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クレジット
タイトル: SCP-3051-JP - 巷で噂の
著者: ©︎p51 p51
作成年: 2024
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紙撚町の住人(左)とSCP-3051-JP-A-23(右)
特別収容プロトコル: 財団のウェブクローラーは福岡県紙撚町に関連するSNS上の記事/ページ/投稿をタグ付けします。タグ付けされた情報は全てMITTRON.aicにより審査され、異常存在の情報を含むことが判明した場合は削除され、関係者への接触と隠蔽処理が行われます。
欺瞞部門は、福岡県紙撚町で事件/事故が発生した際、架空の異常存在に関する情報を含んだカバーストーリーを流布します。詳細は補遺3を参照してください。
SCP-3051-JP-Aの出現が確認された場合、回収チームが派遣されます。チームはSCP-3051-JP-Aを確保した後、福岡県紙撚町の近隣に建設された専用サイトへ移送します。サイトは廃棄物処理場に偽装されています。
SCP-3051-JPの発生を防ぐため、福岡県紙撚町の教育機関/会社/建造物/公園施設/警察/司法機関を対象とする治安回復プログラムが実施されます。プログラムには、道徳教育の促進/社内改革/落書きの掃除/モスキート音発生装置の設置/監視カメラの増設/財団職員の派遣等が含まれますが、これらに限定されません。
説明: SCP-3051-JPは、特定地域の事件/事故に関する異常な街談巷説です。SCP-3051-JPは、その内容と合致する性質を示す異常実体(SCP-3051-JP-A)の出現に関連しています。
SCP-3051-JPは、福岡県紙撚こより町での事件/事故から1週間以内に発生し、口頭での伝達によって町内全域に拡散します。事件/事故の原因が判明しているか否かに関わらず発生し、発生源を特定する試みは成功していません。SCP-3051-JPは非異常の街談巷説と比較して伝達過程における内容の改変/追加/省略が発生しにくく、この性質は町内で確認されるSCP-3051-JPの内容に顕著な差異が見られない原因と推測されています。
別の街談巷説が先んじて周知された場合、同一の事件/事故に由来するSCP-3051-JPは発生しません。周知された街談巷説が異常存在の情報を含まない場合、SCP-3051-JPは通常と同様のプロセスで発生・拡散します。どちらの場合でも後述のSCP-3051-JP-Aは出現します。
SCP-3051-JPは事例毎に内容こそ異なるものの、「異常性のない事件/事故の原因を異常存在に求める」点が全事例において共通します。SCP-3051-JPの内容と現実の矛盾を指摘された人物は、その場では事実を受け入れたように振る舞うものの、SCP-3051-JPの拡散を継続します。SCP-3051-JPはクラスB記憶処理により除去可能です。
SCP-3051-JP-Aは、SCP-3051-JPの内容と合致する性質を示す異常実体です。実体は福岡県紙撚町内のSCP-3051-JP拡散地域に出現します。実体は対応する街談巷説の内容に沿って活動し、出現から75日の経過/合致する内容のSCP-3051-JPを全ての町民が忘却することで消失します。
初期調査の際に撮影、福岡県紙撚町
発生地域: 福岡県紙撚町は、同規模の市町村と比較して顕著な犯罪発生率の高さと異常存在の発見頻度で財団の注意を引きました。異常存在と街談巷説の関連性から、当初は現実性希薄領域の可能性が疑われたものの、町内の空間ヒューム値に異常が見られないことで否定されました。
財団の犯罪学者は、SCP-3051-JPが警察と司法機関の活動に負の影響を及ぼし、それが犯罪発生率の高さに関連していると分析しました。
以下は、初期調査で発見されたSCP-3051-JP-Aおよび対応する街談巷説の抜粋です。抜粋に含まれる街談巷説の情報は取得元の内容を可能な限り維持しています。
アイテム番号: SCP-3051-JP-A-3
