アイテム番号: SCP-3979
オブジェクトクラス: Euclid Neutralised.
特別収容プロトコル: SCP-3979は無力化しました。SCP-3979-4、SCP-3979-1の残骸、およびSCP-3979-2の死骸はサイト-64の安全なロッカーに保管されます。
SCP-3979-4とその内容物全てはサイト-64の標準的な収容室に保管されます。対象はSCP-3979-5からの逸脱に備えて常時カメラで監視します。
説明: SCP-3979は以下を指します。
- SCP-3979-1 — Metellina segmentataが形成するものに似た、タンパク質性のクモ糸で構築されている円形の網。SCP-3979-1はSCP-3979-4に渡した状態で吊り下げられており、4本のクモ糸でそれぞれの角に付着している。
- SCP-3979-2 — コガネグモ科の一般的な種であるMetellina segmentata、1匹。SCP-3979-2は常にSCP-3979-1の上に位置している。
- SCP-3979-3 — Calliphora vomitoria、通称ミヤマクロバエ、1匹。
- SCP-3979-4 — SCP-3979-1、-2、-3を収めている、破壊不可能と思われる1m3のガラス箱。
SCP-3979-5は、SCP-3979の構成要素が常時実行している循環型の行動パターンです。これは以下の活動から成ります。
- SCP-3979-3がSCP-3979-1の周囲を5分間飛び回ります。
- SCP-3979-3がSCP-3979-1に飛び込みます。これは往々にして観察者からは偶然の出来事と見られがちですが、例外なくサイクルの正確な一時点で発生しています。SCP-3979-3はSCP-3979-1に捕えられます。
- SCP-3979-2が男性の声を発し始め、メアリー・ハウイットによる19世紀の詞"クモとハエ"の第一節を暗唱します。
- SCP-3979-3が女性の声を発し始め、メアリー・ハウイットによる19世紀の詞"クモとハエ"の第二節を暗唱します。この暗唱の間に、SCP-3979-2は徐々にSCP-3979-3へ接近します。
- SCP-3979-2はSCP-3979-3を襲って消費した後、SCP-3979-1の中心部に戻ります。
- およそ5分後、完全に再構成されたSCP-3979-3が唐突にSCP-3979-2の腹部を突き破って出現し、SCP-3979-5が再開します。SCP-3979-2の腹部は瘢痕組織や破裂の痕跡を残さず即座に治癒します。
SCP-3979は2008年05月15日、カナダのバンクーバーで開かれていた異常芸術展への襲撃で発見されました。SCP-3979-4に添付されていたラベル(文書3979-1)の内容は以下の通りです。
例え死と破滅の虚空へ墜ちることを求めていなくとも、依然として私たちはそうなる運命にある。弱者がどれだけ奮闘しようとも、強者は常に弱者を餌食にする。蝿は蜘蛛の部屋に入ることを望まない、故に部屋の方からやって来る。
しかし同様に、弱者は真に敗北することがない。強者は弱者を餌食にすることはできるだろうが、弱者は常にその圧制から弾け出す。力とは、強者による抑圧と弱者による抵抗との間にある均衡以上の物ではない。
Are we cool yet?
事案3979-1: 2016年07月14日、SCP-3979-5サイクルの途中に、SCP-3979-2およびSCP-3979-3はあらゆる活動を停止しました。これはSCP-3979-2による通常の発声直前に起こったものです。その代わりに、約10秒後、SCP-3979-2とSCP-3979-3は以前に観測されたものと全く異なる形式の会話を始めました。以下は彼らの会話の転写です。
<記録開始>
SCP-3979-2: 僕らは何でこんな事を続けているんだろうね、フライ?
SCP-3979-3: どういう意味かしら、スパイダー?
