SCP-3910
評価: +1

クレジット

タイトル: SCP-3910 - 喜劇
翻訳責任者: walksoldi walksoldi
翻訳年: 2025
原題: SCP-3910 - A Comedy
著作権者: Sly161 Sly161
作成年: 2017
初訳時参照リビジョン: 19
元記事リンク: SCP-3910

評価: +1

アイテム番号: SCP-3910

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-3910はサイト-16の施錠された収容ロッカーに保管します。ウィリアムズ博士から許可を得ていない限り、収容下からSCP-3910を取り出すことは認められません。

説明: SCP-3910は9本の色チョークが入った箱です。箱の外装は橙色であること以外にマークや同定可能な特徴は存在しません。SCP-3910の中には9本のチョークの他に、9色のシンボルが記載された1枚の紙も同梱されています。各シンボルはSCP-3910内から発見されたチョークの色に対応していると思われます。

チョークの色はそれぞれ黒、ピンク、茶、黄、赤、紫、橙、緑、青です。チョークは継続して使用・試験してもなお一定の大きさを保っています。SCP-3910の主となる異常性は、紙に記載されたシンボルを適切な色のチョークで任意の表面に描画した際に発現します。

シンボルを完成させると、そのシンボルを描画した表面に形状や大きさの異なるドアが出現します。ドアの先はポケットディメンションだと推測される空間に通じており、その内部は描かれたシンボルに応じて変化します。実験により、ポケットディメンション内における事象の中にはカメラに記録されないものも存在することが示されています。そのため、実験はDクラス職員を利用して実施されました。詳細については以下の表を参照してください。

チョークの色 出現するドアの説明 ポケットディメンションの説明
ガラス製のスライド式自動ドアが実験室の壁に出現した。ドアの先の視界は白く濃い霧で遮られていた。 進入した被験者は車両管理局に類似した建物の中に出たが、そこに人は存在しなかった。建物内部の開いたドアは同一の部屋の "複製" に通じていた。約5 km移動したが、建物のレイアウトには何の変化もなく、その後探査は終了した。
ピンク 赤い納屋のドアが実験室の壁に出現した。 詳細については探査ログ3910-2を参照。
不明な樹皮でできた木製のドアが研究室の壁に出現した。 被験者は沼地に出た。内部は様々な状態の水が絶えず降り続ける天候となっていた。雨や雪、雹が同時に降っていたのが記録された。この空間で発見された特筆すべき物体は、腐敗した家畜ブタ (Sus domesticus) の死体のみであった。約3 km移動した後で探査は終了した。
銀行の金庫のドアに似た金属製の大きなドアが実験室の壁に出現した。 被験者はインディアナポリス・モーター・スピードウェイの正確な複製に出た。トラック上では2台の車が正対して駆動していたと報告された。これらの車はのちにブガッティ・ヴェイロンとフォルクスワーゲン・ビートルであることが確認された。2台の車は約30秒ごとに衝突し、重度の物理的損傷を負っていた。双方の車はその後反対側を向き、見たところトラックを逆走する過程で損傷が回復し、向かい側でまた衝突していた。このパターンが恒久的に繰り返されていた。█時間の観察の後、実験は終了した。
地下鉄車両のドアが実験室の壁に出現した。 詳細については探査ログ3910-05を参照。
探査ログ3910-05で発見された石棺と外見が類似したドア。 進入した被験者は暗く狭い空間に出た。この空間は石棺の一つの内部だと推定されている。帰り道が閉ざされたように見受けられると、被験者は苦悩を示した。蓋が開いていくにつれて被験者の苦悩は増していき、[データ削除済]。被験者の装備品や遺体を回収する試みは行われていない。
木製のドアが実験室の壁に出現した。 被験者は温帯林と思われる場所に建てられた丸太小屋の中に出た。被験者は小屋を出て森林を探索するよう指示を受け、それに従った。録音機器は水が勢い良く流れる音を拾い上げた。被験者が音の発生源へと接近する途中で、右方の木々で何かしらの動きが記録された。被験者はその直後から命令に背くようになり、小屋に引き返してサイト-16へ戻った。被験者は独房に送り返されている。
正面に "従業員専用" のサインが貼られた標準的な金属扉。 被験者は寂れたように見えるショッピングモールに出た。店は全て閉まっているように見え、中の様子は遮られていた。店の例として、もっぱら爬虫類のみを扱っていると思しきペットショップ、下水道システム、アメリカ疾病予防管理センターの正確な複製が挙げられる。
壁の一部が2x1 mの長方形の氷に変換された。氷を押すと、ドアと同じ要領で開いた。 探査ログ3910-09を参照。

