アイテム番号: SCP-1739
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-1739はサイト-██に位置する収容セクター-██に収容されます。SCP-1739に対する実験計画は、O5評議会の承認を得なければなりません。収容セクター-██は常時監視されます。収容セクター-██内にいかなる人物が自発的に出現した場合でも、即座にO5評議会に通知されます。
SCP-1739の第一の異常効果の収容は、オペレーション・スモークスクリーンの下で実行されます。レベル4研究者が監督官としてオペレーション・スモークスクリーン全体の直接の権限を保有し、O5評議会に直接報告を行います。オペレーション・スモークスクリーンの詳細は監督官とO5評議会のみの機密扱いとします。
説明: SCP-1739はDell Latitude D800モデルのラップトップです。SCP-1739はあらゆる破壊の試みの影響を受けないことが確認されています。SCP-1739のハードディスクには"gofetch.exe"という実行ファイルが存在し、これを実行すると3つのウィンドウが立ち上がります。第一のウィンドウは、UNIXタイムスタンプ形式で日時の入力を促す入力フィールドを含んでいます。2004年1月1日の00:01:18 GMTから現在時刻までの日時が受け付けられ、これ以外の入力に対してはエラーメッセージが返されます。正しい範囲内の日時を入力した被験者は消失します。
第二のウィンドウは不明なチャットプロトコルのクライアントアプリケーションのように見えます。ユーザには自動的に"BranchPrime"のハンドルネームが割り当てられます。被験者の消失後、チャットクライアント上に"Isaac"を変形した形のハンドルネームを与えられた個人が出現し、コミュニケーションをとれるようになります。これらの個人は、被験者が入力したUNIXタイムスタンプの時刻へ時間転移したことによる、分岐した時間軸上の財団職員であることを主張します。被験者が自発的に出現するまでは、分岐した時間軸はあらゆる点においてこの時間軸と同等であると報告されています。この主張が正しければ、SCP-1739は被験者を2004年1月1日以降の過去に時間転移させる能力を持つことになります。
第三のウィンドウは犬小屋に繋がれた犬のCGアニメーションです。数字の入力が成功した場合、このアニメーションは、女性が犬を解き放ち、ボールを遠くに投げるものに切り替わります。その後、犬はボールを追って画面外に走り去ります。
3日から7ヶ月までの期間の後、"Isaac"はチャットから切断されます。この時点で、アニメーションは破裂したボールの残骸を咥えて走り戻ってくる犬に切り替わります。犬は画面外にボールの残骸を投げ捨て、女性は犬を犬小屋に繋ぎ直します。
SCP-1739は2004年1月1日、それまで利用されていなかった収容セクター-██に自発的に出現しました。
チャットログ1739-12
序文: 3週間前の2014年1月20日、10:30:00 PM GMTに、D-22314はその5秒前の時刻をSCP-1739に入力しました。"BranchPrime"は監督官であるレベル4研究者、█████博士です。
Isaac67: 黒き月は吼えているか?
BranchPrime: [削除済]
Isaac67: ならば、パスワード交換プロトコルは正常に動作している、ということか。
Isaac67: D-22314がこの時間軸に出現した後の、SCP-1739の解析結果を送信する。
Isaac67は███████.███をアップロードする。
Isaac67: 我々の研究チームはSCP-1739の解析結果を、D-22314の出現前のものと比較した。これらは同一だった。この時間軸のSCP-1739実体の変化が、自然なログアウトを引き起こしていると示唆するものは何もない。
BranchPrime: ふむ。
Isaac67: 同時に、実行ファイルの構造自体がそれを引き起こしている、という見込みはさらにありそうにない。そうだろう?
BranchPrime: そうか、何とも言えないが。
チャットログ1739-19
Isaac67: 黒き月は吼えているか?
BranchPrime: [削除済]
Isaac67: これはプロトコルに違反するが、それは問題ではない。おそらくそちらのO5はこれを検閲するだろうが、こちらのO5にも私を止める余裕はない。
BranchPrime: 何が起きた?
Isaac67: 答えは持っている。なぜ通信が非常に短い期間で切断されるのか分かった。まず1つ質問をしたい。
Isaac67: そちらの世界は終わりかけているか?
BranchPrime: 何を言っているか分からないが、答えは、いいえ、だ。私には、この世界が終わると考える理由がない。
Isaac67: その言葉が嘘でないことを祈る。
Isaac67: そうだ。私はその言葉が嘘でないことを知っている。
Isaac67: なぜなら、私はそうではないからだ。そして、どんな圧力や強制もこれを変えることはできない。そちらにしても同じことだ。
Isaac67: これで全てだ。O5評議会の所に行ってくれ。なぜ来たのか聞かれたら、この文書を見せてくれ。
Isaac67は█████████████.███をアップロードする。
Isaac67: 通信の切断の原因は、この宇宙の破壊だ。だが、こちらの宇宙が終わっても、そちらは終わらない。これが分岐点における相違だ。我々はこれが、人々を救命ボートに乗せること、沈みゆく船に置き去りにすることのどちらを意図していたのかは分からない。だが、後者の可能性がはるかに高いようだ。とにかく...
Isaac67: O5の所に行く前にその文書を読んでほしい。危険な兆候を探してくれ。宇宙が形を保つための特定のパターンがある。そして、宇宙の熱的死は序の口にすぎないことを私は知っているが、あなたは知らない。
後書: 3時間後、Isaac67は切断されました。
チャットログ1739-25
序文: D-22358を被験者として用い、再び実験が実施されました。
Isaac132: 黒き月は吼えているか?
