SCP-2164-JP
評価: +43

クレジット

タイトル: SCP-2164-JP - 少女かどうか
著者: ©︎Sirakage-puppet Sirakage-puppet
作成年: 2022

評価: +43
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アイテム番号: SCP-2164-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2164-JPは標準人型実体収容セルに収容されます。SCP-2164-JPの収容セルには、生存状態の虫が侵入しないよう入室時には必ず消毒室を使用してください。また、SCP-2164-JPには最低でも3日に1度、医師によるカウンセリングか行われます。

説明: SCP-2164-JPは日本国籍を有するモンゴロイド女性です。SCP-2164-JPの血中には未知の物質が含まれており、これは遺伝的なものではなく、SCP-2164-JPの特異的なものだということが判明しています。

SCP-2164-JPの異常性はSCP-2164-JPが負傷した場合に発現します。外気と接することにより、SCP-2164-JPの血中に含まれている物質が周囲の虫を誘引するフェロモンへと変化します。このフェロモンにより誘引された虫はSCP-2164-JPの外傷が塞がっていない場合、外傷を自身の全身で覆い、定着します。定着した虫は数分程度でSCP-2164-JPの組織と完全に癒着します。このプロセス中、SCP-2164-JPは肉体的、精神的に強い苦痛を感じます。癒着した虫(以下、SCP-2164-JP-1)は数日間かけて、次第に人の表皮組織と同等の強度に変化します。

SCP-2164-JP-1には中枢神経系や血管、筋組織以外の内臓は存在しません。これはSCP-2164-JPに癒着後、SCP-2164-JPに分解・吸収されたためだと推測されます。SCP-2164-JP-1はSCP-2164-JPの血中から酸素や栄養を受け取ることにより生存しています。これらの要因により、SCP-2164-JP-1は予測される生存期間を超過して生存しています。また、SCP-2164-JP-1は一部の部位を損傷した場合も完全に再生します。現在、周囲の組織ごと切除する以外にSCP-2164-JP-1をSCP-2164-JPから分離する手段は発見されていません。

発見: SCP-2164-JPは財団のフロント企業である████病院にSCP-2164-JPが搬送されたことにより発見されました。その際、SCP-2164-JPは交通事故によって重傷を負ったとして病院に運び込まれていましたが、関係者の証言によると、救急隊員が事故現場に到着した時点で外傷の大部分にSCP-2164-JP-1が癒着していたとのことです。そのため、SCP-2164-JPの外傷の治療はほとんど必要としませんでした。

この事故は、SCP-2164-JPの体表の18%程度が虫に置換されるという結果を齎しました。加えて、SCP-2164-JPの体格から予想される体重と実際の体重との乖離から、虫への置換は体内の不明な領域まで及んでいると推定されており、その除去に要する外科手術の規模、およびそれに伴う影響などが不可測であることから、外部からの除去は保留されています。

補遺1: 以下はSCP-2164-JPに行われたインタビューログです。

インタビュアー: 筧博士

対象: SCP-2164-JP

追記: インタビューでは会話をスムーズに行うため、対象を対象の本名である██ ██と呼称しています。


<記録開始>

筧博士: ██さん。ここでの生活は慣れましたか?

SCP-2164-JP: えぇ、おかげ様で。

[6秒の沈黙]

筧博士: 無理はしないでください。時間はたっぷりあります。ゆっくりでいいので、その異常性...体質について話していただけませんか?

SCP-2164-JP: ...はい。

[SCP-2164-JPが深呼吸をする]

SCP-2164-JP: 初めて虫が寄ってくることに気がついたのは多分幼稚園かそれとももっと前の頃だったと思います。確かその時は転けてしまって膝を擦り剥いてしまいました。

筧博士: それで?

