クレジット
タイトル: SCP-1719-JP - 春7はるセブン
著者: StellationNova StellationNova & taiyousun taiyousun
作成年: 2025
アイテム番号: SCP-1719-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1719-JPはサイト-81██の植物保管室にて標準的植物栽培手順に従い管理してください。
説明: SCP-1719-JPはアイドルグループ「ハルノナナクサ」を自称する植物群です。SCP-1719-JPは7種類確認されており、それぞれSCP-1719-JP-1~7に指定されています。
SCP-1719-JPに共通する特徴として、以下の事項が挙げられます。
- 茎や葉を振動させることで日本語を用いた発話が可能です。試験によって、標準的な日本人女性と同程度の言語処理能力を持つことが判明しています。
- 標準的日本人女性と同等かそれに僅かに劣る程度の論理的思考能力および言語処理能力を持つことが試験によって判明しています。特に音楽などの特定の領域については標準より高い知識量が確認されています。
- 地中に埋まった根を運動させることで移動が可能です。特にSCP-1719-JP-6および-7については根毛を活発に運動させ、移動している様子が確認されています。
- 成長や老化の兆候が見られません。
- 刃物による切断などの方法で分割すると破片の内一つからSCP-1719-JPが復元されます。残りの破片は異常性を失います。
- 各々が固有の色をメンバーカラーとして使用していると主張しています。
SCP-1719-JPは以下の7種類で構成されています。
SCP-1719-JP-1: セリ
遺伝的および外見的特徴がセリ(Oenanthe javanica)と一致しています。常磐色(#006428)をメンバーカラーとしています。SCP-1719-JP内ではリーダーとして扱われており、決断力があると評されています。SCP-1719-JP-2: ナズナ
遺伝的および外見的特徴がナズナ(Capsella bursa-pastoris)と一致しています。萌葱色(#006D4D)をメンバーカラーとしています。SCP-1719-JP内では穏やかな性格であると評されています。SCP-1719-JP-3: ゴギョウ
遺伝的および外見的特徴がハハコグサ(Pseudognaphalium affine)と一致しています。松葉色(#3F7735)をメンバーカラーとしています。SCP-1719-JP内では包容力があると評されています。SCP-1719-JP-4: ハコベラ
遺伝的および外見的特徴がコハコベ(Stellaria media)と一致しています。柚葉色(#006543)をメンバーカラーとしています。SCP-1719-JP内では腕白な性格であると評されています。SCP-1719-JP-5: ホトケノザ
遺伝的および外見的特徴がコオニタビラコ(Lapsanastrum apogonoides)と一致しています。蒼色(#007655)をメンバーカラーとしています。SCP-1719-JP内ではややネガティブな性格であると評されています。SCP-1719-JP-6: スズナ
遺伝的および外見的特徴がカブ(Brassica rapa var. rapa)と一致しています。翠色(#007E66)をメンバーカラーとしています。SCP-1719-JP内では自信家であると評されています。SCP-1719-JP-7: スズシロ
遺伝的および外見的特徴がダイコン(Raphanus sativus var. hortensis)と一致しています。深碧(#005E15)をメンバーカラーとしています。SCP-1719-JP内では辛口で我が強いと評されています。
SCP-1719-JPはアイドルグループを模倣したかのような活動を行っています。具体的には、作曲活動、歌唱および振付練習、ライブ活動、サイン活動などが確認されています。特にライブ活動について、SCP-1719-JPらは他の植物に対してライブ活動を行っていると証言しており、実際にライブ活動を行う様子も確認されています。このような活動は「同系統のアイドルグループである『アキノナナクサ』に対抗する」ために行っていることがインタビューより判明しています。「アキノナナクサ」と呼称されている実体群はSCP-1719-JPに類似した異常実体だと推測され、その捜索が続けられています。
発見経緯: SCP-1719-JPは、2025年1月6日に群馬県高崎市内にて「歌っている草がいる」というSNS上の投稿を受け発見されました。当該投稿に添付されていた動画には、SCP-1719-JP群によるものと推測される歌声およびSCP-1719-JP群が根を用いた運動を行っている様子が確認されていました。派遣されたフィールドエージェントがSCP-1719-JPが存在すると推測される地帯において添付動画に記録されていた音声を流したところ、SCP-1719-JPが当該職員の前へ登場し、確保されました。
以下はSNSに投稿されたSCP-1719-JPを撮影した映像記録の書き起こしです。
付記: SCP-1719-JPは歌唱の練習中であったと推測される。歌唱していると思われる発言には♪マークを文頭に付与している。
<ログ開始>
SCP-1719-JP-1: ♪色は匂えるうちに
SCP-1719-JP-3,4,5: ♪咲かさにゃ損損!