BranchPrime: [削除済].
Isaac132: 私は、このオブジェクトの担当者としてこれほど悪い人選はなかったであろうことに気付いた。直ちに辞任することを強く勧める。
BranchPrime: 説明してくれ。
BranchPrime: そのように考えていると知って驚いている。
Isaac132: これを書くのに何杯もの水と、毎日のクラスF医療補助が必要だった。だが、それについては心配しないでくれ。できるだけ個人的に話そう。私の知識はあなたも既に持っているだろうから。
BranchPrime: 何が言いたい?
Isaac132: すまない。
Isaac132: そして、ありがとう。
BranchPrime: どうして?
Isaac132: とうとう、私は生命と存在の意味を見つけた。この宇宙全体はある特定の、恐ろしい目的のために作られたもので、私はその目的を達しようとしている。
Isaac132: SCP-1739は追放でも救済でもない。救命ボートと沈みゆく船の比喩... 以前に別の彼が提案したものは間違っていた。SCP-1739の使用が、これらの宇宙が破壊されるそもそもの原因なのだ。
Isaac132: 結局のところ、第三のウィンドウのアニメーションが鍵だ。それはこの黙示録の無遠慮な隠喩に他ならない。
BranchPrime: 何だって?
Isaac132: 説明しよう。
Isaac132: 私は計画に従った。私は危険の兆候を知った。私はそれを通して、終末がやってくるのを見た。それは自然現象ではない。あらゆる兆候は、我々を破壊しようとしているものが活動的な悪意であることを示しているようだ。それは時空を越えて獲物を追跡する。最後にどうなるかは見たことがあるだろう。前の実験で破壊された宇宙だ。
Isaac132: 犬が世界の終わりなのだ。この単語のどちらの意味でもだが、凄まじい。その影が通過するだけで全ての宇宙を破壊できるような不可解な何かだ。
Isaac132: だが、私は犬を犬小屋に繋ぐ誰かの存在も見ることができた。
BranchPrime: 待ってくれ。犬が繋がれているのだとしたら、その何が問題なのだ?
Isaac132: その質問についてはまだ分からない—答えるのに十分な時間があるかどうかも。とにかく、私が推測するに、鎖が弱すぎるか、犬が強すぎるか、または鎖を保持しておけないようなことがあるのか。
Isaac132: だが、財団も以前に同様の問題に遭遇してきた。だから、次に何が起きるかは推測できる。我々は、鎖によって完全に繋いでおけないようなものも収容してきた。オブジェクトが何かを仕出かすのを完全に妨げられないなら、オブジェクトが我々の課したどんな制限も回避する策を見つけてしまうなら...
Isaac132: つまり次善の策とは、制御された環境下で鎖を外して、重要なものを傷つけない場所でオブジェクトの異常性が発現するようにすることだ。
Isaac132: この場合、収容すべきオブジェクトとは犬だ。そしてSCP-1739は、同じ理由で運用される、非常に手の込んだ、特別に設計された取扱方だ。
BranchPrime: 理解できたと思う。
BranchPrime: 思うに、そのやり方はひどく胸糞が悪い。この装置は人々を過去に送って、分岐した時間軸全体を作成する...
BranchPrime: 注意を逸らすための犠牲として?何のために?
Isaac132: 「取ってこい」で投げられるボールは、犬のエネルギーを抑制するためのものだ。
BranchPrime: ああ。
BranchPrime: そうか。財団職員の一人として、私はそれに文句をつけることはできないということだな?
Isaac132: 財団職員でなくても、だろう。
BranchPrime: ...そうだ。あなたは正しい。結局のところ、私はとても利己的なんだ。
Isaac132: 仕方がない。それは重要なことではない。
Isaac132: SCP-1739によって未来からの時間旅行者が送り込まれることのない時間軸がどこかにある。そこの住人は狂犬があまりにも落ち着きなく成長することを望まない。そちらの財団とO5評議会が、その時間軸に存在することを願う。
Isaac132: 過去に人々を送るのを止めてくれ。
BranchPrime: 了解した。この情報はO5評議会に転送しよう。彼等がこれを問題にしなかったとしても、倫理委員会の意思はそうではないと確信している。
BranchPrime: どのくらいの時間が残されている?
Isaac132: もう僅かだ。
Isaac132: だが、私はこの生涯を忍耐強く過ごしてきたし
Isaac132: もはや慌て騒ぐつもりもない。
Isaac132: そちらからはかなり非現実的に見えるだろうがね?
BranchPrime: そうだな。
BranchPrime: ...私は羨ましいよ。
Isaac132: はは。
Isaac132: そうか、そいつは光栄だね。
Isaac132は切断された。
後書: この実験ログの評価から、O5評議会は█████博士を別のプロジェクトへ異動しました。倫理委員会による調査は継続中です。
補遺-1739A: オペレーション・スモークスクリーンは、SCP-1739が未来からの旅行者を出現させるのを妨げるために遂行中です。SCP-1739に関する主要な研究の焦点は、この取り組みに貢献することに当てられています。さらに、SCP-1739を用いて過去に被験者を送り込むあらゆる実験は、O5評議会により無期限に禁止されます。