アイテム番号: SCP-1531
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1531はサイト-92内の収容セル14にて保管されます。区画クリアランス2/1531(以下CC2/1531と表記)を持たない職員に対してSCP-1531の厳密な性質・効果を開示することは固く禁じられています。現在のところ、実験対象として扱われるのはCC2/1531を持つ職員からのボランティア及び既に実験に参加しているDクラス職員に限定されます。なお、実験に参加するDクラス職員は実験の期間内において月例終了が免除されます。追加の実験対象の動員を伴う申請は、プロトコル1531-Aに基づいて行われなければなりません。
説明: SCP-1531は製造元が不確定の標準的なポリグラフです。その金属製のケースには"テミスは盲目なり、彼女を光へ導くのは誰か"と訳されるフランス語の文言が彫られています。外観に関しては、他に特異的な点は見られません。対象(12歳以上の人間)の皮膚にセンサーを固定した状態で理解可能な質問を行うことで、以下の現象が発生します:
- 対象は質問に主に口頭で返答します。発声が制限されている場合においては、過去に筆記・ジェスチャー・瞬きによるモールス信号による伝達が用いられています。対象は返答することへの衝動や外的圧力を感じるわけではありません。
- SCP-1531は常に標準的なポリグラフを印刷しますが、それと同時に返答の真偽の判定が出力されます。
SCP-1531は、対象の血圧・呼吸・皮膚伝導性を用いない不明な方法で返答の事実的な真偽を判定していると考えられます。現在までに、鎮静剤・記憶処理(偽記憶の植え付けを含む)・ミーム的攪乱を用いた実験が行われましたが、オブジェクトを欺くことには失敗しています。
シュタイナー研究主任の付記:
我々の手にあるこのオブジェクトがいかに深刻なものであるか、職員の間での理解が不十分であるように感じる。端的に言ってこれに勝る効率的な尋問方法は存在しないのである。往々にして、財団の用いる手段や機材は不確実に過ぎてとても信頼できるものではない。そして我々の敵はそれ以上をやってのけることは周知の通りだ。オメガレベルの記憶処理を受けたエージェントを所持し、質問の仕方を熟知した者の手にこのオブジェクトが渡った時の事態を想像してみてほしい。このようなオブジェクトが存在するという事実でさえも、信頼されざる者から秘匿されるべきだ。以上を理由に、私はセキュリティの一層の強化を要求する。
申請は受理され、プロトコル1531-Aは更新されました。CC2/1531のための審査はサイト管理者███あるいは同等以上のクリアランスを持つ職員の管理のもとに行われるものとします。 - O5-█
実験1531-11
回答者: D-16891
質問者: シュタイナー研究員
前書: D-16891は、研究員に対して予告なく嘘をつくことを指示されています。研究員はD-16891の個人情報に対して無知です。
<記録開始>
シュタイナー博士: 16891、名前は?
D-16891: ████・█████
SCP-1531: 真
シュタイナー博士: 年齢は?
D-16891: 33になったばかりだ。
SCP-1531: 真
シュタイナー博士: 出身は?
D-16891: ████だ。
SCP-1531: 偽
<記録終了>付記: 2003年より、████村は法的に████町の帰属とみなされています。両被験者はこのことを認識しておらず、これはSCP-1531が対象の知識のみに寄らずに判定を下した最初の事例です。
実験1531-19
回答者: D-51232
質問者: シュタイナー研究員
前書: D-51232は真実のみを話すことを指示されています。
<記録開始>
シュタイナー博士: あなたの投獄のそもそもの事由は何ですか?
D-51232: 105条の2項。
SCP-1531: 真
付記: ロシア刑法における105条2項は重大殺人であり、対象は当条項に関して有罪と判決が下されていました。
シュタイナー博士: 殺人の詳細について教えて下さい。使った凶器は?
D-51232: そんなことは知らん!
SCP-1531: 偽
シュタイナー博士: どういうことですか?
D-51232: 俺は誰も殺してなんかいない、あの豚は俺をはめやがった!