説明: 実体は全長5 mのカワラバト(学名: Columba livia)です。24時間ごとに産卵を行い、1度の産卵で10個の卵を産みます。実体が交尾および抱卵を含む育雛を行う様子はこれまで確認されていません。大きさを除き、実体の卵と非異常なカワラバトの卵に差異は無く、焼却・破砕などの方法で処理可能です。
街談巷説: 紙撚町天蓋マンションには鳩の化け物が住み着いている。何も世話しないくせに卵だけはたんまり産むんだ。孵化できなかった卵の酷い臭いがそこら中に漂ってるから、近くを通るだけで吐きそうになる。
備考: 卵の処理を担当した職員の一部から処理中の幻聴が報告されました。検証実験では、証言に含まれる"カワラバトの雛の鳴き声"は確認されませんでした。
アイテム番号: SCP-3051-JP-A-5
説明: 実体はカプセル剤で満たされた金製の杯です。零れる、取り出される等で隙間が生じた場合、新たなカプセル剤が湧出して隙間を埋めます。カプセル剤に対する成分分析の結果は、市販の風邪薬、咳止め薬、睡眠薬と一致しました。
街談巷説: 紙撚町西縦地区には不良少年少女のたまり場があり、その中心には聖杯が設置されている。聖杯から湧き出る霊薬を飲むことで精神は恍惚に包まれ朦朧とし、全身が祝福の喜びに包まれて痙攣する。このような至福へと達するには、最低でも1度に40錠は飲まなければならない。
備考: 西縦地区で多発した薬物中毒事件との関連から精神影響特性が疑われたものの、観察下の実験において思考・精神への異常な作用は確認されませんでした。
アイテム番号: SCP-3051-JP-A-7
説明: 実体は、一般的な"海賊"のイメージと合致する衣装を身に着け、単発式ピストルやカトラスを装備した人間の骨格です。金銭を要求する数種類のフレーズをランダムに発するのみで、コミュニケーションは成立しません。町内全域に60体が出現したものの、家屋への侵入や民間人の拘束など、予想された行動を取る個体は確認されませんでした。各実体は、10代〜20代のモンゴロイド系男性の骨格と一致するデータを示しました。
街談巷説: 家に1人で居てはいけない。家に1人でいると、海賊の恰好をした骸骨強盗たちが窓を叩き割って押し入って来る。昼も夜も関係なしだ。住人は縛られて金と命を奪われる。奴らは神出鬼没で、しかも武装している。骸骨たちは元々この町の若者だったが、割のいいバイトの誘いに乗ったら今の姿へ変えられてしまったらしい。
備考: 当初考えられていた行動からの逸脱は、住居内に単独で居るか否かの判定に際し、住居に生息する人間以外の生物も判断基準に含まれていたという説が有力視されています。
補遺1: インタビュー記録
研究の一環として、紙撚町の住民にインタビューが行われました。以下は、各インタビューの回答に共通して見られる要素を網羅した事例です。完全版のインタビュー記録は要請に応じて閲覧可能です。
対象: 有栖川 勇希
インタビュアー: エージェント・瓦斯灯ガスト
前文: インタビューは財団運営のYoutubeチャンネルによる街頭取材の名目で行われました。可読性のため、会話は標準語へ置換されています。
[記録開始]
インタビュアー: すみません!ちょっとお時間よろしいですか?
対象: 何か用ですか。
[対象は身構える]
インタビュアー: 実は私たち、Youtubeで不思議な現象とか未知の生き物について動画を投稿してるんです。今日は動画で紹介するために、この町の不思議についてお話を伺いたくて。
対象: ああ、そういうことですか。[警戒した様子でインタビューチームを見つめる]チャンネルを確認させてください。
インタビュアー: 分かりました。これです。
[インタビュアーはYoutubeチャンネルを表示した端末の画面を対象に見せる]
対象: 嘘は言ってないみたいですね。いいでしょう。
インタビュアー: ありがとうございます。さっそくですが──
[冗長な箇所を省略]
インタビュアー: ああいった話について、個人的にはどう思っていますか?
対象: 都市伝説、フォークロア、街談巷説......出どころも分からない噂話だと、昔はそう思っていました。
インタビュアー: 今は違うと。
対象: そうなんですよ。[笑う]取るに足らない与太話の筈なのに、いつの間にかあれが楽しみになってました。
インタビュアー: 恐怖を感じることはありませんでしたか?
