SCP-1644-1
アイテム番号: SCP-1644
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1644への監視活動のために拠点-126が設立されています。SCP-1644の人里離れた立地を考慮し、当区域の500m圏内に見えた者は考古学的発掘作業地域という名目にて引き返させるものとします。SCP-1644による影響活性化区域内の発掘は全て必ず無人ロボット使用下で行い、これらの操縦は拠点-126から為される事とします。
説明: SCP-1644はエジプト[編集済]近郊に位置する異常地区です。SCP-1644を構成する当地区は、遺跡から見つかった碑文によるとおおよそエジプト古王国時代頃の一連の遺跡群です。
SCP-1644地区内での主たる異常影響は遺跡の中央にあるオベリスク周辺で発生し、当オベリスクを以降SCP-1644-1と呼称します。高さは柱の中央部で丁度47.16mであり、接近した人間はその全員が極めて強い嫌悪感を訴えます。志願者によるSCP-1644-1の47.16m以内への接近は、全員が接近中にその意欲を全く失う事により全て失敗しています。武力行使により強制した接近も失敗していますが、この方策での調査は行われるべきではありません。この域に物理的に強制進入させた者は強烈な不安感に襲われ、可能な限り速やかにこの影響域から抜け出そうと努めます。即座に脱出するより他の何らかの動作をして見せるよう説得する試みは全て失敗に終わっています。SCP-1644の活性域に進入するよう、拒否に対し刑死も含めての処罰に至るまでの苛烈な脅迫は、このような処罰行為を自身に行わせた時、または他者に同行させ処罰行為を行わせた場合ですら、進入を拒み続けるために失敗しています。
SCP-1644-1のオベリスク各面にはそれぞれ同一の碑文が刻まれています。元の象形文字から翻訳すると、SCP-1644-1の碑文は『(判読不能)の手は其の死を越え伸びる。』と読み取れ、各面同じ単語が判読不能であり、未だ断定ならぬこの単語を判別する試みが進行中です。
碑文全体は以前『Ba-Kaの手は其の死を越えて伸びる。』と読み取れ、この名は紀元前2500年代のエジプト第四王朝のファラオの名(ギリシャ語名ではBikheris)であり、トリノ王名表によるその治世期間は先代をカフラー、後代をメンカウラーとされます。現在のエジプト学分野におけるBa-Kaの情報は、財団から移入された考古学者達により隠匿されるよう試みられています。古代エジプト人による当初の消去を免れたBa-Kaに関する初期文書や他の情報源は、Ba-Kaの情報を消去すべく改めるかあるいは置き換えるかされています。SCP-1644の碑文にある彼の名は全て消し取られています。Ba-Kaについて論及する既知の情報源全ての獲得または消去を、SCP-1644封じ込め手段として考慮するものとします。
SCP-1644内の遺跡に在った多数の人工物に異常な性質は見られません。これらの人工物はサイト57歴史遺物課に現在保管中です。
予定内発掘作業の最中、象形文字で書かれたパピルス製の巻物群がSCP-1644の北西部で発見されました。これらの巻物は研究員達により、以下その相応しかろう年代順に編成されています。当巻物群の内容はSCP-1644の監督官による審査の後、機密に属すると判断されました。SCP-1644に関するクリアランスレベル4未満の職員で、これらの巻物について知り得た者にはクラスB記憶処置が執行されました。巻物の内容は以下に翻訳されています。
人民の御霊にして生命たる真の王Ba-Ka万歳。 神々が我らに微笑み掛ける時、欺瞞の玉座に着きし偽王メンカウラーは、真の王への道開くため打ち倒されるであろう。人民は真の王に背けて向き直されたが、我らは偽王の嘘をぬぐい去るのだ。
我らは日の没する地に遠く離れて最後の拠点に留まる。偽王はこの場所を見つけぬだろう。
王は進む道を見出すために数多の最も強大なる魔術師達を結集したのである。偽王にあらずば神職の力に立ち向かう事が出来るのだ。我らの業を非難せしめた偽信の者は、その異端の影響を蒙るであろう。真の王を褒め称えよ。彼の名は栄誉の中に生き、彼の治世はその邪悪を打倒した故に永久に記憶される事だろう。
王の最大の魔術師たるHekuhirkopshefが御前に出、何事かを進言した。彼の魔術書にある何かが御前への道を保持すると主張する。他の魔術師達は彼を信頼しないが、彼の見識を否定出来ず、彼の書の力も他の者達の扱える範囲を越えている。
君が提案した儀式には膨大な代償がかかる。君が必要だと述べた通りの生贄は充分に無い。この儀式に適当であろう、他者の血液を代用とするならばどうにか出来る。君の書はそれも引き止める程に狭量にはなるまい?
