。問題の個体は反応を示し、机から飛び上がって、エージェントたちに向かって部屋を泳ぎながら横切る。近くにいる他の個体が軽く頭を回し、他1体が立ち上がるが、それ以上の反応を示さない]
ファーマー: 追撃者1名。D、撃退の準備を。
[SCP-4029-1個体(倒産以前の█████工業社に雇用されており、1929年に失踪したインターンのロバート・テイラーと外見上一致する)は部屋を半分まで移動した時点でよろめく。問題の個体は喉を押さえてもがき始め、直近にいた他の2個体が椅子から立ち上がって彼を拘束する。約2分後、問題の個体の身体から力が抜け、その場に浮かぶ。他の個体たちは各々のワークステーションに戻る]
モーティス: 酷いJesus。
[他のSCP-4029-1個体たちが拘束個体を手放して席に戻る。それ以上の活動は観察されない]
ウォーターズ: D、頼みが-
D-004590: [面倒臭そうに手を振り、親指を上げる]
[D-004590は死体の写真撮影とサンプル採取を開始する。この間に、モーティスとウォーターズは部屋の他の場所を調査する。ファーマーは入口に留まって出来事の詳細を記録している]
[特に何事も無く11分が経過]
モーティス: 特に際立って奇妙な物はありません。廊下が先に続いていて、エアコンが2台、この黒っぽい物体をもっと外へ排出しています。
ウォーターズ: こちらも同様。あなたの方はどう、ファーマー?
ファーマー: まだ書類仕事の最中です。次の機会が巡ってくるとは限りませんしね。 [沈黙] 畜生。
ウォーターズ: 言葉に気を付けてちょうだい。これでも公式記録なのよ。何が問題?
ファーマー: 退路を断たれています。数体のダッシュ・ワンどもが廊下を封鎖したのを今しがた目撃しました。どうやら奴らの迷路に閉じ込められたようだ。
モーティス: そんな。そんな、そんな嘘だ。この任務はただの生きた化け物オフィスビルの内部偵察であって、悪夢の権化みたいな異次元迷路探索じゃないはずだ。
ウォーターズ: そうなるかもしれないって-
ファーマー: 元気を出せ、若いんだから。どうしたって奴らは俺たちを取り巻いてる。奴らの示す道を行くか、さもなきゃどん詰まりだ。泣き言は止めて男らしく行動しろ。
[沈黙]
D-004590: [立ち上がり、他メンバーに身振りで同行を促す]
モーティス: あそこに戻るよりはマシかもしれません。どうしました、あなた?
D-004590: [上を指差し、右手で喉を抑える仕草]
ウォーターズ: 排気ダクト。天井のこの辺が少しずれてるみたい。よく見つけてくれたわね。
[ウォーターズはファーマーとモーティスに身振りで近寄るよう促す]
ウォーターズ: 私が中に入るから、後ろを見張ってて。空気の供給源が何であれ、ダクトを辿ってそこまで行けるかチェックしたい。
モーティス: つまり、あなたは潜在的な未探索ルートを両方捨ててまで — どちらを選んでも、暗くて危険な閉鎖空間が先にあるとは限らないのに — ダクトに這って入りたいと仰る?
ウォーターズ: そういう事。
モーティス: それはどうも-
ファーマー: 指揮官? 問題があります。排気ダクト内の絶縁性が... かなり込み入っている。
ウォーターズ: 何故分かるの?
