アイテム番号: SCP-3607
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3607は現地で収容されます。上部に有刺鉄線を張り巡らせた境界フェンスが設置されており、SCP-3607の窓は全て板で封鎖されています。薬害を示す警告標識が現地に設置されています。SCP-3607は一般の民間警備に扮した2名の保安職員が秘密裏に警備します。
SCP-3607の周辺および内部の枢要な地点には、活動を監視するための監視カメラとカント計測器が設置されています。SCP-3607内で活動が観測された場合はクリアランスレベル4以上を有する担当職員に報告してください。SCP-3607内で生成された文書や物体は遠隔操作ドローンで回収します。
ヒトがSCP-3607に進入してはなりません。ヒトによるSCP-3607との直接の接触は最小限に抑えられます。
説明: SCP-3607は█████、█████に所在する2階建て家屋です。外観に特筆すべき点はなく、当該地区の他の住宅と同様の構造を有しています。SCP-3607は19██/██/██に建設され、当時は異常現象による既知のインシデントは生じていませんでした。
SCP-3607は内部に存在するヒトの消失を引き起こすことが可能です。この異常性の正確な性質、原因、範囲は確定していません。デヴィン・████の寝室のドアは施錠されており、あらゆる突破の試みに対して耐性を示しています。デヴィン・████の寝室は大規模な空間異常を呈しており、重力が影響を受けている他、室内の空間が本来よりも遥かに広大化しています。本空間は深さ不明のコンクリートトンネルとして存在しています。本空間への敷居を越えた物体は、異常性によりトンネルへと引きずり込まるか、あるいは "落下" します。
SCP-3607内では、上記の他にも発生する異常がいくつか確認されています。
- 不規則な間隔で電化製品が明白な理由なく起動・停止する。
- 不規則な間隔で気温が最大8°Cまで急激に低下する。当該現象の持続時間は多様である。
- 不規則な間隔でヒューム値が [編集済] の範囲で変動し、建物内の現実性が一時的に不安定になる。
証拠はSCP-3607内に実体 (以下SCP-3607-A) が存在することを示唆しています。しかし、実体を捜索する、もしくはその性質を特定する試みはいずれも成功していません。研究員はSCP-3607内で発生する異常現象がこの実体に起因していると考えていますが、この仮説は裏付けられていません。
財団は2002/██/██、4名の居住者が何の説明もなく消失したことでSCP-3607の異常性に気付きました。現在のところ、この4名の居住者を捜索する試みは全て失敗に終わっています。
探査ログ3607-1
被験者: D-10221
手順: 被験者はSCP-3607に24時間留まるよう指示を受けた。被験者には音声・映像記録装置とGPSトラッカーが支給され、それらを常時装備するよう指示が与えられた。十分量の水と食料も提供された。
結果: 被験者は21:30頃に消失した。GPSトラッカーは被験者が依然として屋内に存在することを示していた。被験者との通信は安定した状態を保っており、内容の書き起こしは音声ログ3607-1に記録されている。
回答者: D-10221
質問者: ████研究員
前書: D-10221は研究員に対し、自身が不明な手段で小部屋の中へと転移させられたことを伝えた。
<ログ開始>
████研究員: D-10221、状況を説明しろ。
D-10221: (咳が聞き取れ、この時点では████研究員の指示にほとんど反応していない) 助けてくれ、お願いだ。
████研究員: D-10221、落ち着け。
D-10221: わ — 分かった、落ち着く。
████研究員: できる限り手は打つ。だが今は私に協力して、状況を説明するんだ。
D-10221: 分かった、分かった。小便しにバスルームに行ったんだが、トイレの水を流したら辺りが真っ暗になった。水の音がした。俺の周りで、どんどん音が大きくなって、気付いたらここにいた。俺は — てっきり —
(映像記録から、被験者が消失前に2階のバスルームを利用していたことが確認される。)
████研究員: D-10221? 今はどこにいる? まだ — D-10221、聞こえるか?
D-10221: (咳が聞き取れる) 喋りにくい。ここ臭いがキツすぎんだ。
████研究員: どこだって?
D-10221: うるっせえな! 今喋ってんだろうが! 辺りが真っ暗になって、てっきり電源が落ちたんかと思ったが、落下してることに気付いて、そんでここに着いたんだ。
████研究員: 現在地と、周囲の状況を説明してくれ。
D-10221: 水の中だ。今がんばって浮いてる。足が地面に着かない。どんだけ深いのか分からん。足をバタつかせてないと沈んじまいそうだ。臭いがキツいし、辺りは真っ暗だ。どういうわけか下水管に落ちちまったみてえだ。懐中電灯が点かん。ここから出してくれ。ずっと頭が天井にぶつかって...... あー、周囲の壁にもだ、ここに閉じ込められてる。
████研究員: どうやってそこに辿り着いた?