被験者D-1321は以下を含む標準的な探索用装備を提供されました。

  • 8ワットの懐中電灯と予備の電池
  • ライブ中継用のヘッドマウント型ビデオカメラ
  • 双方向通信機
  • ミールバー3本
  • 1.5リットルのウォーターボトル2本
  • 本実験前にD-1321と接続された命綱
  • バックパック
  • コンパス

<ログ開始>

<0:00:00> カメラが起動する。D-1321の前には農村景観が広がっている。左方にはトウモロコシ畑が見え、遠方には小麦畑が何列も見える。遠方には別の建物も見えるが、遠すぎて判別できない。

<0:00:05> D-1321が進入地点の方に振り向く。恐らくはD-1321が出てきた場所と思われる納屋が見える。命綱がドアから出ている。

<0:00:11> D-1321が前方を向いて別の見える建物へと移動を開始するよう指示を受ける。D-1321がそれに従う。

<0:04:15> D-1321が動きを止め、"今のが聞こえたか" 否かを司令部に尋ねる。司令部は何も聞こえなかったと否定し、映像および音声記録を再生したが、音は何も聞こえない。D-1321が続行するよう指示を受ける。

<0:07:23> D-1321が再び立ち止まり、風が吹いたことを報告する。映像を見ると小麦畑の小麦が明白に強く揺れ、音声記録も風の音を拾い上げていたため、司令部が報告の信憑性を認める。D-1321がそのまま古屋と思しき建物まで移動するよう再び指示を受ける。

<0:11:45> D-1321が古家から約100 m離れた地点で再び立ち止まる。D-1321が、風が "より激しく" なっていると報告し、振り返る。D-1321のはるか後方で、規模や強さの異なる竜巻が、見えるだけでも4つは発生している。D-1321が苦悩を示し、命綱を取り外そうとし始める。取り外せば生存率が高まる可能性があるため、司令部は異議を唱えない。D-1321が古家に向かって走る。

<0:13:06> D-1321が古家に到着する。外に地下室への入り口が見える。D-1321がそこに進入してドアをバリケードで塞ぎ、嵐から身を守るよう指示を受ける。D-1321が即座にそれに従う。

<0:15:17> D-1321が地下室に入り、ドアをバリケードで塞ぐ。D-1321がバックパックを開いて懐中電灯を取り出し、点灯させる。D-1321が、"自分がここにいる間" 地下室を探索する許可を求める。許可が下りる。

<0:16:43> 地下室は荒涼としているように見受けられる。辺りにあるものは質素な農工具と腐敗した果物だけである。D-1321が再び立ち止まり、司令部に何か聞こえなかったか尋ねる。司令部は今回も音声を何も拾えていないと述べる。音について説明するよう問われると、D-1321は女性らしき声がすると述べ、それが継続して聞こえると付け加える。D-1321が音の発生源を見つけ出すよう指示を受け、いくらかの説得を経てそれに従う。

<0:21:03> D-1321が、地下室にあるドアの向こうから音が発生していると述べる。D-1321がドアを開けるよう指示を受け、それに従う。ドアを開けた先は穀物の入った袋で溢れた保管室だった。室内に2体の腐敗した死体が見られる。片方は成人早期の女性で、もう片方は成人後期の男性であるように見受けられる。2体とも全裸であり、腹部の辺りに裂傷と刺傷を複数負っている。D-1321が異常な振る舞いを見せ、死体に歩み寄って無事かどうかを尋ねる。司令部は介入せず、D-1321は恐らく女性の死体と会話を交わしているように見受けられる。デブリーフィングにおいて、D-1321は死体を生きた人間だと認識しており、彼らもまた台風から逃げ隠れていると思い込んでいたことが確認された。会話の内容は [データ削除済]。

