SCP-3949-JP
評価: +23

クレジット

タイトル: SCP-3949-JP - セント・エデン戸籍管理課待合室
著者: Poliknown2 Poliknown2
作成年: 2025

評価: +23
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アイテム番号: SCP-3949-JP

オブジェクトクラス: Terminal-Safe

特別収容プロトコル: SCP-3949-JP領域内は保全され、財団に所属していない人物の立ち入りは禁止されます。園芸部門及び希望する職員は、SCP-3949-JPの維持を行うことが可能です。また、定期的にSCP-3949-JP内に50本前後の花を植えてください。

説明: SCP-3949-JPは、サイト-81██内の中庭(SCP-3949-JP-1,以下領域)と、そこに生育する花(SCP-3949-JP-2,以下花)の総称です。SCP-3949-JPの特異な点は、領域内に生育する花の成長速度及びその限界の異常にあります。領域内に生育する花は成長速度が非常に早く、萌芽からおよそ1日ほどで開花まで到達します。しかし、花はその後急速に色味や水分等を失い、萎れた状態で固定されます。この状態になった花は基本的に外部からの干渉を受け付けず、恒久的にその場に咲き続けます。

SCP-3949-JPは1990年にサイト-81██が建造された際に発見され、以降園芸部門及び有志により保護されてきました。しかしその過程において花の状態が改善することは無く、特筆すべき変化として記録されているのは2009年09月16日に発生したサイト間大規模収容違反インシデント(通称"嘆きの水曜日"事件)後日の一例のみです。この事例においては、インシデント発生直後から終了後数日間の間領域内の全ての花が一斉に萎れ、枯死寸前の状態となりました。これを受け、インシデント復興委員会はサイト職員の士気向上のため植花企画を立ち上げ、2009年10月01日にこれを実行しました。その結果として、領域内に元々植わっていた花の状態の改善と、新たに植えられた花の状態悪化の程度の軽減が見られました。またその後日、財団はこの現象に関連すると目される内容の書簡を受け取っています。

補遺1: 不明な団体から送付された書簡

SCP財団様
拝啓

秋涼の候、皆様には益々ご健勝のこととお喜び申し上げます。

さて、このたびは死亡戸籍管理登録課への設備寄付をいただき、誠にありがとうございました。皆様のご寄付により、霊魂登録待機列の整理及び業務の円滑化などの改善が為されました。大変感謝しております。

頂戴いたしましたお花は、死者登録業務のために大切に使用させていただきます。皆様の温かいご支援が、天界の発展と住民の福祉向上に大きく寄与しています。

今後とも死亡戸籍管理登録課をどうぞよろしくお願い申し上げます。ご支援に心より感謝申し上げるとともに、皆様のますますのご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

敬具


セント・エデン 死亡戸籍管理登録課

SCP-3949-JPへの植花との関連性が不明なため、送信元の調査が行われました。しかし基底現実内の捜索はいずれも失敗に終わったため、財団フランス支部の協力のもと死後世界探検家の協会へと協力要請が為されました。

補遺2: 死後世界探検家の協会メンバーによる探査ログ

探索者: ローラン・グロセ協会員


[記録開始]

ローラン協会員: それでは、記録を始めます。

[周囲は光に満ちている。前方には階段が見え、その周囲に多様な花が咲いている。それらは一様に萎れている。]

[階段には半透明な実体による行列ができている。人が多いが、一部動物やアノマリーと思われる実体も見受けられる。]

[周囲の花の内部から同様の実体が次々と発生し、列に並んでいく。]

ローラン協会員: ここの警備とは顔見知りなので、正面から入ります。あ、どうも〜。

不明な実体-1: おう、久々だな。今日は何しに来た?

ローラン協会員: ちょっとお宅からの手紙に関するお問い合わせってやつをしに来ました。通っても?

不明な実体-1: もちろん。並んでるのは戸籍登録待ちのやつらだけだし、お問い合わせ窓口使うのはあんたら協会のやつらくらいだしな。こっちだ。ついてこい。

ローラン協会員: ありがとう。しかし、いつ見ても凄い行列だな。

不明な実体-1: そうだな。ここは地球だけ担当してるからまだマシだが、それでも最近増えてるんだ。受付の奴らがずっとピリピリしてて俺もあんまり近づけない。一応現世にも待合室は置いてるんだが、そっちもギリギリでな... たまに入れなかった奴の魂が彷徨って幽霊騒ぎになるし、困ったもんだ。

[協会員は実体-1の誘導により階段を上る。正面には巨大な扉がある。扉は解放されているが、内部からの発光によりその先は視認できない。]

[実体-1が右折し、協会員がそれに追従する。大扉の横に一般的な大きさの扉があり、両者はその中へ入っていく。]

[室内には一つの窓口があり、女性のように見える実体が座っている。]

不明な実体-2: こんにちは。セント・エデン死亡戸籍管理登録課です。どのようなご用件でしょうか?

ローラン協会員: 実はある団体から問い合わせが来ていまして。ここから手紙が来たけど、何のことだか分からないらしいのですが...

[協会員が実体に書簡を見せる。]

不明な実体-2: あ〜〜〜〜、これですか。確かに説明不足でしたね。規則で定型文から外れすぎた手紙は送れないので、申し訳なかったです。口頭でもお伝えしますが、要点はまとめてお渡しします。

ローラン協会員: ありがとうございます。それで、この手紙は一体どういうことなんです...?

