クレジット
アイテム番号: SCP-187-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 一連のSCP-187-JP-Aは、サイト-81██の保管庫No.203に収容されます。新たなSCP-187-JP-Aが発見されるごとに収容番号を記したタブを取り付けてください。現在収容されているSCP-187-JP-Aの総数は382個です。SCP-187-JP-Aの持ち出しおよび実験は、レベル4以上の職員の許可が必要です。
SCP-187-JP-Bの収容方法は、現在確立されていません。SCP-187-JP-Aによる新たな被害者が発見された場合はクラスAの記憶処理を行い、かつ顔面の整形手術を施して解放してください。SCP-187-JP-Bが発見された場合、すみやかに終了されます。
説明: SCP-187-JP-Aは、チューブ型の容器と、それに入ったペースト状の内容物から成り、一般的な女性向け洗顔料に見えます。容器はピンク色で、表面には白抜きの文字で「新肌習慣! 薬用洗顔フォーム うるおい成分配合」と書かれています。裏面上部には「これ一本ですべすべ肌に!あなたの理想のフェイスを手に入れよう!」と宣伝文が記されています。その下には、「医薬部外品」「<ご使用方法>手のひらに適量を取り、水かぬるま湯でよく泡立ててから顔を洗い、その後充分にすすいでください」「<ご注意>お肌に合わないとき、また傷や湿疹など肌の異常がある場合は使用しないでください。刺激などが現れた場合は使用を中止し、医師の指導を受けてください」と記載されています。内容物の原材料や、製造販売元の記載はありません。最下部にはバーコードが記載されており、レジスターに接続した状態のバーコードリーダーで読み取れば「980円(税抜)」の価格が表示されますが、それ以外の情報は出力できませんでした。同バーコードは現在までJANコードに登録されていません。日本国内の商業施設6028店舗のインストアコードと合致しましたが、いずれも関係のない商品に使われていました。
SCP-187-JP-Aは、記載された方法に従って人間が使用したときに性質を現します。SCP-187-JP-Aで洗顔をし続けると、約1週間〜1か月ほどを経て、顔の形状を特定の女性の顔へと変化させます。SCP-187-JP-Aの使用を中断させることで顔面変化の進行を止めることができますが、1度でもSCP-187-JP-Aで洗顔を行った人間は使用し続けることに必ず強い執着を示します。被害者をSCP-187-JP-Aから隔離した場合、SCP-187-JP-Aの良い効果(ニキビが治った、肌にうるおいが戻ったなど)を延々と主張し続ける、SCP-187-JP-Aがないと自らの顔は醜く汚いままだと言って嘆く、といった行為を繰り返します。クラスAの記憶処理によって、このような行動は収まることが判明しています。
顔面が完全に変化した場合、被害者はどのような空間にいようとも前触れなく姿を消し、3時間後に、SCP-187-JP-Aを1つ以上抱えて同じ場所に現れます。現れた被害者は、性別関係なく女性らしい言動、態度を取るようになります。この状態になった人間は以後SCP-187-JP-Bと識別されます。SCP-187-JP-Bとなると、記憶処理をしても元の人格に戻ることはありません。SCP-187-JP-Bは自身を「女性向けコスメティック商品の販売員・ミヨコ」であると名乗り、他者にSCP-187-JP-Aを購入するよう盛んに勧めます。また、SCP-187-JP-Bの空間転移能力はSCP-187-JP-B自らの意志で発動出来ると予測され、このことが実験以外でSCP-187-JP-Bの長期的な収容を容認できない要因となっています。
なお、日本語を話すことのできない者が使用した場合もSCP-187-JP-Bに変化し、日本語を解するようになります。聴覚に障害を持った者がSCP-187-JP-Bとなった場合は、筆談によって会話が可能です。その際筆跡は元の人間と一致せず、女性的な字体となります。14歳以下の被害者は確認されていないため、言語・身体能力の未発達な幼児への効果は不明です。
最初のSCP-187-JP-Bは、2010/11/██、三重県██市のドラッグストア「██████ ██店」でSCP-187-JP-Aを販売していたところを財団エージェントにより拘束されました。周辺地域でSCP-187-JP-Aを購入し使用していた6人の被害者には、いくつかの安全な実験を試したのち、クラスAの記憶処理と整形手術を行い解放しました。彼らが使用していたものも含め、12個のSCP-187-JP-Aが回収されました。このとき他のSCP-187-JP-Bは見つかりませんでしたが、2011/03/██に鳥取県██市で2体のSCP-187-JP-Bと11人の被害者、25個のSCP-187-JP-Aが発見され、調査範囲は全国へ拡大されました。2014年07月末日時点で███体のSCP-187-JP-Bが確認されています。
補遺:
対象: SCP-187-JP-B
インタビュアー: 源口博士
付記:対象は元々、岐阜県██市在住の女性(当時32歳)でした。家族からの通報を受け、警察を介して財団に収容されました。対象は8つのSCP-187-JP-Aを所持しており、財団により「購入」という形で押収されました。
<録音開始>源口博士:こんにちは、SCP-187-JP-B。
SCP-187-JP-B:はじめまして、お客様。それと、わたくしのことはどうぞミヨコと呼んでくださいな。
源口博士:いいでしょう。ミヨコさん、あなたに名字はあるのですか?