<0:46:42> 外の音がほぼ収まり、D-1321が地下室から出るように指示を受ける。D-1321がそれに従い、晴れた空が再び映る。その後、D-1321が当初の納屋まで歩いて戻り、納屋のドアから戻るよう指示を受ける。D-1321がそれに従い、他に何事もなくサイト-16の実験室に帰還する。

<ログ終了>

<ログ開始>

<0:00:00> カメラが起動する。D-1321は地下鉄駅にいるように見受けられる。D-1321が辺りを見渡すと実際にそうであることが確認され、今しがた地下鉄車両から出たところだと判明する。D-1321が地上までの道を探し出すよう司令部から指示を受ける。D-1321がそれに従う。

<0:06:17> D-1321が階段と電源の入っていないエスカレーターを複数発見し、それらを利用して上昇する。その間、地下に生命の気配は確認されない。D-1321が最後のエスカレーターを上り、殺風景な大都市へと出る。D-1321に待機命令が出され、司令部が次の行動指針について議論を交わす。D-1321に高層ビルの一つの最上階まで到達させ、一帯を調査させる方向で合意が取られる。この一帯は広大であり、命綱の長さがD-1321の進展の妨げとなるため、D-1321はまず地下鉄車両まで戻り、命綱を取り外しできるようにサイト-16へと帰還することとなった。

<0:13:34> D-1321がサイト-16に帰還し、命綱が取り外される。D-1321に、街中を通った経路をマーキングするための黄緑のスプレー缶が10本渡される。その後、D-1321が地下鉄駅に戻り、地上へと向かう。

<0:20:45> D-1321が再び地上に出て、最も近い超高層ビルへと向かう。中に入ると、ほとんど何もない白い部屋に出る。部屋の奥にはエレベーターのドアがある。それ以外に家具は存在しないが、壁に沿って粗雑な石作りの棺が並んでいる。D-1321が調査のためにそのうちの一つに接近するよう指示を受ける。石棺は一つ一つが手作業で彫られているように見受けられる。その後、D-1321がエレベーターに向かって最上階まで移動するよう指示を受ける。D-1321がそれに従う。

<0:25:02> D-1321がエレベーターを出て部屋に進入する。この部屋は1階のものと外見上同一であるが、唯一の相違点として壁がガラス製となっている。石棺が壁に沿って並んでいる。D-1321が部屋の四方から街を一望するよう指示を受ける。D-1321のいる建物の約4分の3ほどの大きさの壁が街を囲っているのが見える。しかし、距離の関係上、壁の向こう側に何が存在するのかは視認が困難である。そのため、D-1321が超高層ビルから出て壁に向かって移動することとなった。D-1321がそれに従い、建物を降下し始める。

<0:36:23> この時点でD-1321は外に出ており、壁に向かって移動している。建物の窓の向こう側に石棺が視認でき、また街角で直立しているものも多く見られる。D-1321が地面にスプレーをかけて線を引きながら前進する。

<0:52:42> D-1321が壁の基部に到達する。壁の表層に石棺が並んでいる。壁には他にも昇降機が視認でき、約100 mごとに1基設けられている。D-1321が昇降機に乗って壁の頂上まで向かうよう指示を受け、それに従う。

<0:57:21> 昇降機が壁の頂上に到達し、D-1321が外に出る。D-1321が壁の向こう側を見渡すよう指示を受け、それに従う。直後、D-1321が動揺する。壁の向こう側に視認できるのは死体だけであり、地面が見えないほどにひしめき合っている。D-1321は司令部からの口頭の指令に返答しない。突如としてD-1321が昇降機に駆け込み、司令部が止まるよう要請しているにもかかわらず降下する。D-1321が地下鉄駅へ、そしてサイト-16に通じるドアへと走って戻り、帰還した直後にインタビューのために連行される。

<ログ終了>

以下は探査3910-05の後に行われたインタビューからの抜粋です。

質問者: ウィリアムズ博士
対象: D-1321

ウィリアムズ博士: どうして逃げ帰ってきた、D-1321? 一体何を見たんだ?