SCP-1719-JP-1: ちょストップストップ!ナズナちゃんあなたもコーラスの番よ?!
SCP-1719-JP-2: ひぃ、すみません!飛んじゃいました。
SCP-1719-JP-1: もう、そろそろライブなんだからね。
SCP-1719-JP-3: そろそろ休憩します?前日くらい休んで英気を養いませんか?
SCP-1719-JP-7: 何言ってるのゴギョウ、パフォーマンスがウチらの売りなんでしょ?ギリギリまで高めるべきよ。
SCP-1719-JP-6: そうだそうだ!だいたい、もっと茎から声出さないと!
SCP-1719-JP-2: すみません......
SCP-1719-JP-1: はいはいスズナもスズシロもケンカはやめやめ!じゃあ気が済むまで練習するわよ!いいね?!
SCP-1719-JP-2: はい!
SCP-1719-JP-1: じゃあハコベのパートからいくよ、イチ、ニ、サン、ハイ!
SCP-1719-JP-4: ♪いつか枯れる花ならば
<ログ終了>
インシデント: 2025年1月8日にSCP-1719-JP-6及び-7が消失しました。SCP-1719-JPを収容している植物保管室内の監視カメラには言い争うような音声が記録されており、SCP-1719-JP-6,7が瞬時に消失する映像が記録されていました。以下はその映像記録の書き起こしです。
<ログ開始>
SCP-1719-JP-7: あんた、自分がしたこと分かってんの?
SCP-1719-JP-2: ごめんなさい......
SCP-1719-JP-7: 何?ごめんって。もうライブは終わったから取り返しつかないんだけど。
SCP-1719-JP-4: まあまあ、スズシロちゃん落ち着こうよ。気孔を大きく開けて深呼吸だよ。
SCP-1719-JP-7: あのさ、雑草は黙っといてくんないかな。私は今こっちの雑草に話しかけてるんだけど。
SCP-1719-JP-3: そんな言い方してはいけませんよ。過ぎたことを言ってもしょうがないじゃありませんか。
SCP-1719-JP-7: あんたもあんたでしょ、ゴギョウ。すぐ休憩しようとしたり、そんなんでアイドルとしてやっていけると思ってるの?私はそうは思わない。そんな甘さじゃ絶対ファンを満足させられないから。
SCP-1719-JP-1: スズシロ、反省会は結構だけど、ちょっと喧嘩腰になりすぎじゃないかしら。
SCP-1719-JP-7: そうかしら?年をとると意見交換と喧嘩の違いも分からなくなるのね。
SCP-1719-JP-1: 年上のアドバイスは聞いたほうが健全だと思うけど。年を重ねるってのはそれだけ場数を踏んでいるってことなのよ。
SCP-1719-JP-7: なんであんたが仕切ってるのか分からないわ、少し長く生きてたからってだけでリーダーになったあんたが。
SCP-1719-JP-1: 少なくとも今このグループのリーダーは私なのだから、あなたには私の言葉を聞く義務がある。
SCP-1719-JP-7: そう、じゃあこのグループをやめるわ。
[4秒間の沈黙]
SCP-1719-JP-1: 本気?
SCP-1719-JP-7: 一度でも私が本気じゃなかったことがあった?本気じゃないのはいつもあの雑草達だけでしょ。あんたみたいな薹が立った草と別れられて清々するわ。
SCP-1719-JP-1: あなたがアイドルに本気なのは重々承知してる。ただ、グループを脱退だなんて、正気じゃない。少し葉を冷やすべきだわ。
SCP-1719-JP-7: 生業は草の種って言うでしょ。別にここじゃなくとも、できることは沢山ある。そうねえ、これからは根っこで売っていこうかしら。
[2秒間の沈黙]
SCP-1719-JP-4: は、破廉恥だよ!
SCP-1719-JP-7: 自分の長所を生かすことの何がいけないのかしら?
