アイテム番号: SCP-179
オブジェクトクラス: Safe Thaumiel
特別収容プロトコル: SCP-179は、現在知られている要注意団体(財団を含む)の力の及ばない状態のままでいます。全ての収容行動は、水星軌道内空間(cis-Mercurian space)及びそこを通り抜ける軌道を研究する目的の探査研究任務の阻止または妨害行動に加え、第三等級漏洩の隠蔽に集中する事になっています。
説明: SCP-179は太陽の光球の南極領域から凡そ40,000kmの距離に位置するヒト型実体で、太陽の自転軸上に固定されています。しかしながら、それはその軌道上を動く事はありません。SCP-179に対する最近の記録は、銀河の中心を周回する連続軌道を維持しているらしい事を示しています。
43年にも及ぶ不断の観測の結集として、SCP-179の外観は20代から40代の、未確定の人種民族群の人間女性であると限定されました。その身体表面全体は、くすんだ黒い物体で覆われているか、構成されています。頭髪はこの物質で構成されているように見え、その長さは34km以上であり、絶えず太陽風に押し流されています。しかしながら、SCP-179のこの部位は可変量の太陽光を反射するようです — この現象による反射によって、1940年代に財団の天体物理学者はその存在に気付きました。様々な模様あるいは刺青が身体の正中線の至る所に存在しています。その明るさから判断するに、これらの模様は金色で、且つ金属で組成されていると思われます。
刺青には、中世錬金術において太陽と太陽系の最内側から6つの星を典型的に意味するものと確認された幾つかのシンボルが組み込まれており、以下の順に並んでいます:
- 対象の額、髪の生え際の右下に金のシンボル。
- 鼻の下、両唇をぐるりと囲むように水銀のシンボル。
- 両鎖骨の内側端の間に銅のシンボル。
- 同年齢同体格の人間女性における心臓の位置と推定される場所に、解剖学的に正確な人間の心臓の形と共に[データ削除済 - 無修正レベルSC4 - 重要な認識災害を検知]
- 腹部上方に鉄のシンボル。
- 腹部下方にスズのシンボル。
- 骨盤のある辺りに最後のシンボルの一部分。この領域の解剖学的構造がはっきりとした観察を難しくしているものの、鉛のシンボルが会陰部内にかけて存在しているとの仮説が立てられています。
SCP-179は殆どの時間自身の腹部側を地球の方へ向けていますが、時折他の方向を見るという事も観測されています。[編集済]
[更なる全ての記録は管理警告ES-026により編集されました]
公文書警告
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5/179制限
████/██/██現在、SCP-179はThaumielに再分類されました。クリアランスレベル4/179以下の全ての関連職員は、現SCP-179研究主任の指示に従い、彼らの継続監視活動及び隠蔽活動に応じて、この新たな分類に適応するように昇進または異動する事となります。再割り当てを受けた全ての職員は再分類前にSCP-179に対し費やされた労働時間に応じて、POLYMATH-08記憶改訂療法またはクラスD記憶処理(過去10年内で最大限の後退効果をもたらす高純度の服薬量で)の対象となります。
SCP-179の存在は、軌道上誤情報発信型標準諜報妨害活動(Orbital Misinformation Standardized Intelligence Obstruction)と脅威除去作戦(Neutralization campaign)の対象となるでしょう。漏洩プロトコル4(項目4.5, 4.6および4.7)により、SCP-179関連文書の大部分はレベル4(最高機密)に分類されました。SCP-179に関連した更なる記録は何であれレベル5(Thaumiel)に分類され、許可された5/179職員にのみ限り利用可能となります。
通達: SCP-179研究資料に対する無許可のアクセスはタイプ3-B違反(最適包括クリアランス欠如状態での未認可記録の取扱い)と見なされ、即時の異動及び/または降格を伴う強制記憶改訂療法による処罰を受けます。
SCP-179は電磁スペクトラム内の全ての放射線に敏感であり、知性を持ち、無線やレーザー通信への混信などを含めた様々な異常手段による通信が可能です。これまでに財団職員とSCP-179との通信がただ一例だけ発生し、その際にSCP-179はフランス語に堪能であることが判明しました。この接触では財団及び財団の使命に対するSCP-179の意図を明示する結果には終わらなかったため、いかなる既知の要注意団体とSCP-179との接触を防ぐあらゆる努力が取られなければなりません。誤情報発信活動及びその他の先制行動が展開されています。