D-1321: あまりに数が多くて...... どうしたらいいのか分からなくなった。最初は恐怖で固まってた。閉じ込められて何も考えられなくなる感じって分かるか? そういう感覚が身体を通り抜けた。

ウィリアムズ博士: すまないが、よく分からない。大量の死体があったのは確かだが、それであんな反応を示すとはどうにも腑に落ちな —

D-1321: 死体? カメラが壊れてたのか? あれは死体じゃない。人間だ。何千何万もの人間が、互いを引き裂いてたんだ。怒りが、憎しみが放たれてるのを感じられるほどだった。それを互いに向け合っていた。そしてそのうちの一人がこっちに気付くと、全員...... 動きを止めた。一人残らずだ。その瞬間、自分が何かやらかしたんだと分かった。うまく説明できないが...... あの場に広がってた憎しみが全部、急にこっちに向けられた気がしたんだ。確かに逃げはした、それが何だ? 誰だって同じことをしたはずだ。

進入したD-1265は凍結した荒れ地に出ました。D-1265は切迫した様子で帰還し、北極のサバイバル用品を支給されました。その後、D-1265は戸口まで戻り、探査を続行しました。

<ログ開始>

<0:04:02> D-1265がサバイバル用品を装備してサイト-16から戻る。目印が見当たらないため、D-1265が方角を決めてそれに沿って移動するよう指示を受ける。3 km以内に何も存在しなかった場合、D-1265はドアまで帰還することとなった。D-1265がそれに従う。

<0:23:34> この時点で、D-1265は約1 km歩いており、その間に周辺の環境に変化は見られなかった。調子を尋ねられると、D-1265は "寒い" と返答した。これを最後に、司令部は個人の状態について質問しなくなる。

<0:35:21> D-1265が荒れ地を約1.5 km移動したところで、遠方に何らかの影が見える。D-1265がその目印へ向かうよう指示を受ける。

<0:37:30> D-1265が対象物に接近するにつれて、視認性が悪化する。降雨に風と霧が混じっているため、対象物の正体は判別が難しくなっている。D-1265が前進する。

<0:42:26> D-1265が対象物の50 m圏内に到達したところで立ち止まる。さらに接近するよう指示が出されるが、D-1265はそれに対し、これ以上接近すると自分の姿が見られてしまうと返答する。この距離からでは、対象物は石像であるように見受けられる。

<0:43:02> 司令部がD-1265に再び無線で連絡し、前進するよう要請する。それに対し、D-1265が動揺した口調で "黙らないとあいつに聞こえちまう" と司令部に返答する。この時にD-1265は顔を上げて対象物に目を向けたが、それから極めて動揺し、内容がほとんど聞き取れない叫び声を上げる。

<0:44:12> D-1265が対象物へと歩き始める。この時の対象物は探査3910-05での石棺に類似したものと識別できるが、それより遥かに大きい。D-1265が石棺に接近する途中で、石棺に向かって "自分から離れる" よう叫ぶ。D-1265がよろめき、倒れる。カメラが外れて落下し、石棺と相対する。

<0:45:01> 石棺が開く。内部には中年男性の死体が3体収められている。D-1265は引き続き動揺と衝撃を示しており、死体と石棺に向かって "その薄汚い手を離す" よう叫ぶ。D-1265が石棺へと歩き、石棺が閉じる。

<0:45:42> カメラのバッテリーが切れるまで映像が続く。映像には石棺の外面が映っている。判別可能な印は、石棺の下部にあるLasciate ogni speranza, voi ch'entrate.と書かれた碑文のみである。

<ログ終了>

この言語は古イタリア語のトスカーナ方言であることが判明し、翻訳するとダンテ・アリギエーリ著『喜劇』の第三歌の一節、"ここに入る者は一切の希望を捨てよ" となります。

Footnotes
. 個別のポケットディメンションが9つ存在するのか、互いに結合したものが1つだけ存在するのかは現状不明です。
. 店内の動物がどのようにして食物を得ずに生存できていたのかは不明である。異常性の試験のため、対象の動物はサイト-16へと持ち帰られた。
ページリビジョン: 2, 最終更新: 25 May 2025 06:51
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