侈のいろは ハブ » SCP-3083-JP
クレジット
財団記録・情報保安管理局より通達
現在閲覧中の報告書は過去の版です。
現在の版と内容が大きく異なる場合があります。
— RAISA管理官、マリア・ジョーンズ
アイテム番号: SCP-3083-JP
オブジェクトクラス: Uya
特別収容プロトコル: 現実世界におけるSCP-3083-JPを発見するべく、各所の臨海サイトにおいて関係情報は共有され、海洋における捜索が行われます。
説明: SCP-3083-JPは、地球上の海洋に広く存在すると予想される人型実体です。SCP-3083-JPが有すると予測される外見的特徴の例は次の通りです;
- 魚類と類似した顔面。ヒトと比較して、眼球が顔面に占める割合は大きい。
- 体色は緑〜灰青色。おそらく、体表には鱗が存在する。
- 頭部・背部に存在する鰭状の器官。
これらの特徴と以下の発見経緯より、SCP-3083-JPは海中で群れを形成し、集団生活することに特化した人型実体であると推測されます。
SCP-3083-JPの存在が示唆されたのは、SCP-094-JP の定期健康診断です。SCP-094-JPは定期的な血液検査が行われており、その過程で研究員が血液内の生態系についてモニタリングを行った際、複数の集団からなる3μmほどの異常な人型実体が存在することを発見・報告しました。
また、SCP-3083-JPの他にも、SCP-094-JPの血液内からは異常な実体のミニチュアが発見されています。そのうちの多くは血液採取地点にて対応する部位に、当該の実体と類似したアノマリーを発見することに成功しています。以下はその一例です。
番号: SCP-████
SCP-094-JP内での発見場所: 左肺表層部の血管
現実における発見場所: 太平洋沿岸
説明部概要: ヤリイカ(Heterololigo bleekeri) に類似した実体。頭部から二股に分かれており、合計10本の腕と4つの眼球、連結して肥大化した脳に由来すると思われる断片的な知性を有する。
番号: SCP-O94O-JP
SCP-O94O-JPの取り除かれたギンザメ
SCP-094-JP内での発見場所: 肝臓門脈
現実における発見場所: 日本海周辺の深海
説明部概要: ギンザメ(Chimaera phantasma) に類似した実体。ほとんどの筋肉が断裂し、骨の大部分が露出しているにもかかわらず自律的な行動が可能。
備考: SCP-O94O-JPを捕獲したところ、筋肉と思われるもののほとんどが夥しい数の線形動物の群体であり、これら線形動物がSCP-O94O-JPと定義された。SCP-O94O-JPに寄生されていたギンザメは当初生存していたものの、神経系の大部分はSCP-O94O-JPによって操作されており、SCP-O94O-JPが取り除かれたのちほどなく絶命した。
番号: SCP-3N94
SCP-3N94模式図
SCP-094-JP内での発見場所: 頸部の表層血管
現実における発見場所: カナダ、ニューファンドランド沖合
説明部概要: ヒレナガゴンドウ(Globicephala melas) に類似した実体。頭部表面の皮膚に眼球に似た発光器官が密集している。本来の目は退化しており、器官の間にその痕跡が確認できる。発光器官を視認した生物は、方向感覚を徐々に失い、結果として高確率でSCP-3N94に捕食される。
備考: 積極的な収容は危険かつ困難。GPSによる監視と警戒が主に行われている。
これらの異常海棲実体が実際の海中で発見されていることから、発見された異常な人型実体も海中に存在する可能性が高く、財団は存在が仮定される現実世界の実体をSCP-3083-JPとナンバリングしました。SCP-3083-JPのミニチュアはSCP-094-JPの頭部を除いた様々な部位の血管から発見されていることから、SCP-3083-JPは極地を除いた海洋に広く分布していることが考察されますが、20██年現在、地球上においてSCP-3083-JP実例は発見できておらず、説明項における外見的特徴は顕微鏡での微視的観察によるものです。
SCP-094-JP関連資料-1
20██年以降SCP-094-JPには体調の悪化が高頻度で発生しています。これらはそれぞれ、地球環境の大きな変化と深く関わっていると思われます。以下はいくつかの例と、関連が疑われる地球環境の変化です。
・頭髪の著しい脱毛。これは同年代の男性と比べても顕著である。
関連が予想される環境変化⋯⋯フロン化合物によるオゾンホールの発生。
・皮膚の急激な乾燥・ひび割れ。表皮の剥離。
関連が予想される環境変化⋯⋯乾燥地帯による砂漠化の進行。
・顔色の悪化。
関連が予想される環境変化⋯⋯海水温上昇によるサンゴの白化。
・鼻の平坦化、唇の肥大および乾燥。