[ファーマーは探査スーツから外付けマイクを取り外し、換気口に近付ける。マイクが中に入ると、録音が唐突に途絶える]
ウォーターズ: ああ。事実上のファラデーケージね。 [鼻をすする音] 中の電界はめちゃくちゃに違いないわ。ファーマー、一番上等な懐中電灯を持ってる私が最初に行く。
モーティス: あなたたち全員イカレてますよ。
ファーマー: 間違いない。でも今のところそれで上手く行ってる。よし、俺が後に続きます。
[ウォーターズ、モーティス、ファーマーが換気口に入る。D-004590は後に続かない。他メンバーは気付かない]
<ログ1.2終了>
<関連文書>
- 文書4029-04:
ハワードへ
こいつは一体何だ? […] まさかこんなのが良い考えだとでも思ったのか? 我々 […] このために給料を払って、こいつに飯を食わせる。貴様は何を考えていたんだ? 我々は移転をやってるとばかり思っていたよ。この建物、このオフィス、この街路。我々には別な錨なんて必要ない。そしてこいつが私を見つめる有り様はどうだ。ファック、こいつが私を見つめるあの目付き。私は全くこんな物は要らない。我々は全くこんな物を必要としない。エジプトで […] 。私を止めようとは思うなよ。貴様がこれを読む頃にはとっくに済ませてるだろうがな。
これは何もかも貴様のせいだ、忘れるな。 […] もこんなザマは喜ばないだろう。
<関連文書終了>
[音声通信は飛び飛びになり、映像は不定間隔で途切れ始めた。総計3時間分の映像の繋がりが失われている]
<ログ2.1開始>
[D-004590以外の第2班は、第1班との接触を断たれ、現在は壁を破壊しようと試みている。フレームの右上隅に開いた通気孔が見えており、一行は狭い閉鎖空間にいるように思われる]
ファーマー: [呻き声] あの... 指揮官... [呻き声] ここから脱出したら... あなたに苦情を言いたい。
ウォーターズ: [即興のハンマーとして使うため、机の一部を持ち上げる] 多分... そうだろうと思った。
ファーマー: 俺は今まで洞窟とか、迷宮とか... サーカスとか寺院とか空飛ぶ都とかポケットディメンションとか探索してきましたけど... 一度も、俺のキャリアの中で一回たりとも [呻き声] 戸棚に幽閉されたことは無かった。
ウォーターズ: 新しい事にチャレンジするのも悪くないじゃない? [沈黙] あなたも疲れてる、ミスター・ロボット?
モーティス: [クローゼットのドアにもたれ掛かり、目を閉じている] うぅう。
[ウォーターズは溜息を吐き、机の部品を落とし、モーティスに近寄って肩に手を乗せる]
ウォーターズ: あまりこの仕事向いてないんじゃないの?
モーティス: [かすかな痙攣に続き、様々な音程のクリック音を数回発する]
ウォーターズ: えっと、ファーマー。ちょっと来てもらえる?
モーティス: のぉぉぉぉぅぅう。ぃこ- こぁぎり。
ファーマー: どうしまし- おっと。ああ確かに、これは普通じゃない。
ウォーターズ: 何が起きたんだと思-
モーティス: い- い- い- のぉぉぉぅう。ざぃぁぁ- いぁりり。いますぅぅぐゅのう、ざ- ぃ- ぃぃぃ。ざいこかあぁぁぁぁ。
ウォーターズ: クソッ。これは... マズいわね。
モーティス: -ぐ入手可能。上昇志向。在庫限り。包括的ダイナミクス。ポ- ポ- ポートフォリオ。今すぐ入手可能、在庫限り。
[モーティスは身震いを始め、突然ファーマーに向かって片腕を伸ばす。視点移動により、モーティスの首の(以前は密封されていたはずの)接続ポートにチューブが挿入されているのが分かる]
モーティス: 購入購入購入!
[モーティスはファーマーに突進し、ウォーターズが机の破片を頭に投げつけて止めようとする。2人は足元のバランスを崩して回転し、その時点でウォーターズが再び殴りかかる]
モーティス: 株価、価、開始時の価値、そ- そ- そ- 相乗的諸経費!