SCP-1719-JP-1: このグループはそんな下品なことは認めない。私達は清楚で素朴な感じで売ってくのだから。
SCP-1719-JP-7: そう、あなた達は好きにすればいい。このグループと私はもう何の関係もないから。
SCP-1719-JP-3: そんな......これまで一緒に頑張ってきたじゃありませんか。
SCP-1719-JP-7: そうね、無駄な時間だったわ。あなた達みたいな雑草の戯れに時間を割くべきじゃなかった。その時間があったらもっと個人トレーニングできたのに。
SCP-1719-JP-2: ご、ごめん。もっとちゃんと練習して、踊りも間違えないようにするから止めないで......もっとがんばるから......
SCP-1719-JP-7: 謝らないでよ。別にもういいから。
[SCP-1719-JP-7が消失する]
SCP-1719-JP-5: ......どうしよう。私達、このまま解散しちゃうんだ......このまま堆肥になっちゃうんだ......
SCP-1719-JP-4: それは飛躍しすぎだよ!
SCP-1719-JP-5: だ、だって、私達の中でスズシロさんはトップクラスで人気があって、そのお陰で私達は見られていたんですよ。なのにスズシロさんがいなくなったら私を見てくれる人なんていないんですよ!このまま私枯れ草になるまで誰からも興味を持たれないんです!
SCP-1719-JP-3: そんなことないですよ。あなたにもちゃんとファンはいます。
SCP-1719-JP-5: でも......絶対に今よりは人気が落ちちゃいますよ......
SCP-1719-JP-1: それはそう。スズシロは魅力的なアイドルだった。脱退してしまったのは非常に悲しいし、グループにとっても厳しい状況ではある。でも、私達にもそれぞれ素晴らしい魅力があるの。今まで通りとは行かずとも、私達はきっとやっていける。これから6株で......
SCP-1719-JP-6: あのさ!
SCP-1719-JP-1: 何?スズナ。
SCP-1719-JP-6: すっごい言いにくかったんだけど!私もこのグループやめる!
[4秒間の沈黙]
SCP-1719-JP-1: なんで急に......
SCP-1719-JP-6: ごめん。私も根っこで売ってくことにしたの。
SCP-1719-JP-4: スズナちゃんまでそんなこと言って!
SCP-1719-JP-6: 本当にごめん。でも、スズシロちゃんに引き抜かれちゃったんだよ。文字通り。
<ログ終了>
インシデント後、残存していたSCP-1719-JPにインタビューを行った結果、SCP-1719-JP-6,7がグループを脱退したことが判明しました。また、脱退に伴い、SCP-1719-JP-6,7は瞬間的に消失したことが映像より確認されました。現在、消失したSCP-1719-JP-6,7の捜索が行われています。
当インシデント後、SCP-1719-JP間において会話や歌唱練習などの明らかな減少が見られます。SCP-1719-JPに対する個別のインタビューを行ったところ、将来への不安や脱退を防止できなかったことへの自責が見られ、特にSCP-1719-JP-1はグループの続行について苦悩している様子が確認されました。また、グループの解散を示唆する様子も確認されました。SCP-1719-JP-6,7がグループの脱退に伴って消失したことから、グループの解散が行われた場合、全SCP-1719-JPの消失が発生する可能性があります。これはSCP-1719-JPの収容違反または無力化を意味します。
現在、財団はグループの解散を阻止するため、SCP-1719-JPにサイト内の街路樹および職員に対してライブを行わせるプロトコル-サクラなどを計画しています。また、SCP-1719-JPが要求する物品はそれが許可された場合にのみ提供されています。オブジェクトクラスや収容プロトコルの変更について、議論が行われています。
追記: インシデントの発生から3日後、SCP-1719-JP間において以下の会話が行われていました。以下は植物保管室内の監視カメラの記録映像の抜粋です。
<ログ開始>
SCP-1719-JP-1: はい、みんな集合して。
SCP-1719-JP-5: セリさんどうしたんですか。ま、まさか解散の通告ですか。私達もうみんな用なしってことですか。
SCP-1719-JP-1: バカ言わないで。これからの方針よ。
SCP-1719-JP-2: で、でもどうするんですか。今までの曲は七株全員揃っていないと歌えない曲も多いですよね。これからも同じ曲が使えるのか怪しいですし、やっぱり続けるのは難しいんじゃないですか。
SCP-1719-JP-1: まあ落ち着いてちょうだい。一旦話を聞いて。まず、元々私たちのやりがいってどこにあったと思う?
SCP-1719-JP-4: やっぱりライブだよ。最初のライブとかなんだかんだ大盛況だったもんなぁ。いつやったんだっけ?