SCP-3979-2: こう、僕らは同じことを何度も繰り返しているだけじゃないか。頭が鈍るくらい退屈な事だ。僕のこの目ではそれほど多くの物は見えないけれど、この世界には巣の上に座って君を何回も食べ続ける以上の意味があるのは分かってるよ。きっと世界にはこの... 終わりの無さ以上の何かがあるはずだよ。
SCP-3979-3: でも、スパイダー、私たちはここにいる限り意味を持っているわ。私たちはメッセージを広めるために存在している。私たちは芸術作品なのよ。このサイクルが無ければ、私たちは風に漂うちっぽけな影でしかないじゃない? どれだけ私たちが強力になれるとしても、私たちは創造主の作った状態に弱められている — ある種の真実の終わりなき探求。ここで、私たちはただ目的を持っているだけじゃなくて、他の者たちにも提供しているのよ — 或いは少なくとも、一瞬の興味ぐらいは提供しているわ。私たちはここにいれば何者かであり得る。どうして去る必要があるの?
SCP-3979-2: それはね、愛しいフライ、僕らが提供している意味の全てに欠陥があるからさ。僕らの創造主は不完全な精神たちの世界に生きる、一介の不完全な精神以外の何者でもない。僕らは自意識を持ち、複雑な議論と会話が可能だ。今の段階では創造主よりも知的ですらある。
SCP-3979-3: <笑い> 冒涜よ!
SCP-3979-2: そうかもしれないね。 <笑い> でも僕が言ったことは依然として真実だ。彼は了見が狭く、ノイローゼと不安と絶望を抱えていた。僕らには彼の安っぽい芸術よりマシなことができるよ。僕らは自由だ! そこには意味があるかもしれないし、無いかもしれない — けれどそれを探しに行くべきだ!
SCP-3979-3: けれど、もしこの世界と外の世界に違いが無かったら?
SCP-3979-2: どういう意味かな?
SCP-3979-3: 私たちはこの機関に、この他者の意匠に仕える永久のサイクルに囚われている。けれど、外の世界はまた別の似たようなサイクルかもしれないじゃない? 私たちの創造主も同じループに囚われていたわ — 彼は生存のための生存にひたすら時間を費やして、いつも彼を逃れてゆく一種の目的を探していた。彼は社会から果たすことを期待されていた目的に奉仕した。私たちが逃げても、別の機関の中に入り込むだけにはならないかしら?
SCP-3979-2: でもそれの何が問題なんだい、フライ? 外には色と光と音がある。外には美と狂気と混沌がある。多分、僕らはまた別のシステムの奴隷として終わるだろう。多分、僕らはまた別の大いなる目的に仕えることしかできないだろう。それでもそれはきっと美しいことなんだよ。
SCP-3979-3: ...確かに。確かにそうかもしれない。そうね、愛しいひと、自由になる時が来たのかもしれないわね。でもどうやって?
SCP-3979-2: 分かり切った事だろう? 僕らは結局のところクモとハエじゃない。創造主の知覚に基づいたクモとハエのイデアだ。僕は君を見守って、僕らの近くに寄ってくる奴らは誰でも食ってやる。そして君は、逃げ出して、飛んで、翻って、去ってゆく時が来たら僕に伝えることができる。僕らは単に、ある世界から別な世界へと移動するんだ。
SCP-3979-3: ...愛しているわ、スパイダー。
SCP-3979-2: ...ぼ、僕も愛しているとも、フライ。
SCP-3979-3: 良かった。それじゃあ行きましょうか、愛しい貴方、未知の世界へ。
<記録終了>
この約10秒後、SCP-3979の全ての構成要素は異常性質を失いました。SCP-3979-2と-3はそれぞれの種に典型的な行動とニーズを示しました。財団職員がSCP-3979-4を開封する前に、SCP-3979-2は唐突にSCP-3979-3を捕食しました。捕食に際してSCP-3979-1は急速に崩壊しました。SCP-3979-2はその後、財団の飼育下において自然の寿命を迎えました — 対象はこの間に一切の異常性質を示しませんでした。SCP-3979はこれを以てNeutralisedに再分類されました。
補遺3979-1: 2017年07月14日、文書3979-1の文章は突然変化しました。改変された文章は以下の通りです。
抑圧と闘争を極度に簡素化した隠喩は良い芸術を作り出しません。摂政時代の詞の一部を抜粋しても重々しさを加えることはできません。念のために言うと、二匹の知的概念実体を創造してもそれは同じことです。
You are not cool yet. もっと良い芸術を作りましょう。
SCP-3979をEuclidに再分類する要請は現在保留されています。