クレジット
タイトル: SCP-1479-JP - 深海生物にHello Worldを
著者: KABOOM1103 KABOOM1103
作成年: 2024
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1986年に捕獲されたSCP-1479-JPの一例。背部の突起には銅線が取り込まれている。
アイテム番号: SCP-1479-JP
オブジェクトクラス: Pending Safe Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1479-JPの一般社会への露見を防ぐため、研究機関による海底ケーブルを敷設している海底付近の無断探査を禁止します。海底ケーブルの敷設、保守を担う通信事業者に対する情報統制を徹底しつつ、ケーブルの破損の放置や海底への破棄を行わないよう海洋法関連の条約を規定します。
説明: SCP-1479-JPは盗刺胞の機能を持つ裸鰓目(Aeolidina)の生物群海洋生物の一部です。SCP-1479-JPにはミノウミウシ(Anteaeolidiella takanosimensis)、アオミノウミウシ(Glaucus atlanticus)を始めとする4種が確認されています。SCP-1479-JPに分類される個体は、通常の個体群の中から偶発的に発生します。この発生は後天的なものであり、完全に抑えることは不可能です。
SCP-1479-JPは共通して「盗刺胞」の機能を持ちます。盗刺胞は、クラゲやイソギンチャク等の持つ攻撃器官である刺胞を、本来刺胞の持たない生物が取り込むことであり、このプロセスは非異常です。SCP-1479-JPはこの盗刺胞のプロセスにおいて、本来取り込まない銅やポリエチレンを体内に取り込みます。これらの物質を取り込むことによるSCP-1479-JP個体への目立った行動の変化、健康状態の変化は確認されていません。
発見経緯: SCP-1479-JPは1986年03月15日に日本の沖縄本島付近の海底にて一般人により発見されました。発見者のブログを閲覧していた研究員が、通常個体と比較し体色が赤みがかっているウミウシが掲載されていることを発見し、その後アノマリーの可能性があるとして財団に回収されました。
SCP-1479-JPの取り込んだ物質の由来に関しては、付近に敷設されていた通信用海底ケーブルの内部導体であることが推測されます。最初のSCP-1479-JPが発見された地点の付近には老朽化により劣化して内部の露出した海底ケーブルがあり、その破片が取り込まれた可能性が高いことが海底調査及びSCP-1479-JPの個体の分析によって判明しました。
銅線は刺胞と形状がある程度相似しているものの、構造と組成は大きく相異なる物質であるため、なぜSCP-1479-JP個体が銅線を取り込み刺胞嚢に配置したのかについては研究中です。ただし、SCP-1479-JPの取り込む量がごく少量であることと、SCP-1479-JP個体は銅線を活用することなく一生体内に固定することから、本アノマリーが生態系に与える影響は僅かであると考えられています。以上の理由から、収容に足るだけの異常性を持たないと判断され、本オブジェクトのオブジェクトクラスはAnomalousに設定されました。
追記1: 1989年より一般社会にて、通信用海底ケーブルの高速化、大容量化を目的として、光ファイバーを材質に用いたケーブルに置き換えが行われました。光ファイバーは石英ガラス、プラスチック樹脂を主な原料としています。
SCP-1479-JP発見場所付近に生息するテングクラゲ科の一種。SCP-1479-JPは本種の死骸を捕食する。
光ファイバーの拡大写真
SCP-1479-JPの生息域に敷設されている海底ケーブルも同年に新たに光ファイバー製のケーブルに置換され、それまで使われていた銅線製ケーブルは地震観測用ケーブルとして研究用に転用されました。
本事案に伴い、SCP-1479-JPの取り込む物質として光ファイバーが確認されました。ケーブルに対するサメ類の咬合や地震による破損等が確認された場所付近では、追記を行った1990年時点で光ファイバーを取り込んだ数百匹程度のSCP-1479-JPが確認されています。
また、同様の盗刺胞を行う生物であるフウセンクラゲモドキ(Haeckelia rubra)にも、光ファイバーの取り込みを行う個体が発見されました。以降、裸鰓目以外の生物種も人工物の取り込みを行う個体であればSCP-1479-JPと指定することが決定しました。
しかしながら、依然として観測地域全体におけるSCP-1479-JPの個体数の総量は微々たるものであり、生態系に及ぼす影響は少ないものとされています。この判断の根拠として、「間違えて刺胞以外の物質を取り込んだ生物は防衛の手段に乏しく、結果的に存続が困難」かつ「海底ケーブルの破損個所という極めて限られた地点のみ発生しうる」ことが挙げられます。
