クレジット
タイトル: SCP-3530 - シューティング・スター学園
翻訳責任者: Yamano_Nakano_Kemono Yamano_Nakano_Kemono
翻訳年: 2025
著作権者: Witryso Witryso
原題: SCP-3530 - Shooting Star School
作成年: 2024
初訳時参照リビジョン: 7
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-3530
アイテム番号: SCP-3530
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: シューティング・スター学園の敷地内から物理的に引き離すことは不可能なため、SCP-3530は現地において収容されます。SCP-3530の非敵対的な性格を考慮し、またシューティング・スター社からの報復を避けるために、学園は別途指示があるまで通常通り開校されます。(補遺を参照してください。)
生徒をシューティング・スター学園敷地内に位置するいずれかの機関に入学させることを希望する保護者は、保護者および生徒がともに通常の心理検査を受診することに同意する必要があります。これらの検査は現地の精神医療機関に潜入した財団職員によって実施されなくてはなりません。SCP-3530への曝露によって何らかの通常と異なる行動がみられた場合は記録され、該当する家族は記憶処理が施されたうえで再配置されます。
補遺 (2015年4月23日追加): 事件5-394をうけ、個人を対象とした心理検査は家族の構成員それぞれについて個別に実施されるものとします。実施に際して家庭内暴力あるいは児童虐待の証拠が発見された場合、該当する加害者は現地の法執行機関に引き渡され、そのほかの家族は記憶処理が施されたうえで再配置されます。
説明: SCP-3530はジョージア州██████に位置するK-12学校である「シューティング・スター学園」の主要な3か所の建造物内に存在する15体の個体の集団の呼称です。個体はそれぞれSCP-3530-1からSCP-3530-15と呼称されます。これらの個体はすべて知覚能力をもち、身体的な特徴はさまざまですが、すべてが平面上に描かれた手描きの漫画の動物の姿をしています。漫画の外見を有するにもかかわらず、SCP-3530の個体は3次元の空間の中を移動し、周囲の環境と相互作用することが可能です。しかしSCP-3530は、地理的に学校の敷地と定義されているシューティング・スター学園の境界線の外部に出ることはできません。SCP-3530をこの範囲の外に出そうとすると、その個体は消失し、その後学校の境界線の内側に再出現します。
SCP-3530の役割は基本的に教育者です。SCP-3530の個体はそれぞれ特定の専攻を有する中等教育の教師であり、同様にその教科の担当教員であるように行動します。生徒および職員はSCP-3530の個体を「好感がもてる」とみなし、多くの生徒はSCP-3530を「仲のよい友達」であると考えます。この考えはSCP-3530とも相互に共有され、SCP-3530のいくつかの個体も同様に生徒および職員に対する好感度が増していると言及します。SCP-3530のそれぞれの個体は、それぞれが専攻する教科に関連する器具あるいはその他の物体を実体化する能力をもちます。例として、SCP-3530-1は分度器、定規、計算機といった器具を実体化していることが観察されています。これらの実体化を可能にしている手段については解明されていません。
SCP-3530は幼稚園から第12学年までのすべての学年に出現します。生徒が進級し新しい学年に入ると、SCP-3530はそれぞれの学年の生徒の関心にあわせて外見を変化させます。特定のSCP-3530の個体は、生徒が中等および高等教育の課程に進級し、その個体が担当している教科を受講するまで出現しません。
個体 | 種 | 体型 | 担当教科 | 詳細 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
SCP-3530-1 | アナウサギ (Oryctolagus cuniculus) | 非人間型 | 算数/数学 | 女性。衣服の着用なし。全学年に共通して出現。 | 現時点で財団職員がインタビューできた唯一の個体。 |
SCP-3530-2 | ヨーロッパアカガエル (Rana temporaria) | 非人間型 | 理科 | 男性。衣服の着用なし。全学年に共通して出現。 | |
SCP-3530-3 | ワシミミズク (Bubo bubo) | 非人間型 | 英語/読解 | 男性。蝶ネクタイと眼鏡を着用している。イギリス英語のアクセントで会話する。全学年に共通して出現。 | |
SCP-3530-4 | インドホシガメ (Geochelone elegans) | 非人間型 | 歴史/社会科学 | 男性。衣服の着用なし。全学年に共通して出現。 | |
SCP-3530-5 | ライオン (Panthera leo) | 人間型 | 体育/スポーツ競技 | 男性。赤色の汗止めバンドを着用し、ホイッスルを所持している。全学年に共通して出現。 | 事件5-394記録を参照。 |
SCP-3530-6 | コトドリ (Menura novaehollandiae) | 非人間型 | 音楽/バンド活動 | 女性。衣服の着用なし。全学年に共通して出現。 | |
