HuE-1482-JP

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評価: +12

クレジット

タイトル: HuE-1482-JP - 霄の雲を縫って
著者: Poliknown2 Poliknown2
作成年: 2024

評価: +12
評価: +12

未収容
クリアランスレベル3
GoI関与: ミスタ―・ロイヤーズ


S

E

K

T

N

{$non-standart-class}


ライン航行

A5


A4


A3


A2


B5


B4


B3


B2


C5


C4


C3


C2


D5


D4


D3


D2


E5


E4


E3


E2


KETER


AAA


EEE


Ȼ


?


T


{$k-class}


Vedist I


Vedist II


Vedist III


Vedist IV


Vedist V


Vedist VI


HuE-1482-JP


分類委員会による注記
S7-APCS分類システム簡易ガイドを表示します。

  • 左側領域

左側領域には、S7-APCS利用ガイドへのリンク及び警告文、また諸情報が表示されます。

  • 右側領域

右側領域には、アイテム番号及びオブジェクトクラスが表示されます。オブジェクトクラスはマウスホバーまたはタップで詳細を表示します。

  • 上部中央領域

上部中央領域には、オブジェクトの危険性について表すアイコンが表示されます。詳細はマウスホバーまたはタップで表示されます。

  • 下部中央領域

下部中央領域には、活性化要因、インテグラル脅威インジケータ(ITI)、機密性毀損リスクレベル(VEDIST)が表示されます。活性化要因はアイテムの異常性が発現する要因を、ITIはアイテムの総合的な危険度を、VEDISTはアイテムのヴェールへの影響度を示します。また、機密性毀損リスクレベルはマウスホバーまたはタップで詳細を表示します。

この場合、アイテムはライン航行により異常性を発現し、また封じ込めが困難かつ相当量の物資・人員の消費が見込まれます。さらに財団による情報流布では合理的な説明を与えることが出来ず、ヴェールに対する脅威となり得ます。

詳しくはS7-APCS分類ガイドを参照してください。

特別収容プロトコル: 現在HuE-1482-JPは収容状態にありません。担当チームはHuE-1482-JPの捜索を行ってください。HuE-1482-JPに遭遇した場合は交戦が許可されますが、可能な限り鹵獲を目標としてください。また財団管理下のドッキングポイントは監視され、HuE-1482-JPが寄港した場合確保が試みられます。

特記事項: サファイアライン
サファイアライン(以下ライン)は、交通・輸送業大手企業であるSAPPHIRE Inc.(以下サファイア社)によって2023年に建造された、地球地表面及び空を包む線状の交通輸送ネットワークシステムです。このラインは、サファイア社によって開発された専用の飛行船によって利用され、それら飛行船はラインに沿って飛行します。またサファイア社は、地下にラインを敷設する計画を行っていました。

ラインは異常由来の技術によって作成されたと推測されており、財団は過去にサファイア社の施設への攻撃を行っています。しかしその影響でライン制御システムにエラーが発生し、連鎖的に全世界のラインが崩壊するインシデント(通称"大災害")が発生しました。その過程で、崩壊したラインの周囲は異常領域に変貌しています。その領域においては、ライン周辺の物体は不明な力により破壊され、雷鳴に類似した電流が流れています。また、内部に侵入した知性体は「叫ぶような」幻聴を体験すると報告されています。またこの崩壊の影響で、一部空域においてはライン上を航行することすら不可能であり、このようなエリアへの進入は船舶の航行不能や落下、システムエラーなどの危険性があるため避けられています。また、財団は自由天空都市同盟("Alliance of Free Skycities", "AFS")との協力のもと、異常領域の環境に短時間耐えることが可能なスーツの開発に成功しています。

なお財団はヴェール保持のためこの事実を隠蔽し、責任をサファイア社へ転嫁しました。その結果サファイア社は倒産し、構成員は崩壊事象の被害者による非難、弾圧、殺害などを受けることとなりました。また財団は崩壊事象に際して民間人(要注意団体構成員などを除く)の救助、地上施設に収容されていたオブジェクトの避難、人員輸送、組織再編などを行いました。現在人類の75%ほどはサファイア社によって建造されていた地下ラインのトンネルで、残りは空に敷設されたスカイライン上で生活しています。両者は物理的・精神的に断絶されており、崩壊の影響を受けなかった「ドッキングポイント」と呼ばれる大穴のみが接続を可能にします。

