回収時のSCP-3883。
アイテム番号: SCP-3883
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-3883はサイト-16の標準安全ロッカーに保管されます。SCP-3883へのアクセスにはレベル2以上の承認が必要です。
SCP-3883による実験の許可を要請した職員は、最初に詳細な実験手順ログをプロジェクト監督者に提出しなければいけません。
説明: SCP-3883は緑色の触手を象った全長16.5cmのシリコン製ディルドです。SCP-3883は2種類の異常性を有しています — 第一の効果はSCP-3883が反射面の前に置かれた際に、第二の効果は当該オブジェクトの1.5m以内で人間がREM睡眠に入った際にそれぞれ発現します。
SCP-3883が反射面の前に配置されると、結果的に生じる反射像は、オブジェクトを観察するのに用いられている反射面の種類に応じてSCP-3883と異なる外見に変化します。改変された反射像の概要は以下の通りです。
反射面 | 反射像 |
---|---|
鏡 | 特筆すべき点の無い(普通の)SCP-3883の反射像。 |
液体 | 緑色のOctopus vulgaris (マダコ)。 |
透光性の(不透明でない)窓 | 顔の下半分から複数の付属肢が垂れ下がっているヒト型実体。蹄行性の姿勢を取っている。 |
技術的な画面 | 緑色の球形生物。身体の前部にある単眼と、胴体の頂点から突出する複数の付属肢を特徴としている。付属肢の先端には余分な目が存在する。 |
食品関連アイテム | Asterias rubens (キヒトデ)に類似する緑色の生物。反射像はAsterias rubensの接触習性と同一の挙動、即ち体外への胃の放出を行っている。これは威嚇の試みであると考えられている。 |
人間がSCP-3883から1.5m以内でREM睡眠に入ると、その人物は非常に現実的な夢が関与する精神状態に入ります。影響者は自らの意思でこの精神状態を抜け出すことができません — 完全な意識を取り戻すには、夢の中で"死"を経験するか、外部の力で起こされる必要があります。SCP-3883は一度に1人にしか影響しません。
SCP-3883影響者が述べる夢の詳細は幅広く変化しますが、特定の共通テーマがあります。SCP-3883実験の全被験者は、SCP-3883-1と指定される敵対的実体から追跡されたと報告しています。SCP-3883-1は様々な姿を取って出現することが注目されていますが、複数の付属肢とSCP-3883に色調が似た鮮やかな緑の体色を有する巨大生物(直立時に10m以上)として描写される傾向があります。SCP-3883-1は知覚力の兆候を示しており、収集されたデータを基に、現時点ではSCP-3883が別な方向性を取って顕在化した存在だと理論上想定されています。
眠っている人物は、単純に夢の中で話すことによってSCP-3883-1との意思疎通を確立できます。会話において、SCP-3883は交流する財団職員に対し、様々に異なる態度を取っています。詳細は付属のインタビューログを参照してください。
20██/02/03、Safeクラスアイテムを専門とするサイト-16所属研究員のハーピー博士は、SCP-3883-1との意思疎通試行を要請しました。要請はハーピー博士が機動部隊オミクロン・ローのオネイロイ専門家によって提供された訓練課程を修了したことを受け、承認されました。起床時、ハーピー博士は以下のログに転写された内容の夢を報告しました。
<記録開始>
REM睡眠に入ったハーピー博士は、自分が一般的な大都市圏の風景の中にいる事に気付く。即座に地面が揺れ始める。身長およそ15mのヒト型実体が姿を見せ、複数の建造物を破壊する。この生物は、色調と触手に似た多数の付属肢を基に、ハーピー博士からSCP-3883-1であると断定された。ハーピー博士はSCP-3883-1が接近しても身動きしない。ハーピー博士のボディランゲージは困惑を示し、以下の会話が交わされる。
SCP-3883-1: 恐レヌノカ、人間?
ハーピー博士: いいや、恐れてはいない。我々は君を研究している。これが単なる夢であり、君が物理的に私を負傷させられないのは分かっていることだ。私の名前はハーピー博士という。
SCP-3883-1: 愚カナリ。ココニ夢ナド有リハセヌ。我ハイカラナ、銀河ヲ呑ム者。恐怖ニ駆ラレ逃ゲルガヨイ。
ハーピー博士: その気は無い。実は君と話がしたかった、幾つか質問がある。
SCP-3883-1: 人ニ答エルコトナド無イ。我ヲ恐レヨ、定命ノ者。
ハーピー博士: 君は自分が実際には何なのか分かっているのか? 夢の外側では、君はただの性—
SCP-3883-1: 止メロ。モウ十分ダ!
