クレジット
─警告─
本報告書にはミーム的異常性を持った記録が含まれます。それらの閲覧には対ミーム処置"極夜"が必要です。
現在の本報告書にはミーム的異常性は存在しません。その為、閲覧に対ミーム処置は不要です。
アイテム番号: SCP-1808-JP
オブジェクトクラス: Euclid Neutralized
改訂前特別収容プロトコル: SCP-1808-JPの発生エリアやその周辺5kmの範囲(以下、範囲)は日本政府と協力してカバーストーリーを流布した上で隔離し、範囲内の非SCP-1808-JP-B住民を記憶処理後外部へ避難させます。範囲内は機動部隊す-138"米酒"が巡回し、許可なき侵入者を確保しクラスB記憶処理の上移送します。
SCP-1808-JP-Aの出現が確認された場合、調査担当職員以外のSCP-1808-JP発生エリア内にいる全職員は速やかにエリア外へ避難して下さい。SCP-1808-JP調査にはDクラス職員のみが割り当てられ、調査の際には調査担当職員と中継担当職員両名及び中継に立ち会う機動部隊隊員に対ミーム処置"極夜"が義務付けられます。万が一担当職員がSCP-1808-JP-Bとなった場合は、機動部隊す-138隊員によって中継が遮断され発生したグロリオサは即座に焼却されます。
特別収容プロトコル: インシデント1808-JP以降█年間SCP-1808-JPの発生が確認されないことから、SCP-1808-JPは無力化したものと判断されました。現在SCP-1808-JP発生エリア内にてSCP-1808-JPの発生原因の調査が行われており、詳細が判明した、或いは新たなSCP-1808-JP類似事象の発生の危険が無いことが確認された段階で、日本政府との協力の下SCP-1808-JP発生エリアの解放と住民の帰宅が行われる予定です。SCP-1808-JP-T-1原本はサイト-8123の電子保管庫に収容しており、全SCP-1808-JP-Tの内容は当該報告書に記録されています。
回収されたSCP-1808-JP-C-2と思われるイラスト。
説明: SCP-1808-JPは20██年〜20██年の間、旧暦で毎年01/06に神奈川県██市██にて発生していた異常現象です。SCP-1808-JP発生中には多数の異常実体が出現し、その大半がミーム的異常性を有していました。しかし、インシデント1808-JP(補遺3を参照)以降、SCP-1808-JPの発生は確認されていません。
SCP-1808-JP-Aは、20██/02/14(旧暦20██/01/06)に██中学校屋上から飛び降り自殺した██ 晴樹氏(享年14歳)に酷似している人型実体です。旧暦で毎年01/06午前8:30に同中学校屋上に出現し、当時と同様の自殺を実行しようと試みます。飛び降り後、地面にSCP-1808-JP-Aが接触する直前にその肉体は複数羽のハシブトガラス(学名: Corvus macrorhynchos)の見た目をした実体に変化、SCP-1808-JP発生エリアの上空へ飛び去った後消失します。SCP-1808-JP-AはSCP-1808-JP全事象の中で唯一意志疎通が可能ですが、その発言にはミーム的異常性があり、また現在までSCP-1808-JP-Aの自殺が阻止されたことはありません。
SCP-1808-JP-Bは、SCP-1808-JPやSCP-1808-JP-Tのミーム汚染を受けた複数の人間です。SCP-1808-JP発生時以外は、██中学校内にて常に笑みを浮かべながら着席または直立しています。この状態のSCP-1808-JP-Bとの意志疎通は不可能です可能ですが、SCP-1808-JP-Bの発言にもミーム的異常性が確認されています(補遺2を参照)。SCP-1808-JP-Aの消失直後、██中学校関係者であるSCP-1808-JP-BはSCP-1808-JP-C-2によって殺害され、それ以外のSCP-1808-JP-Bは例外なく恐慌状態に陥り同中学校から逃走します。SCP-1808-JP-BがSCP-1808-JP発生中に死亡した場合遺体からはグロリオサ(学名: Gloriosa)が複数輪出現しますが、SCP-1808-JP-C-8爆発と同時に消失、SCP-1808-JP-Bはミーム汚染される前の身体状態で██中学校に転移します。また、SCP-1808-JP-BはSCP-1808-JP発生エリア外に移動した瞬間肉体がグロリオサに変化しますが、SCP-1808-JP発生中に死亡した場合と同様、SCP-1808-JP-C-8爆発と同時に消失、██中学校に再出現します。
