肆のいろは ハブ » SCP-2452-JP
クレジット
アイテム番号: SCP-2452-JP
オブジェクトクラス: Euclid(暫定)
特別収容プロトコル: ██村はカバーストーリーにより封鎖されます。SCP-2452-JPを認知している村外の人物には記録処理を実施してください。
現在、SCP-2452-JPの収容方法についての実験調査・議論がなされています。
説明: SCP-2452-JPは██県██村内に存在する、床面積20m2程度の木造建築物です。SCP-2452-JPは、村民からは「神社」と呼称されていましたが、一般的な神社と異なり、鳥居・参道・瑞垣などは確認されません。
SCP-2452-JP内にヒト(Homo sapiens)の死体を放置した場合、異常性が発現します。当該死体は異常な腐敗耐性を獲得します。また、村民からの聞き取りにより、当該死体は不定期的に消失することが判明しています。
SCP-2452-JP内には、指示文(指示-2452-JPに指定)が記された書道額が存在します。また、指示-2452-JPは村民の間で語り継がれる形でも知られていました。指示-2452-JPの要約は以下です。
「部屋の中に存在する死体は、2体のみが失血死で死亡しておらず、2体のみが窒息死で死亡しておらず、2体のみが転落死で死亡していない」
以上の条件が満たされていない状態が24時間以上持続した場合、この条件を満たすように、付近にて死体が調整される
村民らは、指示-2452-JPに従うべく、死体が消失するごとに新たな死体を投入していました。指示中の「付近」の定義は曖昧ですが、村民らは「村内に存在している者の誰か」を指すと信じているようです。
指示-2452-JPは、それぞれ失血死、窒息死、転落死で死亡した3つの死体を収容することによって達成することが可能です。なぜならば、以下の通り条件を満たすためです。
- 2体が失血死で死亡していない......窒息死の死体、転落死の死体
- 2体が窒息死で死亡していない......失血死の死体、転落死の死体
- 2体が転落死で死亡していない......失血死の死体、窒息死の死体
収容以前の村内においても、このような原理に基づいて指示-2452-JPへの対応を実施していたことが判明しています。
当該指示は、「駐車場に停められている車の色」や「花瓶に活けられている花の種類」のパズルとして知られるものとの類似が指摘されています。
発見: SCP-2452-JPは、異常発見部門による因習村発見プロジェクトの一環として調査・発見されました。当該村では、SCP-2452-JP内の死体が消失した際、異常性を発現させないために、その24時間以内に村民を殺害する"生贄"様の儀式が定期的に実施されていました。この儀式がアノマリーに関連すると判断され、確保・収容に至りました。
異常発見部門による発見時、██村民は7名のみとなっていました。これは、死体を用意するために村民が殺害され、人数が減少したことによるものだと断定されています。指示-2452-JPは、少なくとも60年間実施されていたと判明しています。村民は付近のサイトへ保護され、インタビューおよび精神上のケアが実施されます。ただし、生存していた村民は、このような著しい特殊環境下にて長期間過ごしており、通常の社会復帰は困難である可能性が強く指摘されています。人格の強制改変を含む超常的な措置による社会復帰は可能と提言されていますが、倫理的懸念より実行は保留されています。
補遺: SCP-2452-JPの異常性を調査する実験が実施されました。以下はその抜粋です。
方法: SCP-2452-JPから、窒息死の死体を取り除いた。当該死体は村外のサイト-81ΩΦへ収容した。SCP-2452-JP付近にD-14403のみを配置し、24時間放置した。村は、サイト-81ΩΦより監視カメラを通して観察された。
結果: 24時間経過後、SCP-2452-JPへD-14403が転移した。転移後、D-14403は喉を押さえ苦しむような様子を見せた。後に動かなくなり、この時点で死亡したことが推定された。D-14403には鬱血・溢血が確認されたが、これは窒息死の特徴と矛盾しない。
考察: 予想に反しない結果となった。失血死および転落死の死体でも同様の結果が得られると推定可能である。
方法: SCP-2452-JPから、転落死の死体を取り除いた。当該死体は村外のサイト-81ΩΦへ収容した。██村に人間が存在せず、かつSCP-2452-JPに最も近い位置に位置する人間がD-10971となるようにし、24時間放置した。村およびD-10971は、サイト-81ΩΦより監視カメラを通して観察された。
結果: 24時間経過後、SCP-2452-JPへD-10971が転移した。転移後、D-10971は倒れるような様子が観察された。後に動かなくなり、この時点で死亡したことが推定された。D-10971には骨折および頭蓋内出血が確認されたが、これは転落死に特徴的な所見である。