[モーティスは痙攣しながらよろめき始め、ウォーターズに飛びかかってスーツの腕に穴を空ける。ウォーターズが悲鳴を上げ、ファーマーがモーティスの背後から飛びついて後ろに引き倒す。2人が激突した壁が割れて、空気で満たされた広い空洞に向かって液体を吸い出し始める。3人全員が壁の割れ目から外へと流し出され、映像が途絶する]
<ログ2.1終了>
<関連文書>
- 文書4029-05:
ぷりんたーがこわれてる
<関連文書終了>
<ログ2.2開始>
[第1班は2組に分かれており、機材の損傷でショルツとハリントンの録音機能が停止している。加えて、ラフェリエールの音声と映像は途切れ途切れであり、時折不明瞭になる]
[ハリントンとラフェリエールはログ1で発見した中央チャンバーにいるようだが、ショルツの映像には不明瞭な暗い形状しか記録されていない]
ラフェリエール: -俺たちがどう考えるかの問題じゃない。プロトコルによれば、チームの他メンバーとはぐれ、かつ速やかに再開できる状況でない時は-
ハリントン: [不明瞭]
ラフェリエール: 何だと? そんな事は- ああ、マズい。
[ラフェリエールは空気袋に顔を向け、それを囲む機械腕から3体のSCP-4029-1個体が降りてくるのを観察する。3体は全て痛んだ水浸しのスーツを着用している]
ラフェリエール: おい、確か抑止武器を持っていたのはジョンだよな? 俺の記憶が正しければ?
ハリントン: [不明瞭]
ラフェリエール: オーケイ、オーケイ。あー。 [マイクに向かって] 記録のため述べると、俺は今、俺自身とミス・ハリントンから成る暫定機動部隊デュプリク-4の小ユニットで、本来いるべき指導者に代わり指揮を取っている。俺-
ハリントン: [不明瞭]
ラフェリエール: そう、レスリー — ミス・ハリントンの事だが — 彼女はこの件について完全に同意している旨を俺に伝えてほしいそうだ。俺たちの現在の優先事項は、あー、脱出だ。根拠はMTFプロトコル、えー、オー・シックス・ダッシュ... ダッシュ・フォー? だ- だよな? [沈黙] とにかくこちらは、俺たちは出口を探して、あー、外に出られるよう最善を尽くす。そうだな?
ハリントン: [必死に頷く]
ラフェリエール: オーケイ、あー、良し。レスリー、あの端に並んでるドアを開けてくれないか、俺はその間ダッシュ・ワンどもを食い止めておく。
[ラフェリエールはSCP-4029-1個体群に向き合う。映像は音声・映像ともに空電のため解読不能になる]
<ログ2.2終了>
<関連文書>
- 文書4029-06:
島を回り込んで、 […] オフィスの引き出しを調べなさい。何本かペンがあります。役に立つでしょう。 […] ベントレーは何も知りません。無駄にする時間は無い
- 文書4029-07:
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そこに誰かいますか? 生存者はいませんか?
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スペイン支社を呼び出し中です、フランス支社を呼び出し中です、アメリカ支社を呼び出し中です
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そこに太陽はありますか、空はありますか、誰か何かを知っていますか?
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イギリス支社を呼び出し中です、カナダ支社を呼び出し中です、ドイツ支社を呼び出し中です
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こちらはエジプト支社です、他国支社を呼び出し中です、誰かハワードが何処に行ったのかを知りませんか?
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皆が何処へ行ってしまったのかを誰か知りませんか?
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[…] 呼び出し […]
この文書は更に2/3ページ続くことが示唆されているが、広範な水害によって残りは判読不可能になっている。
<関連文書終了>
<ログ2.3開始>
[映像記録無し]
D-004590: [荒い呼吸]
[何かを削る音と、静かなウィーンという音が聞こえる]
D-004590: [荒い呼吸、ゆっくりと衰えて静かになる]
<ログ2.3終了>
<関連文書>
- 文書4029-08:
文書4029-08は、動物の身体部位を再現した油圧装置のスケッチが幾つか描かれているプリンター用紙の切れ端である。具体的にはイヌの顎、ネコの爪、カニの脚、魚の尾が描かれている。スケッチにはそれぞれ1、2、3、4の数字が振られている。文書には署名があるものの、水害で判読できない。
<関連文書終了>
[この時点で、映像は劣化のあまり著しく断片化している。ここでは様々な部分的場面が記録されている]
<ログ3.1開始>
[映像はSCP-4029の監視メインフレームに接続されているようである。しかしながら2分後まで視界は復帰しない。映像が晴れると、独立したオフィスが映る。紙と衣服が室内に浮かんでいる。15秒後、ドアが揺れ始める。ドアは勢いよく開き、ショルツが現れる]
[ショルツは急いでドアを閉め、身体を押し付けて開かないようにする。20秒後、ショルツはゆっくりとドアを開けて隙間から室外を覗き見る。その後、彼はドアを閉めて後ずさりで離れる。ショルツはゆっくり室内を泳ぎ、浮かんでいるゴミ類に目を走らせる]
[ショルツは浮かんでいる1本のネクタイを取り上げて調べる]
[ジョン・ショルツはゆっくりと、完璧に、ネクタイを首周りに結ぶ]
ジョン: [不明瞭]
<ログ3.1終了>
<関連文書>
- 文書4029-09:
文書4029-09は、SCP-4029換気システムの現行モデルに類似する、改造された換気システムの設計図である。設計図は完成しているが、水害で半ば判読不可能になっている。設計図の一番下に以下のメモがある。
█████工業は僕たちを養うだろう。█████ […] 僕たちを大事に思ってくれるだろう。█████工業は僕たちのために与えてくれるだろう。何もかもきっと大丈夫になる。 […] 何もかもきっと大丈夫になる。僕たちはきっと何もかも大丈夫にする。 […]
- 文書4029-10:
この会社は何をするのだろう?