SCP-1808-JP-Cは、SCP-1808-JP-AやSCP-1808-JP-Bを除くSCP-1808-JP実体です。SCP-1808-JP-Aの消失後に出現または活性化し、SCP-1808-JP-C-8の爆発によって消失または不活性化します。以下は、確認されているSCP-1808-JP-Cの一覧です。
| 分類番号 | SCP-1808-JP発生時以外 | SCP-1808-JP発生時 | SCP-1808-JP終了時 |
|---|---|---|---|
| SCP-1808-JP-C-1 | ██ 晴樹氏の自宅に存在する、同氏の両親に酷似した腐敗しない縊死遺体。首にかかった縄から外すことは不可能である。 | 晴樹氏の母親と思われるSCP-1808-JP-C-1の肉体は、内部にヒトの血液を有するヒトの皮膚の袋へ、父親と思われるSCP-1808-JP-C-1の肉体は、ネモフィラ(学名: Nemophila)の種子へと約5分かけて変化。両SCP-1808-JP-C-1が完全に変化すると、直下の床からカーネーション(学名: Dianthus caryophyllus)が複数輪出現する。 | SCP-1808-JP-C-8爆発と同時に消失、SCP-1808-JP-C-1は縊死遺体に戻る。 |
| SCP-1808-JP-C-2 | ██中学校2-█教室を徘徊する、白いワイシャツと灰色のズボンを身に着けた身長約180cmの人型実体。頭部が通常のヒトに比べ横に長く歪んでおり、鼻が存在しない代わりに両目と口が顔面の約半分を占め、頭頂では数本の黒い物体が波打っている。右手に刃渡り70cmの包丁を持っており、左手首は確認されていない。SCP-1808-JP-C-2の行動を何らかの手段で妨害しようとした場合、妨害を試みた人物は不明な手段によって斬首され、妨害に使われた手段(生物・非生物問わない)は消失する。 | SCP-1808-JP-A消失直後、██中学校関係者であるSCP-1808-JP-Bを3分以内に全員斬首して殺害する。その後約10分間██中学校校舎内を徘徊した後、SCP-1808-JP発生エリア内の徘徊及びSCP-1808-JP-Bの殺害を開始する。この時SCP-1808-JP-C-4〜6の被害に遭った例は確認されていない。 | SCP-1808-JP-C-8爆発後、徒歩で2-█教室まで戻る。 |
| SCP-1808-JP-C-3 | 存在せず。 | SCP-1808-JP発生エリア内でのみ観測される、太陽に被さるようにして出現する16本脚のタコ(学名:Octopoda)に見える存在。SCP-1808-JP-Aが飛び降りた瞬間から約3秒かけて出現し、出現後は常に脚をうねらせる。地上からの具体的な距離は不明であり、現在まで干渉は成功していない。視認した場合、対ミーム処置無しでは即座に、対ミーム処置の上でも約5分程でミーム汚染されSCP-1808-JP-Bとなる。 | SCP-1808-JP-C-8爆発後消失するが、消失の瞬間を肉眼や記録媒体等によって確認する試みはいずれも失敗に終わっており、SCP-1808-JP-C-3には反ミーム性も存在する可能性が指摘されている。 |
| SCP-1808-JP-C-4 | 存在せず。 | 全長約30mのハクトウワシ(学名: Haliaeetus leucocephalus)、26羽。SCP-1808-JP-Aの消失後にSCP-1808-JP発生エリアの東側から出現し、時速360kmで飛行しながら腹部より約1000°Cの岩石を落とし続ける。この時、SCP-1808-JP-C-4から半径100m以内に入った街灯の先端はトランペットのような形状に変形し、SCP-1808-JP-C-3と同様の強いミーム汚染力を持つ、不規則な音を発生させる。 | SCP-1808-JP-C-8爆発後、その副産物と同時に消失する。 |
| SCP-1808-JP-C-5 | 存在せず。 | SCP-1808-JP-Aの消失後██中学校前の大通りに覆い被さるように出現する、最大全長1kmのウツボカズラ(学名: Nepenthes rafflesiana Jack)の捕虫袋。内部には、消化液ではなくアルコールが貯まっている。生存しているSCP-1808-JP-Bは例外なく内部に避難しようと試みるが、SCP-1808-JP-C-6の炎によってSCP-1808-JP-C-5が炎上する為、内部のSCP-1808-JP-Bは必ず死亡する。この時、内部で死亡したSCP-1808-JP-Bは青・赤・紫いずれかに変色し、グロリオサは発生しない。 | SCP-1808-JP-C-8の爆発後消失する。 |