説明: HuE-1482-JPは、主に東南アジア圏のサファイアスカイライン上の不定な地点を航行している異常なラインシップです。全長およそ3.5km、全高およそ0.8kmほどの巨大なものであり、これは既知のラインシップの中では最大のリヴァイアサン級に匹敵するほどの大きさです。外見は概ねエッジの効いた長楕円形であり、船尾付近には大きな突起状構造物が認められます。船主付近にはコックピットと思しき空間が確認されており、船尾には用途不明なロケットエンジン状の構造が見られます。船体中腹部には、マン=レグリア式パルス砲や長距離レーザーエミッター、奇跡術次元門通信機などの財団により開発されたものを含む超常兵器が数基設置されていますが、財団が外部への技術提供を行った記録は存在せず、入手経路は不明です。また特筆すべきことにHuE-1482-JPはその側面に通常の航空機用の発着プラットフォームを備えています。更にHuE-1482-JP内部からはラインシップの動力確保を担うコアシステムのエネルギー反応が検出されておらず、動力確保も未知の異常存在によって行われていると推測されています。

しかしHuE-1482-JPは戦闘用設備こそ搭載しているものの、その主目的は空での生存であると考えられています。具体的には、HuE-1482-JPには船体後部表面積の多くを占める太陽光パネルや付着した水を回収可能な網目状の集水レーンなどが存在しており、これはHuE-1482-JP内部に多数の人間が存在する可能性を示唆しています。2040年に行われた財団によるサファイア社への襲撃はラインの崩壊をもたらし、ライン周辺の地表は電撃の走る異常領域に変貌しています。HuE-1482-JPに搭載された設備群は、このような現状でエネルギーや生命維持に必要な物資を獲得するためのものであると考えられます。

現在のところHuE-1482-JPは東南アジア圏内に留まっているため即時の対応は不要ですが、このような大規模かつ搭乗員の多い船舶の存在は既存大規模空中勢力間のバランスに大きな影響をもたらすと考えられるため、HuE-1482-JPの異勢力領域間移動は可能な限り防止されるべきです。

補遺1: HuE-1482-JP接近観測調査
発見当初、財団の持つHuE-1482-JP関連情報は乏しいものであったため、HuE-1482-JPの詳細情報の獲得及び収容計画立案を目的とした財団保有の小型船舶による接近観測が計画され、実行されました。以下はその際のログです。

使用船舶: "Zar"-クラス 中型高速船"バルネラビリティ"
搭乗者: 機動部隊η-3"ハイ・クレプスキュール" 隊員 ヨミン・ポール


<記録開始>

バルネラビリティはHuE-1482-JPの後部左舷側1km地点、雲のすぐ上を航行している。カメラ及びセンサーが起動され、司令部にデータが逐次送信される。

ポール隊員: HuE-1482-JPの接近観測を開始する。記録者は機動部隊η-3"ハイ・クレプスキュール"所属ヨミン・ポール、現在位置は北緯15度・東経114度…[以降記録開始時の基礎情報が羅列される。一部省略]

バルネラビリティのカメラはHuE-1482-JP後部のエンジン筒を映している。五本のエンジンが五角形を形作るように配置されている。エンジン周辺には太陽光パネルが見られない。これは排熱による融解を防ぐためと考えられる。また船体後部には大きな突起状構造物が上に突き出しているのが見られる。構造物からは複数の風力発電用風車が飛び出しており、風で勢いよく回っている。また、船尾付近にはオレンジ色の炎のような航跡が見られる。

ポール隊員: かなり近づいた。でかいエンジンだな、あの筒にはこの船がすっぽり収まりそうだ。その上の方に何かプロペラみたいなものが見えるが、あれは何だ...?(カメラの映像を拡大表示しながら)ああ、風力発電機か。一瞬あれで飛んでるのかと思ったが、さすがにそれはあり得ないよな。