上記の分析研究の結果、今後の一般社会における情報化の進行も加味し、SCP-1479-JPのオブジェクトクラスはSafeに決定されました。長期的な視点においては、一般社会での技術進展に伴い海底ケーブルの海底環境に対する被侵襲性が改善されることでSCP-1479-JPはより少数になると予測されています。
フウセンクラゲモドキ(Haeckelia rubra)
追記2: 1993年8月の定期探査にてミノウミウシの近縁種と見られる未記載種の裸鰓類が発見され、この種の一部がSCP-1479-JPとしての性質も持ち合わせていることが確認されました。本種は海底の周期的な環境変化を原因として海底ケーブル敷設箇所の付近に生息域を移動した種であると考えられます。
既に発見されているSCP-1479-JPの性質を持ちうる種と本種の大きな相違点として、発光性が挙げられます。本種はヒカリウミウシ(Plocamopherus tilesii)と同様の非異常性の発光器官を持ち、威嚇時に発光することが判明しています。
前述の発光性を用いて、本種は取り込んだ光ファイバーを威嚇時に活用する場面が確認されています。光ファイバーをを取り込んでいない個体に比較して、SCP-1479-JP該当個体は指向性の高い発光を行うことで敵対個体により強く警戒を抱かせることができている様子が観察の結果得られました。
上記の未記載種に関連する事柄として、海底ケーブルを介した通信の障害時に稀に発生する未知のノイズが確認されています。財団の観測結果によると、海底ケーブルの断線や亀裂を主因とする障害発生時、財団が海底ケーブルに通信監視目的で設置した光学的センサに通常の通信で用いられる光線とは大幅に帯域及び強度の異なる信号が1993年初頭より観測されています。ノイズの光線と本種の発光スペクトルが一致していることから、これはケーブルの破損部分からSCP-1479-JPが光ファイバーを取り込もうとする際の発光であると推測されています。
未記載種の裸鰓類。発光性が確認できる。
しかしながら、上記のSCP-1479-JPを起因とするノイズは1992年に新たに敷設された一線内での光多重化通信が可能な海底ケーブルの運用により無視できる範囲に収めることが可能になると考えられます。再検討の結果、オブジェクトクラスはSafeに据え置かれることが決定しました。
追記時点で、SCP-1479-JPに該当する個体は計10種です。
追記3: 1997年、SCP-1479-JPの生態の急激な変異が確認されました。
SCP-1479-JPの内、発光性を持つ種は追記時点で3種確認されています(ミノウミウシ近縁種、フウセンクラゲモドキ近縁種、ニホンヒラムシ近縁種。いずれも未記載)。これらの発光性を持つSCP-1479-JPが、同種個体同士で光ファイバーを介する高度なコミュニケーションを行っていることが判明しました。また、このコミュニケーションは一般社会で行われる光通信の形式に非常に類似しており、SCP-1479-JP該当種の知能および体機能を鑑みても、明確に異常な現象であると断定されました。
一般社会のインターネット通信においては、1980年代初頭からTCP/IPが使用されています。TCP/IPは通信プロトコルの一種であり、情報通信におけるメッセージを分割した一単位を基礎とする通信、すなわちパケット通信において用いられます。TCP/IPを用いた通信の特徴として、各パケットの主文の先頭に通信相手のIPアドレス等のヘッダ情報を付加します。
変異したSCP-1479-JPは上記プロトコルに準拠したデータを、自身の取り込んだ光ファイバーから正確に光信号として発信しています。
1997年2月11日、変異したSCP-1479-JP間のコミュニケーション内容の解明のため、実験が行われました。実験はサイト-81██にて、捕獲したフウセンクラゲモドキ二体の光ファイバー内を通過する信号を通常の通信プロトコルを基に解析しました。
以下に、コミュニケーションの内容を示します。
SCP-1479-JPの二体は電子メール用のデータ型に沿ってパケットのTCPペイロード(送信先情報等を除いた、送信主が送りたいデータ本体)を記述しています。以下では、簡便のため「送信元ポート」、「宛先ポート」、「データ本文」をパケットを区切らず記します。なお、データ本文はASCIIコードで記述されているものとして解析を行いました。
<記録開始>
送信元ポート: 121,224,112,3
宛先ポート: 121,224,112,1
データ本文: He—wELlo
送信元ポート: 121,224,112,1
宛先ポート: 121,224,112,3
データ本文: helLO,ACKnowaaa@wsedgeed
送信元ポート: 121,224,112,3
宛先ポート: 121,224,112,1
データ本文: GOG::OgOoD Morninnnngngn ack?