| SCP-1808-JP-C-6 | SCP-1808-JP発生エリア内の██ 晴樹氏の自宅を除く、破壊耐性を有する住宅群。 | 表面が黄土色に変色しミーム的異常性を獲得、数棟が発火する。この炎の温度は約400〜約600°Cだが、金属やコンクリート等の、本来ならば着火しない材質も容易に延焼する。しかし、██ 晴樹氏の自宅やSCP-1808-JP-C-7に延焼することはない。 | SCP-1808-JP-C-8の爆発後、損傷や変色は全て消失する。 |
| SCP-1808-JP-C-7 | 存在せず。██中学校内部に出現する場合がある(補遺2を参照)。 | SCP-1808-JP発生エリア内のランダムな場所に出現する、頭部が玄米のようなものに置き換わった人型実体。ローリエが浮いているウイスキーの瓶を常に所持しており、SCP-1808-JP-Aの消失後に出現して以降SCP-1808-JPを寝転がりながら傍観する。この時、如何なる場所にいようともSCP-1808-JP-C-4〜6の被害に遭った例は確認されていない。 | SCP-1808-JP-C-8の爆発直前に不明な手段で発言した後、消失する。 |
| SCP-1808-JP-C-8 | ×ばつ900mmのスピーカー2台。 | SCP-1808-JP-C-6の炎がSCP-1808-JP発生エリアの約7割を燃やした段階で自律的に██中学校屋上まで移動し、上面からニワトリ(学名: Gallus gallus domesticus)の頭部が出現する。その直後、「マッシュルームにタバスコ降って」という男性の音声を流し、ネモフィラの花びらを撒き散らしながら爆発する。この音声を聞いた人間(SCP-1808-JP-B含む)は心臓が破裂し死亡、SCP-1808-JP-Bでなかった場合はSCP-1808-JP-Bに変化する。 | 爆発後、元の位置へ転移する。 |
SCP-1808-JP-TSCP-1808-JP-T-1は██ 晴樹氏の自室より回収された、同氏が製作したと推定される定型詩です。全34連で構成され、基本7・7・7・5音の形を取っており、隠喩が多様されているという特徴があります。また、現在SCP-1808-JP-T-1と同様の形式・性質の定型詩(SCP-1808-JP-T-2)が確認されています(補遺2を参照)。SCP-1808-JP-T-1及び2にはSCP-1808-JP-C-3以外のSCP-1808-JP実体よりも高いミーム的異常性が確認されており、対ミーム処置無しに閲覧した場合、対象は同様にSCP-1808-JP-Bとなっていました。SCP-1808-JP-T-1及び2はインシデント1808-JP後に異常性を喪失、第4連が追加されました(補遺3を参照)。
進め進めよ カラスの音と 落つるは地にや 御座すらむ
並びて笑う 愚民の衆に 過去の夢見が 咲き乱れ
最早忘れし 種と袋も カーネイションを 望む日か
海原太く うねるステレオ 太陽蛸を お出迎え二十六もの ハクトウワシが ラッパを鳴らし 流星群
愛と正義と 骨付き肉に 咲くグロリオサ 雄弁に
命飛び込む ウツボカヅラは ハエでも恐る 伏魔殿
「黄色巣箱ぞ ネメシス呑めよ」 味ローリエか? マイ火酒は枯れ野平たく 霜降り肉に 道々路肩 お焼香
青鬼赤鬼 紫芋を 飲むネペンテス 泥酔で
負けし太陽 忘れじ空に 鶏でも覚ゆ プレアーを
「我らサムライ 即ちニンジャ」 夢ネモフィラか? 汝が涙
調査担当職員: D-1808-JP
中継担当職員: ██研究員
実施方法: D-1808-JPにカメラを持たせ、SCP-1808-JP-Aの出現を確認した後SCP-1808-JP発生エリアに侵入させる。D-1808-JPと██研究員には事前に対ミーム措置"極夜"を行っている。
<記録開始>
<08:30:16> ██研究員: そちらの様子を見せてください、D-1808-JP。
<08:30:21> D-1808-JP: 了解しました。[カメラを██中学校へ向ける]
<08:30:23> SCP-1808-JP-A: [屋上に立っているのが確認できる]
<08:30:30> ██研究員: SCP-1808-JP-Aを確認しました。他に、何か変わった点はありませんか。
<08:30:38> D-1808-JP: えーと...。中学校から人が溢れてきてて、それから...[6秒間沈黙]太陽が、蛸になってます。デッカい蛸に。
<08:30:59> ██研究員: SCP-1808-JP-BとSCP-1808-JP-C-3ですね。では、SCP-1808-JP-C-3に目を向けないように、またSCP-1808-JP-Bに接触しないようにしつつ、東の方へ移動してください。
<08:31:17> D-1808-JP: [沈黙]
<08:31:25> ██研究員: ...D-1808-JP?