バルネラビリティは船体中腹部に到達する。船体上部の太陽光パネルの隙間から、鈍い灰色混じりの白色をした装甲が見える。所々他の色で塗装がされている箇所が見られ、これは紋章やロゴマークを形作っていると思われるが、パネルに隠れて全体像の把握は困難である。パネルに太陽が反射しているためカメラがブラインドモードに切り替わる。船体下部は影に隠れているものの、筒状の突起物があることが確認できる。

ポール隊員: 後ろの方はソーラーパネルで覆われてる。パネルの下に何か書いてあるが...「R」か?パネルで隠れてよく見えないな。綺麗に並んでるが、下の方では配置が換わってるな。突起があって、そのスペースを確保するために配置が調整されてる。

カメラがやや右に向く。船体中ほどに穴が開いており、滑走路と思しき空間があるのが見て取れる。センサーの一つの方向を穴状構造物に向けた時、HuEー1482ーJP艦載砲群の一部が起動してバルネラビリティの追跡を開始する。この時点では攻撃は行われていない

司令部: 前方でラインが左上、中央、右下の三本に分かれています。進路を右下方向にとってください。

ポール隊員: なんで中央のラインじゃダメなんだ?

司令部: HuE-1482-JPの下に回り込み、先ほどの筒状構造物を確認するためです。また遠距離観測により、船体下部の方が砲が少ないことが判明しています。

ポール隊員: 了解。進路を変更した。...なあ、でもこのルートだとカロク―ア機動みたいに見られないか?

ポール隊員: おい、砲塔が全部こっち向いたぞ。

司令部: 可能な限り高速でその場を離脱してください。極力反撃は控えるべきですが、最終的な判断はそちらに任せます。

ポール隊員: 了解、なあ、でも加速したらカロク―ア機動のヴァリン型変則みたいに...

司令部: [話を遮って]そんなことをいちいち気にしてないで、早く!

バルネラビリティは加速し、離脱を試みる。進路にはHuE-1482-JPの砲塔の直下となる箇所がある。ポール隊員はそれらの、特に攻撃された場合回避が困難となる砲塔のみ破壊した。遠所の砲塔が反撃をするもののバルネラビリティには当たらない。

司令部: 極力攻撃を控えろと言ったはずですが。

ポール隊員: こっちの判断で撃っていいともいってたはずだ。

司令部: そういうことでは... まあいいでしょう。前方に、目下の雲の中へ逃げられるラインへの接続線があります。そこで再度進路を変更してください。

HuE-1482-JP船主付近に到達したバルネラビリティは指示に従って雲の中へ向かうラインに移動する。下降の最中、船体後方に若干被弾するものの大きな被害は出ない。

司令部: とりあえず、今回の調査はここまでとします。帰還後にこちらで精密な検査を行いますが、万が一に備えて簡易的な被害状況評価を行っておいてください。お疲れさまでした。

ポール隊員: 了解。なあ、さっきは勝手に撃ってすまなかった。

司令部: いえ、砲塔直下を通るときに撃たれたら回避できず一撃で破壊される可能性もありました。財団の保有するライン船も多くは無いので、リスク軽減のためには必要な行動でした。

ポール隊員: そうか、ありがとう。じゃあ、そっちもお疲れ。

<記録終了>


終了報告: バルネラビリティはこの後およそ2時間後に帰還した。損害は少なく、航行に問題は無い。パイロットの健康状態も良好であり、調査は総合的に見て成功といえる。また下部筒状構造物の調査にも成功した。これは一種のドッキングポートであり、地表面に存在するドッキングポイントと接続する際に用いられる。数度使用された形跡があることからHuE-1482-JPが地表付近に降下したことがあると推測されるが、直接の観測などは行われていない。現在各地のドッキングポートの記録を調査中である。

