クレジット
翻訳責任者: Yukth Yukth
翻訳協力者: Flips_0122 Flips_0122
翻訳年: 2025
著作権者: AbsentmindedNihilist AbsentmindedNihilist
原題: SCP-3240 - The Bones Of What You Believe
作成年: 2017
初訳時参照リビジョン: 41
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-3240
SCP-3240に従事した直後のギンギツネ。写真はフィンランドの毛皮工場から標本が回収された際に撮影された。尾は再生し、現在は完全に機能している。
アイテム番号: SCP-3240
オブジェクトクラス: Keter Neutralized Hiemal
特別収容プロトコル: SCP-3240の影響を受ける各動物種につき、少なくとも12体の被影響個体を財団は管理しなければなりません。捕獲された個体は自然のバイオームを模した区画に収容されますが、影響下にない同種個体との接触は許可されません。被影響個体が発生した・将来的に発生することが予測される場所において、当該の個体群は監視されなければなりません。将来的な発生が予測される場所は文書3240-アステリオンに詳述される ローウェル-コスト アルゴリズムにより予測されます。
説明: SCP-3240は特定の肉食動物で観測される学習行動です。SCP-3240を発現する条件として、対象は特定のバイオーム (タイガ・チャパラル・ツンドラ・砂漠・山岳) のいずれかに生息する肉食動物種である必要があります。影響下にある動物は狩猟行動をとらなくなる以外の行動異常を示しません。
被影響種として、コサックギツネ・シロハヤブサ・ホッキョクギツネ・ヒョウアザラシ・カナダオオヤマネコ・ユキヒョウ・キングコブラ・ホッキョクオオカミ・オオタカ・ダイヤガラガラヘビ・セーカーハヤブサ・コヨーテ・シロフクロウ・アナホリフクロウなどが既知とされます。
日次の太陽南中時刻になると、特定地点から半径5km圏内に存在するSCP-3240被影響個体が1箇所に集合し、自身の肉体を摂食します。被影響個体は体重の約10〜15%を消費し、最も口に届きやすい身体部から消費されるのが一般的です。(四肢動物であれば前肢や尾などが好例) 被影響個体に消費されるのは筋肉や結合組織であり、骨やエナメル質を消費することはありません。消費された肉体は12時間後に全て回復します。消費中の出血は通常通りに進行しますが、SCP-3240への従事終了と共に停止します。時たま、つがいとなる個体間で互いの内臓を消費しあったり、求愛行動中に差し出したりすることが見られます。また、幼若すぎて自身の肉体を摂食できない個体の場合、その親個体が子個体の肉体を引きちぎって与えることが観察されます。ホッキョクオオカミなどの社会性を呈する種がSCP-3240に従事する場合、独特な鳴き声を上げるのが確認されます。
エンドルフィンや他の鎮痛性物質が分泌されていないにも関わらず、影響下にある生物は痛みへの反応を一切示しません。また、消費の開始時点から回復に至るまで、被影響個体は自身の負傷により活動を妨げられる様子を示しません。
SCP-3240は関係を持たない成体間で54%、兄弟姉妹・つがい・同一の集団に属する個体間で63%、親子間では99%の感染率を示します。
その類似性から、SCP-3240・SCP-2889・SCP-2547は関連性を有していると推論されています。SCP-2547の出現直後の地点においてSCP-3240が高いレベルで伝播していることが報告されており、SCP-3240の無力化後のSCP-2889領域における異常活動が付加的に発生していることは注目に値します。
補遺1: SCP-3240は人間にも影響を及ぼすことが判明しています。これはモスクワ・ソルトレイクシティ・エジプト・マラケシュなどの都市で顕著であり、複数のホームレス集団から被影響者が確認されています。SCP-3240に関連する宗教の教義と恩恵を教え広めようとする大道演説家の存在は次第に珍しくないものになりつつあります。当該のコミュニティ群の持つ不透明性のため、SCP-3240の影響下にある人間の積極的監視ないし無力化は困難であることが証明されています。SCP-3240の被影響者を捕縛する試みの一切は影響下にある他の動物群の敵対行為により失敗しています。情報収集においては諜報活動で実りある結果が得られていますが、その指導者的存在については発見できていません。(そもそも存在しない可能性すら挙げられます。)
問題とされる宗教への入信者たちの動機について詳細を入手するべく、財団エージェントのルーカス・ベイヤードはソルトレイクシティの宗教団体に潜入しました。以下は改宗者男性███・████████との会話の転写です。████████は錆びたナイフを使用してSCP-3240に従事しようと試みており、ベイヤードは清潔なナイフを提供する口実で当該人物に接近しました。
<ログ開始>
ベイヤード: なぁ、おい、そんなの使うなよ。それじゃ破傷風になるぞ。ほら、俺のを使えよ。
[████████がナイフを受け取る。大腿部から自身の肉を切り取り始める。]
████████: かたじけねぇね。俺の歯は前みたいにゃ使えんくなっちまってな、分かるかいね?歯以外の部分も変わっちまったけどもな。お前さんと違ってな。お前さんみたいな健康で丈夫そうなやつがこんなとこで何してる?