<08:31:37> D-1808-JP: ...あ、すいません。ぼーっとしてしまって...。[カメラを東へ向ける]東ですね、了解しました。
<一部省略>
<08:45:03> SCP-1808-JP-B群: [支離滅裂な発言をしながら逃げ惑っている様子が映る]
<08:45:08> D-1808-JP: ...発生エリア極東に到着しました。そこら中でSCP-1808-JP-Bが走り回ってます。
<08:45:20> ██研究員: なるほど。SCP-1808-JP-Cは確認できますか。
<08:45:27> D-1808-JP: [4秒間沈黙]SCP-1808-JP-Bが天を見上げてます。カメラを向けてもいいでしょうか。
<08:45:44> ██研究員: うむ...。構いませんよ。
<08:46:01> D-1808-JP: 分かりました。[カメラを上空へ向ける]
<08:46:03> SCP-1808-JP-C-4: [空中に出現する瞬間が映像に映る]
<08:46:18> ██研究員: [15秒間沈黙後]SCP-1808-JP-C-4を確認しました。では、一度SCP-1808-JP-C-4の方へ...
<08:46:24> D-1808-JP: 3足りない。
<08:46:31> ██研究員: ...え?
<08:46:33> D-1808-JP: おかしい、何故...。[カメラを放り投げる]
<08:46:36> SCP-1808-JP-B群: [約50体で、約500m先にいるSCP-1808-JP-C-5に貼りついている様子が映る]
<08:46:39> ██研究員: どうしましたか?D-1808-JP。カメラを回収して...。
<08:46:44> D-1808-JP: 何故だ。何故26なんだ。おかしい。あれは29の筈だ。いやそもそも26でも29でもないが、何故29ではなく26...いや、そうか。あれか、鉄か。鉄だからか。鉄は確かに26だな。うん、正しい。確かにそれはプレアーになる。
<08:47:09> ██研究員: D-1808-JP、聞こえていますか。
<08:47:15> D-1808-JP: ああ、分かっている。ハクトウワシ座星雲なんだろう。或いは、ドームの再来なんだろう。恐らくは。...嗚呼、ダメだ、あの日が来る。忌まわしきライスシャワーが来る。ネペンテスは。ネペンテスはどこだ。
<08:47:23> ██研究員: [声を荒げて]返事をしてください、D-1808-JP!
<08:47:25> D-1808-JP [SCP-1808-JP-C-5へと歩きだす]眼前にある橋の下にて、あれこそ蛸の踏み絵なれ。いざや行かんと足が動けば、老兵今日に語り継ぐ。
<08:47:36> ██研究員: ダメだ、行くな!アルコールでも入ったか、D-1808-JP!
