SCP-2368
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検査中のPoI-2368-3のX線画像。捻転した大腸が、右上、脾臓の屈曲が胃の内部に突き刺さっているところまで到達しているのに注目。

アイテム番号: SCP-2368

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2368は、Site-06の隔離棟にある、標準的な人型オブジェクト用コンテナに収容されています。 SCP-2368の現在の収容が、英国の刑務所システムにおいて彼女が受けていた収監の延長にあるということを、彼女に説明してください。

SCP-2368の監視チームと収容チームは出来るだけ接触を最小限に抑え、チームは定期的にローテーションさせ、任期は最大でも15日間までとしてください。 SCP-2368に携わるすべてのスタッフは、定期的な医学的検診(MRIスキャンなど)を受け、必要に応じて外科的治療も施されるものとします。

説明: SCP-2368は、スコットランドのオークニー諸島に属する、ラウゼー島の居住者であるフィオナ=タラックとして識別される人型の女性です。 SCP-2368は38歳、身長は約158cm、体重は54kgで、肌は青白く、特徴的な長い赤毛をしています。

SCP-2368の近くにいる人間(および特定の家畜)は異常な影響を受け、その結果、内臓の変形および移動が起こります。この影響は、対象がSCP-2368の近くにいる間、徐々に進行していきます。影響を受ける内臓は被験者によって異なります。どの程度の距離および期間、近くにいれば影響が出るのかは不明ですが、1ヶ月未満の接触では、影響は発生していません。

MRIスキャンによって、SCP-2368の内臓にもまた、異常な変形があることが判りました。しかし、被験者のものとは異なり、SCP-2368の内臓の変形は経時的に変化することは観察されておらず、SCP-2368自身への健康への悪影響はないものと思われます。

補遺1: 検死からの報告

被検者: PoI-2368-1(ジャック=タラック氏)
死亡日: 2011年7月4日、57歳
背景: 被検者は、死亡日より19年前にSCP-2368と結婚していた。なんらかの中毒によって引き起こされた心臓発作として、被験者の死因を追及する尋問の後、SCP-2368は被検者を殺害した容疑で有罪判決を受けた。
所見: 正常に発達した、栄養状態の良い中年の男性。下腕部と手に、タンニンによるシミと一致する重度の変色が見られる。
心臓血管系: 心臓は大きく、重さは400グラム。心膜は完全なままである。開胸した際、心筋は梗塞した様相を見せており、目に見えて異常であった。両方の心室はひどくねじ曲がり、およそ一回転するほどであった。この捻れによって、大動脈と大静脈の両方を部分的に閉塞しているようである。

被検者: PoI-2368-2(アリソン=キャンプベル)
死亡日: 2014年11月8日、28歳
背景: 被検者はSCP-2368の同房者で、███████████刑務所に2年間入所していたが、死亡によって刑期を終えた。最初の検死結果がPoI-2368-1と同様の症状を示したため、SCP-2368は被検者の死亡に関与しているとみなされ、基礎調査が開始され、2014年13月9日にSCP-2368が最初に収容された。
所見: 正常に発達した成人女性。外用の検査では、腹部に視認で判るほどの膨張が認められ、いくつかの肉の突起が明らかに存在した。
消化器系: 食道および胃の粘膜、内壁は損傷を受けずにそのまま残る。小腸は無傷であるが、空腸は15.3メートルという、想定される長さの約6倍を記録した。内臓を摘出したところ、4つの胆嚢と17の虫垂を確認し、そのうち8つは破裂していた。死因は敗血症と、それに伴う臓器不全と診断された。

被検者: PoI-2368-3(アーサー=ポイデビン博士)
死亡日: 2014年10月28日、42歳
背景: 被検者は、SCP-2368の、最初の収容時の主任研究員であった。 SCP-2368を2ヶ月近く観察した後、この異常実体に関して、実地調査を行う予定だった。実地調査前のメディカルスキャンでは、予測よりも異常に早く影響を示し、調査を開始する前に突然死亡した。
所見: 正常に発達した成人男性。外用の検査では、老眼鏡の使用以外の身体的な異常は認められなかった。
消化器系: あらゆる消化器官の粘膜が、重度の潰瘍形成および液状壊死を見せていた。大腸の屈曲部と重なる脾臓の変形はヘルニアの様相を呈し、胃粘膜に進出。胃の部分脱出を引き起こし、胃酸を腹膜内へ放出していたようである。腎動脈は完全に萎縮し、腎臓への血流を妨げていた。 血液検査結果(pH 6.8)は重篤な酸血症を示し、これが死因となった可能性が高い。これは、胃酸の血流への流入による血液酸性バランスの乱れが、腎臓の機能不全と重なって解決されなかったものと推定される。