補遺2: HuE-1482-JP収容作戦
HuE-1482-JPはこれまでドッキングポイントへの寄港を繰り返しながら東南アジア圏内に留まるようにして移動していましたが、20██/██/██にタイ上空で進路をヨーロッパ方面へと変更しました。HuE-1482-JPがその行動パターンを破り進路を変更するに至った経緯は不明ですが、もしHuE-1482-JPがこのまま直進した場合、"天空都市連邦(Federal Cities of the Sky,FCS)"の支配領域に突入することが予想されます。説明項でも述べられているように、HuE-1482-JPのような大型かつ大人数を収容した船舶が大規模な空中勢力支配領域化に進入した場合発生する事態は予測不能です。HuE-1482-JPに起因する大規模インシデントを抑制するためHuE-1482-JP確保作戦が実行されました。

使用船舶: "Zar"-クラス 中型高速船"バルネラビリティ"、"Acario"-クラス 小型輸送船"アイオーン"
搭乗者: 機動部隊η-3"ハイ・クレプスキュール" 隊員 ヨミン・ポール、機動部隊א-7"クランチ・クランク" 隊員 アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ
備考: HuE-1482-JPはその大きさから外部攻撃による確保は困難であるため、本作戦はHuE-1482-JP内部に侵入し、司令・操縦系統を奪取することを目的として行われます。


<記録開始>

ポール隊員の乗るバルネラビリティが、機動部隊א-7を乗せたアイオーンに先行する形で航行している。カメラ及びセンサーが起動され、司令部にデータが逐次送信される。

ポール隊員: HuE-1482-JPの接近観測を開始する。記録者は機動部隊η-3"ハイ・クレプスキュール"所属ヨミン・ポール、現在位置は北緯32度・東経84度…[以降記録開始時の基礎情報が羅列される。一部省略]

二隻はHuE-1482-JPの後方5kmの位置に到達する。

アルファ: それで、どうやって俺らを中に入れてくれるんだ?

ポール隊員: (笑って)事前ブリーフィングを聞いてたくせに。まあいい機会だし、今一度復習しておこう。バルネラビリティが前を飛んで、アイオーンを守る。特に危険な砲なんかはこっちで壊しておく。HuE-1482-JPに近づいたらバルネラビリティは奴の下に潜り込んで、今度は本物のカロク―ア機動をお見舞いしてやる。その隙にあんたらの乗ったアイオーンがHuE-1482-JPに接近し、船体の横に空いた発着プラットフォームの穴から中に侵入するって寸法だ。どうだ?

アルファ: (おどけて)了解しました、船長。聞いてたか、三人とも。

ベータ: ちょっと、私たちもブリーフィングにいたことを忘れたんですか?

ガンマ: どうだデルタ、聞いてたか?

デルタ: ん。

二隻はHuE-1482-JPの後方1kmの地点に到達する。HuE-1482-JPの砲がこちらを向いているのが確認される。

ポール隊員: お、そろそろだな。向こうの準備が整う前に攻撃した方がいい。準備は?

アルファ: ばっちりだ。いつでもいける。デルタ、操縦変わってくれ。

デルタ: 了解。

バルネラビリティの対艦砲が起動し、HuE-1482-JP表面の超常兵器を攻撃する。HuE-1482-JPから反撃されるも、精度及び速度に欠ける。

ポール隊員: 後部のやばそうな奴は壊せた。こっちはそろそろカロク―アをやるが、アイオーンの方は今どんな感じだ?

デルタ: 問題なく接近中。いつでもいけます。

ポール隊員: 了解。合図で飛び込め!

ポール隊員がカウントを行い、カロク―ア機動に移行する。HuE-1482-JPの砲のほとんどがバルネラビリティに向く。その隙をついてアイオーンが急加速し、HuE-1482-JP船体中腹部に到達する。アルファ、ベータ、ガンマがアイオーンの側面デッキに移動する。

デルタ: 合図で飛んで。3,2,1…今!

アルファ、ベータ、ガンマがデッキから飛び降り、パラグライダーを展開する。目標は船体中腹部の小型航空機用発着プラットフォームである。HuE-1482-JPとの距離はおよそ1000m、迎撃は見られない。アイオーンが再度加速し、HuE-1482-JP周辺から離脱する。

デルタ: 通信をくれれば迎えに行く。ご武運を。

ガンマ: おう、そっちも気をつけてな!