SCP-3530-7 | アフリカゾウ (Loxodonta Africana) | 人間型 | 美術/美術史 | 男性。美術用のスモックを着用し、しばしば絵の具のついたパレットおよび絵筆を所持している。全学年に共通して出現。 | |
SCP-3530-8 | クロハゲワシ (Aegypius monachus) | 非人間型 | 言語活動/演劇 | 男性。衣服の着用なし。第6学年から第12学年に出現。 | |
SCP-3530-9 | シュバシコウ (Ciconia ciconia) | 人間型 | 保健 | 女性。看護師の制服を着用している。生徒および職員によると「お母さんのような」口調で会話する。第6学年から第12学年に出現。 | |
SCP-3530-10 | インコ (Psittacine) | 非人間型 | スペイン語 | 男性。小型のソンブレロを着用している。流暢なスペイン語で会話する。第6学年から第12学年に出現。 | |
SCP-3530-11 | シマスカンク (Mephitis mephitis) | 人間型 | フランス語 | 女性。赤色のベレー帽および黒と白の横縞模様のシャツを着用している。流暢なフランス語で会話する。第6学年から第12学年に出現。 | |
SCP-3530-12 | ジャーマンシェパード(イヌ) (Canis lupus familiaris) | 人間型 | ドイツ語 | 男性。レーダーホーゼンを着用している。流暢なドイツ語で会話する。第6学年から第12学年に出現。 | |
SCP-3530-13 | イエネコ (Felis domesticus) | 非人間型 | 家政学 | 女性。衣服の着用なし。第6学年から第12学年に出現。 | |
SCP-3530-14 | モリアカネズミ (Apodemus sylvaticus) | 非人間型 | コンピュータ/情報技術 | 男性。衣服の着用なし。第9学年から第12学年に出現。 | |
SCP-3530-15 | ウシ (Bos taurus) | 人間型 | 経営学/金融 | 女性。ビジネススーツを着用し、しばしば黒色のブリーフケースおよびスマートフォンを所持している。第9学年から第12学年に出現。 | スマートフォンで通話している様子が観察されているが、通話相手は現時点において不明。 |
インタビュー日: 2015年02月17日
インタビュアー: エージェント・ブラウン(インターネットジャーナリストに偽装)
インタビュー対象: キャスリーン・ガードナー氏(シューティング・スター学園校長)
前記: 以下のインタビューはSCP-3530の出自を確定することを目的として実施されました。
<録音開始>
ブラウン: ところで、この学校は以前は「流れ星シューティング・スター」という名前ではなかったですね?
ガードナー氏: ええ。以前は ██████ █████ という名前でした。
ブラウン: 変更したのはどうしてですか?
ガードナー氏: まあ、少々長い話になりますね。3年ほど前のことだったでしょうか、私が校長になって10年目です。この学校は......。
ブラウン: 何か不満が?
ガードナー氏: いいえ、そうではなく、何と言うか......退屈だ、とでも言いますか。うまく説明できませんが、私には、この学校にはこれといった取り柄となるものがないように思えてならなかったのです。テストの点数、運動部の成績、それにスタッフでも、どれをとってもどこか伸び悩んでいるように思えたのです。
ブラウン: ところが今や、この学校は州でもずば抜けた成績をおさめていますね。何があったのですか?
ガードナー氏: ええ、ここからはちょっと奇妙な話になるかもしれないので、信用していただけるかわかりませんが。そうですね、あれはちょうど、秋学期が始まる数週間前でした。夕方に家の近所を散歩しながら、仕事のこととかを考えていました。そして、学校について、これからどうしようかと考えながら、ふと頭の上を見上げたら、そこに流れ星が光ったのが見えました。それで、まあばかばかしいとは思いましたが、別になにか損をするわけでもないと思って。それで、星に願い事をしたんです。
ブラウン: 願い事。どんなことを?
ガードナー氏: はっきりとは覚えていません。何年も前のことですし......。学校がもっと良くなりますように、もっと人を引き付けるような場所になりますように、とかそんなことだったと思います。ほんとうにばかばかしいことで、次の日にeメールが来て、それでようやく「そう言えば......。」と思い出したぐらいなんです。
ブラウン: メール。何が書いてあったか教えていただけますか。
ガードナー氏: 確か、読んですぐ削除してしまったので、内容は正確には覚えていません。最初はただの迷惑メールのたぐいだろうと思ったんです。差出人はよく覚えています。「流れ星シューティング・スター社」。偶然の一致だとは思いましたが、別に気にとめませんでした。それが2、3時間後、本部から電話があって、私のオフィスに来客の方がお待ちです、というんです。 こんな早い時間にオフィスに戻るのは少々気が進みませんでしたが、電話で聞いた様子ではどうも急用のようでした。オフィスに着いたら、職員みんながすぐに会議室に行ってくれと。そして......そうですね、願いがかなったんです。
ブラウン: 願いがかなった。
ガードナー氏: ええ、どういうことだ、と聞いたところ、彼らが言ったのがそのことでした。 要するに、学校の中を生きたディズニーのアニメが歩いてるというのは普通ではないが、自分たちは私の願いをかなえるためにここに来たのだと。メールのことについても説明してくれました。
ブラウン: それを聞いてどう思われました?