<関連文書終了>
<ログ3.2開始>
[エージェント モーティスに移植されたカメラが起動し、SCP-4029-1個体群のワークステーションを収めた窪みが壁に並んでいる円筒形の空間を映し出す。モーティスは上方に視線を傾け、そこに中央チャンバーと空気袋があるのを明らかにする。空気袋は微かに発光しながら天井に吊り下げられている]
モーティス: ハロー?
[モーティスは自らの腕に視線を向ける。腕は差し伸ばされ、壁の穴に入り込んでいる。]
モーティス: あ... 嗚呼...
不明: [空電音] ハロー [不明瞭]
モーティス: ハ- ハロー? 指揮官、ファーマー? ラ- ラフェリエール?
不明: [不明瞭]電話相談窓口へようこそ。私たちの製品やサービスの技術援助をご希望の方は1を- [空電音] 2を- [空電音] 形而上学的ア- [空電音] 関連の懸念がある方は9を押- [不明瞭].
モーティス: えーと、9?
不明: 申し訳ございませんが、このサービスは現在ご利用いただけません。 後ほどまたのお試しを [沈黙] お願い致します。
不明: 後ほどまたのお試しをお願い致します。
不明: 後ほどまたのお試しをお願い致します。
モーティス: 何を-
不明: 後ほどまたのお試しをお願い致します。お試しをお願い致します。 [沈黙]
不明: お願い致します。お願い致します。お試しをお願い致します。またのお試しをお願い致します。お願い致します。後ほど。またのお試しをお願い致します。お願い致します。お試しをお願い致します。お願い致します。 [音声は29分間繰り返された後、唐突に途絶える。この間、エージェント モーティスは沈黙を保っている]
<ログ3.2終了>
<関連文書>
- 文書4029-11:
そこ […] 。 […] 流動資産 […] でもそれで良いんだ。鍵はマットレスの下にある。でもベンには言うな。どんな運びになるか分からないが、私たちはこれを重大事だと考えている。理解しろ。君が私に会うことはもう無いだろう。無益に […] 確認してくれ。君は […] 無駄に […] 行って、 […]
- 文書4029-12:
従業員契[…]
アンドリューズ、ロイ: "私は […] 諾し、企業構造内における私の地位を支持することに同意します"。
アルトン、コリン: "私は契約を承諾し、企業構造内における私の地位を支持することに同意します"。
アルドゥス、サラ: "私は契約を承諾し、企業構造内における私の地位を支持することに同意します"。
[…]
ラフェリ[…]、ヴァンス: "私は […] における私の地位を支持することに同意します"。
ルウェリン、ハリエット: "私は契約を承諾し、企業構造内における私の地位を支持することに同意します"。
マンフォルド、デクスター: "私は契約を承読承諾し、企業構造内における私の地位を支持することに同居同意します"。
マンフォルド、トーマス: "私は契約を承諾し、企業構造内における私の地位を支持することに同意します"。
マロリー、リチャード: "私は契約を承諾し、企業構造内における私の地位を支持することに同意します"。
スタントン、バート: "私は契約を承諾し、企業構造内における私の地位を支持することに同意します"。
マイケルズ、サミュエル: "私は契約を […] 、企業構造内における私の地位を支持することに同意します"。
文章は同じようにして数ページ続き、ホチキスで綴じられている。文書が先へ進むにつれて水害が増している。
<関連文書終了>
<ログ3.3開始>
[エージェント ウォーターズとファーマーは共に、使われていない休憩室または従業員ラウンジらしき場所にいる。数体のSCP-4029-1個体が存在し、いずれも壁に顔を向けている。視認可能な出口は無い]
ファーマー: [荒い呼吸] 指揮官?