SCP-2164-JP: その時にはすぐに絆創膏を貼ったので大丈夫でしたが、絆創膏の上に虫が寄って来てすごく気持ち悪かったです。

筧博士: なるほど。

SCP-2164-JP: それから何度かケガをしましたがその都度傷口に虫が寄ってきました。幸いすぐに絆創膏を貼ったり、血を洗い流していたので虫がくっつくことはありませんでした。あの日までは。

筧博士: 何度も言うようですが無理はしなくて結構です。思い出すのはお辛いでしょう。

SCP-2164-JP: いえ、大丈夫です。...今でもはっきりと覚えています。小学3年生の夏、私は家族と山へハイキングに出かけました。その日は舞い上がっていてうっかり転んでしまいました。「また虫が寄ってきちゃうな」なんて考えていると1匹のミミズが地面から這い出てきました。

[SCP-2164-JPは自身の右脚を見る]

SCP-2164-JP: そしてソイツはニョロニョロって私の足を登ってきました。それで...

筧博士: 癒着したんですか。

SCP-2164-JP: はい。その時は本当に恐ろしくて、払い除けるなんてできませんでした。

筧博士: その時、痛みなどはありましたか?

SCP-2164-JP: ありました。

筧博士: 詳しく聞かせてもらってもいいですか?

[SCP-2164-JPが頷く]

SCP-2164-JP: えぇと、うまく表現できないかもしれませんが...

筧博士: 構いませんよ。

SCP-2164-JP: そのミミズが傷口に触った瞬間、血管に糸を入れられたような嫌な感じがしたんです。そのままミミズは私の傷口を全身で覆い始めました。

[筧博士がメモをとる]

SCP-2164-JP: そうしたら突然。今まで感じたことの無い感覚に襲われたんです。今思えばあの時にミミズと私の神経が繋がったんだと思います。

筧博士: なるほど。その時点でミミズの感覚を██さんも感じられたということですか?

SCP-2164-JP: はい。初めはぼんやりとしたものだったのですが、肉が裂けたような痛みがしてだんだんと...それでミミズを見て私は思わず固まってしまいました。

筧博士: どうしてですか?

SCP-2164-JP: 半透明なミミズの身体に真っ赤な血が流れていたんです。

筧博士: ...

SCP-2164-JP: あぁ、もう取り返しがつかないんだ。...私はその時そう思いました。

筧博士: 大丈夫ですか?

[筧博士がSCP-2164-JPにティッシュペーパーを手渡す]

SCP-2164-JP: ありがとうございます。大丈夫です。それで私はこの事は両親に隠すことにしたんです。

筧博士: 隠す?見つからなかったのですか?話を聞いている限り膝は露出していたようですが。

SCP-2164-JP: その時はワンピースを着ていたので。

筧博士: なるほど。...すみません。話の腰を折ってしまいました。どうぞ続けてください。

SCP-2164-JP: はい。その日はバレないで家に帰れました。でも帰路についてる間、ミミズが疼いたり、時々脈打ったりしました。...これが私の体質に気がついた日の出来事です。

筧博士: ありがとうございます██さん。その後の話も伺ってもよろしいですか?

SCP-2164-JP: はい。...私はその年の夏休み明けから小学校に行かなくなりました。理由は分かりますよね?

筧博士: はい。もちろんです。

SCP-2164-JP: ここまで話したらそうですよね。でも私は両親にずっと隠したままにしていました。突然私が学校に行かなくなったものだから両親はとても困惑していました。でも私は理由を聞かれても答えられませんでした。

筧博士: そうですか。

SCP-2164-JP: でも。中学生になって変わらなきゃって思ったんです。制服になったから隠すのが簡単になったというのもありますが。三年生になる頃には普通に通学できるようになりました。まぁ、体育なんかは見学したんですがね。

筧博士: 高校はどうでしたか?

SCP-2164-JP: 高校の頃が1番楽しかったです。友達と遊びに行ったり、勉強したり。危ない時もそこそこありましたが、普通の生活に近いものを過ごすことができました。

筧博士: なるほど。

SCP-2164-JP: でもその慢心がこれに繋がったんだと思います。

[SCP-2164-JPが自身の右腕を見つめる。SCP-2164-JPの右腕は大部分がSCP-2164-JP-1に置換されており、SCP-2164-JP-1群が脚を蠢かす、羽ばたくなどをしている]

筧博士: 確か大学のサークルで温泉へ向かう途中で事故にあったんですよね。

[SCP-2164-JPが頷く]

SCP-2164-JP: 山道の急カーブで前からスピードを落とさずに車が突っ込んできました...

