フブスグル湖定住区(LKSA)
アイテム番号: SCP-2511
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-2511個体を収容するため、現在、モンゴル政府の協力の下、フブスグル湖定住区(LKSA)がモンゴル国内に設立されています。LKSAに居住するSCP-2511-A個体はモンゴル国外への移送を行わず、四肢のどれか1つにはGPS追跡ブレスレットを装着しなければなりません。
母国の集落に居住するSCP-2511-A個体は、遠隔操作の水中無人偵察機で監視されます。集落のリストは文書2511-KAを参照してください。
機動部隊カッパ-26("カッパ・ズールー")は2部門に分かれています ― K-26-アルファ(LKSA拠点)とK-26-ベータ(サイト-49拠点)です。MTF K-26-アルファは以下の任務を担当します。
- モンゴルで回収されたSCP-2511-A個体の、LKSAへの再配置の監督。
- LKSAにおけるSCP-2511-A共同体との連絡係としての機能。
- LKSAにおけるSCP-2511-A個体の総人口調査の維持。人口調査は3ヶ月ごとに更新されます。
MTF K-26-ベータは以下の任務を担当します。
- 遠隔操作の水中無人偵察機を介した、母国集落におけるSCP-2511-A個体の監視。
- 母国集落におけるSCP-2511-A個体の総人口調査の維持。人口調査は3ヶ月ごとに更新されます。
- 更新(2002年10月01日): 思春期前の人間と、SCP-2511-Aの集落が発見された河川との接触の防止。条件を満たす人物が該当する流域と接触した場合、MTF K-26-アルファに通知し、回収のために手順975-シリウスを開始します。
説明: SCP-2511は、およそ1万体のSCP-2511-A個体を巻き込んだ一連の現象を指します。現象の詳細は以下の通りです。
- 1999年7月8日に発生した大規模テレポーテーション事象。これによってSCP-2511-A個体のうち約1万体が、北部九州(特に福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県)における本来の生息地から、モンゴル各地の水域へと空間転移させられました。
- 転移させられたSCP-2511-A個体が徒歩または輸送機関でモンゴルを出ようとすると、国境を超えた時点で自然消滅し、モンゴル国内の何処かに再出現します。
- モンゴル国内と国外のSCP-2511-A個体の比率は、常に前者が後者よりも多くなります。モンゴルにおけるSCP-2511-A個体の人口が国外のそれを下回った場合、前述の比率が維持されるまで追加のSCP-2511-A個体がモンゴル国外から転移させられます。
画家による、1836年に目撃されたSCP-2511-A個体と思われる生物の描写。SCP-2511-Aの歴史的描写の中ではかなり正確なものと見做されている。
SCP-2511-Aは二足歩行かつ水陸両生のヒト型生物種です。肉体的にはAndrias japonicus(オオサンショウウオ)に類似しますが、一方で体毛や乳腺などの哺乳動物の形質も有しています。SCP-2511-Aの平均身長は1.5m、平均体重は60kgです。SCP-2511-Aの母語は言語学的に見て日本語族に関連する未知の言語ですが、大半の個体は日本の佐賀方言を用いた会話が可能です。SCP-2511-Aは本来であれば北部九州の河川に存在する集落に生息していますが、SCP-2511発生の結果、人口の大半はモンゴルで発見されています。
SCP-2511-Aの最も目立つ肉体的特徴は、頭上にある半球状の凹部です。円周は約35cmであり、通常は水で満たされています。凹部の容積の25%未満しか水が含まれていない場合、SCP-2511-Aは全身麻痺を起こします。
SCP-2511-A個体らは当初、モンゴルのボルガン県を流れるオルホン川の土手に沿って発見されていました。その後の調査によって1万体以上のSCP-2511-A個体の存在と、それらがフブスグル湖の南岸に最も集中して生活していることが判明しました。LKSAに住むSCP-2511-A個体へのインタビューを通して、日本にある母集落も大よその位置が特定されました。
補遺2511-1: 以下は、水中無人偵察機を介した観察を基とする、北部九州で特定されたSCP-2511-A集落の報告書からの抜粋です。
SCP-2511-A個体たちは専ら、古墳時代の墳墓に似た水中建造物の建設に従事しています。しかし、これらの墳墓には死体が存在せず、代わりに個人の所持品が収められているようです。
補遺2511-2: 以下はSCP-2511-Aの共同体において知識階級と見做されているSCP-2511-A-0126("筑後の河猿")とのインタビューです。
回答者: SCP-2511-A-0126
質問者: ミサコ・マックモロー博士
序: 以下のインタビューは、本来は日本の佐賀方言で行われている。
<記録開始>
マックモロー博士: おはようございます。記録のためにお名前を述べていただけますか?