補遺2: SCP-2368へのインタビュー

対象: SCP-2368
インタビュアー: アーサー=ポイデビン博士
日付: 2014年11月12日

前書き: これは、ポイデビン博士がSCP-2368から信頼を得るために行った最初のインタビューの後、収容後はじめてのインタビューであり、この異常実体について詳しく言及しています。情報収集プロトコルの一環として、SCP-2368は、彼女がHM刑務所に収監されたままであるとの説明を受けました。そのため、ポイデビン博士は、刑務所の医師の役を引き受け、またSCP-2368を名前で呼びました。

ポイデビン博士: フィオナ、私たちが行っているインタビューは、ここに君が収監されていることについて、状況の理解の一助になることだ。もっとも、君は今のところとても協力的で助かっているけれどね。どうかな、スタッフたちとは良い関係を築けているかい?

SCP-2368: ええ、そうですね。刑務官にあなたと同じくらい話したことはありませんでしたわ。彼らとは、話すだけでも大変でしたから。

ポイデビン博士: そうかい。さて、もう既に気付いているかも知れないけど、この施設は一般の刑務所とは違う。

SCP-2368: そうですね、あそこよりかは随分快適です。......もちろん、刑務所であることに変わりはないみたいだけど。

ポイデビン博士: そうかもね。だけどここは、リハビリテーションやケアも兼ねているから、出来る限り多くのことを話してもらえると助かるな。

SCP-2368: 了解です。何から訊きたいですか?

ポイデビン博士: それじゃ早速。君の旦那さんについて聞かせてもらえるかな?

SCP-2368: 随分遡るんですね?そうですねえ......まず、ジャックは革なめし職人でした。もうご存じだったかしら。最後の仕事の時、彼は一人で、町の外に出ていました。樫と革の、ツンとすえた匂いがするあの強い手を、今でも思い出します。

ポイデビン博士: 彼との馴れ初めは?

SCP-2368: まずですね、私がオークニーにやって来た時、私はまるで青くて、世間知らずでした。それはもう。それまで全然人と馴れ合ったことがなくて、完全によそ者だったんです。ジャックは私より随分年上で、最初はちょっかいを出したり、彼の周りで踊ってみせたり、彼が湾に出て泳がないのを笑ったりしていたけど......その実、彼に惹かれていたんです。彼のことを――本当に心から知りたいと思って、私のこと好きにして良いわよ、って言って。ある日、彼にキスをしたら、彼も返してくれて、その夜、私の――。彼は私の大切なものを奪って――もう結婚するほかないってくらいに、取り上げてしまったんです。でもまさか、彼を毒殺するだなんて、絶対にありえません!

ポイデビン博士: オッケー、フィオナ。大丈夫。私は審判しに来たんじゃあない。......そうだな、ジャックとの結婚生活についても聞かせてもらえるかい?

SCP-2368: 結婚生活、ですか?ねえ先生、あなたはご結婚なさってて?

ポイデビン博士: ん、うん。しているよ。

SCP-2368: でしたらご存じでしょう。それは――ささやかながら満ち足りたようで、ちょっと爽快なようで、――少し胸に穴が空くようで――。ジャックといて、愛することを学び、幸せを知りました。私は彼の一部で、彼もまた、私の一部でした。ただ、――自由はありませんでした。私の身はもはや私の物ではなく、望むままにあちこち行ったりということは出来ませんでした。

ポイデビン博士: ふむ?ジャックから離れたかったのかい?