ファーマー: 指揮官、そこにいますか?
ウォーターズ: ええ、ええ、こ- ここよ。心配しないで。あなたを一人にはしない。
ファーマー: その- こいつをちょっと見てほしいんです。
ウォーターズ: 何を- これは何?
ファーマー: 編集処理だとは思いませんね。
[ファーマーは自らのカメラを部屋の壁に向ける。2029年09月22日開催予定の█████工業社セミナーの広告が貼られている。ウォーターズは手で社名に触れる — 手を離すと、黒い長方形の部分は粘着質な黒い物質で構成されているのが分かる]
ウォーターズ: うわ。うわぁ、不気味。研究用のサンプルを採取する元気はある?
ファーマー: はい、はい。
[ファーマーは黒い長方形の部分を掻き取る。長方形は剥がれ落ちるが、何も映らないうちに映像が途絶する]
不明: [不明瞭]
<ログ3.3終了>
<関連文書>
- 文書4029-13:
文書2049-13は、SCP-4029の脚に動力を供給する油圧システムの、未完成の設計図のように見受けられる。文書は"プロジェクト・ロケーション・ロケーション・ロケーション"と題されている。設計図の一番下に以下のメモがある。
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そしてもし彼らが我々の所へ来ないのなら、我々が彼らの所へ向かう
<関連文書終了>
<ログ3.4開始>
[ラフェリエールは一人きりで探索を続けようとしている]
ラフェリエール: なぁ?
[沈黙。廊下には誰もいない]
ラフェリエール: 頼むよ? 出してくれ、頼む、俺は-
[再び沈黙。この間、ラフェリエールは廊下を彷徨い歩き続け、壁に掛かった数枚の写真を調べるために短時間立ち止まる]
ラフェリエール: じゃ... じゃあ彼がこれをやったのか? そいつを取り上げて、これを後に残して去ったのか?
不明: [不明瞭]
ラフェリエール: ああ! ようこそ! 何か、あー、何かしたいのかな? い- 一緒に? この場所がちょっと形而上学的にぶっ壊れてるのは知ってる — それについて、は- 話そうか!
不明: [不明瞭]
ラフェリエール: [立ち止まってドアの中を覗く。ドア奥の室内はSCP-4029-1個体で埋まっている] すまないが、俺は- それについては実際何も知らない。アンタが知らないような事はもう何も無いだろう。少し... 少し後で訊いてくれないかな? 俺は自分で何とかしようとしてるんだ。
ラフェリエール: 後でもう一度訊いてくれ。それと、頼む... 俺をここから出してくれ。試し続けろ。後でもう一度試してくれ。頼む。
不明: 何?