デルタ: こちらは既に戦闘空域から離脱してる。心配いらない。

[特筆すべき事項が無いため省略]

途中でベータが少し体勢を崩すも、三名は概ね順調に滑空を続け、HuE-1482-JPからおよそ500m地点まで到達する。

ベータ: ちょっと、前を!

アルファ: 何だ... うおっ!

ガンマ: 回避!大丈夫か?

ベータ: こちらは大丈夫です。あれがプラットフォームなのを完全に忘れてましたね。

アルファ: そうだな、悪い。[通信機に向かって]報告する。HuE-1482-JPのプラットフォームから小型のプロペラ機が発進、危うく衝突しかけた。回避は間に合わなかったが、ぶつかる直前に目の前から消失し、背後に出現した。型番等は確認できず。該当機はHuE-1482-JPから離れ、アイオーンが向かった方向に飛んで行った。念のため警戒しておいた方がいいかもしれない。

デルタ: 了解。そちらに損害はない?

アルファ: 全員無事だ。作戦遂行に支障は無い。

これ以降は特に問題なく滑空し、プラットフォームに到達する。それと同時にHuE-1482-JPの下部に潜り込んでいたバルネラビリティが反対側に抜けて加速し、HuE-1482-JPから離れる。プラットフォームの広さは横幅およそ100m、奥行き700mほどである。

アルファ: プラットフォームに到達した。内部は閑散としているが、あちこちに工具や機器が散らばってる。人だけが急いでいなくなった感じだ。ベータ、ガンマ、探査を頼む。

ベータ: 見える限りのドアは全部ロックされてます。防護シャッターまで降りてる。

ガンマ: 飛行機などは見当たらないな。...おっと、何か動いた。

アルファ: 誰かいるのか?いるなら手を挙げて出てこい。こちらは武装しているぞ!

不明な人物(以降PoI-1482-JP-1): はい、すみません!

アルファ: お前は誰だ?ここで何をしている?そもそもこの船は何なんだ?

PoI-1482-JP-1: ちょっと待ってください、そんな一気に言われても困りますよ...

ガンマ: 一つ目から答えろ。お前は誰だ?

PoI-1482-JP-1: ただのここの整備士ですよ。特に変なこともしてませんし... そもそもあなた方の方こそ誰なんですか?

ベータ: 余計な詮索はしなくてよろしい。二つ目、この船は一体何なんだ?

PoI-1482-JP-1: ああ、それなら専門分野です。この船は2040年ごろにラプターテック・インダストリーズによって建造されたエディアカラ級大型ライン船です。全長およそ5km、最大搭乗可能人数90000人、スタビライザーにはR.T.I.社製37F-BCS型を使用、所有者はロイヤーズで、目的は...

アルファ: ちょっと待て、そのロイヤーズってのは誰だ?

PoI-1482-JP-1: おや、ミスター・ロイヤーズをご存じないですか?かのイギリスの大富豪を?

ベータ: 聞いたことがあります。大富豪ミスター・ロイヤーズは世界各地に別荘を持つイギリスの大富豪で、長らく財団に資金援助を行ってきたと。確か要注意団体の一つで、旧タイ支部の管轄だったはずです。

ガンマ: なんでそんなやつが要注意団体になってるのかはさておき、いったいどういう訳で財団にばれずにこんな船を手に入れたんだ?そもそもライン船の製造はサファイア社の専売特許じゃなかったか?