考察: SCP-2452-JPの異常性が対象となる範囲は非常に広いといえる。██村に人間が近寄らないようにしても、収容は達成されないと推測できる。
方法: 失血死・窒息死・転落死の死体が1体ずつ収容されているSCP-2452-JPへ、インシデント-[削除済]で生じた失血死体1体を投入する。
結果: 24時間経過後、投入した失血死体が消失した。なお、消失した死体に装着されていたGPS発信機は消失せず、SCP-2452-JP内に残されていた。
考察: 死体が多くても「条件を満たさない」と判断されるようだ。単純に数学的・論理学的な法則に従っているオブジェクトである可能性が高いといえる。
更新: 20██/██/██、SCP-2452-JPの異常性が発現し、SCP-2452-JP内の死体が消失しました。そのため、財団によって新たな死体を供給する必要があります。当初、財団は、それぞれの死因で死亡させたDクラス職員3名を用いた収容を計画していました。しかし、戦術求解部門の神野研究員により、以下の提言がなされました。
用意する死体は2体のみで十分です。失血/窒息/転落死でない、例えば「感電死の死体」を2体用意します。これらを用いれば、指示-2452-JP、つまり「2体のみが失血死で死亡しておらず、2体のみが窒息死で死亡しておらず、2体のみが転落死で死亡していない」を満たせています。
念のためにSCP-2452-JP付近にDクラスを3名配置しておけば、万一の際にもその3名がそれぞれの死因で死亡するという被害のみで収まるでしょう。これを試してみる価値はあるのではないでしょうか。
戦術求解部門 神野
当該提言を受け、Dクラス2名を[削除済]によって殺害し、かつ予備用としてDクラス3名をSCP-2452-JP付近に配置する、というプロトコルの実施が承認されました。
更新2: プロトコルによるDクラスの殺害が実施される直前に、同部門の相馬博士によって、以下の提言がなされました。
結論から申し上げますと、Dクラスの殺害は中止してください。
理由を説明いたします。指示-2452-JP、つまり「部屋の中に存在する死体は、死因の条件(詳細は省略)を満たす必要がある」を考え直してみましょう。
突然ですが、「アノマリーを目撃した民間人は、記憶処理される必要がある」という指示を考えてみます(実際には必ずしもそうではないですが、あくまで仮定です)。さて、この指示に違反する場合を考えてみましょう。すると、「アノマリーを目撃した民間人が居るのに、その人物に記憶処理がされない」場合に違反となるでしょうね。......では、「アノマリーを目撃した民間人が居ないときに記憶処理がされない」のは問題となるでしょうか? 直感的にも、論理的にも、違反とならないことがお分かりいただけるでしょう。
さて、指示-2452-JPを思い出してください。この指示において、「部屋の中に死体があるのに、その死体が条件を満たさない」場合は明らかに違反です。では、「部屋の中に死体がないときに条件を満たさない」ことは問題となるでしょうか?
......そうです。申し上げたいこととしては、「そもそも室内に死体を1つも配置しない」ことで条件に違反しなくなる、ということです。これによって、犠牲者を出さずに指示に従うことが可能です。
もちろん、指示-2452-JPがどのように解釈されているかは分かりません。しかし、SCP-2452-JPが村民に発見される以前にはどうなっていたのかと考えると、この解釈は信頼性が低くはないでしょう。また、仮に指示に違反しても、被害は周囲に配置されたDクラスにしか及ばないのですから、「死体を入れない」という実験をしてみる価値はあるのではないでしょうか。
戦術求解部門 相馬
以上の提言を受け、「SCP-2452-JP内に死体が1体もない状態で24時間経過させる(ただし、万一に備え、Dクラス職員3名を周囲に配置する)」という状況で観察が実施されました。結果として、Dクラス職員の死亡および死体の転移は発生しませんでした。したがって、SCP-2452-JP内に死体が一切存在しない状態でも、指示2452-JPを満足すると判明しました。
これを受けて、SCP-2452-JP内に一切の死体を投入しないことにより収容が実施されることに決定されました。この方法によって、現時点までにおいて問題なく収容が実施されています。以上より、オブジェクトクラスはSafeに再指定されました。
SCP-2452-JP内に死体が存在しない状態でも、条件を満たしていると判断されることが判明しました。すなわち、死体が消失した後には、村民らは何もする必要がなかったのです。
死体を入れなくてはならないと思い込んで、結果として無意味な殺し合いを60年も続けていた村民に、一体なんと説明すればよいのでしょうか。私はカウンセリングの専門家ではありませんが、残された村民へも、この事実は伏せておくべきだと提言させていただきます。
戦術求解部門 相馬