SCP-1718
評価: +6

アイテム番号: SCP-1718

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 実験収容ユニット6852(以下ECU-6852)には収容違反防止の必要性から追加電源および冷却材が提供される予定です。2MWのECU-6852専用発電プラントが施設内に現在建設中で、今後10年間は不足しないと予測されています。

ECU-6852は、コア、ジャイロスコープ、水槽、そして上部構造の4つの要素から構成されています。

コアの中心部はアルミニウム-████████████合金製、厚さ12mm、半径1.63mの継ぎ目のない球状の殻です。この殻は、ロボット機材の周囲に遠心鋳造されました。機材は焼鈍および内部表面の反射率2017GLUまでの研磨を行った後、[データ編集済]により自己処分しました。機材はまた、内部気圧を0.5pPaまで減少させました。これは外気圧下におけるアルミニウム殻の収縮から間接的に計算されたものです。合金殻は各々が厚さ1原子分の同心のグラフェン殻654枚からなる緩衝材に囲まれています。この構造においては、現在製造されている物質のうち最も高い引張強度をもたらし、同時にジャイロスコープとは無関係に最奥の球体が静止し続ける、あるいは任意の軸、任意の速度で動作することを可能にする完璧な回転軸受として動作します。

コアはジャイロスコープの内部にあります。ジャイロスコープは厚さ2cm、重さ60.5kgの鏡面研磨された石英ガラス殻をもちます、これはふたつの半球からなり、内部表面を7nmのニオブで鍍金されています。ジャイロは1.95Kの超流動ヘリウム4水槽に流体力学的に浮遊し、地表との平行平面で回転しています。この温度ではニオブは超伝導であり、回転させることで磁場が発生します。

水槽は、ジャイロの加減速用の███████マグネティックドライブ("マグドライブ")が付属した劣化ウラン製円筒型デュワー、独立した断熱貯水槽、配管、計器類、および2.5MLの冷却材全体を循環させるための制御装置からなる上部構造内に設置され循環をおこなっています。権限をもつ職員は文書ECU-6852S、2-4巻で完全な回路図を閲覧することができます。

最奥の殻の極反射性の表面は█████████ ███████干渉により広い周波数範囲の入射放射線を抑制します。

過去の研究により、ジャイロスコープの磁場内でコア内部のグラフェン格子全体にわたる量子欠損が自然発生し、自発的に自己修復することが実証されています。計算によると、グラフェン殻は現在の温度および圧力において平均105±103の欠損をもつ準安定状態の複合材料として扱うことができると示唆されています。70Kでは、同質のグラフェンのサンプルは18MPaの持続的な圧力、4.2GPaミリ秒の衝撃に耐えるのに十分な強度をもっていました。温度が低下するにつれて、強度は指数関数的に上昇しています。

設計段階では、収容ユニットは内部の任意のSCPによる収容違反の試みの合間の待機状態でのシステムの維持に13.75kWを消費すると予測されていました。アクティブ時に、内部からの収容違反の試みによって費やされるエネルギーの大部分は超伝導磁界の巨大なロンドンモーメントから生じる真空の不確かさにより占められています。残りの部分はヘリウム槽で熱に変換されます。不定期なエネルギーの衝撃により、この変換は100ピコ秒オーダーで起こります。収容デバイスのレジリエンスは自動で維持される流量の最大値、および冷却材貯水槽の大きさによってのみ制限されます。ヘリウムが超流動状態にある限り、最大流量は他の極低温冷却材のそれよりはるかに多量です。プロトタイプは最大100kWの定格消費電力で、最大電力での動作に必要な10倍の量の冷却材を備えています。最悪の場合、財団が適正に利用可能な冷却材と電源のすべてを使用することで、デバイスは理論上fTpオーダーのプラズマ、およびチャンドラセカール反転限界の50%近い物理力を収容することができます。

基準としては、現在の収容プロトコルと収容違反歴から導出されたメトリクスに基づくと、SCP-076に匹敵する実体の無期限の収容に要するのは多くても17kWほどです。

デバイスは概念実証プロトタイプとして設計されたため、SCPが実際にどのようにコアの内部に置かれるかについて特段の注意が払われておらず、それについてはデバイスの後のバージョンで設計されるものと思われていました。

説明: SCP-1718は収容科学の限界を探るためにECRGによって実施されていたプロジェクトの間に発生したエネルギー異常です。

2009年1月から10月まで、ECRGは計算によるシミュレーション、サンプル製作、およびデバイスの要素の試作を行いました。

日付 イベント
2009年12月2日 ECRGが提案6852『████████████収容システム』を、アンドリュース、ヘドリー両博士を主要研究員としてO5研究小委員会に提出。
2010年2月23日 提案6852が承認され、予算が提供される。
2010年3月15日 コアの製造がサイト-06の22番ベイで開始する。
2010/3 グラフェンの成膜に関するイオン超音波処理技術が予定より早く確立され、4時間毎に新規成膜が可能となった際、プロジェクトのタイムラインが3ヶ月前倒しされる。
2010年11月7日 ジャイロスコープが111Kにおいて組み立てられる。これは33日間かけて77Kに冷却される。
2011年2月2日 劣化ウランデュワー鋳造中の産業事故により建設が3週間中断する。ヘドリー博士を含むスタッフ4名が死亡。
2011年8月5日 上部構造が完成する。ジャイロがデュワー内に組み込まれ、初期冷却材として76Kの液体窒素を利用する。
2011年9月1日 冷却材温度65K。ジャイロスコープの流体力学的回転が0.3rpmで始まる。
2011年10月31日 冷却材9.3K、回転数52rpm。ニオブが超伝導転移を起こし、コアがほとんどのセンサーに対し不浸透となる。
2012年1月2日 冷却材8K、回転数72rpm。マグドライブが初めてジャイロの流体力学的加速の支援のために起動される。
2012年2月6日 冷却材7K、回転数104rpm。サイト-12近郊での重大な地震性イベントで、使用予定のヘリウム4を濃縮する分離式システムが破裂を起こす。研究員1名が死亡、スタッフ2名が重傷を負う。ジャイロは当該イベントおよび余震を通じて安定している。
2012年5月17日 コア回転数112rpm。スタッフが窒素冷却材と4Heとの置換を始める間、温度が5.2Kで固定された。
2012年10月18日 十分な純度の4Heで冷却を再開。115rpm。
2013年1月3日 4Heが2.17Kに達し、摩擦のない超流動状態に転移。予測通り、流体力学的加速はもはや動作していない。

