SCP-3833
評価: +20

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ナンガ・パルバット。

アイテム番号: SCP-3833

オブジェクトクラス: Geographical

収容クラス: Euclid

特別収容プロトコル: 監視と収容の取り組みを援助するため、サイト-3833がSCP-3833の下限から1 km下方に建設されています。実験目的で記録装置を所持させたDクラス職員を除き、職員や民間人がSCP-3833に入ることは禁止されています。標準カバーストーリー088 ("気象災害") の下、ナンガ・パルバットの周辺を強制的に飛行禁止空域とします。

説明: SCP-3833はヒマラヤ山脈の山、ナンガ・パルバットの頂上を中心とする直方体の空間です。SCP-3833の下限は海抜およそ6 kmに位置しており、横幅と奥行きはそれぞれ1 kmです。SCP-3833の上限は不明ですが、海抜20〜30 kmに位置すると考えられています。

SCP-3833では2つの異常現象 (SCP-3833-1とSCP-3833-2と指定) が発生すると判明しています。SCP-3833-1はナンガ・パルバットの天候が急激に悪化する反復現象です。異常な激しさの吹雪がSCP-3833-1の到来を示す指標です。SCP-3833-1は以下の事象を度々引き起こします。

  • 強烈で非常に寒いと形容される上述の吹雪。
  • 次第に登りにくくなる岩層。
  • 次第に発生するようになる機器の故障。
  • 山の一部が氷結し、移動が困難になる。

SCP-3833-2の介入が無ければ、SCP-3833-1による死は避けられません。装備の故障による状況に陥れば、登山者がSCP-3833を脱出することは不可能となります。この異常現象はSCP-3833の外部では観測されていません。SCP-3833-1は単独の登山者や少人数のグループにのみ影響を及ぼす傾向にありますが、稀にSCP-3833上を飛行する民間航空機を破壊する場合もあると判明しています。SCP-3833-1は通常、収束するまでに3〜6時間継続します。

SCP-3833-2はSCP-3833内に所在する山小屋です。SCP-3833-2内に残したGPS機器の位置は変動しませんが、SCP-3833-2はSCP-3833-1が発生する場所の外部では観測されていません。SCP-3833-3はSCP-3833-2に居住するスラブ系の白人男性であり、SCP-3833-2の管理人であると思われます。

SCP-3833-1が発生した場合、約33%の確率で登山者はSCP-3833-2を発見します。SCP-3833-3は登山者をSCP-3833-2に迎え入れます。中に入ると、SCP-3833-3は登山者に対し、SCP-3833-2に滞在してSCP-3833-1をやり過ごすよう強要します。SCP-3833-1が収束した際に装備が破損していた場合、登山者にはナンガ・パルバットからの下山に適した装備が与えられます。

発見: SCP-3833-1とSCP-3833-2が財団の目に止まったのは、登山家であるジェリー・ヘルダーがナンガ・パルバットを登ってSCP-3833-1とSCP-3833-2に遭遇した後のことです。ヘルダーは山登りに関する自身のブログにこの出来事を投稿し、財団ウェブクローラーのI/O-BLACKLEECHが潜在的な異常活動としてその投稿をフラグ付けしました。ブログは財団工作員が押さえ、投稿は削除されました。

補遺2018年02月01日: 長距離監視によってSCP-3833-2を発見する試みは全て失敗しています。全ての事例において、SCP-3833-2はSCP-3833-1の発生中にのみ出現しています。SCP-3833-1と同様にSCP-3833-2もSCP-3833外で観測できないため、SCP-3833外での観測は不可能です。

グラハム管理官と██████リソース・マーシャルの許可を経て、Dクラス職員を介した短距離相互作用が承認されました。この任務に用いるため、身体健康が平均以上であるDクラス職員50人がサイト-3833に配置されました。

4人1組のDクラス職員がナンガ・パルバットを登り、下山します。無事に登頂および下山した場合、別のグループが登ります。SCP-3833-1に遭遇した場合、SCP-3833-2が所在する断崖の捜索を試みます。SCP-3833-2を発見した場合、進入した上でSCP-3833-3との交流を視聴覚機器で記録します。

5つのグループがSCP-3833-1に遭遇しましたが、SCP-3833-2に遭遇したのはそのうちの1つのみでした。SCP-3833への進入はこれ以上計画されません。

ビデオの書き起こし


<ログ開始>

エージェント・クラント: よし、お前たち、レコーダーをオンにしてくれ。記録のために、名前と番号を。

D-8990: マーティー・███████、D-8990。

D-2344: フレデリック・████、D-2344。

D-0110: クライド・█████、D-0110。

D-5671: マイケル・████、D-5671。

エージェント・クラント: 俺はDクラス管理部門のエージェント・ジェームズ・クラントKrunt。これからSCP-3833-2との遭遇を期待してこいつらを山の頂上に送る。きちんと順守してもらうよう、これからスナイパーライフルを常に向けるぞ。送り出す前に何か言うことはあるか?