不明な実体-2: 現世のSCP財団という組織からご寄付を頂いたので、そのお礼です。寄付というのは、彼らが植えてくださった花のことですね。入口の階段脇にあるものと同じやつです。現世の死者の方々の魂を吸い寄せて貯蔵し、こちらの待機列が空くまでお待ちいただく待合室のようなものですよ。まあ、最近はずっと無理させてるので枯れてきてますが...

ローラン協会員: なるほど。それで、財団が花を植えたから設備寄付扱いとなってお礼の手紙が。

不明な実体-2: そういうことです。その直前にあの辺りで大量に人死にが出てたみたいなので、本当に助かりました。基本的に花畑にはこちらからの干渉は出来ないので、増やそうと思っても自然繁殖に任せるしかなくて...

ローラン協会員: そういった事情だったのですね。財団の担当者の方にお伝えいたします。

不明な実体-2: ありがとうございます。こちら要約メモになります。

[実体-2が協会員に紙片を手渡す。協会員はそれをポケットにしまう。]

ローラン協会員: お忙しいところご対応いただきありがとうございました。

不明な実体-2: いえいえ、普段問い合わせ来ることなんてほとんどないので大丈夫ですよ。また何かお困りのこと等ありましたらお気軽にお越しください。

不明な実体-2: ああ、それから。似たような花畑は世界各地に点在してるので、可能であればそちらの保護もお願いしたいというのもお伝えいただけるとありがたいです。

ローラン協会員: 承知しました。

実体-2: Gabriel、あなたにはこれを。

[実体-1が別の封筒を受け取る。実体-1が内容を確認する。]

[協会員はお辞儀をし、実体-1と連れ立って部屋を退出する。]

実体-1: 聞きたいことは聞けたか?

ローラン協会員: ええ、ばっちりですよ。ところで、待合花はそんなに足りてないんですか?

実体-1: まあ、そうだな。昔はもっと数も多くてどの花も生き生きしてたんだが... 現世で開発が進んで花は減るわ、戦争で人は死ぬわで正直かなり酷い。うちの課の奴も何人か過労死したんだ。人間には早いうちに誰も死なない世界を作ってもらいたいね。

ローラン協会員: ちょっと待ってください、天使が死ぬんですか?

実体-1: ああ。普通の方法なら無理なんだが、激務に耐えかねた奴らがどこからか過労死の概念を持ってきてな。それを自分に注射して、ころりと逝っちまった。死んでその先どうなるのかは分からねえ。死亡戸籍管理登録課にも来てないんだ。

ローラン協会員: そんなことが... その件は財団に伝えても大丈夫な情報ですか?

実体-1: 構わないさ。知られてもどうってことないし、どうせこっちじゃ皆知ってることだ。

ローラン協会員: 分かりました。あ、私はこの辺で。そろそろアクセスポイントに着く頃です。

実体-1: ちょっと待て。私もついていってもいいか?

ローラン研究員: 急に何故です?

実体-1: 死んだ人らを延々と眺めるのには飽きたってのが一つ。もう一つは、課の方からの出張命令を受けたからだ。あんたの依頼主のとことの連絡員だってよ。

ローラン協会員: なるほど。ようこそ、現世へ。

[記録終了]

以下はローラン協会員の持ち帰った要約文書です。

1,花は周囲の死者の魂を取り込む性質を持つものである。
2,貴施設の中庭は死亡戸籍管理登録課が管理していた待合室のようなものである。花に取り込まれた魂は、死後世界への入場手続きが終わるまで内部で待機する。
3,昨今は人口及び死者数の増加によって死亡戸籍管理登録課は死者が出るほどの過労状態である。従って待機列は長くなり、花までもが満員状態となっている。
4,そのような状況において、先日の植花は非常にありがたかった。また、普段から花畑の維持を行って下さっているのは知っている。こちらに関しても深い感謝を述べさせていただきたい。

以上の情報を受け、サイト-81██の有志職員がSCP-3949-JPの保全及び植花を行っています。また、同様の異常性を持つ領域の探索が進行しています。

また、死亡戸籍管理登録課より派遣された人型実体はGabrielを名乗り、財団への参加を求めました。現在はサイト-81██の渉外部門で雇用されています。

追記1: 情報更新(記: Gabriel)
20██/██/██、世界全域でΩK-クラス("死の終焉")シナリオの発生が確認されました。これは叡智圏上で死の概念が消失したことに起因するとされています。そのため擬液相性致死的事象に代表される死の概念抽出体等も消失しており、ごく一部のオブジェクトを利用した場合を除き全ての生命体は死亡状態へ移行することが不可能となりました。SCP-3949-JPはその性質を理由にシナリオ発生当初から経過観察が行われ、その結果領域内の花の状態が徐々に回復している様子が確認されました。以降新規の植花は最低限に留められます。

追記2: 情報更新(記: Gabriel)
2018年12月05日、自殺願望を含む伝染性ミームの発生が確認されました。この際マナによる慈善財団により安楽死サービスが全世界に向けて提供され、その結果として2019年03月05日までに人類の98%が天界入場列へと参加し極度な拡大を招きました。現在SCP-3949-JPは完全に萎れており、最低限度の生命活動のみ確認されています。

なおこの際私は天使の持つ特性により自死が不能であったため、これより死亡戸籍管理登録課に帰還します。現在の待機者数推定死者数は███████████名と推測されます。こっちに来る前に過労死した奴らと一緒に死んでいればよかった

脚注
. アイテムは人間が死亡した際、当該人物の精神・霊魂等に関するアイデンティティを吸収します。また、吸収されている魂は財団の直接的なコントロールを受け付けません。
. 待機列から溢れて霊体として顕現している者を除く。
ページリビジョン: 6, 最終更新: 11 Sep 2025 14:21
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