対象: 最初は確かに怖かったですね。襲われかけたこともありますし。でも、今はそうじゃない。
インタビュアー: 何かきっかけが。
対象: きっかけと言うより慣れですね。町で流行りの噂話を聞けば、どこにどういうモノがいるのかはだいたい予想できます。市役所からは特に危ない場所のリストが週ごとに届きますし。最近じゃ観察する余裕も持てました。どこにでもいて何してくるか分からない人間より、よっぽど安心できます。
インタビュアー: 特に気に入っている点はありますか?
対象: そうですね......色々ありますが、1番はバリエーションです。噂はバリエーション豊かで、雰囲気も展開も千差万別なストーリーがあります。化け物たちも個性があって新鮮で、どれだけ見ても飽きませんよ。
インタビュアー: あなた方が楽しんでいる噂話の元ネタをご存知ですか?
対象: もちろん。放火事件があれば火事の噂話、オーバードーズで病院に運ばれる事故なら薬の噂話。あんだけ前例があれば、意識しなくても分かっちゃいますよ。なんか繋がってるなって。
インタビュアー: それについて、何か思うことはありませんか?
対象: それはまあ......ご愁傷様?
インタビュアー: 分かりました。本日はお時間いただきありがとうございました。
対象: いえいえ、投稿待ってます!
[記録終了]
付記: 紙撚町の住民はSCP-3051-JP,-Aに対し、程度の差こそあるものの共通して好感を示しています。
補遺2: 収容プロトコル更新
当初の特別収容プロトコルは、記憶処理ガスの散布により紙撚町の全住民からSCP-3051-JPを除去することで、SCP-3051-JP-Aの発生を未然に防ぐことを主軸としていました。詳細はアーカイブ済み収容プロトコルを参照して下さい。
運用開始から3か月後、倫理委員会は民間人の健康被害を理由にプロトコルの更新を指示しました。以下は、提出された特別収容プロトコル更新案の概要です。
特別収容プロトコル更新案
概要: SCP-3051-JPの発生頻度は当初の予想を上回り、それに伴う記憶処理の回数も予定を300%超過しています。現在の特別収容プロトコルは状況に適さないと考えられるため、以下の特別収容プロトコルを提案し、現行プロトコルからの更新を希望します。
1. 福岡県紙撚町内で事件/事故が発生した場合、SCP-3051-JPの発生に先んじて欺瞞部門が作成したカバーストーリーを流布する。
- 欺瞞部門の主要業務はカバーストーリーの作成・流布であり、関連するノウハウが蓄積されています。そのため、事件/事故発生から24時間以内に町内全域へカバーストーリーを流布可能です。
- SCP-3051-JP-Aの姿形・性質・行動に、街談巷説がどの程度の影響を及ぼすかは判明しています。適切なカバーストーリーを流布する事で、出現するSCP-3051-JP-Aを以前より目立ちにくく低脅威度にすることが可能です。
2. 欺瞞部門が作成・流布したカバーストーリーはSCP-3051-JP-A回収チームに共有される。
- SCP-3051-JP-Aの情報が明確化され、脅威度も抑制されることで、回収チームの被害は現行プロトコルの10%に低減するものと見込まれます。
3. 回収チームがSCP-3051-JP-Aを確保し、専用サイトへ移送する。
現行プロトコルを継続した場合、街談巷説の拡散速度と事件/事故の発生頻度、記憶処理の対象となる人数から、1ヵ月ごとに5,000人以上の健康被害が発生すると試算結果が出ています。これはヴェール政策および住民への明確な負担となるため、カバーストーリーによるSCP-3051-JP-Aのコントロール案がより優れた解決策であると結論付けられます。
...