D-2344: もう既にこれが大っ嫌いだ。

エージェント・クラント: 素晴らしい。さて、任務は分かっているな。山を登り始めてくれ。

グループがナンガ・パルバットを登り始める。さほど交流が無いまま15分43秒経過する。

D-8990: 今ならエージェント・カントCuntやその子分どもの耳に届かないよな。

D-0110: そう呼ぶんじゃねえ! 忘れたわけじゃ —

D-8990: そうだな、何をしてくるんだろうな? くだらないシャレを言ったから撃ち落とすってか? ありえねえだろ。

D-2344: 黙っとけ、マーティー。

D-8990: てめえが黙ってろ、フレッド。

グループが山を登り続け、非常に高い断崖に到達する。

D-0110: ああもう、こんなんどうやって登れってんだ?

(無線を通して) カルヴィン研究員: バックパックにウインチがあるだろう。

D-5671: ちょっ、まだ聞いてたのか?

カルヴィン研究員: そうだが。

沈黙。

D-8990: じゃあエージェント・カントもそこに?

さほど交流が無いまま33分46秒経過する。風が激しさを増し始める。

D-0110: 風がめちゃくちゃ強くなってきた。

カルヴィン研究員: 空も曇っているのか?

D-2344: ああ、基本曇りだ。

雲に覆われているため、衛星望遠鏡によるグループの直接観測ができない。

カルヴィン研究員: 待ち望んだ異常な嵐かもしれない。壁に寄りつつ足元に気を付けて、[編集済] に向かうよう忘れないでくれ。

D-0110: 了解。

さほど交流が無いまま2分12秒経過する。グループが山の比較的平坦な場所に到達する。

D-2344: 押すんじゃねえ、マーティ―。

D-8990: 俺じゃない。

風がD-2344を地面に押し付け、近くの断崖に滑らせる。D-2344は辛うじてアイスピックを用いるが、ピックの先端が折れ、D-2344が谷間に落下する。落下は致命傷と見られる。

D-8990: なんてこった。

D-0110: あんな裂け目2秒前には絶対になかった。

環境についての愚痴を除いてさほど交流が無いまま18分23秒経過する。

D-5671: やべえ、分単位でどんどん寒くなってる。もうコートが役に立ちゃしない。

D-0110: 雪が弾丸の雨のようだ。

カルヴィン研究員: [編集済] に行くのを忘れるなよ。

D-8990: てめ —

視聴覚機器への干渉により、この段階で通信が不可能となる。信号が15分間受信されず、予備の機器が遠隔で起動される。

D-8990: もう耐えられねえ。激しすぎる。

D-0110: いや待て、何か聞こえた気が?

この時の音声を分析した結果、嵐の中から男性の声が聞こえることが判明している。

D-8990: あそこからだ!

グループが角を曲がると、SCP-3833-2の説明と一致する木製の山小屋を発見する。SCP-3833-3と思われる男性がドアの前に立って大声を上げている。

SCP-3833-3: おーい! こっちだ!

グループがSCP-3833-2に入る。SCP-3833-3がSCP-3833-2の扉を閉める。

SCP-3833-3: ようこそ山頂へ。何か飲むかい?

D-5671: ああ。喉が渇いて死にそうだ。

SCP-3833-3がグループを使い古しの赤いカウチ1組と石造りの暖炉のもとに案内する。その後、SCP-3833-3が飲み物を作ろうとキッチンに立ち入る。

グループがコートを脱ぐ。

D-0110: うぉっ、このカウチ快適だな。

D-8990: そりゃあのクソ寒い中からようやく抜け出せたからだろ。

D-5671: ばあちゃんの古い山小屋をちょっぴり思い出すな。あのヘラジカの絵と全く同じもんが絶対あったぜ。

SCP-3833-3がホットチョコレート4杯を載せたトレイを持って部屋に入る。SCP-3833-3がD-0110の腕と胸にできた数々の擦り傷に衝撃を受ける。SCP-3833-3がカウチの間にあるテーブルにトレイを置き、グループが飲み始める。

SCP-3833-3が片方のカウチの下から金属製の箱を取り出し、箱からラベルのない小さな液体ビンを取り出す。

D-0110: 何だそれ?