PoI-1482-JP-1: ああ、サファイア社。確かにライン船を開発したのはあいつらですが、彼らは元々非異常の企業でした。彼らが作れるなら、超常企業にできない道理はないでしょう?先ほどそちらの方が言っていたように、ロイヤーズはあちこちに不動産を持っていた。この船もその一つとして作らせたんでしょう。大層な武器を積んでいますが、この船はどちらかといえば生活船です。

アルファ: なるほど、よく分かった。ところで超常の存在を知っていることを前提に話していたが、お前の本当の姿はなんだ?ただの整備士ではないだろう。

PoI-1482-JP-1: いえ、ただの整備士ですよ。昔は東弊で働いていたりもしましたが、今は一人の
しがない整備士です。この船はこんな奴らばかりですよ。ロイヤーズによってあの大災害から助けられた者達。あなた方財団が助けの手を差し伸べなかった者達... ああそうだ、そこのドアは空いてますよ。どうかお気を付けて。


GoI-022-TH "大富豪ミスター・ロイヤーズ" に関する簡易報告

royer

ミスター・ロイヤーズの紋章。

GoI-022-TH "大富豪ミスター・ロイヤーズ"は、財団の資金提供を行っていた個人または団体です。しかしその実態は未だ判然としておらず、現在判明している情報は、長年SCP財団への財政的支援を行っていたこと、世界各所に不動産を所有していること、彼はマーシャルカーター&ダーク株式会社の唯一の相続人であるジェイソン・ロイヤーズの父親であることの三つのみです。また氏はSCPオブジェクトとの関連性が薄く、調査を行う必要性が認められてきませんでした。さらに、氏は大災害の発生直後に消息を絶っており、死亡したものと見られていました。

大富豪ミスタ―・ロイヤーズに関連する文書はこちらを参照してください。


三名はPoI-1482-JPの誘導を受け船内へ進入する。HuE-1482-JP内部のほとんどは配管の通った灰色の通路だが、30分ほどの探索の後生活空間と思しき場所に到達する。

アルファ: おお、急に視界が開けたな。広い円形のホールで、灰色の壁にこれまた灰色のドアが並んでる。床は金属で、歩くと音が響く。...場所によって音が違うから、何か下にあるのかもしれない。内部の探索を行って時間があれば見てみることにする。ガンマ、扉を頼めるか?

ガンマ: おう、任せとけ。見た所単純な鍵だから、すぐ開けられるだろう。ちょっと待ってろ... よし、開いた。

アルファ: ありがとう。開けるぞ。...見た感じはただの居住スペースだな。やはりあちこちに物が転がってる。PCの電源も付けっぱなしだ。ベータ、回収頼む。急いで逃げたような印象を受けるな。侵入者があれば当然と言えば当然だが...

ベータ: 詳しいことは後にして、とりあえず全部の部屋を見てみませんか?

アルファ: それもそうだな。ガンマ、また頼む。

三名はホール内の扉を順に開け、中を確認する。中央の一つを除き、中身はほとんど同一であった。

アルファ: で、残りはこいつだな。

ベータ: 見た目からしてこれまでのものとは明らかに違いますね。看板が付いてるドアは一つもなかった。

ガンマ: "雑貨店 Our Bankers"... こんなところにも店があるのか。

ベータ: 生活船ですよ?当然でしょう。で?どうします?またガンマに開けてもらいます?

アルファ: いや、一度ノックしてみよう。それで反応が無ければ、ガンマの力を借りればいい。

アルファがドアをノックすると、店内から返答が返ってくる。続いて足音が聞こえ、数秒の後ドアが開く。ドアからは触手と本が歪に組み合わさった不明な実体が出現する。

不明な実体: ようこそ、Our Bankersへ!どのようなお品物をお探しでしょうか?

ガンマ: うお、なんだこいつ。

不明な実体: どうぞ店内へお入りください!我々OBメディアはあなた方の高慢で自慰的な小物雑貨消費に支援を惜しみません!

ガンマ: どうする?

アルファ: 上からは、可能なら内部の調査もして来いと言われてる。

三名は店内へ足を踏み入れる。店内は黄色い光に照らされている。大小さまざまな棚が並び、その一つ一つに異常技術を利用していると見られる雑貨が陳列されている。壁には動物の首や壁掛け時計などが置かれ、奥には財団製の耐地表用気密スーツと思しきものが飾られている。手前にはラックが並び、大量のチラシが詰め込まれている。

ベータ: (チラシを手に取って)「驚異の小部屋による最新商品: 十三男の死神手袋!生死を見通す魔法の品をあなたの手に!」。何の広告なんでしょうか。おっと、裏面にも何かありますね。「印刷: ノウイング出版 製品はミーム的影響を含む場合がございます。お取り扱いの際はご注意ください」。

アルファ: おい、奥にあるあのスーツは財団の地表用耐電撃スーツじゃないか?なあ、なんでここに...

