SCP-1914
評価: +8

アイテム番号: SCP-1914

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1914は排気ガスの蓄積を防止するための換気装置を搭載したヒト型オブジェクト収容セルに居住させてください。10〜12時間置きにSCP-1914のエンジンを最低でも2時間の間稼働させ、バッテリーを完全に充電させなければなりません。活動中は、有機組織を維持するために250グラムの栄養補強ベビーフードと0.5リットルの精製水を与えてください。また、要求があれば娯楽目的に眼鏡と本あるいは音楽を提供してもかまいませんが、提供するものは1916年より前に公開されていたものに限ってください。SCP-1914にはセル内での移動を助けるために杖を提供し、検査及び活動時の試験のためにセル外へ出す場合は医療専門家を同伴の上車いすかストレッチャーで運んでください。

SCP-1914が非活動状態の間に燃料タンクに標準的なディーゼル燃料を補充し、廃液タンクを空にしてください。また、最低でも一週間に一度医学的・機械的検査を受けさせてください。少なくとも月に一度、SCP-1914の潤滑油タンクとラジエーターを排液、洗浄し、新しい潤滑油と冷却液を補充してください。破損ないし故障の兆候を示している機械部品は可能な限り同一の構造を持った部品に交換し、SCP-1914の異常特性と直接関係のない病気やけがは直ちに治療してください。SCP-1914はウィルス・細菌への感染の危険性が高いとみなされるため、感染症を患っているスタッフはSCP-1914に接近してはなりません。

説明: SCP-1914は20██年██月██日現在およそ1██才となる人間の男性で、20世紀初頭に極端な機械化改造を受けたものと考えられています。SCP-1914の心臓、肺、肝臓、膵臓、胆嚢、虫垂、小腸および大腸の一部、結腸、膀胱、生殖器官は除去されており、さらに表皮の83%(顔、右上肢、左肩以外の部位)が皮革に置き換えられています。X線検査により、手足の筋骨格構造の一部が外科的に除去され、ラテックス、鋼棒、自動車用ピストンに置き換えられており、さらに全身に冷却液と潤滑油を循環させるチューブが組み込まれていることがわかりました。燃料タンク、潤滑油タンク、冷却液タンクが背中に搭載されており、最大5 USガロン(18.9リットル)のディーゼル燃料、5 USクォート(4.73リットル)の潤滑油、1 USガロン(3.78リットル)の冷却液を保持することができます。

SCP-1914の腹腔にはブランド名のない自動車用バッテリー、ラジエーター(一部が体の右側から突出している)、小形の2ストロークディーゼルエンジンが収められています。このディーゼルエンジンはSCP-1914の背中にある燃料タンクと接続しており、背中のタンクより下の部位から出ているひもを引くことで起動できます。エンジンを稼働させることで生み出されたエネルギーは胸腔内に設置されたメカニカルポンプとベローズ(健康な人間における心臓や肺の機能を代替する)を動作させ、またバッテリーを充電します。このバッテリーはエンジンが稼働していない間これらの機能を継続させるために用いられます。エンジンが稼働している間、SCP-1914は意識を持ち、周囲の出来事を十分に認識しています。エンジンが停止している間は無反応となり、脳の活動はノンレム睡眠に似た状態になります。SCP-1914はその有機組織の健康を維持するために食料と水を必要とし、消化管によって生成される廃棄物は下腹部に設置されたタンクに放出されます。このタンクは太ももの間に位置するハッチを手動で開けることによって中身を排出しなければなりません。

SCP-1914は流暢な英語を話し、イギリスのバーミンガム地域に見られるアクセントの特徴を有しています。SCP-1914は自力で立ったり歩いたりするのが困難であるように見受けられます。バランス感覚を維持するのが非常に難しいと試験中に述べており、その上、右膝を曲げること、両足の指を動かすこと、右手の指を動かすこと、腕を肩より上に上げることができないようです。SCP-1914が補助なしで歩く速度は、杖を与えた場合でも最高で時速0.5km程度です。SCP-1914の首はこわばっており、全身を回転させずに顔の向きを変えることはできません。SCP-1914は20/60の視力を有し、また目の前で大声で話している人の声は聞き取れるが、嗅覚や味覚は持たず、周りの気温を感じ取れず、食料や水を与えられなくても飢えや渇きを感じず、有機組織が損傷を受けても痛みは感じないと述べています。

インタビューログ1914-1

回答者: SCP-1914

質問者: S.サメシュ博士

<記録開始>

サメシュ博士: あなたの名前を教えてください。

SCP-1914: 第29師団所属、ジョージ・[編集済み]伍長であります。

サメシュ博士: では、あなたは軍の人なのですね?

SCP-1914: 戦争中に志願いたしました、サー。

サメシュ博士: どの戦争です?

SCP-1914: もちろん、大戦です。全ての戦争を終わらせるための戦争です。

サメシュ博士: あなたは軍に入った時に何歳でしたか?

SCP-1914: 16歳でした。軍の募集係には21歳だと言いました。家族は怒り狂いましたが、私の友人はみな軍に入っていたので私も何かするべきだと思ったのです。

サメシュ博士: 今までにどういうことがあったのですか?

SCP-1914: 我々はソンムの敵拠点に向けて前進中でしたが、目の前にドイツ軍の砲弾が着弾したのです。あと数フィート近ければバラバラに引き裂かれていたでしょう。それでも足がほとんどちぎれてしまって自分では立ち上がることもできませんでした。日が暮れる前に味方が私を見つけて医療テントに運んでくれました。

サメシュ博士: そこでこのようなことが行われたと?

SCP-1914: いいえ。医師は自分にできるのは苦痛を和らげるためのモルヒネ投与だけだと言いました。従軍司祭が来て臨終の秘跡とかをしてくれました。

サメシュ博士: ではいつ行われたのですか?