ベイヤード: 俺じゃない、強くなきゃいけなかったのは俺じゃなかったさ。嫁さんの癌で俺ら2人の貯蓄と、それに彼女の腹の内側も食い荒らされちまった。保険じゃ埋め合わせにならないみたいなんだ。持病のせいでな。
████████: そりゃ残念だ。本当に、とんでもなく残念に思う。お悔み申し上げる。そいつが忌むべき問題そのものなんさね。どいつもこいつも糸でぐるぐる巻きにされて、雁字搦めになっていやがる。求めるもののためにゃ、お前さんは奴らのケツへキスしておべっか使って回らなきゃなんねぇ。そんでもってお前さんは外に放り捨てられて、道端で奴らに残りカスをせがむ他なくなっちまう。
ベイヤード: ごもっともだね。炊き出しなんかには行けやしない。こっぱずかしいことこの上ないからな。俺は、何というか、施す側だったんだ。気付いたら施される側さ。
████████: まったくもってその通りよ。奴らが俺らに食わせたがってんなら、そりゃ俺らも食えるさ、けどもそりゃ奴らの気まぐれに他ならんわ。俺らは飼われた畜生さね。けどもこいつはどうかいね?俺はこいつを好く思っちょる。あの男に、生きるのに人が必要なもんは全て生まれた時に授けられとると教わった。骸さえありゃあ、何も問題ありゃせんともな。だからお前さんにも教えちゃる。忌々しいこの骸は俺のもんじゃ。でもって、何者の助けも要りはせん。肌に日を曝し、髪に風を靡かせ、骨に肉を纏って、どこじゃろうと俺の望む所で生きていける。こいつらを俺から奪うことは何者にも出来んせんからな。
<ログ終了>
補遺2: 一般大衆においては積極的に改宗の試みが行なわれていたにもかかわらず、2017年1月25日発生のインシデントまでSCP-3240への従事が公に行われることは事実上ありませんでした。当該インシデントにおいて、SCP-3240に従事した直後のモスクワ人男性がギリシャ正教教会の屋根に登り、それにオオタカ3羽が続きました。民間の目撃者によって撮影されたビデオ映像の記録が以下に記されています。
<映像開始>
(彼が教会の屋根までの高さ半分ほどの位置にいる。当該人物が登る間、複数のオオタカがその周囲を旋回する。彼が屋根に達する。教会の尖塔にもたれかかり、自身を支えるためにしがみついて演説しだす。)
PoI-3240-Delta: 貴様らはいつしか後悔するであろう、この卑しい、脂肪と血液の詰まった暴食の袋どもめ。貴様らと、貴様らが神と呼ぶ樹液の詰まった奇形の輩もろともな。
(最も大きなオオタカが嘴で彼の胴体に切り口を入れる。記録装置の前を通る人により映像が一時的に遮られる。彼が再び捉えられるようになると、2羽のオオタカが切り開かれた男性の胴体の中を頭を潜らせ始める。終いにはオオワシたちが大きな暗色の塊を1つ取り除ける— 詳細に調査するには映像が低画質であるが、取り除かれた器官は肝臓と推定される。PoI-3240-Deltaはこの切除に対して不快な様子を示さない。記録装置の傍にいる未特定の男性が自身の足元に向かって嘔吐する。)
未特定の男性: あれって— おいまさか、あれは肝臓か?
