クレジット
アイテム番号: SCP-1817-JP
オブジェクトクラス: Euclid Ticonderoga
特別収容プロトコル(2017年改定): 毎年8/13に死亡済みの職員を対象とする盆棚をDクラス職員に作成させ、芸術部門の協力を経て作成された精霊馬を2体以上、その他の飾りつけと共に供えてください。この際、財団関連施設の維持費・研究費の一部を、御仏前、または御霊前として盆棚に供えてください。SCP-1817-JPの発生期間終了時に供えられた金銭は回収し、財団関連施設の維持費・研究費に再使用してください。
SCP-1817-JPの発生期間中、財団のWebクローラーを用いて、その年のSCP-1817-JP-Aに変化する可能性があると思われる精霊馬の写真・映像を発見次第、投稿者を特定し精霊馬の回収後、記憶処理を施して下さい。
回収された精霊馬、および芸術部門によって作成された精霊馬がSCP-1817-JP-Aへと変化した場合、8/15の日本時間22:00、Dクラス職員1名にマイク付きの小型カメラを装着させた上で睡眠薬を服用させ、SCP-1817-JP-Aと共に個室で就寝させてください。8/16、映像記録の確認後、当記録を芸術部門所属の職員と共有し来年度の8/13に、SCP-1817-JP-Aへと変化する精霊馬を作成させてください。
財団の保有する全ての施設は毎年8/13に死亡済みの職員を対象とする盆棚、および可能な限り多くの精霊馬を作成し適度な装飾と共に供えてください。この際、財団関連施設の維持費・研究費の一部を、御仏前、または御霊前として盆棚に供えてください。SCP-1817-JPの発生期間終了時に供えられた金銭は回収し、財団関連施設の維持費・研究費に再使用してください。
財団のWebクローラーを用いて、インターネット上のSCP-1817-JP関連と思われる書き込み・写真・映像を発見次第削除してください。その後、投稿者へのインタビューを行い記憶処理を施して下さい。
説明: SCP-1817-JPは毎年8/13〜8/16の間にかけて、主に東日本の家庭等を中心として低確率で発生する一連の現象です。SCP-1817-JPの発生する条件として以下の点が挙げられます。
- 浄土真宗以外の仏教宗派を信仰している。
- 盆棚を作成しており、適度な装飾を施している。
- 最低1000円以上の金額を御仏前、および御霊前として盆棚に供えている。
- 精霊馬を1体以上作成し、盆棚に供えている。
SCP-1817-JPの異常性は段階的に進行し、大きく分けて4段階に分かれます。以下は異常性の段階、発生日、および内容です。
段階 | 発生日 | 内容 |
---|---|---|
第1段階 | 8/13 | 御仏前・御霊前として、備えられた金額の一部が消失する。 |
第2段階 | 8/14 | 第1段階の発生を確認した家庭のうち約10%で人目の無い状態になった場合、供えられた精霊馬が自発的に移動し(この個体をSCP-1817-JP-Aと呼称)、徐々に象っている存在と同様の挙動、行動を見せる。 |
第3段階 | 8/15 | 日本時間22:00以降、SCP-1817-JP-Aが付近で就寝中の人物1名(以降、対象)に接近・接触し、SCP-1817-JP-A、および対象が消失する。 |
第4段階 | 8/16 | 日本時間07:00までにSCP-1817-JP-A、および対象が再出現する。この際、対象は消失している間の記憶を正確に保有しておらず大抵の場合、夢を見ていたと錯覚する。また、この時第1段階で消失した金額が増額して再出現する場合がある。 |
以下はSCP-1817-JPの第3段階目における対象、およびSCP-1817-JP-Aの行方を調査した際の映像記録です。
映像記録1817-JP-1 - 日付2008年8月15日
対象: 酒本研究員
付記: 8/14、酒本研究員の自宅に設置されているペット用監視カメラに、盆棚に供えていた精霊馬がSCP-1817-JP-Aに変化したことが記録されていたため、8/15〜8/16の間、消失している際の対象の状態をマイク付きの小型カメラを用いて調査する。なお、この間SCP-1817-JP-Aと対象は簡易的な収容室に配置されている。
<記録開始>
[映像が暗転する。数分後、競馬場の内部と思われる映像が映し出される。対象の周囲には人型実体(SCP-1817-JP-Bと呼称)が数百名単位で存在している。]
酒本研究員: ここは一体?
SCP-1817-JP-B: どうした?浮かない顔をして。
酒本研究員: おっと、失礼。気がついたらここに来ていたので。
SCP-1817-JP-B: ははっ、面白いこと言うな。ここに来たってことは、レースを見に来たんだろ?
