ヴォーン・L・カミンスキー; 1921年版の"大いなる遺産"から回収。
アイテム番号: SCP-3138
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 文壇や学会に潜入している財団職員はSCP-3138についての事前説明を受けます。彼らは、登場する人間の死体が正規の数から逸脱していることが判明した全てのフィクション作品を報告します。
財団運営Bot(I/O-MANDELA)が、印刷媒体に関する議論を中心としたWebサイトやオンラインコミュニティを監視します。以前の予想よりも多く人間の死体が描写されている本についての議論は審査のためにフラグ付けされます。
発見された場合、SCP-3138の影響を受けている事が疑われるフィクションの印刷物は、機動部隊ロー-1("プロフェッサー")による回収と見直しが行われます。実行可能と確認された場合、全ての余分な死体は除去・検査・記録されます。それ以外の場合、影響された作品は現地の安全ロッカーに保管します。アクセスはレベル4職員に制限されます。
説明: SCP-3138は出版されたフィクションの印刷物に人間の死体が挿入される現象です。対象となる作品には、人間の死体の存在をはっきりと描写する物語が含まれている必要があります。
挿入された死体はその作品に合った形式で描写されます。一例として、特定の押韻形式に依存している詞に挿入された死体は、その押韻形式を介して描写されます。挿入された死体の摘出は、作品の破壊、または死体の描写を編集によって削除することで可能となります。これが行われると、全ての削除された死体は即座に問題の文章から出現します。特筆すべき事に、これらの事象において出現する死体そのものは異常性を有しておらず、酸性環境での長期的な水没を連想させる劣化の兆候を示しています。
SCP-3138が達成される手法は未だ特定されていません。
補遺3138.1: 回収ログ
回収ログ
発見日時: 1942年03月16日
対象: チャールズ・ディケンズ著 "大いなる遺産"の1921年版ペーパーバック。
大いなる遺産
「滅相も無い、違いますとも」ウェミックの答えは実に素っ気なかった。「そうであると訴えられてはいますがね。あなたや私だってそうなり得ますよ。お互いどちらも訴えられ得るのです」
「お互いどちらも今は違うけれどね」と私は言った。
「いやはや!」ウェミックはそう言いながら人差指で私の胸に触れた。「あなたは奥底の知れん方ですなぁ、ピップさん! ニューゲート監獄の見物に行きませんか? お暇はお有りです?」’
馬車の出札所から目を離さないという先からの望みと相容れないものの、大いに手持ち無沙汰だった私はこの申し出を聞いてホッとした。私は一緒に散歩するだけの時間があるか聞いてくる、と伝えて出札所に向かい、事務員の機嫌が許す限り厳密な精度でもって、一番早い馬車の到着予定はいつ頃になるかを確認した — 実はあらかじめ事務員と同じぐらいしっかりと把握していたが。そしてウェミックの元へ戻り、さも時計とにらめっこしつつ今しがたの情報に驚いたかのような風情を醸しながら彼の提案を受けた。
私たちはニューゲートにほんの数分で着き、暗い色の見慣れない服を上品に着こなした死体が三体、むきだしの壁に吊るされている守衛詰所を抜けて入場した。残酷な光景に度肝を抜かれたが、ウェミックはシッと言って先に進むよう促し、唇に指を当てて私の戸惑いを封殺してしまった。あの当時、刑務所は大変におざなりな扱いを受けており、さりとて公営機関の不行跡が招く大袈裟な反動 — これこそが常に最も461
注記: 3体の回収された死体のうち、身元を明確に特定できたのは1体 — ヘンリー・アール・J・ウォジェハウスキーとの繋がりが知られる会計士のヴォーン・L・カミンスキーのみでした。検死解剖により、3体の死体は全て誤嚥によって死亡したと結論付けられました。
発見ログ
発見日時: 1957年11月06日
対象: F・スコット・フィッツジェラルド著 "グレイト・ギャツビー"の1925年版。
例の灰色がかった異様な姿のように
お抱え運転手は — ウルフシェイムの子分の一人だ — 銃声を耳にしていた — そいつは事件後、音については大して考えなかったとしか言えなかった。俺は駅からギャツビーの家まで車で直行した、そして不安に任せて玄関ステップを急ぎ足に上がる俺の足音で、初めて他の連中も何か妙だと気付いたのだ。しかし、奴らもその時点で状況を呑み込んだと、俺は固く信じている。ろくに言葉も交わさずに、運転手と執事と庭師と俺の四人でもってプールまで駆け付けた。
水の動きは辛うじて分かる程度のかすかなものだった。一方の端からの新鮮な流れが、もう一方の端の排水溝へと向かいながら、波の影とすら言えない小さな波紋を作り、乗客付きのマットレスは不規則にプールの下手へ漂っていた。ろくに水面を乱しもしない微風も、不測の荷物を載せたマットレスの不測の針路を逸らすのには十分だった。一塊になった落ち葉がマットレスに触れてゆっくり回転させ、まるでコンパスの脚のように、水面に細く赤い円を描いた。
俺たちがギャツビーを家へ運び始めた後で、庭師が少し離れた叢の中にウィルソンの死体を発見した — そしてその隣に、もう七体。虐殺はそれで完了だった。
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注記: 6体の回収された死体のうち、身元を明確に特定できたのは4体のみでした。4名は全員、アルフォンス・ガブリエル・カポネの既知の仲間でした。検死解剖により、6体の死体は全て誤嚥によって死亡したと結論付けられました。
回収ログ
発見日時: 1982年02月21日
対象: "エドガー・アラン・ポー詩集"の1912年版。
エドガー・アラン・ポー詩集
そしたら昔のお話です
海のほとりの王国で
雲が木枯し吹きつけた
僕のかわいいアナベル・リー
そしたらえらい親戚が
あの子をたちまち連れてって
お墓にぴしゃり閉じ込めた
ビヴァリー・クイーンの屍とお空の天使はさびしくて
僕とあの子をねたんでた
そう! すべてはそのせいで (ご存じ
海のほとりの王国で)
雲から木枯し夜通し吹いて
凍えて死んだアナベル・リーだけどふたりのその愛は
年寄り物知りみんなより
ずっとずうっと強かった
だからお空の天使でも
海の底の魔物でも
僕とあの子のたましいを
引き離せない アナベル・リー月輝かず、汝が夢は来たらず
かの美しきアナベル・リー。
星出でず、されど見る汝が輝かしき瞳
かの美しきアナベル・リー。
さればこの夜の季節、われかたわらに身を横たう
わが愛する、愛する、わが生命、わが花嫁よ。
あの海のほとりの墓所にて、
ビヴァリー・クイーンの屍と共に。95
注記: 回収された死体の身元は決定的特定まで至らなかったものの、思春期の女性であったと判断されました。1932年、シカゴ市警は、リチャード・チャペルと同居していた17歳女性、ビヴァリー・クイーンの失踪届を保管しています。検死解剖により、死体は誤嚥によって死亡したと結論付けられました。