水槽が超流動になると、マグドライブが24時間にわたり150,000rpmを目標としたジャイロの加速に使用されました。このプロセスは予測より57分早く完了しましたが、それ以外に問題はありません。冷却材の温度は安全マージンを与えるために更に1.6Kまで下げられました。この回転速度において、相対論的効果がニオブ殻の反対点間に起こる動的カシミール効果の特殊例を引き起こし、設計通りコアに[データ編集済]を照射することで収容プロトコルを完了します。電力、温度、およびジャイロスコープの安定性においてほとんどの計器の測定上限に近いか超過し、少なくとも設計公差より2桁大きいことが計測により実証されました。

2月1日に無関係の認識災害イベントが発生し、アンドリュース博士はやむを得ずクラスBの記憶処理を施されました。彼はプロジェクト6852のすべての知識を含む5年間の記憶の喪失を余儀なくされました。すぐにプロジェクトの考証への再専念と彼の部下による再教育がなされましたが、彼は彼が以前に開発した科学および工学技術についての特有の技能を取り戻すことができず、それどころか収容システムの設計に関する幾つかのキーコンポーネントの妥当性に対し深刻な疑義を呈しました。

本来のプロジェクト計画では、ECUは90日間のバーンインが予定されていました。研究チームが主要研究員両名を事実上失ったという事実に鑑み、収容実験は成功扱いとされ、35日間の通常運転のみでの早期(2月8日)のデバイスの機能停止が開始されました。計画では5日間かけて1.6Kの定温で0.3rpmへ減速することが求められ、その後4ヶ月で77Kへ上昇させたのち、コアが取り出されて負荷および破砕不良の検査が行われることになっていました。

マグドライブが反転して7時間後も、ジャイロに著しい減速は検出できませんでした。回転を監視するSQUIDの診断テストでキャリブレーションドリフトが発生していることが判明し、ジャイロが予想より遥かに速く回転している可能性があると示唆されました。

記憶処理後の最初の見解では、アンドリュース博士は元の設計解析では無視されていたコリオリ効果が無摩擦のジャイロを1ヶ月以上自由に加速していたと理論付けていました。しかしながら、これが基礎物理学を正しく適用したものなのかに関して研究助手たちの間で相当な意見の相違がありました。もし正しいならば、ジャイロの表面上の点は計算上0.1cに近い速度をもっていたことになります。O5研究小委員会の指示により、マグドライブの出力が回転を遅くするために最終的に100倍まで引き上げられました。減速を続けて55時間後、リキャリブレーションされたSQUIDは回転速度が352,000rpmを下回ったのを検知することができました。

17時間後、回転速度が153,000rpm(当初の設計速度に近い)まで低下した際に、不測かつ原因不明の4He水槽への熱の流入が検知されました。自動システムが目的通りに補填を行ったことで、総消費電力(マグドライブを除く)が13.74kWから14.15kWに増加し、一切の温度上昇を防いでいます。マグドライブの出力がただちに元の計画の水準に下げられました。次の1時間にかけて、マグドライブがジャイロスコープを本来の目標回転数をわずかに上回る152,000rpmまで減速させた際に、電力消費は14.89kWに上昇しました。小さいながら、1.15kWの消費電力の差はコア内部では理論上TNT換算で1キロトンを超える持続的爆発力に相当します。

収容違反のリスクなしにさらなる研究を可能にするために、十分な注意のうえでマグドライブは回転数を152,000rpmで安定し続けるよう調整されました。これ以来、安定化に必要な電力は一日あたり約500W増加し続けています。

設計理論が正しければ、消費電力の現在の水準はコア内部が0.7メガトンの連続爆発力に相当する力あるいは温度であることを意味します。

補遺A:

ECRG提案6987『1/10スケール ECU-6852 研究モデル』が追加されています。アンドリュース、スメンク両博士が主要研究員です。

補遺B:

これをもって提案6987は却下された。プロトタイプに関しては、財団は最善を尽くすつもりだ。すなわち、ECU-6852はこれをもってSCP-1718に指定される。では諸君、次の議題に移ろう。

- O5研究小委員会

Footnotes
. gloss unit、光沢の単位
. 上から見て時計回り
. 訳注:回転する超伝導体が発生させる磁場。
. 訳注:システムが変化を吸収して正常な機能を保つ能力。
. 2.17K以下
. プランク温度の10-15倍、およそ1017K
. the Experimental Containment Research Group、実験収容調査班
. 訳注:物体の加速度運動に伴って量子真空から光子が生成する現象。
. 訳注:機械類の使用開始前に行われる慣らし運転。
. 訳注:超伝導量子干渉計(superconducting quantum interference device)。極めて感度の高い磁気センサー。
ページリビジョン: 5, 最終更新: 21 Feb 2024 12:25
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