酒本研究員: レース?
SCP-1817-JP-B: なんだ、違うのか?まぁ、折角だから見ていけばいいさ。
[数分後、通常の馬と同等の大きさまで巨大化したSCP-1817-JP-A群8体それぞれが、SCP-1817-JP-Bを搭乗させた状態で発馬機に並ぶ]
酒本研究員: あれは?何が始まるんですか?
SCP-1817-JP-B: 何をそんなに不思議がっているんだ?普通にレースが始まるだけじゃないか。
[会場内に男性の声で、レースの開始を知らせるアナウンスが鳴り響き、発馬機からSCP-1817-JP-A群が一斉に走り出す。同時に周囲のSCP-1817-JP-B群が歓声を上げる]
アナウンサー: さぁ、スタートです。今年もこの時期がやって参りました。年に一度の大一番、我先にと先頭に躍り出たのは3番ボンキューボン。細長い足を活かした見事な滑り出しです。後に続くは7番ショーリョーマ、5番ヨメクワズ、1番ヘッヂマイヤー。ボンキューボンの後ろに陣取りチャンスを伺っております。後方集団ラストに備え脚を溜めているのは、8番プリティーナース、6番レディマキュリー、2番ズッキーセカンド。少し遅れて小柄の4番キューウーリンが続きます。
[中略]
アナウンサー: 最終コーナーに差し掛かりました。おっと、ここで一杯になってしまったのでしょうか?ボンキューボンの脚色が衰え始めています。この瞬間を待っていましたとばかりに、全員がスパートを掛けます。ボンキューボンの独壇場が今崩されました!ショーリョーマ、ヨメクワズが並んで走るその後ろ、ズッキーセカンドをはじめとした後方集団が着実と距離を詰めています。そして最後尾に一杯になったボンキューボン......なんということでしょう。キューウーリンの姿が見当たりません!どこだ、どこにいる?
[会場内のSCP-1817-JP-Bがざわめき始める]
アナウンサー: そこにいたっ!なんとズッキーセカンドの陰に隠れていたではありませんか!その小柄な体格を活かし、他の馬を風除けに利用した結果なのか、速度・スタミナ共に余裕を残した力強い走りです。そのまズッキーセカンドを抜くか......抜いた!これぞ本当のごぼう抜き!4番キューウーリン、最下位から見事に差し切りました。1着でゴールです!
[会場の各SCP-1817-JP-B個体がそれぞれ歓喜や悲泣の声を上げる]
アナウンサー: 誰がこの結果を予測できたでしょうか?予測不能な展開もまた、この祭典の醍醐味であります。
SCP-1817-JP-B: いやぁ。今年もいい勝負だった。あの4番凄かったな。
酒本研究員: あの4番......いや、偶然かもしれない。
SCP-1817-JP-B: どうしたんだ?
酒本研究員: いえ、ただあの4番と騎手に少し見覚えがあるような気がしたもので。
SCP-1817-JP-B: 気になるなら、ウィナーズサークルに行って確かめればいいんじゃないか?
酒本研究員: そうすることにします。それでは失礼しますね。
[賞典台に移動する。SCP-1817-JP-B(以降、便宜上SCP-1817-JP-B-1と表記)がこちらに気付き近づく]
SCP-1817-JP-B-1: おや、君は?なるほど。これは██が作ってくれたのかな?
酒本研究員: 何故それが私の作った物だと?それに私の名前をご存知で?
SCP-1817-JP-B-1: そう聞かれてもな。君のことはよく見てきたから、ってこれじゃ理由にならないか。
酒本研究員: 私を見てきた?あなたは一体?
SCP-1817-JP-B-1: おっと、このままだと誰だかわからないね。
[SCP-1817-JP-B-1の容姿が老人へと変化する]
SCP-1817-JP-B-1: これならどうかな?