関連が予想される環境変化⋯⋯開発による海岸付近の崖の切り崩し、汽水域における埋め立ておよび干潟の破壊。
補遺1: 20██/██/██、食事中であったSCP-094-JPが急激に意識を喪失しました。医療スタッフの検査の結果、意識の消失は肺、特に右肺機能の著しい低下による酸素欠乏が原因と判明しました。SCP-094-JP血液中の魚種においては、右肺肺胞部分は地球の大西洋の深海環境に相当することから、現実の大西洋において関連性が見いだせうる環境の捜査が行われました。その結果、北緯3█度██分、西経15█度██分に存在する大西洋沖合の深海430mにおいて、東西3kmに渡ってプラスチックを中心とした人工物が大量に廃棄されている地点を発見しました(地点3083と呼称)。これらが深海底を覆うように層状に堆積していたことから、SCP-094-JPの肺機能の低下は地点3083の廃棄物が原因である可能性が認められ、当該地点における廃棄物回収計画が策定されています。しかし、この事例はSCP-094-JPの体調に影響を及ぼした他の事例と比べて比較的に規模が小さく、またこれらは大西洋の任意の地点で投棄されたものが海流によって地点3083へ流れ着き、緩やかに蓄積した結果の産物であることも判明しているため、SCP-094-JPの急激な意識喪失との因果関係に疑念を抱く研究者も少なくありません。
補遺2: SCP-094-JPの体調の悪化と、SCP-094-JP内に確認される異常海棲実体の種数には正の相関が認められます。しかし、SCP-094-JPの体調悪化に起因して実体が増加しているのか、逆に増加した実体が持ちうる異常性の影響によりSCP-094-JPの体調が悪化しているのか、あるいはそもそもこの2つに直接の因果関係は存在せず、現実の海洋環境の悪化が実体の増加とSCP-094-JPの体調悪化の両方に影響しているだけなのかは依然として不透明です。
低下したSCP-094-JPの肺機能を補助し、また血中の異常海棲実体を早期に発見するため、SCP-094-JPにはECMO(対外式膜型人工肺)が接続され、血中の酸素供給と同時に大静脈周辺を中心とした血液のモニタリングが行われることになります。なお、SCP-094-JPの皮膚が極度の乾燥を示し、表皮のひび割れ、剥離が発生していることから、SCP-094-JPを麻酔して鎮静状態にしたのち、生理食塩水に浸された状態で処置は行われます。
SCP-094-JPインタビュー記録-1
インタビュアー: ████博士
インタビュー対象: SCP-094-JP
日付: 20██/██/██
付記: このインタビューは前述の治療法を行うにあたってのインフォームド・コンセントも兼ねたものである。SCP-094-JPは現在呼吸器を取り付けられているため、インタビューの応対はタイピングによって行う。
<前略>
[████博士が治療計画書をSCP-094-JPに見せながら説明を行う]
████博士: ⋯⋯というわけで、君の治療方針は以上の通りだ。ここまで、何か質問があったら言ってほしい。
SCP-094-JP: 「特にありませ [文章を消去する] いえ、1ついいですか。」
████博士: 何でも聞いてくれ。
SCP-094-JP: 「最近、よく幻聴を聞くんです。」
████博士: 幻聴、か。例えばどんな内容か、覚えているかね?
SCP-094-JP: 「あまり覚えていないんですが、確か、『目の前の人間は敵だ』とか、『お前が今苦しんでいるのはこいつらのせいだ』のようなことが何度か聞こえました」
████博士: ストレスによる症状かもしれないが⋯⋯念の為、そういったことを言った・聞いた職員がいないかどうかこちらでも確認する。
SCP-094-JP: 「この症状は、あなたたちのせいなんですか? それとも、僕のせいで、こんなことになっているのですか?」
████博士: どの症状、だろうか? 幻聴のことかい?
SCP-094-JP: 「それもあるのでしょうが。最近、自分自身に異変が起きているような気がするんです。海風にさらされた水面が、一瞬で無数の細波を立てるように。今回の気を失ったことも、あるいは以前魚を吐いてしまったこともひっくるめてです。」
████博士: [沈黙]答えは、わからない、だ。君の体が地球の海とつながりがあることはわかっている。しかし、君の病気が因果の先にあるのか、元にあるのかは、今でもわかっていない。でも、確かなことはある。どうであろうと、君のせいじゃない。きっと僕たちが、何とかしてみせる。
[無言]
SCP-094-JP: 「あなたたちに、何ができるというのですか?」
<記録終了>
備考: SCP-094-JP収容エリアの担当スタッフはSCP-094-JPが供述したような内容の言葉は聞いていないと供述した。幻聴は体調悪化に伴う強いストレスが原因だと思われる。
次版を閲覧する