SCP-2368: そういう訳じゃなくて......私は常にジャックと共にありましたし、そうあるよう望んできました。むしろ私のが、彼が家を長く空けないようにしていました――嫉妬深いんでしょうね(苦笑を漏らす)。ただ、家から海岸を眺めていると、ああ、あれが私の世界との境界なんだな――って気がして。私が育った世界に背を向けて、彼は私に共にあるよう強い、私は彼から離れられませんでした。結婚したときからではありません。彼に心を奪われたときからです。

ポイデビン博士: ......ジャックがなぜ――どのように亡くなったのか、何が起こったのか。アリソン嬢になぜ同じようなことが起こったのか、わかるかい?

SCP-2368: 私は――あなたを信用してもいいものでしょうか、先生。

ポイデビン博士: 私は君の助けになれればと思っているよ。君が彼らを殺したんじゃないと言うなら、私は真実を確かめなきゃいけない。

SCP-2368: 私はやっていません。つまりその、アリーだって友達で、――彼女を傷付けるようなことは絶対にありません!でもきっと信じてもらえないわ。今だって、イカれてるって思ってるでしょう。

ポイデビン博士: 言ったろう、フィオナ。それを断じるのは私じゃない。

SCP-2368: ......それはまるで......いえ。誰も理解し得ないわ。というか、私もなんと言っていいかわからないの。堂々巡りで――。(固まる)私は躍り手でした。ええそうです。育った場所に立ち返って、皆して――絶えることなく踊るんです。

ポイデビン博士: フィオナ?何を言って――

SCP-2368: ええ、つがいになって踊るとき、世界の全ては消え去って。躍りはつまり一つの世界を作り上げて、どんどん共に進化して、変化して。ああでもオークニーじゃ、ここじゃ、誰も私の躍りが分からなくって、ジャックを愛してて、彼にも教えようとしましたが――ええ、覚えるだけの時間は十分にあったんです。望まなくても躍りは進んでいって、どんどん速くなっていって。(くぐもる)......私は何も知らない、とんだ青二才だった。

ポイデビン博士: オーケー、もういいよフィオナ。ティッシュ使うかい。水も飲むといい。うん。オーケーだ。多分だけど、段々分かってきた気がする。

SCP-2368: ねえ――ねえ、ここは、本当に他の刑務所とは違うんですよね?

ポイデビン博士: そうとも。でも、もしもうこれ以上話したくないのなら止めても結構だよ。君が望むなら、すぐさま私は引き上げよう。また何日かしたら来るとは思うけど――

SCP-2368: 待って、先生。

ポイデビン博士: 何かな?フィオナ。

SCP-2368: お訊きしないといけないことがあります。私たちの家に――私とジャックにまつわる――何か見つけましたか?

ポイデビン博士: どういう意味かな?何かあるのかい?

SCP-2368: 彼が私から取り上げて、隠したものなんですけど、彼は私がそれを探してるのを知っていて、それがあれば私が自由の身に――自由に足を伸ばして、家族のところ、子供たちのところまで帰れるのも知ってたはずです。

ポイデビン博士: ちょっと待った、フィオナ。――君、子供いたのかい?

SCP-2368: 海の向こうで、きっと私を待っています。私は片時もジャックの傍を、――ええ、ご存知の通り、ジャックの傍を離れた事はありませんでした。でも今やジャックは逝ってしまいました。私は彼が「アレ」をどこに隠したのか知らなくって――ねえ、先生。私のために、「ソレ」を探してきてくれませんか?

ポイデビン博士: 何を見つけてきてほしいんだい?

SCP-2368: それは言えません――駄目なんです。でも、見付けられたら、きっと先生にも解ると思います。――どうかお願いします。

ポイデビン博士: わかったよ、フィオナ。私に出来る限りのことはやってみよう。君は、今はゆっくり休みたまえ。

SCP-2368: ありがとうございます、先生。私の話を聞いてくださって......本当に、ありがとうございます。

その後: ジャック=タラックとフィオナ=タラックの住居の探索において、財団の関心にそぐう物は見つかりませんでした。調査はラウゼー島の他の地域でも続けられています。ポイデビン博士が亡くなったあと、財団とSCP-2368との接触は減り、SCP-2368は自らの異常性や、上記の面会で言及された他の事柄について、詳細に述べることを拒否しました。

ページリビジョン: 23, 最終更新: 21 Feb 2024 12:28
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