PoI-3240-Delta: 新緑たる者ヴァーダントは我々を、大層、それは大層長らく虐げてきた。かの者どもの残り滓を我々に寄越し、弱者どもや枯れかけどもにのみ我々が舌鼓を打つことを許して。貴様らが繁茂しすぎた世界の果て、最も荒涼たる地に我々は追いやられた。しかして刃は逆しまに向けられたのだ、ハハハハッ!もはや、我々は貴様らの残り滓を必要とはしない!我々は独りで生きていける、そしてそれは貴様らにできはしない。
(3羽のオオタカ全てが彼の胸郭部分から皮膚と内組織を剥がし始める。)
未特定の女性(画面外): 誰か、あいつを引きずりおろしなさいよ!
(誰も動かず、音を出さない。)
PoI-3240-Delta: 骸䬱なる叢フェルトがお与えになるため、我々は生き永らえよう!我々ぬきには貴様らは苦しまん!貴様らは未だ知らぬであろうがいずれ知ることとなろう!貴様らは成長しては腐り、また成長しては腐り、終いにはどこへ行く宛ても無くなり、自らの喉に蔓が絡み付き締め付けられ、自らの排泄物により窒息するのだ。不釣り合い!なんたる不釣り合いか!循環は相互に為されるものだ!貴様らは忘失しただろうが、我々が思い起こさせてやろう。捕食者は獲物を必要とし、獲物は捕食者を必要とすることを。我々へ授けもしなかった助けを貴様らは求め、慈悲を乞うだろう。そして飢えている貴様らの眼前で我々が食事にありつくとき、貴様らはようやく知るだろう。
(オオタカがPoI-3240-Deltaの胸部から最後の組織を取り除き、肋骨が露出した状態になる。彼は肋骨を引きちぎり、下にいる群衆に投げつける。多数の群衆が叫びだす。)
PoI-3240-Delta: 続け!食らえ!それを割り開いて骨髄を吸え!フェルトの味を知れ!
(映像が再び遮られる。レンズを下にして記録装置が地面に落下する。)
<ログ終了>
翌日、別の男性がモンタナ州ビュートの教会の屋根に登り、ヒメコンドルを伴って同様の演説を行いました。教会の牧師は議論を試みて聖書の一節を引用し始めました。しばらく男性と議論した後、コンドル達が牧師に降り下りてその舌を引きちぎりました。目撃者は拘束され、必要に応じて医療処置が施された後に記憶処理が行われました。両インシデントはパフォーマンスアート作品として偽装されました。現在潜入中のエージェントは民間人がSCP-3240に暴露する前に公の下でSCP-3240を従事しようとする人物を無力化するように指示されています。
補遺3: 観察の結果、SCP-3240の影響を受けた生物が多数存在する地域において、元から生息していた被捕食生物が急速に死滅していることが示されており、一部の個体群は最大80%が減少しています。これらの死滅は個体数の増加に歯止めが効かず、食料源の枯渇による飢餓状態が引き起こされたためだとみられています。回収されたこれらの生物の死体には一切の骨組織が含まれていません。さらなる実験により、死に際して全ての骨が即時に崩壊することが示されています。加えて、SCP-3240の影響を受けた人間が農園や農場で意図的な破壊行為を起こす事案が過去1ヶ月で20件以上報告されています。影響者は接触した植物組織に石灰化を引き起こす未知の物質を使用していました。拘束された全ての犯人は裁判前に自殺しています。
補遺4: 財団はSCP-3240に影響された数人の子供の親権を取得しています。アラスカの田舎町における測量士達が水力発電ダム建造の契約を取り付けている際、彼らは地元のアルナツィアク一家が他の数種類の被影響生物を伴ってSCP-3240に従事していることに気づきました。子供たちの従事を親が補助しているのが目撃された時点で各局への通報がなされ、警察の到着時、大人たちは所有地を後にしたようでした。数匹のホッキョクオオカミとシロハヤブサが住居から発見され、これらの生物は子供たちを助け出そうとしたソーシャルワーカーを攻撃しました。子供たちを救出し、さらなる観察のために財団の監視下に置くために、潜入中のエージェントが介入しました。住居内で発見された動物は現在収容中の同種他個体と共に飼育されました。
アルナツィアク家の住居から救出された子供の一人であるドミトリー・アルナツィアクとのインタビューが以下に記録されています。
インタビューログ:
インタビュアー: ナイルス・ヘッセン博士
対象: ドミトリー・アルナツィアク
前記: ドミトリーは救出された子供たちの中で最も社交的かつ協力的であり、彼の兄弟や従兄弟達に働きかけ、財団職員が彼らを住居から連れ出すのを手伝いました。インタビューは彼がサイト-19に到着した2時間後に行われました。彼はアルナツィアク邸で発見されたSCP-3240の被影響動物たちとの触れ合いを引き換えに求めましたが、当該の要求が拒否されてもインタビューに応じました。
<ログ開始>
ヘッセン博士: こんにちは、ドミトリー。
D.アルナツィアク: こんにちは。
対象が身震いする。口と鼻を袖で覆おうと試みる。
ヘッセン博士: ごめんなさい、何か嫌だったかしら?