SCP-1914: その日のうちに何人かの男が現れたんです。スーツを着たアメリカ人でした。彼らがしばらくの間医師と話しているのを見ていたのですが、すると中の一人が私を指さしたんです。彼らは私をストレッチャーに乗せて大型トラックに運びこみました。そして、私に向かって君は運がいいと言いました。

サメシュ博士: その人たちは何者ですか?

SCP-1914: 彼らは、自分たちはあるアメリカの企業の従業員で、政府の秘密プロジェクトに従事していると言っていました。

サメシュ博士: どういうプロジェクトでしょう?

SCP-1914: もう戦えなくなった兵士を引き取って、戦場に戻れるようにするというものです。彼らは私が死ぬのを見守るつもりだと言いました。それから生き返すつもりだと。

サメシュ博士: それで何が起きたのですか?

SCP-1914: 分かりません。私には死んだ覚えはありません。眠りに就いた覚えはあります。それで目が覚めた時...彼らはもう私の改造に取り掛かっていました。

サメシュ博士: 彼らは一度に全部の改造を行ったのですか?

SCP-1914: いいえ。数か月かけて少しずつでした。彼らは最初にエンジンとバッテリーを入れました。生命維持装置と呼んでいましたね。彼らは私を昏睡状態に置いていたので、目が覚める度にどこかしらが違うものになっていました。それから彼らは感染症にかかっていた所を切り取っては代りになる機械を入れ始めました。

サメシュ博士: あなたの皮膚がこんなに大規模に置き換えられているのもそのせいでしょうか?

SCP-1914: はい。たぶん壊疽を起こしていたのだと思います。当時はものすごく痛みました。少なくとも、今は痛くありません。

サメシュ博士: その当時は今よりも楽に体を動かせたのですか?

SCP-1914: そうでもないです。新しい足や腕は最初からまともに動きませんでした。彼らは私にもう一度行進や射撃のやり方を教えようとしましたが、私は銃を持つことすらできなかった。本当のところ、彼らは自分が何をやっているのか分かっていなかったのだと思います。医師たちの一人が私は試作品だと言っていました。連中は何をどうしたらうまくいくか私でテストをしていたんです。

サメシュ博士: 他の人もいたのですか?

SCP-1914: 時折見かけました。多分、数百人は。彼らのほとんどは私よりもひどい状態でした。

サメシュ博士: どういうことです?

SCP-1914: 彼らの大半は長くは持たなかったのです。時々エンジンを止めても大丈夫な様にバッテリーを機能させることができたのは私が初めてだと医師が言っていました。他の人たちは常にエンジンが動いていないと死んでしまうのです。私以上に元の体が残っていない人もいました。頭と胸のごく一部分だけにされてしまった人も見ました。

サメシュ博士: あなたの改造が終わった後、何があったのですか?

SCP-1914: ある日、彼らは私に言ったんです...政府がプロジェクトへの財政支援を停止したので研究は打ち切ることになったと。我が方の補給線を枯渇させないように完成品の燃料消費量を削減させることができなかったと。機動性を損なうことなく銃撃や砲撃に耐えられる重装甲を施すことができなかったと。照準や射撃をさせることすらできなかったと。苦痛を感じない無敵の戦士を求めていたのに、出来たものは身体障碍者の群れだったと。彼らは他の試作品たちを停止させながら、君も望むなら停止させるがと問いかけてきました。

サメシュ博士: あなたは何と言ったのですか?

SCP-1914: 停止させないでくれと頼みました。

サメシュ博士: なぜです?

SCP-1914: 怖かったからです。私は死にたくありません。

サメシュ博士: それから何があったのですか?

SCP-1914: 彼らは私を大きな部屋に置かれたガラスの箱の中に入れました。周りに何があるのかは見えませんでしたが、たぶんあそこはロビーか何かだったのだと思います。私が目覚めている時はいつも周りを人が歩いていました。私をじっと見ていることもあれば、全く無視して歩いていくこともありました。彼らはときどき私を停止させて修理を行い、また箱の中に戻しました。

サメシュ博士: 出してくれとは言わなかったのですか?

SCP-1914: 言いました。ですが、彼らは私を手放す訳にはいかないと言いました。私は他のどの試作品よりも長持ちしたので、彼らは私がいつまで動き続けるのか知りたがったのです。

サメシュ博士: その状況はいつまで続いたのですか?

SCP-1914: あなた方が現れて私をここに連れてくるまでです。どのくらいの時間がたったのかはわかりません。

サメシュ博士: いいでしょう。今日のところは私からの質問は以上です。

SCP-1914: 待ってください。お願いしたいことがあるのですが。

サメシュ博士: 何でしょう?

SCP-1914: 母と父に私は大丈夫だと伝えてくださいませんか?バーミンガム、第██[編集済み]通り、ジョン・[編集済み]夫妻。二人はきっと私が死んでしまったと思っているでしょうから。

サメシュ博士: 調べておきましょう。

SCP-1914: それと、あと一つ。

サメシュ博士: はい?

SCP-1914: 戦況はどのように?我が方は勝っておりますか?

<記録終了>

補遺: SCP-1914の肺のポンプにおいて損傷したバルブを交換する手術が20██年██月██日に行われ、その際に「マーク1再生歩兵:試作1916-317A プロメテウス研究所所有(特許出願中)」という文字がエンボス加工された金属板がポンプに取り付けられていることが発見されました。プロメテウス研究所と英国政府の第一次世界大戦中のつながりやその後の協力関係などについての調査は現在保留中です。

Footnotes
. 訳注: 日本で用いられる表記法に直すと0.3程度となります。
ページリビジョン: 4, 最終更新: 10 Jan 2021 16:16
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