クレジット
タイトル: SCP-3746-JP - "し"は「白式部」の"し"
著者: Enginepithecus Enginepithecus
作成年: 2024
アイテム番号: SCP-3746-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3746-JPは、サイト-81██の標準人型収容チャンバーにて収容されます。SCP-3746-JPには1日に3度、定期的に通常の食事を与えて下さい。
説明: SCP-3746-JPは出生経緯と後述の耐性以外に異常性を持たない、本報告書執筆時点で19歳の日本人男性です。SCP-3746-JPは██県█市内の産婦人科医院にて20██/11/6付での出生が記録されていますが、院内の記録及び当時の勤務者への聞き込みからの情報は一貫してSCP-3746-JPに両親に当たる人物は存在せず、院内にて当時未使用状態であった妊婦用ベッドにて由来不明の胎児として発見された後、母体を有する一般的な胎児と同様の成長過程を経て "誕生" した事を示しています。またSCP-3746-JPは当時の院長により日奉白(Isanagi Haku)と命名されていますが、既知の日奉一族との関係は発見されていません。
上述の医院からは当時の調査担当者であったエージェント・臼井により、以下の物品が回収されています。
- 医院内に設置されている妊婦用のベッドを写した写真9枚。それぞれ構図は異なるがいずれもベッド全体を写しており、ベッドの中央上空10cm程度の位置にSCP-3746-JPと思われる胎児が浮遊している。
- 日奉白の名が記載された母子手帳。両親の氏名や妊娠中の経過を記すページは空欄/未記入であるが、それら未記入ページも乳幼児期の成長過程を記した記入済ページと同程度の使用に一致する摩耗や劣化が見られる。
SCP-3746-JPには自身の異常な出生経緯について伝えておらず、また収容時点での年齢が1歳であった事から自身の被収容状態に対して疑問を抱いていません。
またSCP-3746-JPは、一部の現実改変事象に対して耐性を発揮する事が判明しています。この耐性は日奉一族によって使用される術式に対して顕著に強く発現しますが、当該オブジェクトがこの耐性を有する由来は判明していません。(追記参照)
20██/1/22 追記: PoI-1031は、証拠品PoI-1031-A群を元に存在を仮定される未把握の要注意人物です。証拠品PoI-1031-A群は各辺21cmの立方体型の木箱であり、日本各地の地下2〜3mに埋設された状態で発見されます。
証拠品PoI-1031-A-1
特記事項: 内部には多量の灰と共に以下の内容を記した紙片が封入されていた
紙片記載内容:
拭亡 坂川源助
理由知らず 本家命により
彼の者をその生まれの時まで遡りて滅す護域 日奉紫 大橋可奈子 日野永吉 日野あたる
上者、護域と定め拭亡より留め置く
証拠品PoI-1031-A-4
特記事項: 同上
紙片記載内容:
拭亡 日野永吉
理由知らず 本家命により
彼の者をその生まれの時まで遡りて滅す護域 日奉紫 日野あたる 龍洞公哉
上者、護域と定め拭亡より留め置く
証拠品PoI-1031-A-9
特記事項: 同上
紙片記載内容:
拭亡 日奉茇
日奉紫逃亡を成す為
彼の者をその生まれの時まで遡りて滅す護域 日奉紫
上者、護域と定め拭亡より留め置く
証拠品PoI-1031-A-10
特記事項: 同上
紙片記載内容:
拭亡 日奉楔
日奉紫逃亡を成す為 日奉紫が呪殺の罪を重ねない為
彼の者をその生まれの時まで遡りて滅す護域 日奉紫
上者、護域と定め拭亡より留め置く
証拠品PoI-1031-A-14
特記事項: 同上
紙片記載内容:
拭亡 日奉椈
日奉紫逃亡を成す為
彼の者をその生まれの時まで遡りて滅す幸せになりたい
護域 日奉紫 胎内の子
上者、護域と定め拭亡より留め置く
証拠品PoI-1031-A-15
特記事項: 同上
紙片記載内容:
拭亡 加納浩輔
組織的監禁首謀者の為
彼の者をその生まれの時まで遡りて滅す護域 日奉紫 胎内の子 片山美咲 高羽宏次朗
上者、護域と定め拭亡より留め置く
証拠品PoI-1031-A-18
特記事項: 同上の内容物に加え、小型携帯用記録機器の封入を確認
紙片記載内容:
拭亡 日奉蕙
日奉紫逃亡を成す為 日奉白逃亡を成す為
彼の者をその生まれの時まで遡りて滅す護域 日奉紫 日奉白
上者、護域と定め拭亡より留め置く
記録機器の映像内容:
(映像はPoI-1031と思われる女性を映す。PoI-1031はカメラを床に置きつつ片手で支えるようにして自身を映している。)
PoI-1031: 私は、何度も何度も、呪殺を続け過ぎました。
(焦燥した様子で下唇を噛む)
PoI-1031: 常にゴイキに入れていても、呪殺の起点である私には影響が出てきたみたいです。