ガードナー氏: もちろん、最初は疑心暗鬼でした。理由はお分かりになりますよね。ですが、彼らは口を揃えて、自分たちには、それに自分たちをここによこしたものにも悪意はないことは請け負うと言うのです。スタッフとも話しました。スタッフも私と同様に戸惑っていましたが、実際のところ反対する意見はありませんでした。そこで、とりあえず次善策として1、2週間ほどの試用期間を設けてみることに決めました。結果は......信じられませんでした。テストの点数と出席率は急上昇。子供たちは彼らが大好きだし、それにスタッフも。何人かの保護者の方からも高評価をいただけたんです。かいつまんで言いますと、私たちはそれからずっと一緒に働いているというわけです。
ブラウン: 外部に相談しようとはされなかったのですか?
ガードナー氏: だれも信用しないでしょう。それに、彼らが何か問題をおこしたわけではないですから。
ブラウン: 確かにそうでしょうね。学校名を変更したのはいつのことですか?
ガードナー氏: 1年ぐらい前になるでしょうか。言い出したのは私なんですよ。流れ星シューティング・スターがなかったら、こんなことはきっと起きなかったでしょうから。そのことを覚えておくために。
<録音終了>
注記: 生徒および教職員は、どのような形であれSCP-3530が奇妙である、あるいは通常とは異なるとは考えていないようです。これがSCP-3530による何らかの心理的効果のためであるかについては、現時点において調査中です。
インタビュー日: 2015年03月06日
インタビュアー: エージェント・ブラウン
インタビュー対象: SCP-3530-1
前記: 以下のインタビューはシューティング・スター学園小学校校舎内の教室において実施されました。エージェント・ブラウンはインタビューについてガードナー校長より許可を得たうえで実施しました。
<録音開始>
ブラウン: お名前を教えていただいてよろしいですか?
SCP-3530-1: 私の名前はリタ、ウサギのリタです! あなたのお名前は?
ブラウン: フェリシティと呼んでください。はじめまして、リタ先生。ここではどういったことをされているのですか?
SCP-3530-1: 子どもたちが算数をお勉強するお手伝いをしています! とても楽しいです!
ブラウン: それから、あなたのお友達の方々はどのようなことを?
SCP-3530-1: みんなが子どもたちのお手伝いをしています! フレディは理科、ラリーは体育、全部みんなでしています!
ブラウン: なるほど。ところで、皆さんはどこから来ているのですか?
SCP-3530-1: ええと、ガードナー先生が願い事をしたので、私たちはそれをかなえるためにここに来ました!
ブラウン: どんな願い事だったか、覚えていますか?
SCP-3530-1: もちろん! 先生は、この学校がみんなを幸せにすることを願いました!
ブラウン: では、皆さんをここに連れて来たのは誰ですか?
SCP-3530-1: シューティング・スター社の皆さんです!
ブラウン: では、シューティング・スター社について教えていただけますか?
SCP-3530-1: うーん......分かりません。でも、私と仲間たちがここに来たのはガードナー先生の願いをかなえるためだったのは間違いないです! とてもうれしいです! ここではたくさんのすばらしい仲間がいます!
<録音終了>
注記: シューティング・スター社に対するさらなる調査は現在続行中です。要注意団体(GoI)への指定は保留されています。
事件5-394記録: 2015年4月23日において、シューティング・スター学園に通学する生徒の父親である█████ ██████ 氏の遺体が、学園敷地内の体育館において警備担当職員によって発見されました。 ██████ 氏の家族は最近この地域に転居してきており、█████ ██████ 君は██████ 氏が遺体で発見されるおよそ6週間前に学園に転校していました。検死の結果、遺体の胸部には数箇所の深い裂傷が認められ、爪の痕はライオンの成獣のものと一致しました。
SCP-3530-5が加害者であると推定されましたが、財団職員が捜査のため現場に到着したところ、学園敷地内のどの場所にもSCP-3530-5の所在が確認されませんでした。聴取を受けたSCP-3530の各個体は、いずれもSCP-3530-5は「ちょっと休みをとって」おり、数日で戻るはずであると回答しました。SCP-3530-5はその5日後に再び出現しました。聴取を受けた際、SCP-3530-5は事件については全く知らないと回答し、██████ 氏の家族に対して哀悼の意を表明しました。
その後の捜査によって、 ██████ 氏には薬物およびアルコール乱用の履歴があり、それにより家庭内暴力および児童虐待が行われていたことを示す証拠が発見されました。██████ 氏の家族は記憶処理が施されたうえで再配置されました。虐待の疑いのある家庭に対する収容プロトコルの改定の結果、それ以降同様の事件は発生していません。
補遺: 数度にわたるシューティング・スター学園を閉鎖しようとする試みが失敗に終わった後に、財団職員がシューティング・スター社からの以下のeメールを受信しました。
平素よりお世話になっております。
シューティング・スター社による最新の事業に関心をもっていただき、ありがとうございます! 私どもの仕事を認めていただけたことをうれしく思います。しかし、残念ながらあなたの行為が事業の妨げとなり、目標の達成に至っておりません。シューティング・スター社は、私どものすばらしい顧客の皆さまの願いの実現のために、誠心誠意取り組んでおります! あなたの行為に対しての伝言をお伝えします。
やめろ。
今後ともシューティング・スター社をよろしくお願いいたします!