[筧博士は自身の顎に手を当てる]

SCP-2164-JP: 私はその時必死でした。真っ赤な視界の中、命からがら車から何とか脱出しました。...あのまま車の中に居た方が幸せだったんですかね。

[SCP-2164-JPが俯く]

[13秒の沈黙]

筧博士: ██さん。今日のインタビューはもう終わりにしますか?

[SCP-2164-JPは顔を上げ、筧博士の顔を見る]

SCP-2164-JP: えぇ、お願いします。

筧博士: では、インタビューを終了します。

<記録終了>

インタビュアー: 筧博士

対象: SCP-2164-JP

追記: このインタビューはSCP-2164-JPが筧博士との対話を希望しため行われました。


<記録開始>

筧博士: ██さん。お話がしたいと伺ったのですが、何か困っていることでもあるのですか?

SCP-2164-JP: ...筧さん...最近私おかしいんです...

[SCP-2164-JPは俯いている]

筧博士: おかしい?体調か何か悪いのですか?

SCP-2164-JP: ご飯がほとんど食べれないんです。

筧博士: 何故食べられないんですか?

SCP-2164-JP: ご飯がご飯だと思えないんです。

筧博士: どういうことですか?

SCP-2164-JP: 何だか食べ物じゃないものを食べているような気がして...それと少し照明を落としてくれませんか。眩しいです。

[SCP-2164-JPが目を手で覆う]

筧博士: そうですか?まぁ分かりました。

[部屋の明度が落される]

筧博士: それで先程の続きですが、食べられそうにないのであれば、食べられそうなものを希望する食べ物として申請することができますよ。

SCP-2164-JP: そうですか。なら生野菜だけにしてくれませんか?

筧博士: それは流石に無理があるでしょう。

SCP-2164-JP: でもそれしか食べられそうに無いんです。

筧博士: 他には無いんですか?

SCP-2164-JP: 無いです。

筧博士: いつ頃からそのようになったのですか?

SCP-2164-JP: 1週間ほど前からです。

筧博士: 何か心当たりはありませんか?

[SCP-2164-JPが首を横に振る]

筧博士: なるほど。他に何か異変はありませんか?

SCP-2164-JP: えっと。もしかしたら気のせいかもしれないのですが、最近声が聞こえるんです。

筧博士: 声ですか。

SCP-2164-JP: はい。言っていることは分かりませんが頭の中に突然ふわふわと響いてきて、それとよく立ちくらみが起こるようになりました。

筧博士: そうですか。こちらで調べてみるよう言ってましょう。あと不安なのであればカウンセリングの回数を増やしましょうか?

[SCP-2164-JPが目を擦る]

SCP-2164-JP: すみません筧さん。もう眠いので次回にしていただけますか?

筧博士: 眠い、ですか。しかし。

[筧博士が時刻を確認する。当時の時刻は午後1時23分であった]

SCP-2164-JP: すみません。ちょっとキツいです。

[SCP-2164-JPが頭を押さえる]

筧博士: そうですか。ではインタビューを終了します。

<記録終了>

当インタビューの数日後、SCP-2164-JPが主張した異常について詳細な調査が行われました。結果として、以下のような現象が確認されています。

  • 味覚の変化、ならびに限定的な異食症の兆候。人間用の食事に軽微な不快感を示す一方で、食欲を感じる対象として摂食に適さない複数の物体を示した。
  • 睡眠相の後退。現在、SCP-2164-JPの概日リズムは夜行性の生物に近いものとなっている。
  • 閉所や暗所に対する強迫的な執着。収容室の隅に座り込んだり、ベッドの下に入ったりしたまま数時間過ごすといった行動が見られた。

インタビュアー: 筧博士

対象: SCP-2164-JP


<記録開始>

筧博士: ██さん。突然呼び出しすみませんね。

SCP-2164-JP: いえ、大丈夫です。

[SCP-2164-JPはキョロキョロと周りを見ている]

筧博士: この前のことですが、あれから新たな異変が起こっていたりしていませんか?

[SCP-2164-JPが顔を手で擦る]

SCP-2164-JP: いえ、何も起こっていませんよ?あ、ちょっと少し失礼しますね。

[SCP-2164-JPが机の下に入る]

筧博士: ██さん。本当に違和感を感じていないのですか?