D-10221: 俺が知ってると思うか? 天井に穴がない。どうやって来たのかさっぱり分かんねえよ。
████研究員: 了解した。とにかく落ち着くんだ。今、君を助けようとしている。
D-10221: 分かった、分かった。すまんな。めちゃくちゃイライラしてたんだ。どうやってここに来たのか分からん。だってよ、トイレに落っこちるなんてありえねえよな?
████研究員: 天井には穴がないと言っていたな。水中に穴が開いている可能性はないか? 下から来て浮上したのかもしれない。
D-10221: いや、まっすぐ落っこちたのは確かだ。あのな、もし水中に潜れって言ってんなら、そいつは無理な話だ。臭いがキツすぎる。カメラ動いてんだよな? 俺が今どこにいるか分かるんじゃねえのか。
████研究員: ビデオ映像は機能しているが、何も見えん。支給した懐中電灯を使うんだ。
D-10221: 点かねえよ。たぶん壁にぶつかったんだと思う。
████研究員: 直してみてくれ。
D-10221: OK。1発叩いてみるわ。それでうまくいくか確かめる。今救助を寄越してるか?
████研究員: できる限り手は打つつもりだが、まずは落ち着け。引き続き懐中電灯を直せるか試してほしい、直せればそちらの状況が分かりやすくなる。
D-10221: 分かった、やってみる。このままじゃ吐いちまいそうだ。マジでひどい。さっきから何かが頭上を這ってるような気がする。俺は時々そいつらを投げ飛ばしてんだ。
(D-10221が支給された懐中電灯の機能を回復させることに成功する。)
D-10221: うしっ! あー、良かった!
████研究員: 映像に周囲の状況を映してくれ。
D-10221: ちょい待ち。(呟いて) さっきよりかは咳が出なくなったな。臭いに慣れてきたんかな...... あっ、やべっ。
(ビデオ映像がふらついており、恐らくは被験者が浮上し続けようと懸命にもがいているものと思われる。被験者はレンガの壁で囲われた寸法不明の浸水した小部屋内にいるように見受けられる。壁には不定な種のヒルと思しき生物が観測される。水が濁っているため深さは不明。)
D-10221: 周りはヒルだらけっと...... よし、これで十分か? ここには特に何もねえよ。もう出してくれるか? なあ? カメラのバッテリーがそろそろ切れそうなんだ。
████研究員: それはありえない、バッテリーは少なくともあと12時間は持つはずだ。
D-10221: マジだって! ちゃんと画面見ろよ! バッテリーが少なくなってきてんだよ。
(████研究員が被験者の発言を検証する。)
████研究員: 分かった、これから救援を手配する。その間、資源の節約のために機器の電源を切っていてほしい。
D-10221: クソが、冗談じゃねえぞ。
████研究員: バッテリーを節約しなければ、君を発見することはできない。重要なのは、我々が君の居場所を捜索している間に通信を維持することだ。どうか落ち着いてほしい。可及的速やかに連絡する。
D-10221: 分かった、分かったよ。言う通りにはするが、急いでくれよ。
<ログ終了>
探査ログ3607-2
被験者: D-15384
手順: 被験者はSCP-3607の2階にあるバスルームのトイレの中に内視鏡を下ろすよう指示を受けた。
結果: D-10221は発見されなかった。映像ログ3607-1で観測されたものと一致する構造は発見されなかった。内視鏡から送られたビデオ映像には、下水管によく見られる構造しか映っていなかった。約100 mにわたって下水管がマッピングされ、その後実験は終了した。
実験3607-2の後、D-10221との通信が再確立されました。内容は音声ログ3607-2に記録されています。
回答者: D-10221
質問者: ████研究員
前書: 開始時点で、被験者に支給された懐中電灯の光は著しく薄暗くなっていた。観測された速度でバッテリーが消耗した理由は不明である。
<ログ開始>
D-10221: お願いだから出してくれ。この下に何かいんだ。
████研究員: D-10221、我々は —
D-10221: いつになったら出してくれんだよ? どこもかしこもヒルだらけで、だんだん疲れてきたんだ。足をバタつかせてないと沈んじまう。壁に寄りかかったら少しは楽になるが、そうしたらヒルどもがくっついてきやがるんだ。
████研究員: 今取り掛かっている。チームがまだ君の居場所を特定できていないんだ。何か目印になりそうなものはないか?