<08:47:37> D-1808-JP: 2000年もの古書を崇めて、ゆくゆく先は金ゾンビ。明日の天気を伝えるならば、ここに犬共[判別不能]。
<08:47:48> D-1808-JP: [SCP-1808-JP-Bらと共にSCP-1808-JP-C-5の表面を登り始める]
<08:47:56> ██研究員: ふざけるな!現代の素晴らしき柴犬の世を何故誇りに思わない!頭の腐った枯れ桜に花が咲くとでも思うのか!この冷奴...。[肉体がグロリオサに変化]
<08:48:14> D-1808-JP: [SCP-1808-JP-C-5内部へと落下するのが映る]
<記録終了>
終了報告書: SCP-1808-JP終了後、██中学校の木工室にD-1808-JP-1、理科室に██研究員がSCP-1808-JP-Bとして直立していることが機動部隊によって確認された。
補遺1: ██ 晴樹氏の自室からはSCP-1808-JP-TSCP-1808-JP-T-1以外にも非異常性のイラストや文書が多数発見されています。以下はその一部です。
- SCP-1808-JP-C-2と思われるイラスト。タイトルは「わるいこおじさん」。
- SCP-1808-JP-C-3と思われる落書き。晴樹氏の自室の床や壁に赤いマーカーペンで多数描かれている。
- オスのカラスを主人公とした未完の短編小説。内容は[削除済]。
- 無数の黒い死という字で構成される似顔絵。同氏の母親を描いたものと思われる。
同氏のパソコンからは保守系・右翼系・反米系サイトへのアクセス履歴や書き込みも多く発見されており、また、メモリーからは旭日旗の画像が発見されています。このことから、SCP-1808-JP-TSCP-1808-JP-T-1は反米思想を歌った詩であり、SCP-1808-JP-C-3は旭日旗及び大日本帝国の象徴であると推測されています。晴樹氏のインターネット上の友人の証言により確定しました。以下は、証言に基づくSCP-1808-JP-T-1の解釈です。
天皇を導く八咫烏となった私は、地べたに落ちずに前へ進む
ただ笑うだけの愚民共は、妖怪にでも血の花を咲かせてもらうがいい
最早眼中にない両親も、未だに見返りを求めるのか
太平洋の向こうで歪むステレオタイプさえも、大日本帝国は飲み込むのだ鉄(26は鉄の原子番号の為)の鳥たる爆撃機が、警報と共に空襲を開始する
腐った正義の名の下に、死体に咲く炎の花が惨状を雄弁に語る
生存者が慌てて飛び込む川は、ハエでさえも近寄らない大パニック
「黄色い猿共の家々を復讐の炎で焼け」と言いながら、飲むウイスキーは勝利の味か?
空襲で平たくなった焼け野原に転がる大量の死体には、ウジが湧き焦げている
水死体を飲み込んだ川は、最早泥まみれでくたびれてしまっている
大日本帝国が敗れた日の空は青々と、土下座して詫びる人々を慰める
「耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ」と響く玉音、だが涙の中の王政復古の夢は如何なる場所でもかなうと、君は信じているか?
██市教育委員会の調査によると、入学から自殺まで同氏は担任教師やクラスメイトらによるいじめを受けており、また家庭では父親からの暴行と母親からの精神的虐待を受けていたとの証言が得られています。しかし、父親の暴行以外の立証は現在までなされていません。このことが同氏の思想に影響を与えたと思われ、SCP-1808-JP発生の一因となったと考えられていますが、真偽は不明です。
補遺2: 20██/██/██、██中学校内部を機動部隊隊員が調査していた際、同隊員が家庭科室に侵入した瞬間SCP-1808-JP-C-7が室内に出現しました。当時SCP-1808-JPは発生していませんでしたが、SCP-1808-JP-C-7は室内にて直立していた、かつてDクラス職員であったSCP-1808-JP-Bにウイスキーを約3秒間飲ませた後消失しました。この直後、このSCP-1808-JP-Bは同隊員に対し以下の内容を発言しました。録音のため発言を全て聞き終えた直後、同隊員がグロリオサに変化し以降SCP-1808-JP-Bとなったことから、この発言にはSCP-1808-JP-T-1と同様のミーム性があると断定され、SCP-1808-JP-T-2に指定されました。
大きな口を あんぐり開けた 邪智暴虐の 王共よ
十六の足 太陽蛸が 降ります今に お待ちあれ
旗槍パイン 三種の神器 集め過食の ウォーリーへ