SCP-179によって行われた活動で記録されたものの大多数は、本質的に異常性の有無を問わず、地球へ衝突あるいは地球の軌道上へ侵入する地球外の脅威に関連があります。これらの脅威物は、地球に辿り着くことを妨害されなければ、大多数の人間社会や地球上生命に多様な影響を引き起こすCK-クラス再構築イベントを引き起こすことができるものと特定されました。財団職員による適切な行動や収容なしに地球への衝突や軌道への侵入が起こるならば、これら着目されるアイテムはXK-クラス世界終焉シナリオを引き起こす恐れがあります。
SCP-179は通常、着目されるアイテムに腕を指し向ける事によってそれ/それらへ注意を向け、複数の事象が存在する場合には、必要に応じて、解剖学的に自身の腕と同一な四肢を生みだすでしょう。調査記録からは、SCP-179は反応を示した各事象に特有の異なる行動 - 異なる指を挙げるか、一定の間隔でこれまでのところ判読できていないパターン配列で腕を動かす、といったような - を実行する事が示唆されていますが、これらの行動に何らかの情報が含まれているかどうかという事は、現在まで確定されていません。
SCP-179の探知能力の限界ははっきりとは明らかになってはいません。SCP-179は太陽系外縁領域(the trans-Neptunian region)の潜在的に有害な物体を探知できる一方で、それらの脅威は他の(大抵は財団管理下の)監視探査システムによっても探知されたか、少なくとも3つの異なった脅威については、地球から肉眼で見る事が出来ました。しかしながら、それらはすぐには脅威とは認識されませんでした。SCP-179は、的確にそれらの有害な性質を的確に断定できる一方で、他の観測者たちが探知できる状態である、太陽系内縁領域(the cis-Neptunian region)外に存在している活動的な脅威だけを探知し反応するのだろう、という仮説が立てられています。相当の破壊力を有している、太陽系内縁空間内に存在し地球に接近中のあらゆるアイテムは、失敗することなくSCP-179によって探知され、財団が把握済みの観測者がそれらに気付いていないという事が度々ありました。
従って、SCP-179及びその監視に専心する全ての職員、軌道上の機材と施設は財団が探知のために保有する最も信頼を置く早期警戒システムとなっており、可能な場合、調査対象の空間内の潜在的に危険な襲撃を防ぎます。SCP-179はどの惑星間物体が地球、人類及び地上の生物圏に対し脅威をもたらすか測定する事ができ、それは財団の複合型軌道上早期警戒システム(the Composite Orbital Early Warning System)(COEWS)プロジェクトの決定的な資産となっており、それには現在の所、SCP-███、SCP-████、SCP-██-████、そしてSCP-████、XCPOA-003から-042、サイト-34、サイト-103、サイト-98、エリア-08、サイト-██、サイト-███-█、█及び█、司令サイト-██、並びに異なる宇宙に留め置かれている数名の職員と宇宙探査に関わる国際コンソーシアムが含まれています。SCP-179と関連がある又はそれから得られる全ての重要データはCOEWS-179と記録され、全財団部門での最重要情報と見なされます。
補遺 SCP-179-01: SCP-179の目立った活動。
- <1940年12月13日> 最初に記録されたSCP-179の活動。両腕を交差させたままだった実体は、地球との衝突針路上にある、それまでには未検出だった惑星間物体の方へと片方の腕を挙げた。衝突後、大量の異常な粘液分泌と共に[データ削除済]市の広域に損害を与え、1300人以上の死者を出し、[先述の削除により編集済]と関連する異常現象と結びついた。中心部に残されたアイテムはSCP-███と再分類された。SCP-179は元の状態に戻った。
- <1942年09月22日> 6番目に記録されたSCP-179の活動。地球との衝突針路上の[編集済]の方へと片腕を挙げた。アイテムが1942年10月04日にニュージーランド、オークランドの近くに墜落した。アイテムは衝突に際し機械的特性を持つ幾つかの装置に分離した。最小の民間犠牲者とともに、[データ削除済]は下位構成物を最近形成した。[編集済]に再分類されたアイテムが適切に収容され、大多数の下位構成物が終了された後に、SCP-179は元の状態に戻った。機動部隊[編集済、資産に関わる全てのデータは記録から削除]は全ての残存する下位構成物の追跡と破壊を開始。