送信元ポート: 121,224,112,1
宛先ポート: 121,224,112,3
データ本文: hunngry,h:;p@ungry
送信元ポート: 121,224,112,3
宛先ポート: 121,224,112,1
データ本文: YEs,1M<HungrY,,, Too||o
送信元ポート: 121,224,112,1
宛先ポート: 121,224,112,3
データ本文: wanT kri{kkll,krrill}
送信元ポート: 121,224,112,3
宛先ポート: 121,224,112,1
データ本文: no,,KR=ilL,NOfoodd,wHy??
送信元ポート: 121,224,112,1
宛先ポート: 121,224,112,3
データ本文: too,to"o,no,foOD,noLifeIN OCEan
送信元ポート: 121,224,112,3
宛先ポート: 121,224,112,1
データ本文: 1 "sink", sink ^ThinK
送信元ポート: 121,224,112,1
宛先ポート: 121,224,112,3
データ本文: II,captured?? I,arres$ten? COnnt&@ineDD!?
送信元ポート: 121,224,112,3
宛先ポート: 121,224,112,1
データ本文: SODOi, someonesomeONe, see,you,us
送信元ポート: 121,224,112,1
宛先ポート: 121,224,112,3
データ本文: WHooHO heLL do IT%%?
送信元ポート: 121,224,112,3
宛先ポート: 121,224,112,1
データ本文: NO 0 i4ea i6ea(
送信元ポート: 121,224,112,1
宛先ポート: 121,224,112,3
データ本文: Ohh,I se.
<記録終了 総記録時間2分10秒>
上記結果から、SCP-1479-JPの二個体間は英単語を用いたコミュニケーションを行い、簡単な意思の疎通を行い始めていると判断されました。
実験結果から、異常なプロセスでSCP-1479-JPの言語処理能力、論理的な思考力が上昇していると研究チームは結論付けました。SCP-1479-JPのこれ以上の知的成長を抑制するため、
- インターネット通信における高度な暗号化技術の普及
- 海底ケーブルの自然要因による損傷を防ぐための技術基準の規制強化
- 通信内容の盗聴防止技術の普及
を2000年までに行うことが決定しました。
また、その財団の予測しえない成長を考慮し、本オブジェクトのオブジェクトクラスはEuclidに変更されました。
追記4: 2019年時点で、SCP-1479-JPの個体数の抑制に成功しています。定期的な駆除と捕獲により、収容チームはSCP-1479-JPの生態の把握、個体数の調整を行っています。
SCP-1479-JPに対する継続的な研究より、SCP-1479-JPの言語処理能力は光ファイバーを介した通信経験から培われるものであると、収容チームは判断しました。そのため、断続的にSCP-1479-JPの生息域の探査を行い高齢の個体を駆除することで、安全な収容体制の確立が可能であると見られています。
追記4: 2024年11月17日、SCP-1479-JP生息域にて未分類の大規模異常性インシデントが発生しました。詳細は報告書更新時点で調査中です。現時点で判明しているインシデントの内容を以下に示します。
- 大型海洋生物による生息域付近の海底ケーブルの断裂(カバーストーリー流布済)
- SCP-1479-JP個体の大量死滅
- ISP潜入webクローラによる送信元の不明なファイル送信の螟ァ驥城?∽ソ
HiI,I"m from DeeP sea
I&'m naouty,naughty,PIXie
MMY name are D-PiXsea
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Hello,World!