アイテム番号: SCP-2143
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: ×ばつ3mのプレキシガラス製の屋根を据え付けます。テーザー銃を備えた警備2名が常時SCP-2143の収容室の外に待機することになっています。オミクロン・イベントが収容室の外側に広がった場合、無力化ガスKolokol-2が直ちに換気システムを介して、SCP-2143が鎮静されるまで収容室に導入されます。オミクロン・イベントの停止後、生成された非異常性オブジェクトはバイオセーフティ・レベル4プロトコルに則って職員により現場で焼却されます。生成された異常性オブジェクトはSCPまたはAnomalousアイテムとして分類し、それに応じて収容します。各オミクロン・イベントの結果は毎日記録してSCP-2143のデータファイルにアップロードしてください。
説明: SCP-2143は黒い髪と茶色の目を持つ、約30歳のギリシャ人男性です。肉体面では、SCP-2143は本質的に非異常ですが、一方であらゆる楽器への極端な熟達・不明な数の歌に対する直感像記憶・職員から"気持ちが良くて、楽しく聴ける"と述べられる歌声を有しています。1日1回、SCP-2143はランダムな楽曲を演奏します。SCP-2143は自身が演奏する曲を制御しているとは思われず、一度演奏した曲を繰り返すのは観察されていません。SCP-2143は曲のリクエストに答える事も出来ますが、これは既に演奏した曲に対してのみ可能であり、例え強制されても2回以上は同じ曲を演奏できません。
SCP-2143-2は竪琴であり、距離に関わらずSCP-2143の下に瞬間移動する能力を持ちます。SCP-2143以外の人物が演奏した場合、SCP-2143-2は音を出しません。SCP-2143が演奏する時、SCP-2143-2はキーボード・オーボエ・ギター・トランペット等のあらゆる楽器に、その大きさや複雑性には関係なく変形できます。SCP-2143は管楽器の演奏中でも発声できます。
SCP-2143による楽曲のパフォーマンスは常にオミクロン・イベントを招きます。オミクロン・イベントが発生すると、異常な層積雲(これ以降SCP-2143-3と呼称)がSCP-2143の真上に形成されます。SCP-2143-3は稲妻と雷鳴を発生させる一方で、水の代わりに演奏中の楽曲と関連性のある物品を雨として降らせます。オミクロン・イベントは、屋内と屋外の両方で発生します。屋内の場合、SCP-2143-3は天井の下に現れ、部屋の幅と長さを占領します。屋外の場合、SCP-2143-3は異常性の無い層積雲に典型的なサイズおよび高度で出現します。オミクロン・イベントはSCP-2143が曲を演奏している間だけ続きます。
SCP-2143が演奏する各楽曲は、それぞれが単一のオミクロン・イベントに繋がりを持っています。SCP-2143はオミクロン・イベントを目撃できるものの、肉体的に相互作用することはできません。SCP-2143はこれらの事象を意図的に起こしてはいないと主張しており、通常は発生時に苦痛を表します。
演奏を1日以上妨害されると、SCP-2143の健康と士気は大幅に低下します。同時に、SCP-2143の半径3m以内に入る職員は未知の疾患に感染します。SCP-2143が1日演奏を妨害されるごとに、影響領域のサイズは倍増します。疾患の症状は敗血性ペストのそれ(下痢・発熱・低血圧・壊疽・ショックなど)ですが、抗生物質による治療が不可能です。疾患の感染源は不明です。SCP-2143が歌うことを許可された場合、感染者は即座に回復し、影響領域は消失します。
補遺:
以下は、SCP-2143収容中に観察された3回目のオミクロン・イベント直後に行われたインタビューである。
日付: ████年1月7日
質問者: T█████博士
[記録開始]
T█████博士: おはようございます、SCP-2143。
SCP-2143: 俺のことは██████って呼べ。
T█████博士: 次の質問に回答してください。
SCP-2143: へいへい、分かったよ。
T█████博士: 何故、貴方の歌がオミクロン・イベントを発生させるのかを知っていますか?
SCP-2143: あれは俺のせいじゃない。親父は俺に歌うのを止めて働けって言ってきたんだが、音楽は俺の魂なんだよ! 俺の情熱なんだ! あの老いぼれときたらカンカンに腹立てやがって。何でなのかは分からねぇ、多分そうした方が女が寄って来るってとこだろうけどな...
T█████博士: SCP-2143、質問に答えてください。
SCP-2143: 俺、現代音楽は少し不得手なんだ。とにかく、俺がこのスゲぇリフを半ば演奏してる最中にだな、老いぼれヤギ親父が入って来て、俺の音楽でどれだけ気が散るかとか、自分がキレる前に"本当の"仕事に戻れとか怒鳴りやがるんだ。だから言ってやったよ、とっくにここ何日も4番目の愛人さんのせいで気が散ってばかりだろってな。まぁ勿論ブチキレやがった。俺を下界に投げ堕として、その上、呪いまで投下してきたんだ。
T█████博士: 貴方の父親というのは何者なんですか?
SCP-2143: 俺は今、あの野郎の話をする気分じゃないんだ。いや、まぁいいだろう。言ってやるさ。あいつはとんでもないクソッタレだ。分不相応なゴッド・コンプレックスと、デイン・クックと同レベルのユーモアセンスの持ち主。親父は冗談を理解できないし、癇癪だの性欲だのは抑えられない。周りにいる奴らを呪うことしかしない。
T█████博士: 初めてオミクロン・イベントが発生したのは、いつです?
SCP-2143: 此処で初めて曲を演奏した時さ。皆にとって災難だったよ。マジで可愛らしい女の子に、"The Meaning of Lice"を聞かせてた。あの娘とよろしくヤッた後にバラッドを歌って、途端にシラミ(Lice)が降ってきやがったんだ。あんなきまりの悪い事ってないぜ。でもって親父は間違いなく爆笑してたはずだ。ハッハッハ。俺の親父ってのはそういう根性悪なんだよ。
T█████博士: 貴方の父親と意思疎通をすることはできるのですか?
SCP-2143: 雷に話をするのと同じようなもんだろう。多分、雷の方がまだ良い聞き手になる。俺は、誰かに曲を聴いてほしいだけなんだよ。誰も楽しめない音楽の何処が良いって言うんだ? だが今じゃ、俺はそれさえもできない! 俺が歌う度に雨が降ってきやがる。でも俺は歌うのを止めることはできない。雨が降り止む事は無いんだろうな。地獄にいた方がマシさ。少なくともそこなら、雨は降らないだろうから。
この時点でSCP-2143は"Regurgitated Guts"を演奏し始め、鎮静を余儀なくされた。SCP-2143は収容下に戻された。
補遺: 最近のオミクロン・イベント
以下の表には、SCP-2143が演奏した直近の7曲と、それぞれの結果が掲載されています。全演奏曲の完全なリストは文書2143-2を参照してください。