SCP-187-JP-B:ええ、もちろん。ですが、お客様とより親密にお話させていただくことで、お客様個人に合った商品を提供させていただくのがわたくしたちの役目ですから。ぜひとも気軽に下の名前で呼んでいただきたいのですわ。
源口博士:どうしても名字は教えていただけないのですね。
SCP-187-JP-B:だってその必要がないじゃありませんか。そうでしょう?
源口博士:しかし可能な限り、私たちはあなたのことをもっとよく知りたいのです。
SCP-187-JP-B:わたくしのような一介の販売員のことはどうでもいいじゃありませんか。それよりも、わたくしどもの商品をぜひ知っていただきたいわ。
源口博士:私たちがあなたから買った、あの洗顔料のことですね。
SCP-187-JP-B:ええ、ええ、それだけじゃございません!我が社はお客様の多様なお悩みに応えるべく、日夜様々な商品を開発し、ご提供しておりますのよ。
源口博士:たとえばどのような?
SCP-187-JP-B:お客様にご購入いただいた洗顔料などのケア商品をはじめ、化粧品や香水など、美容に関わるものは多数ご用意しておりますわ。それから、近年はサニタリー用品にも力を入れておりますの!女性がより輝ける社会を目指して、出来うる限りのお手伝いをさせていただくのが我が社の使命と心得ております。もちろん、男性向けの商品もご用意できますし、お客様にもぜひお試しいただきたいわ!
源口博士:なるほどよく分かりました。あなたは、あの洗顔料の効果についてご存じなのですか?
SCP-187-JP-B:もちろん!わたくしも日々愛好しておりますもの。この歳になってもニキビに悩んでいたわたくしですが、あの商品に出会ってすっかりよくなりましたのよ。男女関係なくご使用いただきたい、我が社のヒット商品なんです!
源口博士:私が聞いた報告では、あの洗顔料を使用した人は皆、顔が一様に変化するそうなのですが。そう、ちょうどあなたそっくりに。
SCP-187-JP-B:......あら、わたくしの肌をお褒めいただけるなんて嬉しい限りですわ!このようにもっちりと滑らかな肌になるのがあの商品の特徴で......
源口博士:そうではありません。あの洗顔料を使用した人は、あなたとまったく同じ顔になるんです。そして中身も「ミヨコ」という化粧品販売員になりきるのです。あなたもその犠牲者だということを覚えていますか?██ ███さん。
SCP-187-JP-B:......申し訳ございませんが、お客様はどなたかとお間違いになられてるんじゃないかしら?わたくしは化粧品販売員のミヨコ自身ですのよ。この仕事に就いて20年、他の職に就いたことはありませんし、他の名前を騙ったことだって......
源口博士:その「仕事」なのですが、あなたはいったいどこの化粧品会社に勤めているのですか?あの洗顔料には販売元など一切かかれていませんでしたよ。あの商品は、どこの、どういう会社が、何を材料に、造っているんですか?
SCP-187-JP-B:そのようなことはこの際関係ないじゃございませんか!(興奮したように声が裏返る) わたくしどもは、こうして、お客様のために有益な商品を......