SCP-3833-3: 傷に効く薬だ。

SCP-3833-3が液体を手に塗り、その手でD-0110の腕と、おそらくはD-0110の胸にある確認できない擦り傷に液体を塗る。SCP-3833-3が箱のガーゼをD-0110の腕に巻く。

SCP-3833-3: すぐに治るわけじゃないが、それで痛みは引くはずだ。包帯もきちんと巻いたままにするように。

D-0110: ありがとな。感謝するよ。

グループが飲み物を飲み干すまで3分間沈黙したまま座っている。基地司令部の職員がSCP-3833-3に質問するようグループに強要する。

D-8990: ところで、あんたの名前は?

SCP-3833-3: ラッセルと呼んでくれ。

D-8990: 分かった、ラッセル、ここは何だ?

SCP-3833-3: 少し前に建てた小屋だよ。ただそれだけさ。

D-8990: そうか。なんでここはあんなに嵐が激しいんだ?

SCP-3833-3: 登れば登るほど寒くなるんだ。勘違いじゃなければ、どの山もそうだけど。

沈黙。

SCP-3833-3: 飲み物は美味かったか?

D-5671: 最高だったぞ。甘くてふわふわした味だった

SCP-3833-3: ああ、もうかなり遅い時間になってきたな。

時間は午後9:03頃であった。

SCP-3833-3: 今日はあんなことがあったから疲れてるだろう。よかったら休んでいかないか?

D-0110: 休んでいくかって? マジでまともなベッドを頼むぞ。

SCP-3833-3が立ち上がる。

SCP-3833-3: こっちだ。

SCP-3833-3がリビングの隣の廊下を通ってグループを寝室に連れていく。寝室には二段ベッドが2台あり、青い星型のマークが散らばった赤い掛け布団が敷かれている。壁と天井は青を基調とし、白い螺旋状の模様が表面を覆っている。壁の窓からはSCP-3833-1が確認できる。空いた壁にはこざっぱりした化粧台が押し当てられており、その上にはベージュ色のランプと青いアナログ時計が置かれている。

グループが二段ベッドに入って眠る。視聴覚機器は夜間の6時間は停止するよう設定されている。

翌日もSCP-3833-1は発生したままである。サイト-3833の職員がSCP-3833-1の存在を確認する。SCP-3833-1が9時間継続していることになるが、これは今までの中で最長である。

しばらくするとグループが寝室を離れ、リビングで窓の外を見つめているSCP-3833-3を発見する。

SCP-3833-3: 普段はここまで嵐が長引かないんだがな。外に出られるとは思えないから、まだ泊まらないといけないようだぞ。

D-0110: 最悪だ。

SCP-3833-3: おっと、悪いことばかりじゃないさ。マフィンを作ってるんだが、いるかい?

グループが朝食を食べ終えると、SCP-3833-3の提案でチェッカーやチェスなどのボードゲームで遊び始める。遊戯中はさほど交流が無い。

D-8990: なあ、ここってケーブルある?

SCP-3833-3: 残念ながら無い。心細いが、誰もここまでケーブルを引けないだろうからな。

D-8990: スーパーボウルを見逃したかな。

D-5671: うっわ、そうじゃん!

D-0110: どのチームが対戦してんだっけ?

さほど交流が無いまま89分45秒経過する。

D-0110: これで...... チェックメイト。

D-5671: 畜生。

D-5671がキッチンで作業しているSCP-3833-3のもとに歩く。

D-5671: ラッセル、他にゲームは無いか? マジな話、次のチェスでもクライドに負けたら、あの嵐に窓から身を投げ出しそうだ。

SCP-3833-3: そうだな、他にあるのは......

グループがダンジョンズ&ドラゴンズをセットする。一行が164分33秒間続けて遊ぶ。

D-5671: 剣を抜いてエルフと戦う。

SCP-3833-3: 分かった、それじゃあダイスロール。

グループが20面ダイスを振る。

D-0110: クソッ!

D-8990: また20かよ? なあクライド、お前マジでどういうのだっけ?