SCP-2164-JP: さっきから何言ってるんですか。今日の筧さんおかしいですよ?

筧博士: そうですか。ではもう終わりましょう。

SCP-2164-JP: ちょっと待ってください!何ですか本当に。

[筧博士はため息をつき、屈んでSCP-2164-JPと目を合わせる]

筧博士: ██さん。今から話すことは全て、推測の域から出ないことに留意してください。

SCP-2164-JP: 何ですか、筧さん。

筧博士: ██さんは記憶転移ってご存知ですか。

SCP-2164-JP: いえ。初めて聞きました。

筧博士: 私も専門ではないので詳しくは分かりませんが、臓器移植によってドナーの嗜好や性格が移るという現象らしいです。

SCP-2164-JP: それが何か?

筧博士: 私はそれに近しい現象が██さんの身体にも起こっているんじゃないかと考えています。

SCP-2164-JP: でも筧さん。私、臓器移植なんてしたことありません。

[筧博士がSCP-2164-JP-1を見つめる。それに気がつき、SCP-2164-JPもSCP-2164-JP-1を見る]

SCP-2164-JP: もしかして、虫?

[筧博士が頷く]

筧博士: これまでの話に全くもって科学的な根拠はありません。しかし、██さんの最近の行動に虫の生態に酷似したものが幾つも見受けられます。

SCP-2164-JP: いや、でも。だって

[SCP-2164-JP-1の動きが突然、活発になる。それに、SCP-2164-JPがそれに驚き、四つん這いになりながら机の下から出る]

[SCP-2164-JPは立ち上がり、ふと自身の右手の手のひらを見つめる]

筧博士: ██さん。大丈夫ですか?

[SCP-2164-JPが手のひらを自身の口に近づける。その後、何かを舐めとったように見える]

SCP-2164-JP: 嘘。なんで、え?

[SCP-2164-JPが酷く狼狽える]

筧博士: ██さん。落ち着いてください。

SCP-2164-JP: 待って、いやだ。何で?どうして?

[SCP-2164-JPはその場に泣き崩れる]

<記録終了>

当インタビュー後、SCP-2164-JPは鬱の兆候が大きく見られるようになりました。

補遺2: 20██/8/21に中規模な収容違反が発生しました。この収容違反で発生した事故により、SCP-2164-JPは後頭部を中心に頭部の約██.3%を失いましたが、自身の異常性により一命を取り留めました。以下は事故後にSCP-2164-JPに行ったインタビューです。

インタビュアー: 筧博士

対象: SCP-2164-JP

追記: このインタビューは急遽屋外で行われたものである


<記録開始>

[SCP-2164-JPは四つん這いの状態であり、胸と口元を地面に擦りつけている]

[SCP-2164-JPの咀嚼音]

筧博士: ██さん。

[SCP-2164-JPの咀嚼音。筧博士の呼び掛けには反応を示さない]

筧博士: ██さん。しっかりしてください!

[SCP-2164-JPが筧博士の腹部を蹴る。SCP-2164-JPの口からカマドウマ(Diestrammena apicalis)の足が地面に落ちる]

[筧博士はうめき声を上げ、口を手で押さえ蹲る]

SCP-2164-JP: あぁ。えぁ。

[SCP-2164-JPがゆっくりと立ち上がり、周囲を見渡す。SCP-2164-JPの左右の目の焦点は合っていない]

筧博士: ██さん?

[SCP-2164-JPは笑みを浮かべ、自分の腕に噛み付く]

筧博士: 何をしているんですか!やめて...やめなさい!

[SCP-2164-JPが自身の腕のSCP-2164-JP-1を噛みちぎる。SCP-2164-JPは大量に出血し、SCP-2164-JP-1が蠢く]

筧博士: 誰か!警備員!

[周囲の警備員がSCP-2164-JPを取り押さえる]

SCP-2164-JP: えあぁ、だ。あ

<記録終了>


追記: このインタビュー後、筧博士にカウンセリングが行われました。

Footnotes
. 昆虫、クモ類、ムカデ類など。一般的に『虫』と認識されている生物。
ページリビジョン: 9, 最終更新: 21 Feb 2024 11:53
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