D-10221: 無いって。もう出してくれよ。だんだん疲れてきたし、この下に誰かいんだよ。死体だ。下で誰かが死んだんだ。
████研究員: 説明してほしい。我々には何も見え —
D-10221: そっちから連絡が来る前に、水の中に沈んでったんだ。さっき明かりが消えたんだが、その時にそいつが浮かんできて俺にぶつかった。明かりを点けてそいつを見たらパニックになった。最初の何回かは押しのけてたんだが、そうするたびに俺の方に浮かんでくんだ。だからもう何度かは振り切らなきゃならんかった。まるで俺にしがみつこうとしてるみたいだった。一回だけ、俺に被さるように浮かんできて沈めてきやがったんだ。振り切るたびに後ろに浮かんできて、今はもういなくなった。
████研究員: 何が見えるか詳しく説明してくれないか?
D-10221: さっき言って — クソったれ! (被験者が水中でもがく。)
████研究員: どうした?
D-10221: 感触がした。奴が俺の脚を掴んできやがった。
████研究員: 何が掴んだって?
D-10221: なあ、もうこれには耐えられねえんだよ。落ち着こうとはしてるが、もう限界だ。奴ってのは死体のことだ、分かるか? 今さっき俺の脚を奴が掴んだんだよ。
████研究員: その死体とやらについてもう少し詳しく説明してくれないか?
D-10221: 体中がヒルでびっしりの死体だった。どっかの哀れな間抜けがこの下で死んだんだ、もし助けが来なけりゃ俺が次にそうなっちまう。さっさとここから出してくれ。ああ、お願いだから出してくれよ。凄く寒いんだ......
████研究員: できる限り手は打っている。とりあえず、水中に潜って深さを測ることはできるか? もしかしたら出口が —
D-10221: 無理だっつの。言ったよな、ドブみたいな臭いがするってよ。もう二度と行きたくねえ。トンネルでも掘って引っ張り上げりゃあいいだろ。GPSはあるんだよな? いったい何が問題なんだ?
████研究員: 我々は君の居場所に関して可能な限り情報が欲しいんだ。出口があるのか確かめられれば — D-10221? D-10221、聞こえるか?
D-10221: は? 何言って [聞き取り不能] ここで死んじま [聞き取り不能] 離せ —
████研究員: D-10221、何があった?
D-10221: [聞き取り不能]
<ログ終了>
後書: バッテリーの消耗とともにビデオ映像が突如として途絶した。被験者が口述した "死体" の性質については不明であり、現在のところその存在は確認できていない。
インシデント3607-1a: 探査ログ3607-2での出来事から間もなくして、建物内のドアと窓が全て同時に勢い良く閉ざされ、D-15384が消失しました。この時点で、カント計測器はヒューム値が [編集済] に変動したことを示しました。被験者との通信は安定した状態を保っており、内容の書き起こしは音声ログ3607-3に記録されています。
回答者: D-15384
質問者: ████研究員
前書: D-15384はSCP-3607を退出する許可を得ていた。被験者が脱出する前に、バスルームのドアが勢い良く閉まる音が聞こえる。
<ログ開始>
D-15384: 何だぁ? (笑う) ドアが急に閉まったぞ。危うくビビるところだったわ。風かなんかのせいだろうな。
(被験者が相当な努力をもってドアを開けようと試みているのが聞こえる。)
D-15384: 何だこりゃ? おい、博士、こいつ固ぇぞ。
████研究員: ロックされているはずはない。力を加えてみてくれ。
D-15384: 蹴りでも入れるか。
(被験者がドアを蹴るのが聞こえる。ドアが勢い良く開くと、濡れた物体が衝撃を受ける音が聞こえる。)
D-15384: うわっ、何だよこれ! おいおい、ふざけんなって!
████研究員: どうした?
D-15384: クソッたれ! これ見ろよ!
(被験者がカメラをドアの外に向ける。ドアの先はSCP-3607内の他の空間ではなく、壁から多数のダクトが突き出ている、長大かつ脈動する肉質の洞穴に続いているように見受けられる。加えて、金属管が何本か洞穴と交わっているのが見え、そこから黒ずんだ液体が流出している。洞穴の直径は人間が通行できるほどの大きさであるように見える。しきりに湾曲しているため深さは不明である。湾曲箇所の奥から影が動いているのが見える。これのコンテキストは不明。)
████研究員: なん —
D-15384: ああ嘘だろ、博士、俺は今何を見てる? なんだってこんな所に来ちまったんだ?
████研究員: 分からん。
D-15384: 博士、俺は今マジに、マジにビビってんだよ。何だよこれ? ここはどこだ? この家に何があったんだ?