(3秒間沈黙)
PoI-1031: 今度は失敗できません。だから私の記録を入れます。2ヶ月前から追手が日奉家じゃない、訳の分からない奴らまで増えてます。
(唾液を飲み込む音)
PoI-1031: 日奉家にも加納の仲間にも、絶対に白は渡しません。
証拠品PoI-1031-A-21
特記事項: 同上、記録機器封入あり
紙片記載内容:
拭亡 日奉莝
日奉白逃亡を成す為 日奉紫逃亡を成す為
彼の者をその生まれの時まで遡りて滅す護域 日奉紫 日奉白
上者、護域と定め拭亡より留め置く
記録機器の映像内容:
(PoI-1031は森林地帯と思われる場所で座り込み、自身を撮影している。)
PoI-1031: また、不安定になってきたみたいです。逃げている間に何人かから、私に関する記憶が消えていたみたいでした。
(2秒間沈黙)
PoI-1031: 一族は皆、私に呪殺を繰り返させます。ただそれが出来るからというだけで咎を押しつける......その報いは全部私に。
(カメラが倒れ、PoI-1031の傍らに3歳程度と推測される男児の存在が確認できる。PoI-1031はカメラを元の位置に立て直す。)
PoI-1031: だからまた、こうして映像を入れます。
(2秒間沈黙)
PoI-1031: こうすれば、箱の中では私の不安定さを補える筈です。
証拠品PoI-1031-A-22
特記事項: 同上、記録機器封入は無し
紙片記載内容:
拭亡 白井惇一
組織的監禁者 財団者の為
彼の者をその生まれの時まで遡りて滅す護域 日奉紫 日奉白
上者、護域と定め拭亡より留め置く
証拠品PoI-1031-A-23
特記事項: 同上、記録機器封入は無し
紙片記載内容:
拭亡 白井淳一
日奉白逃亡を成す為
彼の者をその生まれの時まで遡りて滅す護域 日奉紫 日奉白
上者、護域と定め拭亡より留め置く
証拠品PoI-1031-A-25
特記事項: 同上、記録機器封入は無し
紙片記載内容:
拭亡 日奉茘
彼の者をその生まれの時まで遡りて滅す護域 日奉白 日奉紫
上者、護域と定め拭亡より留め置く
証拠品PoI-1031-A-26
特記事項: 同上、記録機器封入あり
紙片記載内容:
拭亡 日奉紫
白解放を成す為
彼の者をその生まれの時まで遡りて滅す護域 日奉白
上者、護域と定め拭亡より留め置く
記録機器の映像内容:
(放棄された民家の室内で撮影されていると見られる。PoI-1031は6枚の写真をカメラに続けざまに映す)
PoI-1031: 持ってきていた写真です。2枚には私が写ってるけど、他の4枚からは消えていました。
(8秒間沈黙)
PoI-1031: 白は、シライに拐われました。......加納の仲間の組織は、思ってたより遥かに大規模で。
(4秒間沈黙、PoI-1031は唇を噛む)
PoI-1031: "財団" というらしいです。
(5秒間沈黙、卓上の両手を震わせ拳を握る)
PoI-1031: このまま、ずっと逃げ続ける事なんてできないみたいです。日奉に生まれて、そこから逃げたくてここまで来ました。(声音に怒気がこもる)咎を押し付け続けた日奉の奴らも、白や私を追い詰め続けるシライも財団の奴らも、私は絶対に許さない!
(11秒間沈黙、PoI-1031は目に涙を浮かべる)
PoI-1031:でも、......でも!白だけなら日奉との柵を断ち切れるかもしれません。白まで逃げなきゃいけないのは私のせいです。だから、私がいなくなれば良いんだって、
(9秒間沈黙、PoI-1031は落涙し始める)
PoI-1031: 白は自由になっていい筈です。
(PoI-1031はしゃくり上げる)
PoI-1031: ママは、そう思ってます。
上記の内、証拠品PoI-1031-A-15とSCP-3746-JPの発見場所の一致並びに以降の証拠品PoI-1031-A群に内包された紙片に於ける記述内容がSCP-3746-JPとの関連性を示唆する点が注目され、SCP-3746-JPの出生経緯異常の原因は証拠品PoI-1031-A-26による過去改変である可能性が有力視されています。またSCP-3746-JPの有する改変耐性は、PoI-1031によって行われた術式の中で繰り返し加えられた対改変保護作用の効果が残存している事によるものと推定されます。
現在、証拠品PoI-1031-A群をSCP-3746-JPとして再割り当てし、現SCP-3746-JPを含む「護域」に記載された人物をSCP-3746-JP-α群として再分類する議論が進行中です。また同時に現SCP-3746-JPの財団への従順性と上述した改変への耐性から対象を対日奉オブジェクトに特化したエージェントとして育成する計画が進行しており、本件に関して対象は "耐性のある僕の義務みたいなもの"、"育ての親の財団に恩返しができる" 等と好意的反応を示しています。