- <19██/██/██> 18番目に記録されたSCP-179の活動。実体は右腕を[データ削除済]の方へと挙げる。この日まで、実体は同じ方向の地点へ向け - 必要に応じてあちらからこちらへと動かして - 挙げた腕をその状態で保ち続けた。
- <1949年03月01日> 23番目に記録されたSCP-179の活動。実体はアモール型小惑星の方へ片腕を挙げ、それは地球との衝突針路を選択した。重力式曳航索として作動するリモコン式惑星間宇宙船を打ち上げるために、財団はいくつかのSCPオブジェクトを組み合わせて使用した。このミッションは1951年05月03日に成功が発表された。この時点で、SCP-179は元の状態に戻った。 注記: 要素の調査により実体は頷くような行動をみせた事に気付いた。Euclidクラスへの再分類要求が申請され、却下された。
- <1998年12月13日> 403番目に記録されたSCP-179の活動。実体は2日と13時間地球を見る事を止め、木星系の方を見る。この期間が終了後ただちに、SCP-179は再び地球を見た。
- <2002年09月09日> 487番目に記録されたSCP-179の活動。SCP-179の探査能力実験のためにエリア-08から打ち上げられた武装型タイプ-11次元兵器[XCP-11-DWの更なるデータはO5-11管理職指令により削除済]をSCP-179は指差した。██分には用意された構成となり、地上から推進実験を行う準備ができた。地表から3,670キロメートルまではSCP-179には気付かれなかったが、その時点でSCP-179は脅威として反応し指し示した。その後、装置はスタンバイ状態の構成に変更され、第一次目標であるカイパーベルトを移動中の[データ削除済]の方へと向き直った。SCP-179は元の状態に戻った。
- <2003年10月16日> ██████-2探査装置を通じてSCP-179との接触が成しとげられた。以降の活動は補遺 SCP-179-02として指定される。SCP-179はThaumielに再分類される。補遺 SCP-179-02参照。
補遺 SCP-179-02: 2003年10月16日事件。
秘密作戦に従事する██████探査装置を組み込んだ、複数の記録、分析、通信装置を備えた超小型衛星である██████-2探査装置にSCP-179は最初に接近しました。██████探査装置は██████-2探査装置と財団管理センサーとの中継として作動しました。
実体との接触及び通信は、予見も計画もなされてはいませんでした。SCP-179との視覚的接触が行われた時(いままでになく明確で、非常に高解像度な体表面の画像を得ました)、実体は唇を動かし始め、口語フランス語における挨拶の音素を形作りました。以下はやり取りの完全なる転写です。
SCP-179 / <17:34:23>: こんにちは。
SCP-179 / <17:39:38>: 私は見張り番。
SCP-179 / <17:42:38>: 私の名はSauelsuesor。私の兄弟の事が好きかしら? 私も好きよ。彼は大きい、とても大きいの。
SCP-179 / <17:43:01>: そしてとても暖かいの。
SCP-179 / <17:43:11>: もしも私とお話したいのなら、あなたの衛星を使って私に機織り話しかけて下さいな。(please use your satellite to weave-talk to me.)ここに来るよりも簡単でしょう。恐らくね。(実体は<17:55:53>まで動かないまま)
(SCP-179に割り当てられた研究員達がこの行動を発見する。SCP-179との間で起こり得るやり取りを遂行するために、[編集済]主任研究員によってフランス語に堪能なレベル3研究員トーマス・グラハムが選出される。今後██████-2探査装置は無線中継機として使用される。SCP-179は無線通信を受信し、理解し、送信する事が可能である。SCP-179からの通信は単調な、特色のないフランス語話者の人間の声として読み取れる。以降のやり取りでは各メッセージ間で8分半の遅れが発生し、これはSCP-179と地球間の距離と一致する。この事は以降の文章では省略する。)
調査員グラハム,T: あなたは誰ですか?
SCP-179: 私の名はSauelsuesor。私は見張り番。私は見守る。私はしばしば眺める。私はしばしば警告する。大抵の場合、私はそうしなければならない。そうすれば、もっと先まで生命が存在するわ。
調査員グラハム,T: どういう意味ですか、"見張り番"というのは?