ラフェリエール: 頼むから後でもう一度試してくれ。頼むから後でもう一度試してくれ。頼む。頼むから俺を出してくれ。頼むからもう一度試してくれ。頼む。ここから出してくれ。後でもう一度試してくれ。頼む。頼む。頼むからもう一度試してくれ。頼むから後でもう一度試してくれ。 [エージェント ラフェリエールはこれを29分間繰り返した後、唐突に沈黙する。この間、他の如何なる音も記録されていない]
<ログ3.4終了>
機動部隊員7名のうち5名は、翌週土曜日の休眠期間中、裸体かつ無意識の状態で-4029のエアロック内から発見された。探索機材は現在まで回収されていない。ファーマーとウォーターズは斑状に皮膚が変色し、さらにファーマーは左目を恒久的に失明していた。モーティスは身体の化学組成やSCP-4029内で過ごした時間と一致しない酸化を示しており、左腕と腹部パーツの一部を失っていた。ハリントンは回収後間もなく致命的な心臓発作を起こした — 死因は大量の標準的なオフィス用ホチキス針が全ての主要な動脈に存在したためと断定された。ショルツは無傷で発見された。エージェント ラフェリエールは回収されておらず、ヒレンバーグ博士の監督の下で再配属が保留されている。D-004950は建造物内に留まっているものと推定されている。
補遺1998年12月06日 | SCP-4029の劣化:
異常に長期間の休眠(1週間)の後、SCP-4029の上部を構成していた建造物は、天候による損傷の蓄積が原因となって崩落しました。建造物内からは明らかに全ての貴重・複雑な構成要素が除去されており、液体は排出されていました。28体の死体と共に、1体の女性SCP-4029-1個体が瓦礫から回収されました。心的外傷のため、対象からは有益な情報を得られていません。しかしながら、対象は以下の手紙を所持した状態で発見されました。
- 文書4029-14:
ベントレーへ
█████工業はもう存在しない。君は幽霊のために働いている。君の居場所からは見えないだろうが、もう誰も我々の名前すら覚えていない。私は敢えてそう望んだ。事実、もう誰も私を記憶していない。
しかし、君はその無意味な仕事から離れられる。君の無意味な人生から。実在から。それが君にとってどれほどの困難か我々は分かっている。毎日の出世競争。終わりの無い重労働。恐ろしいほどの単調さ。君が必要とすらしない馬鹿げた退屈な事をして給与を受け取るためだけの、九時から五時までの不愉快で馬鹿げた仕事。より壮大な何かの一部になるのに憧れて君の中で疼く虚無を満たすことはできない。いや、もうそれは憧れではない。君も気付いているはずだ。
きっと怖れているだろう。不安がっているだろう。心配する必要など無いと伝えるために、私が此処に居る。君は既にそれを感じるかもしれない。まぁ確かに、この水準まで身を屈めなければならないのには閉口させられる。だが心配しなくていい。君にも理解できる言語で話しかけるつもりだ。今まで自分が話せるとは思ってもいなかったであろう言語。人間を超越した人間にぴったりの、言語を超越した言語。
上級管理職へようこそ。
敬具、ハワード
これらの発展に加えて、SCP-4029の機械的下部は完全に失われており、東に向かって地質学的な擾乱の跡が残されていました。Keter分類は留め置かれたまま、研究が進行中です。
以下のログはレベル3アクセス可能記録から省略されました。以下がどのように、何者によって記録されたかは不明です。埋め込まれたタイムスタンプはこのログが1930年3月29日に記録されたことを示し、その時代に適切な白黒画像です。この意義は現在不明です。
<ログ3.5開始>
不明: うーん...
[頭部装着型のカメラが、書類を乗せた机を映している。全ての書類はアラビア語エジプト方言で記されているが、少なからぬ単語(約35%)は検閲されている。判読できる幾つかの単語は"参考"、"以前の職歴"、"この会社での在籍年数"、"現在の社内での地位"などと翻訳できる]
不明: [溜め息]
[不明人物は黒色の手の中でペンを回す。書類の左側に視線が軽く動き、母親・父親・娘が写っている1枚の写真が見える。全ての人物の顔は検閲されている]
不明: [鼻唄を歌う]
[不明人物は書類への記入を開始する。ペンが書類に触れると、インクがあらゆる方向に流出し始める。これによって不明人物が書いた文言は検閲される。視点が書類の山の中を動きながら、これが1時間18分続く]
[やがて記入が完了する。不明人物は深く息を吐く。不明人物は全ての書類を掴み、整然とした1つの束に纏める。右側に視線が軽く動き、机の上に置かれた"ロバート・ベントレー"というプラカードが見える]
不明: [不明瞭な呟き] できた。
[不明人物が机から顔を上げると、そこには長く、照らされておらず、水が満ちた廊下がある。廊下は藻と海藻で満たされている。不明人物は廊下に向かって書類を掲げる。廊下の終端にあるドアが開く]
[映像が途絶する]
<ログ3.5終了>