提案された特別収容プロトコルには、他に異常存在の情報漏洩を防ぐ監視システムと、事件/事故の発生を抑止する治安回復プログラムの実施が含まれていました。収容委員会は提案を承認し、プロトコルの運用が開始されました。
運用開始以降、SCP-3051-JP-A発見から確保に要する時間は以前と比較して40%に短縮され、犯罪発生率も年々低下傾向にあります。
補遺3: カバーストーリー
以下は、SCP-3051-JP発生以前に町内全域へ拡散されるカバーストーリーの内、殺人/傷害事件のテンプレートです。他のテンプレートについては、SCP-3051-JP-CST一覧を参照して下さい。
[日付]に発生した[殺人/傷害]事件は、[アノマリーの名称]の仕業だ。[名称]は[外観]のように見え、[目視可能な部位]に[図形]型のマークが付いている。[名称]は[脅威度の低い攻撃手段]により、[被害者の氏名]さん[を殺害した/に傷害を負わせた]。
補遺4: 懸念事項
現在、福岡県紙撚町の人口は減少傾向にあります。町外へ移住する人々の年齢層、男女比、その他の条件に極端な偏りは見られません。移住者に対するインタビューの結果、異常存在による関与の可能性は低いと見られています。人口減少率が現行ペースを維持した場合、紙撚町は5年以内に社会的な共同生活を維持できない状態になると予測されます。SCP-3051-JPに予測不能な変化が発生することを防ぐため、原因究明の為の調査が進行中です。
調査の一環として、紙撚町の住民に対するインタビューが行われました。
対象: 高村 柳
インタビュアー: エージェント・瓦斯灯
前文: インタビューは対象の自宅で行われました。可読性のため、会話は標準語へ置換されています。
[記録開始]
[対象とインタビュアーはテーブルを挟んで向かい合い、両名とも椅子に腰掛けている]
対象: 家まで送ってもらって悪いねえ。街頭取材だったんだろ?
インタビュアー: お話を聞かせて頂けるなら場所にはこだわりません。
対象: そうかいそうかい。まあ、そっちにとって期待外れじゃないことを祈っておくよ。
[冗長な箇所を省略]
インタビュアー: 貴重なお話を聞かせていただきありがとうございます。
対象: こんな話でも楽しんでくれたなら嬉しいよ。
インタビュアー: それにしても、前に来た時とは町が様変わりしていて驚きました。
対象: ギラついた感じは無くなったな。ありがたいことさ。それが好きだった連中もいるだろうけどね。
[対象は笑みを浮かべる]
インタビュアー: それと、以前はそれなりに多くの人を見掛けたのですが、今はどこもガランとしていて寂しいです。
[沈黙]
対象: 実はねぇ、私もそろそろ引っ越す予定なんだよ。
インタビュアー: 治安が回復して住みやすくなったのに、ですか?
対象: 確かに治安は良くなったさ。でもね。私や、この町から出てったやつが求めてたのはそんなんじゃないんだよ。
インタビュアー: 何を求めているのでしょうか?
対象: それは......まあ残ってるやつも少ないし、言ってしまおうか。ただし条件がある。顔と名前は出さないでくれよ。
インタビュアー: 承知しました。
対象: 物分かりが良くて助かる。
[対象は椅子に深く腰掛け直す]
対象: この町に住んでいた連中はね。色んな面白い話が聞けて、他じゃありえない奇抜なモノを期待してたんだ。今まではそれが叶ってたのさ。ところが、少し前から話が固まってきて、出てくるモノも個性が無くなり始めた。それでも愛想を尽かしてはいなかった。元に戻るんじゃないかって思ってたやつもいた。それが今じゃ、使い回しの聞き覚えがある話に、量産品みたいなモノしか見られなくなった。ここに居る理由が無くなったんだよ。
インタビュアー: また以前のようなモノが見られるとしたら、どうでしょうか?
[対象は眉間に皺を寄せる]
対象: 戻ってくるやつもいるとは思うけど、どうだろうねぇ。
[記録終了]
類似する複数の証言が確認されたことから、SCP-3051-JP研究チームは人口流出の原因を街談巷説の定型化にあると結論付けました。現行プロトコルの代替案が模索されています。暫定的な対策として、Dクラス職員の集中投入や、ポジティブキャンペーンの展開により紙撚町への移住者を募集する案が協議されているものの、いずれも実用段階には達していません。
現在の福岡県紙撚町