ガンマ: (棚からオルゴールを手に取って)何だこりゃ、オルゴールか?巻いてもいないのに勝手に回ってやがる。音もしないし、何の役に立つんだ?

不明な実体: ああお客様、お目が高い!そちらは日本で名高い桜桃楽器の開発したオルゴールでございます!桜桃楽器の制作する楽器はどれも最高と呼べる音を鳴らしますが、音以外の全てにおける適当さが欠点でした。その問題を解決するため、我々が独自に入手した設計図をもとにポリジー雑貨が製造した商品がこちらでございます。お買い上げになられますか?今なら他の商品と合わせて購入された場合30%のキャッシュバックがついて非常にお得です!

ガンマ: いや、いい。見たところ音がならなそうだし、物を買いに来たわけではないからな。

不明な実体: そんなことを言わずに!こちらのキャンドルをセットでいかがですか?かの暗黒燭火教会が制作した逸品であり、暗闇の中に立ちながらも光に仕える皆様の前途を...

アルファ: [遮って]もういい、出るぞ。

不明な実体: Our Bankersのご利用ありがとうございました!当店はOBメディアの提供の元、皆様の自堕落で表面的な消費生活の支援を行って...[扉が閉じ、施錠される。]

アルファ: はあ、何だったんだ。

ベータ: すみませんリーダー、このチラシ持ってきてしまって...

アルファ: ああもう、勘弁してくれ。とりあえず物品回収用のケースに入れといて、後でミーム部門の奴らに見てもらえばいい。

ガンマ: それにしても、何故ここまで多くのGoIが関わってるんだ。あれほどの異常な商品を揃えるには膨大な労力が必要になりそうなものだが...

不明な人物: それに関しては私から話そう。

アルファ: ここに来てからまともな現れ方をしたまともな奴に会った試しがない。それで、お前は誰だ?

不明な人物: おや、話は聞いていると思っていたんだが。私はロイヤーズ。君たち財団にはGoI-022-THと呼ばれることもある。

ベータ: ミスター・ロイヤーズ?あなたはてっきり専用の居室かどこかでふんぞり返っているのかと思っていましたが。

GoI-022-TH: 手厳しいな。だが久々の客人をもてなさないのは紳士としてどうかと思ったのでね。

アルファ: ならもてなしてもらおうじゃないか。何が目的でこんなことをしている?なんなんだこの船は?答えろ!

GoI-022-TH: まあ、少し落ち着きたまえ。順を追って話していこうじゃないか。まずご存じの通り、この船は私が作らせた。これまでも世界のあちこちにを建ててきたからな。そろそろ空に住む頃合いだと思っていた。そんなときに起きたのが大災害だ。

GoI-022-TH: 私はあの事件の真相を知っている。SCP財団がサファイア社を襲撃し、その所為でライン制御システムにエラーが起きた。その結果ラインは崩壊し、ラインに近い地表は雷の走る異常領域に包まれた。あろうことか財団はその責任をサファイア社に押し付けたね。世界で一番勢いがあって、そして格好の投資の対象となる会社を世界の破壊者に仕立て上げた。それだけならまだよかった。

GoI-022-TH: 財団は大災害が発生して、迫りくるラインの崩壊から逃げようとした人々の救助活動をしていた。その時君たちは何かと理由をつけて超常社会の人々を排除しようとした。大方要注意団体を根絶やしにするチャンスだとでも思ったんだろう?