対象が首を横に振る。
ヘッセン博士: 本当に?
D.アルナツィアク: 怒らないって約束してくれる?失礼なことをしたいわけじゃないんだ。
ヘッセン博士: もちろんよ。怒らない、約束する。
D.アルナツィアク: 申し訳ないんだけど、その、あんたすごく臭いよ。
ヘッセン博士: どんな具合に?
D.アルナツィアク: 植物って感じの匂い。まるで青々した植物だよ。樹液に葉々に腐れに花粉に、そんな感じ。あんた体中から臭ってるよ。そのせいで僕は病気になりそうだ。
ヘッセン博士: ごめんなさい。
D.アルナツィアク: あんたのせいじゃないよ。どいつもこいつもそんな臭いをさせてるから。長いことあいつらのものを口にしてたらそんな臭いをさせるようになる。余所者はみんなそうなんだ。どうにも慣れやしない、こんなに近くにいるっていうのにね。
ヘッセン博士: それじゃあ、君のご家族は植物を食べはしない、ということかしら。
D.アルナツィアク: そうさ!牛とか兎だとか反芻する動物みたいな、あんたらが供血袋bloodbagにしてるものを僕らは口にしないんだ。あれはパンPanの家畜で、出したもので僕たちは毒されるってママが言うんだ。僕たちが悪いことをしたとき、僕たちを怖がらせるためにママは全部読み聞かせるんだ、それで、パンが僕たちのところにやってくるぞって言うんだ。
ヘッセン博士: それはどんな内容の話だったのかな?お母様がほかに教えてくれたことは?
D.アルナツィアク: 『骨の書』とか『太陽の書』とか『霜の書』とか、他にも。全てフェルトの写本からだよ。僕たち、毎日の食事の前に読んでるんだ。
ヘッセン博士: お祈りする人みたいに?
D.アルナツィアク: うん!いつもやってるやつは僕、カンペキに覚えてるんだ!こうだよ「吾等がこの世に生を受ける折、吾等が顔ばせに太陽を感じ、膚に風を感じる折、吾等に必要とされるものみなを大地が授け給う。吾等はヴァーダントの産物など頬張らず、その呪われし獲物が肉も舌に乗せず。吾等は衰えず、ただ吾等のみを食む。」
ヘッセン博士: なるほどね。
D.アルナツィアク: 『骨の書』の一部だよ。『空の書』とか『霜の書』はまだ知らないけど、この一篇はそらで言えるんだ。初めての切餌の時knife time、子供たちに読み聞かせる用のじゃない、フルバージョンの本をママがくれたんだ。絵も入ってないやつだよ。
ヘッセン博士: 丸暗記で全て言えるだなんて、あなたほんとに賢いのね!
D.アルナツィアク: そんな長いもんじゃないよ。12ページもないし。
ヘッセン博士: だとしても、とても感心するわ。
D.アルナツィアク: 最初の切餌の時にパパが僕にくれたナイフ、あんたにも見てほしかったな。あれ凄く鋭くて素敵で、それでもって素晴らしく滑らかに切れるんだ。どこをとっても良くて、長くて、骨でできてたんだ。オオカミの骨だった。まぁ、僕は未だに歯でやる方が好きなんだけども。
ヘッセン博士: "切餌の時"せつじのとき というと?つまり… ごめんなさい、それについて詳しく聞かせてくれる?