酒本研究員: えっ、あなたは。
SCP-1817-JP-B-1: 驚くのも無理はないけど、そろそろ時間みたいだね。██、改めてどうもありがとう。君とこうして話すことが出来てよかったよ。
酒本研究員: ち、ちょっと待ってください。
[映像が暗転する。数分後、収容室の天井が映し出される]
<記録終了>
追記: 記録終了後、酒本研究員に当記録を視聴させ、SCP-1817-JP-B-1について質問したところ、老人化したSCP-1817-JP-B-1は、生前の曽祖父と酷似していたことが判明しました。
補遺1: 2010年8月16日、インターネット上のSCP-1817-JPに関すると思われる投稿のうち、「精霊馬が破壊されている」といった内容の書き込みが多く見られました。添付された画像には、後ろ半分が消失している・叩き潰されている、といったものが多く見受けられ、中には「精霊馬が消えた」という書き込みも数件ありました。また、その後3年間SCP-1817-JP関連の書き込みが確認されなかったことから、SCP-1817-JPの異常性が消失、あるいは変化したものだと考えられており、特別収容プロトコルの見直しが審議されました。
補遺2: 2013年8月14日、1件のSCP-1817-JP-Aの目撃情報の書き込みが確認されました。SCP-1817-JPの異常性の変化の有無を確認するため投稿者、および当SCP-1817-JP-Aの作成者である荻野氏に簡易的な事情聴取を実施後、記憶処理を施しSCP-1817-JP-Aを回収しました。その後、映像記録1817-JP-1と同様の方法で8/15〜8/16の間に起きる現象の調査をしました。以下は当時の映像記録です。
映像記録1817-JP-2 日付2013年8月15日
対象: 渋山研究員
<記録開始>
[映像記録1817-JP-1と同様のため省略]
渋山研究員: 記録通りの会場に出ました。しかしながら、競馬場という感じはしないですね。
[競技場と思われる映像が映し出される。SCP-1817-JP-Bが数百体存在している]
渋山研究員: SCP-1817-JP-Aの姿は現在確認できません。
[1体のSCP-1817-JP-B(以降、便宜上SCP-1817-JP-B-2と表記)が前を通りかかる]
渋山研究員: すいません、少しお伺いしたいのですが大丈夫でしょうか?
SCP-1817-JP-B-2: おう、どうしたんだ?
渋山研究員: 変なこと聞くかもしれませんが、ここは競馬場で合ってますよね?レースはいつ頃始まるのかと思いまして。
SCP-1817-JP-B-2: 競馬場だぁ?さてはアンタ、2年前のこと知らないな?
渋山研究員: 2年前に何かあったんですね?もし宜しければ教えて頂けませんか?
SCP-1817-JP-B-2: いいぜ。始まるまでもう少し時間が掛かるだろうからな。
渋山研究員: 感謝します。
SCP-1817-JP-B-2: 毎年今頃の時期さっきアンタが言ったように、ここでは競馬が行われていたんだ。あの日もいつものように、選抜された馬たちが参加していたんだ。だがその中の一体に問題があってな。
渋山研究員: 問題ですか?
SCP-1817-JP-B-2: あぁ、どうやら「面白そうなやつを見つけてきた」とか言い出した奴の申請しが通ったやつなんだ。その年の審査員も物珍しさから、すんなりと許可を出したそうだ。
渋山研究員: どのようなものだったのですか?
SCP-1817-JP-B-2: なんといってもまずデカかった。軽く会場にいた馬の十倍はあったな。そして動き出したと思えば、他の馬に対して攻撃を始めたんだ。巨体から繰り出される攻撃に、普通の馬が耐えられるはずもなく......まぁ、大騒ぎだったよ。
渋山研究員: なるほど。それで次の年は開催されなかったと?
SCP-1817-JP-B-2: 年に一度の催し物だぞ、しない訳がないだろう?ただ、レースはしなくなったがな。
渋山研究員: と言いますと?
SCP-1817-JP-B-2: バトルだよ。
渋山研究員: はい? 馬同士で、ですか?
SCP-1817-JP-B-2: いや、あの時のように、珍しいもの、強そうなものの中から選抜された奴等を戦わせようってなったんだ。
渋山研究員: あぁ、どおりで。それでどうしてそうなったんですか?
SCP-1817-JP-B-2: どうしてか、そりゃあアレだ。
[3秒の沈黙]
SCP-1817-JP-B-2: ここにいる全員、あの時の暴れっぷりに魅せられたんだ。アンタも男なら分かるだろ?力と力のぶつかり合い......そこに浪漫があるんだ。血が騒ぐというか、これこそ俺達が求めていたものだったて思ったんだよ。
渋山研究員: そうですか......
[男性の声でアナウンスが流れる]
アナウンサー: みなさんお待ちかね、今年も熱く燃える季節がやって来ました!今回は巨大な兵器同士の戦いとなり、両者とも架空の兵器との情報が入っています!一体どのような兵器が登場するのか?予測不能の戦いが今開幕です!