████研究員: 落ち着け。我々にも分からん。アノマリー内のナビゲートを試みてくれないか?
D-15384: 異常アノマリー? めっちゃ上手いこと言うな。ここを進んでほしいのか? まるで誰かの腹のな — おい — おい、マジかよ。博士、今の聞こえたか?
████研究員: 何がだ?
D-15384: ちゃんと聴けって。ああ、何か、嫌な音が —
(被験者が音声機器をアノマリーに向ける。歪んだしわがれ声がかすかに聞こえる。発生源は洞穴内のダクトであると思われる。)
声: 俺が知ってると思うか? 天井に穴がない。どうやって来たのかさっぱり分かんねえよ。
声: お願いだから出してくれ。この下に何かいんだ。
声: 臭いがキツすぎる。
████研究員: 何? 今のは —
(████研究員が、この声がD-10221と同一であり、上記音声ログでの台詞を繰り返したものであることに気付く。)
████研究員: なるほど、たしかに奇妙だな。少し待っててくれ。こちらで次の行動指針について話し合う。
D-15384: マジか。早く済ませてくれよ。うわっ、こいつ呼吸してやがる。マジで吐きそうだ。
(D-15384の所在を特定するために遠隔操作ドローンを用いることが決定される。バスルームの調査が行われたものの、被験者は不在だった。)
████研究員: D-15384、聞こえるか?
D-15384: そりゃどういう質問だ?
████研究員: 建物内で君の居場所を特定できなかった。
D-15384: おま — は? 冗談だよな? それってどういう意味だよ?
████研究員: 窓から脱出を試みられるか?
D-15384: 無理だ。格子が架かってる。外も見たが、そっちも同じだ。
(被験者がカメラをバスルームの窓に向ける。外見は脈動する神経組織の大きな束であるように見受けられる。歯と思しき構造物もいくつか束の中に織り交ぜられているのが確認できる。)
D-15384: いったい何が起こってんのか、教える気はねえのか?
████研究員: 君にはこれからアノマリー内をナビゲートしてほしい。出口が見つかればこちらで救出できる。
D-15384: マジかよ! そっちで壁とかぶっ壊したりできないのか?
████研究員: D-15384、他に道はない。指示通り進んでくれ。
(被験者は1分31秒間反応を返さない。)
D-15384: 分かったよ、やりゃあいいんだろ。クソが! 事が済んだらすぐに迎えに来いよな。
████研究員: そちらの居場所はGPSで追跡する。それと、途中で組織や肉のサンプルを採取してほしい。
(被験者がドアの縁へと進む。被験者が何かを呟きながら組織の一部を採取し、支給された標本瓶の中に保存する。)
声: いつになったら出してくれんだよ? どこもかしこもヒルだらけで、だんだん疲れてきたんだ。足をバタつかせてないと沈んじまう。壁に寄りかかったら少しは楽になるが、そうしたらヒルどもがくっついてきやがるんだ。
D-15384: うるっせえな! ああもう、この声どっからしてんだよ?
████研究員: D-15384、落ち着いてくれ。
D-15384: (呟いて) 言うのは簡単だろうがよ。OK、肉の一部はゲットしたぞ。これから先に進む。うげっ、すげぇ柔らかくて不安定だな。まるで —
(被験者の悲鳴が聞こえる。)
D-15384: ちょっ、おい! マジか! クソッ!
████研究員: 何があった?
D-15384: くっついた! 俺がこの — この — クソ肉を踏んだ途端に、足がくっつきやがったんだ! ああ、靴越しにヒリヒリしてきた。どうすりゃいい?
████研究員: 靴を脱ぐんだ。
D-15384: クソが! 今やってる! うおっと! 畜生、何が起こってんだ?
(洞穴内のダクトが液体やヒルに似た生物を排出し始める。液体が洞穴の地面から溢れ出す。小さなヒス音が聞き取れる。液体に接触した金属管が腐食する様子が観測される。)
D-15384: 畜生! ゲロと灼けたゴムみたいな匂いがする。うっ! 熱っ!
声: (笑い) マジで言ってんのかよ? こんな廃屋で1日過ごすだけでいいのか?
声: マジだって! ちゃんと画面見ろよ! バッテリーが少なくなってきてんだよ。
声: 離せ! 離せよクソ野郎が! 助け [ゴボゴボという音]
D-15384: うるせえ! クソッ、クソッ!
