アイテム番号: SCP-2534-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-2534-JPはサイト-81E5の夏宮博士の研究室にて、段ボール箱の中に収容されます。新たなSCP-2534-JPの収容が決定した場合、可能な限り新たな段ボール箱は使わず、使用中の段ボール箱に収容してください。
説明: SCP-2534-JPは共通のマーク(以下、SCP-2534-JP-a)が付与されたAnomalousアイテム群です。SCP-2534-JP-aは、「甘」「侃」「苛」の3つの漢字を品字様の形で組み合わせたものが図案化され、円の中に配置されたデザインです。
現在収容されているSCP-2534-JPは4点です。いずれも破壊耐性を有していないため、破損を防止する観点から現在はアイテム単体の異常性を確認する目的での実験は禁止されています。
アイテム番号 | 説明 | SCP-2534-JP-aの位置 |
---|---|---|
SCP-2534-JP-1 | 誰かが見ていると涙を流す日本人形。 | 後頚部 |
SCP-2534-JP-2 | 注がれた高級ワインを消失させるワイングラス。 | 底面中央 |
SCP-2534-JP-3 | 電流を流すと磁場が通常の逆向きに発生する銅線のコイル。 | (銅線にまたがる形で)側面中央 |
SCP-2534-JP-4 | 背中を向けると視線を感じる万引き対策用ポスター。 | 右下隅 |
アイテム番号: SCP-2534-JP-1
Anomalousアイテム#: █████
説明: 誰かが見ていると涙を流す日本人形。
回収日: 20██/██/██
回収場所: 山形県山形市██の民家
現状: 低脅威度物品収容ロッカーに収容
追記: 涙は非粘性の未知の液体です。-██博士
普通、誰も見ていない時に髪が伸びるんですけどね。-██研究員
普通は何も起きませんよ。-██博士
アイテム番号: SCP-2534-JP-2
Anomalousアイテム#: █████
説明: 注がれた高級ワインを消失させるワイングラス。
回収日: 20██/██/██
回収場所: 宮城県大崎市のレストラン█████・███
現状: 低脅威度物品収容ロッカーに収容
追記: ちなみに、高級ワイン以外を注ぐと勢いよく倒れて吐き出します。-██研究員
30,000円未満のボトルワインも吐き出されました。舌が肥えているようです。-██博士
アイテム番号: SCP-2534-JP-3
Anomalousアイテム#: █████
説明: 電流を流すと磁場が通常の逆向きに発生する銅線のコイル。
回収日: 20██/██/██
回収場所: 青森県立██中学校の理科実験室
現状: 低脅威度物品収容ロッカーに収容
追記: つまり、電流を流すと左ネジの向きに磁場が発生します。また、このコイルには所持していると右折ができなくなる異常性がありました。-██博士
おかげで、運搬時には左折だけでサイトにたどり着けるルートを構築する必要がありました。もちろん、右カーブもなしで。-██研究員
アイテム番号: SCP-2534-JP-4
Anomalousアイテム#: █████
説明: 背中を向けると視線を感じる万引き対策用ポスター。
回収日: 20██/██/██
回収場所: 秋田県能代市の書店████
現状: 低脅威度物品収容ロッカーに収容
追記: 実験の結果、視覚外にあるポスターの位置を97%の精度で特定できました。-██博士
このポスターの掲示中、該当店舗の万引き発生件数が約3割減少していたようです。回収しない方が良かったのでは......。-██研究員
それでも、それが我々の使命ですから。-██博士
SCP-2534-JP-aが付与された非異常性のアイテムは発見されていません。しかし、非異常性のアイテムにSCP-2534-JP-aを付与して異常性を持たせる試みはいずれも失敗に終わっています。SCP-2534-JPからSCP-2534-JP-aの一部または全体を除去する試みは異常性保護のため禁止されています。
SCP-2534-JP及びSCP-2534-JP-aの作成者は判明していません。現在発見されているSCP-2534-JPが全て日本の東北地方で発見されていることから、当該地域にSCP-2534-JPを作成している存在が生息または所在している可能性が指摘されていますが、調査にかかる費用の膨大さからその捜索は無期限に延期されています。
収容経緯: SCP-2534-JPがAnomalousアイテムとしてサイト-81E5にて収容されていた際、収容中のアイテム███点の中で10点以上のアイテムにSCP-2534-JP-aが付与されていることは判明していました。しかし、アイテムそのものの異常性および重要性の低さから詳細な調査は保留されていました。
2032年6月、サイト-81E5において低脅威度物品収容ロッカーの存在する東部地区の土地が売却対象となった際、当ロッカーに収容中のAnomalousアイテムを全てアノマリーオークションへ出品することが決定されました。その出品リストの作成中、サイト-81E5職員である夏宮博士からSCP-2534-JPの収容申請書が提出されました。申請書には、SCP-2534-JP-aが付与されていたAnomalousアイテムのうち4点が収容対象として列記されていました。