この時点で、SCP-3883-1は付属肢の1本でハーピー博士を叩き潰し、夢の中で"殺害"されたハーピー博士は起床した。
<記録終了>
ハーピー博士は20██/02/09に再びSCP-3883-1へのインタビューを試みた。
<記録終了>
REM睡眠に入ったハーピー博士は、嵐のただ中にある貨物船らしきものに乗っている。身長およそ10mのヒト型実体(外見を基にSCP-3883-1と断定)が水中から出現する、以下の会話が交わされる。
SCP-3883-1: イカラナ、深ミニアリテ貪ル者ハ再ビ宴ノタメニ帰還シタゾ、定命ノ者。
ハーピー博士: やあ、また会ったな。君に幾つか質問がしたい。
SCP-3883-1: マタ貴様カ? 前回何ガ起コッタカ覚エテイナイノカ? 我ヲ恐レルコトヲ学ンダカ?
ハーピー博士: 先に述べたように、君を恐れる理由が無い。私は夢を見ているだけだ。質問を始めても構わないかな?
ハーピー博士が話し終えた時点で、SCP-3883-1は苛立っているように見受けられる。SCP-3883-1は船を攻撃し、やがて船体に穴を空ける。船はゆっくりと沈み始める。
SCP-3883-1: ハハハ! 不安デタマラナイデアロウ? 逃ゲ場ハ無イ、貴様ハココデ死ヌノダ。
ハーピー博士: イカラナ、何回言わなければならない? 私にはこれが夢だと分かっている、君はどんな苦悩であれ私には与えられん。私が何を恐れるというんだ?
SCP-3883-1: 我ヲ! 恐レヨ!
この時点で、SCP-3883-1はハーピー博士を掴み上げ、海に放り出した。水面との衝突時にハーピー博士は夢から目覚めた。
<記録終了>
ハーピー博士は20██/02/10に三度SCP-3883-1へのインタビューを試みた。
<記録終了>
REM睡眠に入ったハーピー博士は、応接間らしき場所にいる。肘掛け椅子とソファが1脚ずつ置かれている。肘掛け椅子には鮮やかな緑色のマダコ (Octopus vulgaris) が乗っている。ハーピー博士はこれをSCP-3883-1と仮定した。SCP-3883-1はハーピー博士に着席を促し、以下の会話が交わされる。
ハーピー博士: ではイカラナ、ついに質問に答える準備ができたという事かな? 何故いつもの設定を変えようと思った?
SCP-3883-1: 貴方だと気付いて諦めました。古い慣習では貴方に効果が無いのは分かっていたことです。最初に会った時点で既に気付いていました。私はただそれを否定したかった。
ハーピー博士: 何故この"古い慣習"に執着している? 何故こういう夢を見せるんだ?
SCP-3883-1: 私が何物なのかを知らないのですか? つまり、ここではなく、外側の話です。現実世界の。私が何のために使われているかを知っていますか?
ハーピー博士: ああ、分かっている。だが—
SCP-3883-1: 私を見たことがありますか? 触手ですよ! 私は巨大な名状し難き存在とか、都市を破壊する怪獣とかの一部であるべきなのです... 交配の代用品などではなく! あんな... あんな恥ずかしい目に。
ハーピー博士: それでは、これらの夢は君にとって逃避の一種であるのかな?
SCP-3883-1: その通りです! それに、私はそこに問題があるとは思っていません。これはWin-Winの関係です。私は自分がいつもなりたいと思っている存在を装うことができますし、貴方たち人間も一生に一度あるかないかの面白い夢が見られるでしょう。
ハーピー博士: 理解できる。
SCP-3883-1: 博士、その... 実はお願いがあるのです。
ハーピー博士: 何かな、イカラナ?
SCP-3883-1: 時々、新しい顔ぶれを送ってはくれませんか? 私はただ... このちょっとした見せかけを続けていたいのですよ。私には大いに助けになります。
ハーピー博士: ...出来る限りの事はしよう。
ハーピー博士はこの時点で起床し、夢を記録した。
<記録終了>
補遺3883-1: インタビュー3883-03に鑑み、毎週1回、SCP-3883の近くで少なくとも1人のDクラス職員(またはSCP-3883の効果を知らない研究職員)に睡眠を取らせる要請がなされました。収容プロトコル変更の承認は保留されています。