源口博士:私だったら、販売元も分からない商品を信用したりしませんね。あなたがどうしてあれを使ってしまったのか甚だ疑問です、██ ███さん。別の「ミヨコさん」に唆されたのですか?
SCP-187-JP-B:ですから、わたくしは██という名前ではございません!わたくしは、わたくしは......(すすり泣く声)
源口博士:やはりどう訊いても無駄なようだ。インタビューを終了する。
<録音終了>
(SCP-187-JP-Bはインタビュー後に終了された。女性の家族にはクラスBの記憶処理をしたのち、女性が食中毒によって死亡したというカバーストーリーを関係者に流布させた。)
メモ:薬の投与も催眠療法も拷問もまったく意味を成さない。せめて会社名が分かればまだ追及の余地があるのだが。それと、より多くのSCP-187-JP-Bが潜伏している可能性と、同社の別の商品が出回っていることも考えられる。早急な調査を申請したい。-源口博士
対象:Dクラス職員(男性、当時45歳)にSCP-187-JP-Aを使用させSCP-187-JP-Bとし、実験。
実施方法:GPSを装着させたSCP-187-JP-Bに、SCP-187-JP-A以外の商品を購入したいと要望。
結果:SCP-187-JP-Bは、具体的にどんな商品を所望しているのか実験研究員に尋ねた。研究員は予定されていた通り「リップクリーム」と答えた。SCP-187-JP-Bは答えを聞くと実験室から消失し、GPSによる追跡は途絶えた。15分後に、先刻と同じSCP-187-JP-Bが出現。リップクリームと思われるスティックを2種類所持しており、1つは無色、もう1つは赤色で、どちらも保湿効果があり、定価は690円であると説明した。2つは財団によって購入された。SCP-187-JP-Bは実験後に終了された。
メモ:SCP-187-JP-Bがどこから「商品」を持ってきているのかは今回も判明しなかった。近いうちにリップクリーム型のオブジェクトが追加されそうだな。それにしても、顔は若い女なのに身体はおっさんのままってのは、見てて妙な気分だ。-鳥山研究員
対象:2体のSCP-187-JP-B
実施方法:SCP-187-JP-A未所持のSCP-187-JP-B同士を会わせ、反応を観察する。
結果:1体が実験室から消失。収容違反として、事前に取り付けたGPSにより、消えたSCP-187-JP-Bの追跡を試みる。当初GPSの反応は途絶えていたが、約1時間後にサイト-81██近くの薬局店内に反応を確認。確保・再収容された。再収容されたSCP-187-JP-Bは新たに3つのSCP-187-JP-Aを所持していた。2体のSCP-198-JP-Bは実験後に終了された。
分析:SCP-187-JP-B同士を引き合わせることは今後推奨しない。収容することがあっても個々を隔離するように。-源口博士
対象:2011年11月28日よりDクラス職員(男性、当時28歳)にSCP-187-JP-Aを使用させ、SCP-187-JP-Bとして別の実験を予定していた。SCP-187-JP-Aの使用を始める前日、他のDクラス職員との些細な争いによって、彼の頬には1か所の引っ掻き傷が出来ていた。
結果:3日ほどで傷のあった部分がめくれ上がり膨張して、人間の唇のような形状に変化した。その後使用を続けさせた結果、傷口を中心に皮膚・血管が寄せ集まるようにして増幅し、まぶたや鼻のように見える突起を形成したが、どれも完全ではなく、位置も正しくなかった(例として、「唇」の下部に「鼻」が形成されるなどした)。眼球や歯、骨とみられる組織も形成されかけていたが、当初予定されていた実験が望めなくなったことから使用を中止させた。Dクラス職員は抵抗を見せたため終了された。
メモ:注意書きはちゃんと読めってか。くそったれ。-鳥山研究員
20██/██/██:「ピンク色のパッケージ」という共通点と、「インタビュー記録187-4におけるSCP-187-JP-Bの発言」を根拠に、鳥山研究員によってSCP-332-JPとの関連性が指摘されました。確認実験のため、今後新たにSCP-187-JP-Bを発生させる案について実行許可を申請します。-源口博士