胤ニューロンの 地に紅一つ 戦場に植う 竜胆をP.S.ですが 賞味期限は はるか昔の 桃源郷
脳天に落つ ぬるい沸点 最早小さな 子に在らじ
ぶくぶく太る 男人間 待っております 然れども
嗚呼玉砕の 大本営の ラッパの声は 未だ来ず
██ 晴樹氏の自室から回収された資料をもとに担当職員らが解釈を試みたところ、SCP-1808-JP-T-2は財団、ひいてはO5評議会への警告文であるとの結果が出されました。しかし、その過程で対ミーム処置を施していたにも関わらず█名がSCP-1808-JP-Bとなったことからこの結果の信憑性が疑われ、担当博士によるSCP-1808-JPのKeterクラス引き上げの申請は却下されました。
補遺3: 20██/██/██、SCP-1808-JP-Aの出現時に機動部隊す-138所属の██隊員が避難せず██中学校に残留、屋上へ上りSCP-1808-JP-Aに対話を試みました(インシデント1808-JP)。以下は、██隊員の携帯していたカメラに記録された映像記録の一部です。
<記録開始>
<08:30:13> ██隊員: [息切れ]...██ 晴樹くん、だな?君は。
<08:30:19> SCP-1808-JP-A: [2秒間沈黙後、隊員へ振り返って]何者だ。
<08:30:24> ██隊員: 私は██という、機動部隊の隊員だ。でも、まあ、そんなことは今どうでもいい。それよりも...君だ。君だよ。
<08:30:40> SCP-1808-JP-A: ...ぼく...。
<08:30:43> 隊員2名: [映像外から、██隊員を呼ぶ声と屋上の扉を叩く音がする]
<08:30:47> ██隊員: 一体、そんなとこで一体何をやってるんだ。危ないだろう。ほら、こっちへ戻ってこい。
<08:30:54> SCP-1808-JP-A: [沈黙]
<08:31:09> SCP-1808-JP-A: [首を傾げて]何が危ないというのだ?私は八咫烏、新しき神国へ愚かな民草と宰相を導く者だぞ。穢れた地べたになど血肉をぶちまける訳がなかろう。
<08:31:22> ██隊員: いや、違う。違うんだ。
<08:31:26> SCP-1808-JP-A: ...何だと?
<08:31:29> ██隊員: 君は、そんな大層なもんなんかじゃない。一人の、ごく普通の男子中学生でしかないんだよ。
<08:31:38> SCP-1808-JP-A: ...ふざけるな。私はそのような矮小な存在では...。
<08:31:43> ██隊員: 太陽蛸は決して君に微笑みかけなんてしない。皆に裏切られて視野が狭くなった君につけこんでいるだけだ。
<08:31:49> SCP-1808-JP-A: [沈黙]
<08:31:51> ██隊員: [深呼吸]
<08:31:58> ██隊員: いいか?旧暦は太陽蛸の時代にはとっくに廃止されていたし、ハクトウワシの数は29ではなく数百数千にのぼるし、ネペンテスで亡くなった人は炎そのものではなく酸欠や熱風に殺されたんだ。君は、インターネットを信じすぎている。
<08:32:16> SCP-1808-JP-A: [震えだす]
<08:32:17>██隊員: [SCP-1808-JP-Aへ右手を伸ばすのが映る。指先が小さな種となって溢れ落ちていくのが確認できる。]
<08:32:21> ██隊員: 君はまだ子供なんだ。誰も助けないからって、無理して背伸びする必要なんかどこにもないんだよ。
<08:32:30> SCP-1808-JP-A: ...僕は。
<08:32:32> ██隊員: [右手全体が種に変化]
<08:32:33> ██隊員: もう大丈夫。君は、カラスになんかならなくていいんだ。さあ、こっちに戻っておいで。
<08:32:41> SCP-1808-JP-A: [仰け反って]い、嫌だ!僕は、僕は、カラスに...![振り返り走る]
<08:32:46> ██隊員: 晴樹くん!
<08:32:48> SCP-1808-JP-A: [屋上から姿が消える。2秒後、衝撃音]
<08:32:51> ██隊員: [屋上の端へ駆け寄る。映像は屋上の下を映し、血を流したSCP-1808-JP-Aの遺体が確認できる]
<08:32:57> ██隊員: ...そんな、ああ、そんな...。[隊員の右手が再出現する]
<08:33:17> ██隊員: [上空を見上げ、映像にSCP-1808-JP-C-3が映る]...お前のせいだ。お前の...[声を荒げて]お前のせいで!