D-0110: ジャクソン・エバーグリーン、レベル2のレンジャー、ネヴァーウィンターの戦士、もうじきエルフ殺しになる。

SCP-3833-3: よし、まずは君からだ、クライド。

D-0110: クロスボウで眉間を狙う。

D-0110がダイスを振る。

SCP-3833-3: 外れた。今度はエルフのターン。エルドリッチ・ブラストを唱えクロゴンに —

D-8990: マジかよ、またソーサラーか?

SCP-3833-3: 次はマイケルのターンだ。

D-5671: 歩み寄ってクソ野郎の首を突き刺す。

D-0110: おま、を? コイツから情報を得るって話だったろ!

SCP-3833-3: お前はこの山のように残酷な奴だな、マイケル!

沈黙。

SCP-3833-3: まあとにかく、ダメージロールだ。

グループがダンジョンズ&ドラゴンズをしばらく遊び続け、その後遊ぶのを止めて身の上話を語り合う。

D-5671: ......んで、何か恐ろしいのに襲われる前にその階段をとっとと抜け出したのさ。そしてここに送られてこの山を登らされたってわけ。俺の話はこれで終わりな。

D-0110: よし、ラッセル、そっちの番みたいだぞ。

SCP-3833-3: ああ、みんな面白い話をたくさん持ってるんだな、俺のはつまらないやつだから申し訳ない。俺は半世紀前にカリーニングラードで生まれた。比較的静かな子供時代を過ごして、料理法を学ぼうとサンクト・ペテルブルグに移ったんだ。人生の大半をシェフとして過ごして、それからここに来た。

D-8990: <無線を通してカルヴィン研究員から強要される。> そもそもなんでここに来たんだ?

D-0110: 俺はむしろ、この嵐やら何やらの中でどうやってここまで来たのかが気になるね。

SCP-3833-3が沈黙する。

SCP-3833-3: 全ての始まりは、親友が山のこの辺りで死んだ時だ。俺はひどく打ちのめされて、もう二度と誰もここで死なせないと葬式で誓った。誓いは強く、俺の意思もそれより強かったから、ここまで来た哀れな愚か者を匿うために貧相な小屋を建てた。

SCP-3833-3が泣き始める。

D-8990: どうした、ラッセル?

SCP-3833-3: 嵐じゃない、山なんだよ。山が嫌ってる。ランドールを呑み込んだときもアイツを嫌ってた。山を登ろうとする矮小な人間を嫌ってる。お前たちを嫌ってる。そして特に、俺を嫌ってる。

沈黙。SCP-3833-1は依然として続いており、この時点で25時間の継続が記録される。

SCP-3833-3: 大丈夫だ。もうだいぶ遅くなってきたな。そろそろ寝ないと。

グループがベッドに向かう。視聴覚機器が充電の保持のために停止するが、朝になってもグループは機器を再起動しない。遠隔起動が必要となる。SCP-3833-1が止む。機器は依然として寝室にある。以下の音声は機器を通して聞き取れたものである。

SCP-3833-3: おや、ずいぶんと早起きなんだな。

D-5671:決心したからな。俺たちはここに残る。

SCP-3833-3: なんだって?

D-0110: ああ、アンタの言う通り、この山はクソだ。けどここに独りでいる必要はねえ。

D-5671: できる限り手助けする。約束するよ。

沈黙。

SCP-3833-3: 止める理由も思いつかんな。ここにいるとちょっと心細くなるし、自分の思考を話し相手にするのも疲れたんだ。

機器が会話を記録しなくなり、72時間後に電源が切れる。

<ログ終了>

状態報告


2018年07月19日、5人のDクラス職員から成る別のグループをナンガ・パルバットに登らせました。グループがSCP-3833-2の所在地である [編集済] へ向かうと、SCP-3833-2の隣に2つの山小屋が新たに建設されていたことが判明しました。これらの山小屋はSCP-3833-2に送られた前のグループの住居であると思われます。調査に送ったDクラス職員には装備を外して山小屋に進入するよう説得しました。当グループはこのDクラス職員とSCP-3833-3の共同体に統合されたと考えられています。

2つの新たな山小屋はSCP-3833-2Aと-2Bに指定されています。訓練済みのエージェントをSCP-3833に送り込むリスクと、Dクラス職員をSCP-3833-2でさらに失うリスクのため、職員はこれ以降ナンガ・パルバットを登るべきではありません。

Footnotes
. 上限の実験は困難であるのが原因です。
. 虚偽。グループに意欲を起こさせるためにエージェント・クラントが発言した。
ページリビジョン: 2, 最終更新: 21 Feb 2024 12:27
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