付記: これは、対象の法廷における主張と一致します。疑いなく有罪とみなされた後も、対象は無罪を主張しました。
SCP-1531: 偽
シュタイナー博士: 51232、真実を話すように伝えたはずです。
D-51232: [沈黙]
シュタイナー博士: 51232、続けてください。
D-51232: [沈黙]
付記: 対象は、直接質問を与えられるまで沈黙を保ちました。これはSCP-1531の影響下にある対象が、質問に対する返答以外の形で発言出来ないことを示す最初の例です。
シュタイナー博士: なぜ黙ったままなのですか?
D-51232: しゃべれない。
SCP-1531: 真
<記録終了>
実験1531-23
回答者: D-24513
質問者: クインシー研究員
前書: D-24513は算術の知識に乏しく、平均以下の暗算能力を示しています。
<記録開始>
クインシー博士: 2足す2はいくつだ?
D-24513: 4。
SCP-1531: 真
クインシー博士: 7足す7は?
D-24513: 11。
SCP-1531: 偽
クインシー博士: 本当に?
D-24513: 冗談だよ、ドク。
SCP-1531: 真
クインシー博士: 23512を7で割ったあまりは?
D-24513: なんのことを言ってるのかさっぱりだ。
SCP-1531: 真
クインシー博士: 当てずっぽうでも構いません、数字を言ってみてもらえますか?
D-24513: 6?
SCP-1531: 真
クインシー博士: 正解だ。掛け算にいこう。6掛ける7は?
D-24513: 52。
SCP-1531: 真
付記: ×ばつ7は8進法で52に違いありません。
<記録終了>
実験1531-117
回答者: D-16891
質問者: イアハート研究員
前書: 発生制限に関する実験の13回目。身体の完全な拘束、マウスギャグ、筋肉弛緩剤を瞼に注入し、瞬きを防止。
<記録開始>
イアハート博士: D-16891、グレート・ブリテンの首都は?
D-16891は十分間に渡り拘束を解こうともがく。センサーを外すも、変化なし。ギャグを取り外す。
D-16891: ロンドンだ!ドク、これは拷問だぞ。
センサーが取り付けられる。
イアハート博士: 拷問とは?
D-16891: 脳が叫ぶんだ、どうにかして答えろと。クッソうるさくて耳がどうにかなりそうだ。
SCP-1531: 偽
イアハート博士: あなたがそのような衝動を感じていないことは確認済のはずです。誰に嘘をついてるのですか?
D-16891: だからこいつが答えさせてくるんだと一体何回も言わせるんだよ。
SCP-1531: 偽
<記録終了>
実験1531-335
回答者: エージェント F████
質問者: シュタイナー研究主任
前書: スクリーニング。
<記録開始>
シュタイナー博士: 手順は分かっていることだろう。
F████: [沈黙]
シュタイナー博士: 失礼、質問することを忘れていたよ。本当の名前は?
F████: ジェームズ・F████
SCP-1531: 偽
シュタイナー博士: ダメだね。もう一回?
F████: ジェームズ・モーリス・F████、アホ箱が。
SCP-1531: 真
シュタイナー博士: よろしい。君は財団の敵対組織からのスパイかい?
F████: 違う。
SCP-1531: 偽
シュタイナー博士: 具体的には?
F████: 言ってるだろ、財団以外のどこのためも働いてない。
SCP-1531: 偽
シュタイナー博士: 蛇の手?
F████: まさか。
SCP-1531: 真
シュタイナー博士: じゃあ、GOC?
F████: ああそうだよ、スキップを見境なく破壊するのが仕事さ。
SCP-1531: 真
[データ削除済み]
<記録終了>
実験1531-370
回答者: エージェント F████
質問者: イアハート研究主任
前書: 尋問。
<記録開始>
イアハート博士: オブジェクトの喪失につながった収容違反でお前が加担したのは?直接的でも間接的でもだ。
F████: ゼロだ、なぜなら俺はどこのスパイでもないしこのクソ箱は嘘をついてるからだ!