████研究員: バスルームに閉じこもれ。別の出口を探すんだ。
(被験者が辛くも逃げ延びる。靴が洞穴内の窪みに引き摺り込まれ、分解される。被験者がバスルームのドアを閉める。極めてストレスを感じているように見受けられる。)
D-15384: 足がヒリヒリする。皮が剥けちまった。ああっ、痛ぇ。いったい何が起こってやがる? 誰が喋ってんだ? 何が — ちょっ、おい! クソが!
(シンクと浴槽の蛇口が、洞穴内で見られたものと同一の消化液を排出し始める。多数のヒルが蛇口から出現する様子が観測される。)
D-15384: ふざけんじゃねえぞ!
████研究員: 蛇口を閉めろ。
(被験者が指示に従う。)
D-15384: ダメだ! 閉じようとしてもまた開きやがる。排水口も何かで詰まってんぞ。げっ! あちこちから噴き出してきやがった!
████研究員: トイレの便座に上がって、別の出口を発見できないか確かめるんだ。今、できる限り手を尽くしてそちらの居場所を探している。
D-15384: 急げ! 溜まるのが速ぇ! 畜生! 何が起こってやがんだ? うおっ! トイレからも出てきたぞ!
(被験者がカップで消化液を掬い、トイレに廃棄しようと試みる。2回目の試みの後で被験者が中止する。トイレの周囲に消化液の水溜まりが形成されているのが観測される。)
D-15384: クソッ! 手に付いた。畜生が —
████研究員: D-15384、トイレの上に換気シャフトは見当たらないか? そこに身体を押し込めるかもしれない。
D-15384: ああ、けど途中にファンがあるな。知ったこっちゃねえ、ぶっ壊してやる。(被験者が支給されたツールセットからレンチを取り出す。)
(バスルームのドアが開く音が聞こえる。被験者が振り返ると、大量の消化液とヒルが流れ込んでくる。)
声: この下に誰かいんだよ。死体だ。下で誰かが死んだんだ。
D-15384: クソぁ!
(被験者がファンの除去に成功し、落下してきた不明な物体に衝突して悲鳴を上げる。カメラが液体に落下し、画像が遮られる。)
████研究員: 何があった?
D-15384: 死体があった! 畜、生がっ! 落ちてきやがった! 助けてくれ! (悲鳴) 身体が灼ける! [聞き取り不能]
████研究員: そこから出ろ。カメラを拾ってそこから出るんだ。
(被験者が泣き叫びながらもカメラの回収に成功する。消化液に塗れたため、映像の品質は落ちている。)
D-15384: 博士、落ちた時ひどく灼けちまったんだ。今は便器の上にいる。部屋が水没しちまう。(泣き声) 助けてくれ。窓、窓が —
████研究員: 換気シャフトに入るんだ。何があったか説明してくれ。
D-15384: 分かった、分かった。やってみる。クソったれ。水没しそうだ。(泣き声) 窓の外からあいつらが。あいつらが —
(被験者の悲鳴が聞こえる。)
████研究員: D-15384?
(トイレの水が流れる音が聞こえ、カメラが高速で落下しているように見受けられる。激しい水流が視認でき、レンズから消化液を拭う。)
████研究員: 何が起こっている?
(下水管の内部が視認できる。水が血液で急速に赤く染まり、画面上に3匹のヒルが現れ、レンズが破損してビデオ映像が終了する。)
<ログ終了>
後書: 約12時間後、被験者が採取した組織サンプルがバスルーム内に出現した。DNAシークエンシングの結果、当該サンプルがD-10221の組織と一致することが判明した。バスルームの換気シャフトから遺体は発見されなかった。
補遺3607-2a: 2002/██/██、SCP-3607の調査中にプリンターの活動が検出されました。当該プリンターは1枚の文書を生成しました。
生成された文書は遠隔操作ドローンを用いて回収されました。文章の内容は以下の通りです。
もどってこないで。ぼく自身をここにとじこめたんだ。ぼくが出てこれなければかれも出てこれない。かれが出てこれなければだれもきずつけられない。かれがぼくの家ぞくを消した。かれがぼくにそうさせた。かれがしゅう人たちを消した。かれがぼくにそうさせた。かれはぼくだ。入ってこないで。かれが強くなっちゃう。かれはわるいことを起こす。ぼくがわるいことを起こす。ぼくのせいじゃない。かれをコントロールできない。なんでこんなことになったのか分かんない。ごめんなさい。
この文章は標準規格のフォントで印刷されたものではなく、SCP-3607にかつて居住していた最年少の子供であるデヴィン・████ (8歳) の筆跡と一致しています。
その後、当該メッセージの執筆者 (SCP-3607-Aと指定) との交流が何度も試みられているものの、いずれも失敗に終わっています。