<08:33:25> 隊員2名: [鍵を破壊し、屋上に侵入]
<08:33:27> 隊員2名: おい、██!一体何を...。
<08:33:30> SCP-1808-JP-C-3: [漏斗が動き]頭より、終わりのラッパ、鳴り響き。この日にぞ、夢の狭間は、対消滅。
<08:33:41> SCP-1808-JP-C-2: [扉から屋上へ侵入し、SCP-1808-JP-C-3に向かって包丁を投げる]
<08:33:45> SCP-1808-JP-C-3: [包丁が刺さった後溶けだす]
<08:33:49> 全隊員: [屋上に流れてきたSCP-1808-JP-C-3に飲まれる]
<08:33:50> SCP-1808-JP-C-2: [カメラを拾い、それぞれのSCP-1808-JP-C群へと向ける]見届けよ、海苔油揚げ、昆布来る。閉じる時、終に我らは、斜陽なり。
<08:33:59> SCP-1808-JP-C-4群: [炎上しながら出現]29の、ハクトウワシは、幾千と。
<08:34:05> SCP-1808-JP-C-4群: [内部から破裂し、大量の岩石を散乱させる]
<08:34:07> SCP-1808-JP-C-5: [出現し、口を動かしながら]対岸の、グロリオサの手、今伸びる。
<08:34:13> SCP-1808-JP-C-5: [内部のアルコールを噴出させながらSCP-1808-JP-C-3に飲まれる]
<08:34:15> SCP-1808-JP-C-6: [窓や扉を伸縮させながら]猿を駆除、しかれど訳は、1ならず。
<08:34:21> SCP-1808-JP-C-6: [白く変色した後自壊し、SCP-1808-JP-C-3に飲まれる]
<08:34:23> SCP-1808-JP-C-7: [中学校前の大通りに立ち]さあ笑おう、美酒の味も、彼知らず。
<08:34:29> SCP-1808-JP-C-7: [ウイスキーをラッパ飲みしながら融解]
<08:34:31> SCP-1808-JP-C-8: [不明な場所から]玉の音も、彼の耳には、そも在らず。
<08:34:40> SCP-1808-JP-C-2: [カメラを自身へ向ける]
<08:34:43> SCP-1808-JP-C-2: さようなら。過去の夢見も、役終えり。
<08:34:49> SCP-1808-JP-C-2: [カメラを放り投げ、包丁で自身の腹部を突き刺すのが映る]
<08:34:53> [カメラがSCP-1808-JP-C-3に落下]
<記録終了>
終了報告書: SCP-1808-JP-C-3が融解し変化した液体はSCP-1808-JP発生エリア全域に流れ出し、10分後に消失した。その後SCP-1808-JP-AとSCP-1808-JP-C-1及び2は消失、全SCP-1808-JP-Bが覚醒した。SCP-1808-JP-Bとなってからの記憶を喪失していた為、全員にクラスA記憶処理を施し財団施設へ一時的に避難させた。カメラから距離が離れていた実体の音声も記録された理由は不明。
インシデント1808-JP後、SCP-1808-JP-T-1に以下の連が追加されました。この連は他の連と異なり5・7・5音の形をとっていますが、その理由は不明です。
捨てられた 瓶に詰まった 台本に
グロリオサ 咲き乱れんと 念ずれど
偽なる声 箱庭の中 反響し
ネモフィラは 嗚呼哀れなる シモツケか
然れども 我が空蝉に あなたがた
殻拾い 全ての禍根 火にくべた
ありがとう そしてここには カキツバタ
捻くれた 水槽割れて 蛸はなし
インシデント1808-JP後SCP-1808-JP-T-1及び2のミーム的異常性が消失したことを受け、担当博士の指示の下、回収された資料を参考にしてSCP-1808-JP-T-2とSCP-1808-JP-T-1第4連の解釈が試みられました。以下は、それぞれの解釈の結果です。
私の自死に唖然としている、残酷な教育委員会の面々よ
16の光条を持つ反米主義が、間もなくお前達にも芽生えるだろう
旭日旗、竹槍、手榴弾の3つを集め、貪欲なアメリカへ向かおうではないか
穢された子孫の脳内にも日章旗あり、さあ、正義を再び戦場へ追伸としては、国家の平和は既に十分堪能された過去の夢だ
洗脳され現状に満足する民衆には、最早リトルボーイでは足りない
しかし、私もまたファットマンの裁きを待ち望む心を捨てきれない
ああ、この箱庭が玉砕し訪れる終末は、未だやってこない
死後に残った詩に書かれていた、筋書きには
かつての戦火を復活させよう、という怨念がこもっていたが
偽物の自分の叫びが、██の町の中で虚しく響き
成功の夢は、哀れにも無為なあがきでしかなかった
しかし、私の無念の残渣にあなた方がやってきて
残渣を救い、全ての禍根が炎に消えた
ありがとう、そして、あなた方にも幸がありますように
捻くれた私の心に、最早「太陽蛸」はいない