SCP-2534-JP収容申請書
(前半部分は申請手続き上の夏宮博士及びSCP-2534-JPの詳細な記録のため省略)
備考: 現在、我々財団は先の見えない経営難に瀕しています。5年前に発生した嘆きの給料日事件 を皮切りに、財団の財政状況は急落の一途を辿っています。
かつてはその場しのぎだったはずのSCiPオブジェクトの売却は、今や常套手段となっています。いや、そうせざるを得ないのでしょう。怪物を閉じ込める箱は壊れ、超常を見張る人員は枯渇し、怪奇を検知するプロトコルすら機能を停止しているのが現状なのですから。
しかし、そうして異常を売り払っていった財団に、果たして何が残るのでしょうか。
現時点で、財団の稼働中のサイト数は最盛期の10分の1以下に縮小しています。数々の人命と引き換えに確保した異常も、人類を守るために闇の中で生きる覚悟を決めたはずの職員たちも、今となってはその多くが財団の元を離れています。このまま異常の切り売りを当然のように続けていては、やがて財団はがらんどうの空き箱に成り果てるでしょう。おそらくは、皆さんも想像している通りに。
これまで財団は、人類が健全で正常な世界で生きていくために異常を収容し、保護し続けてきました。財団の未来が危ぶまれている今、何より保護しなくてはならないのは、その理念そのものしかありません。幸いにも、私の研究室にはインテリアと本棚を売り払ったおかげで十分な空きスペースがあります。怪物を閉じ込める事は出来なくとも、些細な異常性しか持たない小さなアイテムを保管しておく事くらいなら可能です。
故に今こそ、我々にはSCP-2534-JPの収容が必要なのです。たとえそれが、この世界にとって取るに足らない異常であったとしても。
経理部門による協議の結果、収容対象として挙げられたアイテム群の想定落札価格の合計が高額ではなかった事からこの申請は受理されました。指定の4点がアノマリーオークションの出品対象から除外され、SCP-2534-JPとして収容されました。それ以外のサイト-81E5に収容されていたAnomalousアイテムは、SCP-2534-JP-aが付与されていたものも含めて全てがアノマリーオークションへ出品されています。
現在は、夏宮博士を担当者としてSCP-2534-JPの研究が進められています。
補遺-2032年8月7日: 夏宮博士がSCP-2534-JPを私的利用していることが発覚しました。その内容は以下の通りです。
- -2のステムと直交するように約1mの金属棒を固定し、金属棒が4本脚デスクの側面に位置するように天板の一辺の両角から金属棒の両端を紐で吊るす。これにより、-2が異常性によって液体を吐き出そうとする際、金属棒を軸にして回転する。
- -2を固定した金属棒の端に-3をセロハンテープで接着する。-3の異常性によって金属棒は一方にのみ回転する状態になる。
- 壁に掲示した-4を背面にする形で-1を机上に配置する。その涙が-2のボウルへ落下するように、-1の配置は頭部の一部が天板の外に出るように行う。
これらの細工の結果、SCP-2534-JP-4に背面を向けたために視線を感じたSCP-2534-JP-1が涙を流し始め、その涙が注がれたSCP-2534-JP-2は涙を吐き出すために金属棒ごと回転します。この回転方向はSCP-2534-JP-3の異常性によって逆転することはせず、SCP-2534-JP-1が涙を流し続ける限り金属棒は回転を続けます。夏宮博士は、この金属棒の回転を動力として発電機を駆動し、発生させた電力で研究室の冷房を稼働させていました。
私的利用の動機は財団全体で冷暖房の使用が禁止された事でした。サイト-81E5に収容されていたAnomalousアイテム群が売却対象となった当時、夏宮博士はSCP-2534-JP-aが付与されているアイテムを複数組み合わせれば発電機の動力として利用可能だと気づき、売却を防ぐためにSCP-2534-JPの収容申請書を作成しました。また、この時、回転の方向を一定にする仕組みが必要だったことから、SCP-2534-JP-aが付与されていなかったSCP-2534-JP-3を収容対象に含めるために当該物品にSCP-2534-JP-aを捏造したことも明らかになりました。
発覚後、SCP-2534-JPを収容している段ボール箱は一時的にSCP-████-JPの収容室へ移動され、夏宮博士には懲戒解雇処分が下されました。この一件を受けて、サイト-81E5内の冷房を稼働させるためにSCP-2534-JPを発電機構として活用する計画が検討されましたが、SCP-2534-JPから抽出可能なエネルギーがサイト全域を冷却するにはごく少量であることとSCP-2534-JPが破壊耐性を有していないために継続的な活用が困難であると予想されたことから棄却されました。
現在、SCP-2534-JPについての更なる研究は担当者不在のため延期されています。
補遺2-2032年8月19日: 第58回定期インシデントが差し迫ったため、SCP-2534-JPは全てアノマリーオークションに出品されました。SCP-2534-JPは総額1,386円で落札されており、発送の完了をもってオブジェクトクラスはSoldへ変更される予定です。