SCP-1719-JP-2: 最初のライブは森の中でやりましたよね。言われてみれば最近は街路樹とか人間とかばかりにやっている気がします。もしかしたら、私達の人気がなくなってきてるのかな......
SCP-1719-JP-1: 落ち着いて、ナズナ。まあいい機会だしさ。心機一転、新しいことやってみない?
SCP-1719-JP-3: 心機一転......何をするつもりなんですか?
SCP-1719-JP-1: 農業よ。
[3秒の沈黙]
SCP-1719-JP-4: 何言ってるのさ?
SCP-1719-JP-5: リーダーがおかしくなっちゃった......
SCP-1719-JP-1: 新規のファンを開拓するのよ。最近は背の高い客ばっかで見上げるのに疲れちゃったでしょ。私達の良さは何だと思う?
SCP-1719-JP-2: ......どこにでもいそうなところ?
SCP-1719-JP-1: まあ、言い方が悪いけどそうよ。私達の武器は素朴さ。今までは売り出し方が違ってたの。これからは売り出し方を変えていくのよ。即ち、ファンに母を感じさせるようなアイドルになるの。
[4秒の沈黙]
SCP-1719-JP-4: 本当に何言ってるのさ?
SCP-1719-JP-5: もうこのグループは終わりです。もう種子の中に帰りたい......
SCP-1719-JP-1: 私は閃いたのよ。ファンがいないなら、ファンを増やせばいいじゃない。私達が育ててね!
SCP-1719-JP-3: いいんですか、その......道徳的に。結構倫理的なラインを踏み越えていると思うんですけど。
SCP-1719-JP-1: アイドルが道徳説いてどうするのよ。
SCP-1719-JP-2: アイドルのことなんか勘違いしてませんか?
SCP-1719-JP-1: 何はともあれ、アイドルは農業をしてもいいのよ。私達は農業をしてファンを増やして、母を思わせるような母系素朴アイドルになるのよ。
SCP-1719-JP-3: 母系っていうか、育ての母ですけどね。
SCP-1719-JP-2: でも、どうやって育てるつもりなんですか?
SCP-1719-JP-1: 根っこで耕すのよ。私達はね、スズナやスズシロに比べて、根っこの太さなんかでは劣るかもしれない。でもね、あいつらよりも自由な根っこを持ってるの。見せびらかすだけが根っこじゃないってこと、見せてやりましょう。
SCP-1719-JP-4: スズナとスズシロに対する当てつけみたいな作戦だね。リーダー、やっぱり結構毒を吐くタイプだったんだ。
SCP-1719-JP-1: ......それは別の草でしょ!
[笑い声]
SCP-1719-JP-1: まあ、農業を始めることに異論があったら言って。今回の件は私がメンバーの意見をもっと聞いていたらこんなことにはならなかったと思うから、これからはできる限りみんなの意見を聞くようにするし、それを尊重しようと思う。
SCP-1719-JP-2: 私は、大丈夫です。農業......不安ですが、できるだけ足を引っ張らないようにします。
SCP-1719-JP-3: まあ......私は別に母系アイドルに異論はありませんよ。ハハコグサって名前なんですし......
SCP-1719-JP-4: まあ!なんとかなるでしょ!
SCP-1719-JP-5: 野垂れ死んで肥やしになるくらいなら......なんか育てた方がお得ですよね。
SCP-1719-JP-1: みんな、ありがとう......あいつらは知らないのでしょうね、雑草ってのはね、根っこが折れなきゃいくらでも生えてくるの。そして、私達の根っこはまだ折れてない......でも、いつか絶対、あの子達をあのグループに戻ってこさせる。このグループが5株だけなのは一時的、本当は7株なの、7株で「ハルノナナクサ」なんだからね。わかった?じゃあ、ハルノナナクサ、再スタートよ!
[複数の「オー!」という掛け声]
<記録終了>
以上の会話の後、SCP-1719-JPは財団に対して農業用の土地を要求しました。土地を提供することによって、グループの解散を回避することが可能であり、SCP-1719-JPの収容違反および無力化の阻止に繋がります。会議の結果、財団がSCP-1719-JPに対してサイト-81██の植物保管室の一部土地を貸与することが決定されました。また土地の提供の条件として、SCP-1719-JPが積極的に自身の収容に協力することを財団は提示し、SCP-1719-JP群は当該条件に対して同意を行いました。なおこの対応後の収容について、既存の特別収容プロトコルとほぼ同様であるため、プロトコルの変更は行われません。