D.アルナツィアク: 自分で自分のを切ることが許される時だよ、代わりに誰かに切ってもらうんじゃなくてね。もう赤ん坊じゃなくなる、そう知らされるんだ。僕、切ったのをフェルトに捧げたんだ。雲一つない晴れた日にやることになってるんだ、あのハヤブサたちにも分かるように。ハヤブサが1人舞い降りてきて鷲掴みにした、彼は自分の役目をちゃんと分かってたんだね。僕全然泣かなかったんだ。
ヘッセン博士: わかったわ。それで、それは何歳の頃に行われたこと?
D.アルナツィアク: 8つの時さ!
ヘッセン博士が立ち上がり、踵を返す。少しして彼女がデスクに戻ってくる。
ヘッセン博士: ごめんなさいね。それで、そのハヤブサさんたちについて話してたんだっけ?
D.アルナツィアク: そうだよ!僕、あのハヤブサたちが大好きなんだ。彼らが飛ぶ姿ってば戦闘機みたいで、こっちに一直線で、かぎ爪を出しててさ。ハヤブサたちに会いたいよ。それにオオカミたちにも。1回、お隣の男の子が僕たちのボールを盗もうとした時があったんだけど、オオカミたちがその子に向かって走ってったんだ、そしたらさぁ…
対象が身を乗り出し、声を潜める。
D.アルナツィアク: 誰にも言わないって約束する?僕、ママにすっごく怒られちゃう。
ヘッセン博士: 私とあなたの秘密よ。
D.アルナツィアク: (ニヤリと笑って) そいつったら、漏らしちゃったんだ。赤ちゃんみたいにパンツを濡らしたってわけ。あのオオカミたちに会いたいよ。あのハヤブサたちにも。あのキツネたちにも、キツネたちは臭いけどね。空が恋しい。いつになったら空が見られるの?
ヘッセン博士: えっと、それはまだわからないの。
D.アルナツィアク: 臭いんだよ、ここ。それに空も見えないし、大地にも触れない。████の最初の切餌の時はどうすればいいっていうのさ?
ヘッセン博士: えっと、私たちのところにいる限り、それを行うことは許されないんじゃないかな。私たちは知らないといけないから、その—
D.アルナツィアク: 僕はあいつに手を貸すこともできないんだ、まだ十分に大人じゃないから。でもあんたならできるよね?僕はあのハヤブサにお話しできる、それで、あんたは僕たちを外に連れだせる。そんなに時間はかからないから。お願い、お願いです。ほんの少し痛いだけだから、約束するから。
ヘッセン博士: 残念だけどできないわ。これを広めるのは許されてないの。
D.アルナツィアク: あのオオカミたちが正しかった。あんたたちが僕を止めようとするだろうって彼らは教えてくれた。僕らを肥やして弱らせて反芻するものにしたい、あんたたちはそう思っているんでしょ?だから僕たちに毎日植物を寄越してるんだ。僕たちを毒しようとしてるんだ。
ヘッセン博士: ドミトリー、お願い、私たちがしてるのは、あなたが成長して健康でいられるように―
D.アルナツィアク: あんたたちはヴァーダントだ!ヴァーダント!パンの信奉者Panlingだ!ママは僕たちに警告した、あんたたちみたいな輩について— ママはあんたたちを汚らわしい、鼻つまみの、骨髄吸いどもmarrow-suckersって呼んでた。
ヘッセン博士: セキュリティ、来て—
D.アルナツィアク: 循環が断ち切れるとき、あんたたちは理解する。肉を狩る者はもはや獲物を追いはしない。書にはこうも記されているんだ、循環が破綻するとき、かの兎は飢えるまで食む痴れ者となり、かの狼はそれを目にして充足たる、とも。実なる御神々の存在が回帰し、僕らが解放される時、ようやくあんたたちは理解する。あんたたちは永劫に腐りゆき、大地の腫瘍であるまま、打ち砕かれた太陽の下であんたたちの老いた山羊とともに腐り果てるんだ。そうしたなら、愛して止まない草葉をあんたたちはどう思うだろうね?それは大層惨めな気分だろうね。
<ログ終了>
後記: 対象はそれ以上の対話を拒否し、拘束中の彼の親族も同様でした。彼の住居から回収された動物たちも同様に著しく攻撃的でした。
