SCP-231-JP
評価: +9

クレジット

タイトル: SCP-231-JP - 安眠時計
著者: ©︎to_o_shake to_o_shake
作成年: 2015

評価: +9

アイテム番号 SCP-231-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: 全てのSCP-231-JPはサイト-81██の低脅威度物品保管倉庫に収容されています。SCP-231-JPはオブジェクトを認識することによる曝露を防ぐため、それぞれ不透明の袋に入れた上で防音性の収容ボックスに納められます。また意図しない破損を防ぐため充分な緩衝材が使用されます。収容ボックスは全て床あるいは壁に固定してください。破損したオブジェクトは全て焼却処分してください。

最初期に収容されたSCP-231-JPは、サイト-81██の231実験室で可動限界の測定が行われています。このオブジェクトの他の実験への使用は許可されません。また231実験室の入室は担当の職員以外に許可されません。

SCP-231-JPの実験を行う場合、オブジェクトの移動は収容ボックスごと行い、被験者のみSCP-231-JPに曝露させる環境で行ってください。SCP-231-JP-Aを発生させる実験はSCP-231-JP担当職員およびセキュリティクリアランス3以上の職員の許可を得てください。またSCP-231-JP-Aの根による浸食や新たなSCP-231-JPの発生による二次被害を最低限に抑えるため、実験室および実験設備は隔離し、万が一の場合に備えて実験室ごと焼却が可能な状態にしてください。また実験が終了した後のSCP-231-JP-Aは必ず全て焼却されていることを確認してください。

説明: SCP-231-JPは外見は小型の振り子時計のように見えます。しかしながらSCP-231-JPは後述の異常性から大部分がヒト由来の材料で形成されており、内部構造は実際の振り子時計から大きくかけ離れています。SCP-231-JPは不明の動力により時計として問題なく可動します。19██年に収容されたSCP-231-JPは現在も「新鮮な」状態で可動し続けていますが、SCP-231-JPは落下や激しい振動など強い衝撃で容易に内部構造が破壊され、後述の異常性を失い、急速に腐敗します。

SCP-231-JPは可動している状態を認識したヒト(以下、被験者と呼称)に影響を与え、被験者は急激な眠気を自覚します。個人差はあるものの、10秒から60秒程度、SCP-231-JPの影響を受け続けた被験者は完全に入眠し、次の日の出まで睡眠を続けます。以降、被験者は日の入り頃に完全に入眠し、日の出頃に覚醒します。被験者の入眠を阻止する、睡眠中の被験者を目覚めさせる、被験者を日中に睡眠させるあらゆる試みは現在まで成功していません。曝露による睡眠から覚醒した被験者は非常に激しくSCP-231-JPとの継続的な接触あるいは曝露を要求しますが、この要求は時間経過と共に弱まります。この時の被験者は、前述の異常性にも関わらず、日中の睡眠不足とそれに伴う倦怠感、頭痛など一般的な睡眠不足と同様の症状を訴えます。被験者がSCP-231-JPに再び曝露することが無かった場合、1週間程度で前述の睡眠の異常および欲求は完全に解消されます。被験者がSCP-231-JPの曝露による睡眠を累計で約72時間程度行った場合、被験者はSCP-231-JP-Aと指定される存在に変異します。SCP-231-JP-Aとなった被験者が目覚めることはありません。

SCP-231-JP-Aは「被験者が蔓性の植物になったような」と形容されます。SCP-231-JP-Aは内部に血管が存在する蔓状の肉塊を発生させます。この蔓状の肉塊は一般的な蔓性の植物と同様に正の光走性、負の重力走性を備えているように観察されます。またSCP-231-JP-Aは血管の延長として皮膚表面から有機的な管(以下、便宜的に根と呼称)を発生させます。この根は先端が接触した物体を未知の原理により分解、吸引しながら伸長していることが確認されており、これによりSCP-231-JP-Aは地面あるいは壁面を浸食し、自身を固定します。最終的にSCP-231-JP-Aは被験者の質量と同程度の蔓状の肉塊に変化します。この変化は約3時間程度で完了しますが、その後もSCP-231-JP-Aは「蔓性の植物のように」成長を続けます。SCP-231-JP-Aは成長に養分を必要としているようには観察されず、養分以外の育成に適した環境や成長速度などはツタ(Parthenocissus tricuspidata)などの一般的の植物と大きな差異は確認されません。しかしながらSCP-231-JP-Aは寒冷や乾燥など一般的な植物の生存が難しい環境下においても強い耐久性を示し、育成可能な環境であれば約5mm程度の肉片からでも蔓性の肉塊および根を発生させます。SCP-231-JP-Aには不明のタイミングで根から吸引した物質を多量に含む腫瘍が発生しますが、この腫瘍は発生から約1時間程度でSCP-231-JPに変化します。

対象: SCP-231-JP被験者 (D-23103)

インタビュアー: █博士

付記: このインタビューは、他の被験者と同様、曝露後のD-23103が精神的に非常に不安定であったため曝露してから5日後に行われました。

<録音開始>

█博士: それでは、インタビューを開始します。......よろしいですね? D-23103。

D-23103: [不明瞭な呻き] あぁ、うん。

█博士: 体の調子が良くない?

D-23103: いや、そうじゃない。そうじゃないんだ。ただ、眠たい。

█博士: 充分に寝ていたと思いますが?