君が述べた通りのこの儀式が継続され、私が王位に戻れたならば、君に最高の富で報いよう。
人民の御霊にして生命たる真の王Ba-Ka。
尊く偉大なる王よ、この儀式は当世最も強大なる魔術が籠められております。儀式を完全に執り行われるならば、神々は生贄により満足されるでありましょうし、また永久の命が貴方様のものになりましょう。儀式自体は難しいものにはならぬでしょう。恐れ無く。我が魔術の力はその強さの証左に、既に貴方様へ偽信を除けるまじないを与えております。人々の精神を捩じ曲げる様な効力ある魔術は、我が力の術書の1ページ目を推し量る事すら出来ぬであろう、魔術師の位にあるちっぽけな幻術士共の大半の及ぶ所を越えております。
魔術の力と術書の保持者Hekuhirkopshef
我々はこの儀式に全く賛同致しかねます、王よ。この申し立て及び不服訴えの正式文書をよくよくご検討下さい。これは神々に対する冒涜も同然です。永遠の命は我々に与えられるものでは無く、魂がマアト神とオシリス神に拒絶されました事も、贄無き事で神々の怒りを宥めましょう。我々はメンカウラーが貴方様を廃位すべく台頭した折も貴方様のお側に留まりましたが、この紛い事には黙したままに居れません。
高位神官Menmaatre
上下エジプト王国の真の王Ba-Kaの勅により、先日の謀反の書簡に署名せし全神官は逮捕された。この神官達は神々の息子の権威に異議を唱え、これは異端も同義であると訴えた。この者達にはそれらの恥ずべき罪に相応しき罰が速やかに授けられるであろう。
人民の御霊にして生命たる真の王Ba-Kaより勅
儀式場が確立中である。その成し得る唯一の地点である、この死の土地の心臓部で魔術師が儀式を始めた。これまで試され得た様な儀式に適した地は他には無い。神々を慰め得る様な神聖無垢なる生贄の用意はとうに為されている。オシリス神はそれらの魂を受け取るだろう。
褒め称えよ王を、Ba-Kaを、最後の統治者となるであろう者を、異端を打ち砕く者を、トート神の智慧とホルス神の剛強を携えし者を、人民の御霊にして生命たる者を。
君が要求した様にはこの儀式は完遂され得ない。無垢なる血を、私は所望しているのだが入手出来ないのだ。全くの純なる血でなくとも、神々に受け入れて貰う必要があるだろう。他に選択肢は無いのだ。持てる物で進めねばならない。偽王の軍勢を永遠に遠ざけてはおけぬ、幻術士達の呪文も無期限に我らを隠さぬだろう。死の訪れを感じる。これ以上は待てぬ。じきに私は埋葬されるであろう、儀式はこの地で行わねばならぬ。
人民の御霊にして生命たる真の王Ba-Ka
王よ、ならば神々への欠陥不良の影響に対しご用意を。力の書は嘘を吐きませぬ。この世界の真実のみを、力と魔術を告げるのです。これ以上は申せませぬ。 神々が貴方様の御霊に御慈悲を下さいますように。
魔術の力と術書の保持者Hekuhirkopshef
かの魔術師は正しかった。神々はあの生贄に満足しなかった。マアト神は彼女の天秤が奪われた事に怒り狂っている。幻獣アメミットがこの世界に解き放たれた、我々の砦において神々の恐るべき厄災が下されたのだ。魔術師は逝き、永遠の命という約定がなおその上にある。王は未だ霊廟に眠り、神々及び人々の目から隠されている。アメミットの猛威は我ら全てを貪るべく探し求める。
いずれにせよ、神々は無垢なる血を望み、得るだろう。
釈免祈願するなかれ。神々が怒りに満ちた時、祈願は無意味である。救済は無い。
我々は罪人であり、その厚かましき行為に対し、神々は我々を滅ぼすだろう。
SCP-1644が儀式場であったという本来の主目的についての情報は、1644に関するクリアランスレベル4以上の者に留め置かれます。適切なクリアランスの無い者がSCP-1644本来の主目的について感知した場合、封じ込め違反と考慮するものとします。
複数書巻において言及されている魔術書についての情報獲得を最重要事項と考えるものとします。Ba-Kaに言及する全ての文書はそれに関する更なる情報のために調査するものとし、その上で必要に応じて魔術書またはその保持者として言及される『Hekuhirkopshef』とされる人物に関連し得ないよう破壊する事とします。
現在、拠点-126への配置職員のうちでSCP-1644本来の主目的について感知する者は、現時点の監督官および副監督官のみです。
以下の文書はメンカウラー王の墓所から考古学者達により発掘回収された物です。当文書に接触した全員にクラスB記憶処置が為されました。
冒涜の王Ba-Kaは打ち倒され、その上で魔術儀式及び神々への冒涜もまた打ち倒された。彼の支配は以後語られるまい。余はBa-Kaについて如何なる情報も消されるよう、統治に当たった期間は即刻消去が実行されるよう求む。彼の砦は間もなく打ち壊され、死体はその異端のために千々にばら撒かれ焼却されるであろう。彼が引き起こしたこの厄災は迅速に鎮圧されるだろう。
冒涜者の長であるHekuhirkopshefは即刻見つけ出すものとする。千々に引き裂き、焼き、東の果ての砂漠へ流せ、真の救済の地の外へ永久に追いやるのだ。その魔術書は必ず押収し、余の元へ届けよ。
トート神の智慧が我らを導き、冒涜者達の道筋を閉ざしてくれますように。
- メンカウラーより勅
補遺: ██年8月6日、遠隔操作ロボットによる発掘作業中、SCP-1644-1の真下に当たる場所に未知の地下室が発見された。続く調査において、当地下室はその中央に置かれた一体の石棺を除き空と分かった。石棺は遺物サイト-62歴史遺物課に他の人工物と共に保管されている。この石棺に埋葬された者の身元は依然不明である。
██年8月10日、石棺についての情報を更に得る必要から、当時のSCP-1644監督官がCTスキャンを命じた。試験中のCTスキャン画面には、霞みが生じた事によるエラーが出された。以後更に2度の試験でも同様の霞みが生じ、財団の放射線技師達は、画面内の石棺内部において動きがあり画面上に霞みが生じるのだと一致して結論付けた。当試験に関係した放射線技師は全員クラスA記憶処置が為された。