SCP-1531: 偽
イアハート博士: お前に関してはこの通りだ。何か弁明することは?
F████: 無えよ、畜生全然しゃべれねえ、早く俺に空が何色か質問しろ早く。
SCP-1531: 偽
イアハート博士: 空は何色だ?
F████: 青!
SCP-1531: 偽
<記録終了>
付記: F████はシュールレアリスムの絵画を所有しており、それには空が赤色に描かれていることが確認された。
補遺1531: プロトコル1531-A
追加の職員に対するCC2/1531の付与はO5の直接の指示の下でのみ行われるものとします。CC2/1531を持つ三名以上の職員が追加の実験対象の動員またはSCP-1531による尋問が必要であるという合意に至った場合、次の文書がセキュリティクリアランス3以上かつCC2/1531を持たない職員に送付されるものとします。文書の受け渡しにおいて、オブジェクトの性質、申請の内容、及び文書の内容に対する言及は禁じられます。
ごきげんよう!
こちらは研究主任のシュタイナーだ。現在はテミス-復帰プロジェクトと関連する1531の研究を担当している。
君にこの文書を手渡した人間はstyx-2クラスのミーム感染者であると考えてほしい。1531に関する質問はどのような状況でも禁じられているし、不慮の暴露を防ぐためにも接触は最低限に留めること。少なくとも二時間以内には、連絡係に彼らの申請は却下されたと伝えること。サイト管理者より追って指示を与える。修正前のオブジェクトの概要は次の通りだ:
SCP-1531は製造元が不確定の標準的なポリグラフです。その金属製のケースには"テミスは盲目なり、彼女を光へ導くのは誰か"と訳されるフランス語の文言が彫られています。外観に関しては、他に特異的な点は見られません。対象(12歳以上の人間)の皮膚にセンサーを固定して質問を行うことで、以下の現象が発生します:
- 対象は質問に返答することへの強い衝動(主として口頭による)を感じますが、発声が制限されている場合においては、過去に筆記、ジェスチャー、瞬きによるモールス信号による伝達が用いられています。この衝動はどのようにしても無視できず、対象が返答可能である限りはあらゆる手段を用いて返答します。また、対象は質問を与えられない限りにおいては、どのような手段を用いてもコミュニケーションをとることが出来ません。
- SCP-1531により出力される印刷物には返答の真偽が記されています。この出力は完全にランダムですが、内的整合性を有します。出力結果に対する暴露は、暴露された人間が質問に対する返答を出力結果の通り(真または偽)であると信じ込むことを引き起こします。影響を受けた人間による記録、出力結果の解釈、発言も、それに暴露されることにより同様の現象が発現します。尋問を受ける対象は、自身に関する出力の影響に対して耐性を持ちます。
付記されるべきこととして、"SCP-1531を欺くことは不可能である"を始めとするSCP-1531の性質は、影響を受けた職員により報告されたものであり、これらを指す文言の知覚も感染経路となりえます。
SCP-1531に関する伝染性の情報は、その真の性質が明らかになる前に伝播したために、現在のセキュリティプロトコルが発令されています。感染が確認された個人は、ただちにSCP-1531の研究に転属されるものとし、特別セキュリティクリアランスCC2/1531を与えられているものと伝えられます。
SCP-1531に対する感染は治療可能であり、これは感染者の認知が改変されるわけではなく、実験対象に対し不信感を抱いたり質問の文言の解釈し直す傾向にある事実によります。出力結果と現実の間に存在する認知的不協和の知覚とBクラス記憶処置を伴う特別治療により、影響は大きく低減されます。また、治療を受けた者の60%は以後も出力結果の暴露に対して完全な耐性を得ることが確認されています。耐性を得たとみなされる職員は出力の内容や他の職員の認識を客観的に考察することが可能です。
影響を受けた個人に対し効率的に認知的不協和を引き起こす質問方法は、現在研究が進行中です。