D-23103: あぁ、うん。そうだな。うん。寝てる。たぶん、だいぶ寝てる。けど、なんか、違うんだ。眠たい。

█博士: ......そうですか。他に何かありますか? 例えば、その眠たい以外に体調の変化とか。

D-23103: だるい。

█博士: 他に?

D-23103: [呻き声] 体を動かしたくない。ずっと寝ていたい。部屋に戻らせてくれないか? それか、またあの時計みたいな奴の実験をしてくれよ。あれはよく眠れる。そうだろ?

█博士: そうですね、検討はします。あなたは、その時計みたいな奴の実験の後はかなり激しく動いていたようですが。壁とか扉とか蹴ったり。今は違うようですね。真逆だ。

D-23103: まぁ、うん。疲れた、ぽい? よく分からんけど。

█博士: よく分からない?

D-23103: [沈黙] 目覚まし時計。

█博士: はい。必要ですか?

D-23103: そうじゃなくて。うるさくて放り投げたみたいな。たぶん、そんな感じだった気がする。朝早く掛かってきた間違い電話に怒鳴るみたいな。もっと寝させて欲しいのに、邪魔されたみたいな。そんな気分が一日中続いてたみたいな。そんな、なんか、よく分からん。もう3日も前の寝起きの気分なんて思い出せるかよ。

█博士: そうですか。他に何か思い出したことや気付いたことは ? 体調もそうですが、精神的なものであったり、気分や気持ちの面では?

D-23103: [沈黙]

█博士: D-23103?

D-23103: さっき、疲れたって言ったけど。

█博士: はい。なんでしょう?

D-23103: お偉い博士様に言って通じるか? 日曜日に寝るのが怖くなったことはあるか? 布団に包まって明日が来てほしくないって思ったことは?

█博士: はい? いえ、もう少し具体的に。あなたはどんな気分なんですか?

D-23103: 早く寝なきゃ明日の朝が起きられなくなる。早く寝なきゃ明日が辛いことが分かってる。なのに寝るのが惜しく感じる。寝ても寝なくても明日は来るのに、寝たらもうすぐに今日が終わるかもしれない。でも実際に終わるんだ。そんな時の寝られない気分。分かるか?

█博士: あぁ、そうですね。分かります。

D-23103: ホントかよ。月曜日、起きるのが億劫で、目覚まし時計がうるさくて、それでもまた一週間が始まるんだ。それでも、ずっと、寝てたい。日曜の夜と月曜の朝が同時に来たみたいな、今まさにそんな気分だ。寝たいんだ。でも寝れないんだ。

█博士: ずっと寝ていたい、けれど寝ることができない、ですか? なるほど。

D-23103: 何がなるほどだよ。なぁ、博士。昼間は寝れないんだ。辛い。夜はすぐ寝れる。いや、でも、寝れてないんだ。朝が辛い。昼間も辛い。寝てるのに、昼間はずっと寝不足みたいなんだ。寝ても一瞬で朝が来ちまう。ふっと気を失ったらもう朝が来てるんだ。違う。あれは寝てるんじゃないんだ。寝させてくれよ。あの時計みたいな奴を使わせてくれ。あれの時はよく寝れた気がするんだ。

時間があっという間に過ぎちまう。寝てる間に。日曜も月曜も平日全部ふっ飛ばして金曜日が来てる気分だ。土曜が来るのが嬉しくない。あっという間に過ぎるのが分かり過ぎてて休まらない。寝てるだけで時間が過ぎちまう。なのに寝れてないんだ。

なぁ、俺は本当に寝てるのか? 夜から朝にスリップしてる訳じゃないんだよな? 寝させてくれよ。なんなら薬でもいい。酒でもいい。寝させてくれよ。無理を言うなら寝てる間も夜を続けさせてくれ。目を閉じたらすぐに朝なんてやめてくれよ。寝てる実感が欲しい。なんだよ、寝てる実感って。意味が分からん。

█博士: [沈黙] あと、3日ほどでちゃんと寝れるようになると思います。

D-23103: そうか? そうなのか。3日なら木、金、土で、水曜か。どっちの日曜からも遠いじゃねぇか。ここからさらに3徹状態で過ごせってか。笑える。笑えねぇよ。いっそ笑えよ。

█博士: D-23103? 発言の意図が不明ですが、大丈夫ですか?

D-23103: 大丈夫じゃねぇよ。大丈夫だったら寝れてるはずだ。

█博士: そうですね。インタビューを終了しましょう。

D-23103: できればでいいんだ。今の部屋、もう少し日が入るようにしてくれ。日に当たれば少しは目が覚めるだろ? ひょっとしたら逆に陽気で寝れるかもしれない。日が欲しい。昼寝をしたい。寝たいんだ。

█博士: 検討します。

<録音終了>

終了付記: インタビュー終了後、D-23103は環境の変化が与える影響の観察のため収容房を移動しましたが、SCP-231-JPの影響が解消されたと思われる時点まで睡眠状態に改善は確認されませんでした。

補遺-1: 20██/█/██、SCP-231-JPおよびSCP-231-JP-Aの発見地点である██県██山からSCP-231-JP-Aの完全な除去が確認され、SCP-231-JPのSafeクラスへの改定および除去作業に関する特別収容プロトコルの削除が行われました。また回収されたSCP-231-JPおよびSCP-231-JP-Aの身元は未だに判明していません。

ページリビジョン: 20, 最終更新: 10 Jan 2021 16:01
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