GoI-022-TH: 私のビジネスは表社会に限ったものではない。当然超常の世界にも手を出しているが、今回のこの件で私は大きな取引先や将来性があって目を付けていた団体を数百も失った。財団には失望したよ。人類を守ると言っていた組織が人類を滅ぼした挙句、私の利益まで奪い取っていったんだからね。

GoI-022-TH: 当然回復させる努力はしたさ。各地に残る団体構成員を救助してこの船に乗せてるんだ。一種の復興支援といってもいいかもしれない。ここまで安定させるのは大変だった。初期にはヤロスラフ・ジモロデクの奴がアルトノーマル医療なる民間療法を広めて大変なことになって... まあ今はその話はおいておこう。遠己生医集団の一人を回収出来たのは幸いだったが... そしてここアジア圏の遭難者を回収し終えて、次はヨーロッパに向かおうとした矢先に来たのが君たちだ。私は財団の言いなりのなるつもりはないし、君たちを無事で返すつもりもない。さっきの店はちゃんと見たかね?あそこは実に品揃えがいい。さすがは多元宇宙の販売代理店といったところだが、私はあの中に一際気に入っているものがあってね。何度も売ってくれと頼んだのだが、インテリアとして気に入ってるからと言って首を縦に振らないんだ。しかし、今なら...

GoI-022-THが駆け出し、Our Bankersに飛び込む。アルファ、ベータ、ガンマが発砲しながら後を追うが、扉に阻まれて妨害に失敗する。三名が扉の前に辿り着くのと同時にGoI-022-THが店舗から退出する。GoI-022-THは財団製の耐異常領域用気密スーツを着用し、手に用途不明な型装置を持っている。

アルファ: 何をするつもりだ。

GoI-022-TH: 君たちの開発したこのスーツは実に素晴らしい。電撃に包まれた地表でも活動ができるとは。うちの救助班もお世話になっているよ。さて、この状況で床に電気が流れたらどうなるか分かるかね?

ガンマ: やめ—

GoI-022-THが手に持った装置を操作する。アルファ、ベータ、ガンマが痙攣し、床に倒れる。カメラとマイクが床に落ち、通信が途絶える。HuE-1482-JPから少し離れた位置で待機していたデルタ及びポール隊員に帰還命令が出される。バルネラビリティのカメラに、HuE-1482-JPが加速して雲の中へと消える様子が映る。

<記録終了>


終了報告: 本収容作戦はHuE-1482-JPの収容失敗及び機動部隊員三名のロストという結果に終わり、総合的に見て失敗であるという結論が下されました。本作戦以降HuE-1482-JPの所在は不明となっており、早急な発見と収容が望まれます。またHuE-1482-JP内の要注意団体構成員群の母組織への再接触を防止するため、HuE-1482-JP外の要注意団体への対処の強化が為される予定です。

Footnotes
. 「常にライン航行を行っている」と同義です。ラインとは何であるかについては後述します。
. 大災害による既存国家の崩壊後に設立された空中勢力の一つ。科学研究などにおいて優れている。大規模勢力の中で財団の影響力が最も強い。
. サファイアラインの中では最も高い位置に存在するライン。高度はおよそ7kmであり、大小さまざまな船舶が行きかう。
. なお、それを代替するかのようにトラネクストリテトル、特にトラネクスモニアのものに類似した不明なエネルギー反応が観測されているのは特筆すべき事項です。
. 東南アジア圏は多数の小規模勢力が点在している。
. ラインシップは空中のラインをスタビライザーを用いて「掴んで」、機体を宙に保持している。
. 大型艦に対する攻撃機動の一つ。敵艦と並走しながら火力の手薄な場所に潜り込み、安全に攻撃を行う基礎的な戦術である。
. 手薄な場所に潜り込んだ後軽度の攻撃をしつつ加速し、素早く離脱する戦法。カロク―ア機動の変則には他に、減速して集中攻撃を行うトレシナ変則、左右に進路を変えて広い範囲に攻撃を行うスパーク・ビー変則などがある。
. 世界最大の空中勢力。財団の影響力は弱い。
. 財団によるサファイア社襲撃の際に発生したライン崩壊は、ラインにほど近い地表面の異常領域化を誘発した。この領域は雷のような電気に覆われ、生命の生存が困難な状態となっている。
ページリビジョン: 8, 最終更新: 07 Feb 2025 10:28
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