[周囲のSCP-1817-JP-B群が歓声を上げる]
SCP-1817-JP-B-2: おっ、始まった。今回はどんなやつが来るのか楽しみだな。
アナウンサー: さぁ、試合を始めていきましょう!走る姿はまるでバイク、颯爽と登場したのは移動要塞アドラナステア!うねる身体はまるで龍、天から舞い降りるのは機械龍ドッキューラだ!
[1993年放送のロボットアニメ『起動戦士Vヴィクトリーガンダム』の作中に登場する兵器を模したSCP-1817-JP-Aが2体出現。(バイク型をSCP-1817-A-1、龍型をSCP-1817-JP-A-2と記載)SCP-1817-JP-A-2は未知の原理で浮遊している]
アナウンサー: 両者共に様子を伺っています。先に攻撃を仕掛けるのはどちらなのでしょうか?おっと、アドラナステアが先に攻撃を仕掛けます!
[SCP-1817-JP-A-1に施されている爪楊枝で作成された砲身からレーザーのような光弾を発射する]
アナウンサー: ドッキューラ、狙いの的になる長い尻尾をいくつかのパーツに分解することによって見事に避けました!分離したパーツをそのまま動かし、四方八方から立体的な攻撃を始めていきます!
[中略]
アナウンサー: 試合も長引いて、どちらも既にボロボロです。空中から攻めるドッキューラが若干有利な状況でしょうか。おや?アドラナステアが変形し始めたぞ!
[SCP-1817-JP-A-1の前輪・後輪部分が二輪に分かれ、左右に90度開く]
アナウンサー: とっ、飛んだぁっ!アドラナステア、先ほどまでの地を走る姿から空を飛ぶとは誰が予想したでしょうか!突然の行動にドッキューラ、少し様子を伺っています。アドラナステア、みるみる上昇していく!
[SCP-1817-JP-A-1がSCP-1817-JP-A-2の遥か上空で停止する]
アナウンサー: ここでバイクの姿に戻りました。そのローラーの如く巨大なタイヤで押し潰そうとしているのか?ドッキューラに向かって落下を始めました!対してドッキューラ、身体中すべての砲口からアドラナステアに向けた砲撃が開始されます!
[SCP-1817-JP-A-2がSCP-1817-JP-A-1に向けて、全身の爪楊枝から光弾を発射する]
アナウンサー: ドッキューラの総攻撃に、アドラナステア全く動じません!恐るべしタイヤの耐久力です!ドッキューラ、全身を使い受け止めました!そのまま地面に落下していきます。そして遂に、ドッキューラ潰されたぁ!この瞬間、勝者が決まりました!激闘を制したのは、移動要塞アドラナステアです!
[SCP-1817-JP-A-1の艦橋部位から数十名のSCP-1817-JP-Bが会場内に向かって手を振り続ける。会場のSCP-1817-JP-B群が歓声を上げる]
SCP-1817-JP-B-2: 今年も見事な戦いぶりだった。さて、来年のテーマは何になるかな?
渋山研究員: テーマですか?
SCP-1817-JP-B-2: あっ、すまん。さっき説明するのを忘れてたな。選抜される条件として、出来映えはもちろんなんだが、テーマに沿ったものを選ぶことになってる。そうしないと、戦いが成立しないこともあるからな。もし見つからなかった場合、テーマは来年に持ち越して、その年は今まで通りに競馬を開くことになっている。
渋山研究員: なるほど。それで今回のテーマは、さしずめ巨大兵器といったところでしょうか?
SCP-1817-JP-B-2: あぁ、そんなところだ。
アナウンサー: それではいよいよ、来年度のテーマを発表したいと思います。
[会場が静寂に包まれた後ドラムロールが流れる]
アナウンサー: 来年のテーマは......『古代の生物』だ!名残惜しいですが、これにて終了となります!それでは皆さんまた来年、共に盛り上がりましょう!
[映像が暗転する。数分後、収容室の天井が映し出される]
<記録終了>
追記: SCP-1817-JP-A-1の内部に存在したSCP-1817-JP-Bのうち1名の容姿が、荻野氏の祖父の30代頃の容姿と酷似していることが後の調査で判明しました。また、2014年8月13日に当記録時の来年のテーマであった『古代の生物』をモチーフにした精霊馬2体を芸術部門に作成させて供えたところ、同年の8/14にSCP-1817-JP-Aへ変化したことが確認されました。当事象から3年間、その年のテーマに沿った精霊馬を作成し供えた結果SCP-1817-JP-Aになることが確認できたため、オブジェクトクラスの変更、および特別収容プロトコルの改定が行われました。