アイテム番号: SCP-2706-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2706-JPの異常性の発生は限定的であるため、その発生を能動的に抑制する試みは行われません。SCP-2706-JPの発生が確認された場合、連鎖的な発生を防止するため、発生地点の人物の回収および周囲のSCP-2706-JP果実の捜索・回収が即座に行われます。回収された遺体およびSCP-2706-JPの果実は液体窒素による冷却処理ののち、塩酸による化学分解処理が行われます。
説明: SCP-2706-JPは黒色火薬を含有する種子を生成する、ツリフネソウ(Impatiens)属の寄生性の未知種です。SCP-2706-JPの果実はシート状に形成されたセルロースからなり、内部に種子を含む種皮部は撥水性を持つ未知のロウ状ニトログリセリン類似体からなるクチクラ層に覆われています。SCP-2706-JPの種子は硬皮休眠状態にあり、常温常圧において成熟したSCP-2706-JPの種子内部に空気および水の侵入が阻害されることにより発芽ができない状態にあります。硬皮休眠状態はSCP-2706-JPの果実がおよそ800 °C以上に加熱されることにより解除され、種子、種皮およびクチクラ層が燃焼しながら種子が外界に露出し、発芽可能な構造へ変化します。クチクラ層を構成する未知物質の燃焼熱は非常に大きく、加熱によるエンタルピー変化の大部分は指向性を持っているため、観察可能な発熱や発火として外部に放出される一部を除き、エネルギー収入は種子の発芽および成長に直接用いられます。これによりSCP-2706-JPは概ね発芽から1時間以内という短い期間に次世代の果実を生成可能な段階まで成長することが可能です。
上述の通り、自然条件においてSCP-2706-JPが発芽可能な条件に達する可能性は著しく低く、多くの実例が人為的なプロセスによるものだと判明しています。
SCP-2706-JPの種皮が十分に燃焼した後、SCP-2706-JPの種子は脱離します。その後、ヒト(Homo sapiens)を始めとする中型以上の哺乳類が十分な熱エネルギーを保有している種子に接触することで種子は熱傷を負った皮膚や粘膜から体内に侵入し、即座に発芽を開始します。SCP-2706-JPは宿主体内で迅速に成長し、宿主の骨組織を破壊するとともにエネルギー貯蔵物質を回収しながら植物組織へと再構成し、概ね30分程度で頚椎付近まで到達、長骨や肋骨をはじめとする十分に大きい骨組織の置換を完了します。このプロセスの前後で、宿主の体機能および脳機能の差異は確認できません。
頭部を除いた全身の植物組織への置換後、頸部には宿主の頭部より大きなホウセンカ(Impatiens balsamina)に類似した花弁の生成が開始され、頭部内部では果実の生成が行われます。花弁生成から30分以内に全ての果実の十分な成熟および花弁の枯死、余剰エネルギーの頸部への蓄積が完了し、その間宿主は頭部の痛みや膨張感を主張し続けます。この状態の宿主の頭部に十分な刺激を与えると宿主の頭部は150 mほど直上へと上昇したのち開裂してエネルギーを開放し、多数の火球を放出、また果実を周囲数kmにわたり散布します。
以下は一般人の所有するスマートフォンから回収された映像記録の一部抜粋です。
記録日: 2002年08月03日
備考: 映像中の男性が撮影したものである。
<記録開始>
[破裂音。即座に音源にカメラが向けられる。]
女性: あ、打ち上げ花火。こんな近くでもやってるんだ。
女児: きれい。
男性: ね、きれいだね。じゃあ、こっちのもう残り無くなってきてるし、一旦切り上げて車でも出してみるのはどうだ。
女児: えー、まゆまだやりたーい。
男性: いいじゃないか。まゆももっと近くで見てみたいんじゃないか。本物の花火大会は凄いぞ。
女児: まゆ最後までやるの。まゆ達がやってるの偽物じゃないし。ピカーとかバチバチってしてて凄いもん。
女性: まあ、まゆがそう言うならもう今日のうちに使い切っちゃいましょうか。花火。
女児: うん。まゆもっと線香花火やりたい。
男性: 花火大会やってるってなら俺はまだ見に行きたいけどな。
女性: パパ、まゆがこう言ってるんだし一旦そうしてあげましょうよ。
[重要度が低いため省略]
女性: それに。いろいろ言ってるけど、結局打ち上げ花火見えたのなんてあの一発だけだったじゃない。花火大会だったんじゃなくて誰か私達みたいな人が一発大きいのでも買ってたんじゃないの。
男性: まあ、それは、そうかもだけど。
女性: じゃあ、まゆの言う通り持ってるやつ全部使い切るのでいいよね。
男性: 仕方ないな。わかったよ。ったくこんな話になるなら先にカメラ切っとけばよかったかな。[苦笑い]
女性: じゃあ、まゆもパパも続きやろっか。
女児: はーい。ねえママ、線香花火どこにあるのー。
女性: あ、もうさっきので全部だったみたい。このおっきい筒のやつでもやってみる?
女児: やだ。まゆ線香花火がいいの。探してくる。
男性: あ、ちょっと。勝手にどっかに行くなって[男性が女児の方へ小走りで向かう]
女児: あった。
男性:え。
女性: [女児の方へ小走りで向かう]それ、なんか湿気ってるし、まゆかパパが捨てたやつじゃないの。
女児: ちがうもん。まだパチパチできるもん。
男性: 俺もまあ、やってみる分にはいいんじゃないか。
女性: そうね。[SCP-2706-JPの種皮を手で覆い、ライターで点火する]
女児: わあ。
[SCP-2706-JPの種子が接写されている。が30秒程度談笑が続く]
女性: もうそろそろね。
男性: いや、ここからが勝負どころだ。
女児: ね。まゆまだできるもーん。いーち、にー、さーん
[風で火球が落下し、靴の隙間から女児の足に付着する]
女児: あっつい。
[男性が携帯を地面に落とし、使用済み花火のバケツの水を女児の足に流す]
<記録終了>