SCP-179: 私よ。(微笑む)
調査員グラハム,T: 我々はあなたの行動の重要性に気が付いています。誰に伝えているのですか?
SCP-179: 何処を見るのか理解している人々へ。貴方達へ。見ようと欲する人々へ。貴方達だけじゃなく。でも貴方達にも。
調査員グラハム,T: あなたが兄弟と言う時、それは太陽の事を指しているのですか?
SCP-179: 彼は私の兄弟、Sauelよ。彼は私を暖めるわ。彼は優しい炎と愛の光。彼の声と彼の孤で彼は私を抱きしめて、私は生まれ変わるの。彼は全ての真実の光の源。彼は貴方達の源。
調査員グラハム,T: あなたは何処から来たのですか?
SCP-179: 私は子供として生まれたわ。(実体が地球を向いて頷く)
調査員グラハム,T: どの位の期間あなたは今居る場所に位置しているのですか?
SCP-179: 教えたくないわ。(微笑む)(SCP-179は、地球の方を見て[編集済]を指示したままで、胎児の姿勢を取る。実体の顔は██████-2探査装置から見える状態のまま)
調査員グラハム,T: どうやってその場所まで辿り着いたのですか? どうやってあなたは現在持っている能力を得たのですか?
SCP-179: 私は女性へと成長したわ。これが、今生きている私よ。
調査員グラハム,T: もう少し詳しく教えていただけませんか?
SCP-179: 嫌よ。
調査員グラハム,T: 我々はあなたについてもっと知りたいのです。どうして教えてくれないのですか?
SCP-179: 御免なさいね。私は貴方達の物ではないの。私は誰の物にもなる事が出来ないの。
調査員グラハム,T: 財団の任務は人類全て、地上の生命体全ての保護です。これは最も重要な使命だと思いませんか?
SCP-179: ええそうね。私はそれをやってるわ。私を見て、そして理解して。
調査員グラハム,T: 我々があなたの能力を正確に理解できたならば、あなたは今よりずっと上手くやれると我々は考えています。あなたが有する全ての情報を共有すれば、人類と地球に対する危険な脅威についてだけではなく、関連するあらゆるものに多大なる利益をもたらす事が出来るでしょう。
SCP-179: 私は大きすぎて、貴方達は小さすぎるの。ここには無の海と光の島がある。私はその海辺。貴方達の方へ怪物がやって来て。虚空の拳が打ち据える。貴方達の知識の先にいる切望の神々。私は見張り番。私はそれらの航跡の波紋を眺める。貴方達は私の見知ったことを、貴方達に、貴方達だけに教えることを望む。だからこそ貴方達は、貴方達だけがより大きくなれる。例え貴方達が見つけたとしても、それを抑えて、守りなさい。貴方達は私を手中に収めることを望む。それは私がここに居る理由ではないわ。貴方達の他にもいるの。貴方達以外のものを私は救ける。貴方達以外のものに私は警告する。貴方達の乾いたペーストの岩で出来た、灰色の薄い壁の向こうに居る誰か。貴方達の疲れた衛星の目が届かない所に居る誰か。故郷、私達の故郷の向こう側に居る誰か。私が知る誰か。私が愛する誰か。貴方達が気に掛けることのない誰か。先立って行った誰か。そして、貴方達が覚えてさえいない程昔に貴方達が自らの周囲に築き上げた、規則と骨と法則と肉体と記憶と誓いの矮小な壁の向こうに居る誰か、その全て。私が愛するものたち。心から。それでもやっぱり、私と対等なのは私の兄弟だけ。
調査員グラハム,T: 失礼ですが、私にはあなたの言う"我々以外の誰か"が何を意味しているのか理解できません。どうか、お願いします、他の言葉であなた自身のことを説明して頂けませんか?
SCP-179: (微笑んで)だけど私に残された言葉はないの。
終わりに: 数度の通信の試みにも関わらず、SCP-179は他に如何なる行動も他のメッセージを送る事もしませんでした。現在までの所、財団の如何なるコンタクトチームから送られる如何なるメッセージに対しても、既知の要注意団体の如何なる努力に対しても、SCP-179は反応を示していません。