アルナツィアク家の子供たちはSCP-3240への従事を防ぐために拘束されました。しかし、彼らは財団から提供された食事を摂取することを拒否しました。彼ら兄弟に食べる意思のあるものについて尋ねた際、ヴァシリー・アルナツィアクは動物の囲いを調べるように財団職員へ言いました。収容下の被影響個体群は囲いの入り口付近に食べられない自身の肉を大量に積み残していました。いくつかの審議を経て、アルナツィアク家の子供たちへの食事として当該の肉を使用することが承認されました。
ドミトリーが言及した『骨の書』と『霜の書』の写本がアルナツィアク家の住居から見つけられました。住居内にある他の多数の物品と同様に本は劣化・破損していましたが、いくつか判読できる部分がありました。
骸䬱たる叢フェルト実体について『骨の書』の記述。
石塊と骨骼と山巓、その精霊と知覚と魂魄、かの鴟梟の叫声、かの山猫の炯眼、そして月影に顕れるかの灰狼の華美なる毛皮。吾等たる歯牙と鉤爪と遠吠、そして雪上に留まり遺る足跡たち。捕食者と、かの者たちは吾等をそう呼び名す。然りとて吾等が牙は内方へと向けられん、吾等が骨に向けられん。
新緑なる者ヴァーダントについて『霜の書』の詳述。
漏れ滲みて延び広がる沼地ども、捻じ曲がりて内に茂る林地ども、柔らかで腐り落ち行く草木ども、そしてそれらを喰らい呼吸に喘ぐ獣ども。これらに蔓延る罪深き身命。かの暴食の大罪たるパンは自らの輩を強勢たらしめんと、嘔吐催す古びた残骸を吾等に投げ寄越しながら吾等の奉謝を当然と思す。かの暴食の大罪たるパンによりて身命の皆が支配されり。今や、かの残骸を吾等が口にする謂れ無し。
SCP-3240の影響を受けた動物について『羽根と毛皮の書』の一節。
... 独立独行、不撓不屈、自資滋養、己の内で完結せりこれら安寧の模範たる者たち。もはや、かの者たちは想い苛みなどしない、石巌に苔生す利鮮の肌触り、雪吹雪を齎す風の情感、それら以外には心煩いなどしない。かの者たちは同朋であり、後援者であり、先達であり— 純然たる狩猟者の蒸留である。
補遺5: 3月14日現在、SCP-3240被影響者の主要なコミュニティの全てが財団エージェントにより強制的に解散させられており、メンバーは財団の管理下に置かれ、SCP-3240の従事を防ぐために拘束されています。3月12日以降、SCP-3240は公共の場で発見されていません。SCP-3240に影響された動物群を置換することを目的とした駆除及び繁殖プログラムは成功を収めており、SCP-3240の発生は83%減少しました。SCP-3240はニュートラライズ化されたと見なされています。
補遺6: 3月21日現在、北緯38度から南緯38度までの全植物体の80%が通常の2〜12倍の成長速度で無秩序に成長しだしています。同様に、当該領域に生息する全ての草食性哺乳類も異常な成長速度を示し、通常の1/4の妊娠期間で繁殖し始めています。いくつかの場合では、植物の成長によってその根部へ動物組織の塊が形成されることも見られます。当該の嚢胞は1〜3時間かけて草食動物に成長します。形成される動物は同種個体よりもかなり大型で縄張り意識が高いことが往々にして見られ、奇形を伴う傾向が認められます。当該の方法で生み出される生物からさらに形成される腫瘍により人間を含む他の動植物が発生することもあり、赤道に近づくにつれて連鎖的発生イベントの確率が上昇しています。影響を受ける範囲は南北方向に1日あたり30km広がっています。
収容の結果、新奇の異常現象が発生したためSCP-3240はHiemalに再分類されました。
SCP-3240の影響者たちはもはや再生能力を示さず、SCP-3240の従事を止めています。ドミトリー・アルナツィアクを除き、影響者たちは質問に答えようとしません。最近の異常現象について、研究者がドミトリーに質問した時の唯一の応答は『峡谷の書』の一節を引用することでした。
緑は吾等を閉じ込め、吾等を捻り、吾等を生きたままに食い尽くす。かの森の中で飢えない者はなく、かの木々の宣うことはその全てが偽りである。空と太陽と風に別れを— さらば、さらばだ!パンの目覚めたるが故に!そして、かの者は飢えている!