[SCP-2511-A-0126はマックモロー博士をぼんやりと見つめている。]
マックモロー博士: すみません、何か問題でも?
SCP-2511-A-0126: いや、問題は無いのですがな。貴方がたの種族が今日まで生き残っていたという事が奇妙で興味深く思われたものでして。
マックモロー博士: それはどういう意味です?
SCP-2511-A-0126: このような事を申すのは幾分気まずいのですが、貴方がたの種族は我々にとっては神話の存在なのですよ ― 昼の世を歩く太陽の子ら。貴方がたの種族が夜闇の子らを制した"花の日"についての伝承を我々の祖先が書き残しておるのです。しかし、こうして太陽の子が目の前で好意的に振る舞っているのを見ると全く魂消ますわい。
マックモロー博士: お褒めに預かり光栄です。しかし一先ずは、お名前をお聞きして宜しいですか? 私のことはミサコと呼んでいただいて構いません。
SCP-2511-A-0126: ミサコさん、貴方の源名は?
マックモロー博士: すみません、詳しく説明してください。
SCP-2511-A-0126: 貴方の故郷である川の名ですよ。私の場合ですと、筑後川の生まれですから筑後の河猿となりますな。
マックモロー博士: 河猿さん、地上世界の我々には源名というものが無いのです。
[SCP-2511-A-0126が溜め息を吐く。]
SCP-2511-A-0126: 嗚呼、筑後川よ。両親がきっと不安に思っていることでしょう。
マックモロー博士: 大丈夫ですよ。私たちが貴方がたを助けるためにここに居ますし、貴方からの協力もまた必要としています。ここに辿り着く前に何が起こったかを教えて頂きたいのです。
SCP-2511-A-0126: それが、よく分からんのです。これが起こる前日はごく当たり前の一日で、夜もいつものように眠りました。翌日、どうも水の味が違うぞと感じまして。目を開けると、もはや自宅ではなくここに居た次第です。
マックモロー博士: ご説明有難うございます。この出来事の前に変わったことはありましたか?
SCP-2511-A-0126: 大してありません、何もかも普通でした。しかし、その晩に夢を見たことは覚えとります。まるで何かしらの呪詛のように、頭の中に木霊する読経の夢でした。
マックモロー博士: その内容は少しでも思い出せますか?
SCP-2511-A-0126: "ざ・かっぱ・いず・もー・こまんりー・ふぁうんど・いん・まんごりあ (za kappa izu mō kōmanrī faundo in mangōrīa)"と。我々の種のことを言っておるのだろうとは確信しとります。しかし、"まんごりあ"とはいったい何のことです?
マックモロー博士: おそらくそれはMongolia ― モンゴルのことでしょう。私たちが今まさにいる場所です。
<記録終了>
補遺2511-3: 2002/██/██、6歳の日本人男児██████ ████が筑後川に転落した後、行方不明になる事案が報告されました。事件の3ヶ月後、ウランバートルの孤児院で██████ ████に似た子供が目撃されました。孤児院の管理者は、問題の子供は2002/██/██に近くの川沿いで漁師に救出された者であると主張しました。発見日は██████ ████が筑後川に転落したと報じられた日付と一致しました。
DNA鑑定で子供は██████ ████と断定され、親元へと返されました。
これに応じて収容プロトコルが更新されています。更新(2002年10月01日)を参照してください。
補遺2511-4: 2007/██/██、MTF K-26-アルファの工作員は、ヒャルガス湖で発見された数体のSCP-2511-A個体が正体不明の人物たちに拉致されたと報告しました。更なる調査は保留されています。
補遺2511-32: ████/07/07、機動部隊 Κ-26-ベータの工作員が通常佐賀県唐津市松浦川に居住するSCP-2511-A個体の大量消失を報告しました。その行方は不明です。