アイテム番号: SCP-138-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-138-JPはその性質のため、出現場所付近の封鎖によって対処されています。出現が確認された場合は機動部隊ぬ-9〝夜間工事"がSCP-138-JPが出現した地点から半径███mを封鎖します。「急な工事のため」と説明し、封鎖域内に誰も入れないようにしてください。また封鎖後に侵入者があった場合は拘束、尋問し、クラスB記憶処置を施したうえで解放してください。ただし、SCP-138-JPに侵入した場合の救出行為は厳禁とします。(実験記録138-JP-3参照)
説明: SCP-138-JPは█日から██日の間隔で現地時間17:00頃から翌朝5:00頃までの間、███県██████市の旧██████村付近の道路上、4か所のうち1か所に出現する水田です。現在のところ出現に規則性は確認されていません。大きさは1a(×ばつ10m)の正方形で水田の中央に案山子が一体設置されています。作物が植えられている様子はありません。
SCP-138-JPの特異性は、SCP-138-JP内に侵入した場合に発現します。一歩でもSCP-138-JPに侵入した人間(以下「侵入者」)は、耳元で日本語による男性の怒鳴り声を聞きます。これは日本語を理解できない人間でもその意図を完全に理解できるようです(インタビュー記録-138-JP参照)。この声は録音機器等に記録されることはなく、侵入者のみが聞き取ります。その声を聞き、すぐに退去した場合は特に危険性はありません。
しかし怒鳴り声の後も退去しなかった場合、侵入者はまるで底なし沼に足を踏み入れたかのようにゆっくりとSCP-138-JPに飲まれ始めます。埋没までの時間は身長により左右されますが、一般的な成人男性ではおよそ█分ほどかかります。GPS、各種記録機器などは埋没した時点で破壊されます。次回の出現時に前回の侵入者数分の案山子が出現し、SCP-138-JPの消滅時に置き去りにされます。これらの案山子の外観は一般的なものです。しかし、構造物は侵入者の服、骨、筋肉、[削除済]等が使われていることが判明しています。また解剖により、SCP-138-JPの消滅時まで案山子が「生きていた」可能性が極めて高いことが示唆されています。
インタビュー記録-138-JP
対象: エージェントG█████
インタビュアー: ████ ██博士
付記:エージェントG█████はSCP-138-JPの最初の報告者である。彼は日本語が流暢ではないためインタビューは英語で行われている。
<録音開始>
████ ██博士:こんにちは。
エージェントG█████:やあ博士。
████ ██博士:今日からSCP-138-JPの担当になった████ ██だ、よろしく頼む。
エージェントG█████:ああ、あの[罵倒]にはそんなナンバーが割り振られたのか。
████ ██博士:すまないが早速君が見たことを話してくれないか、我々はまだ何も情報を得ていない状況なんだ。
エージェントG█████:ああ、分かってるよ。まず俺はあの地方で聞かれた「怪談」について調査を行ってたんだ。夜になると急に道路が田んぼに変わっちまうってな。元々あの地方は閑散としてたからな、そういう噂も立つんじゃねーかと半信半疑だった。そもそもインターネットの情報だったしな。
████ ██博士:そして君は情報を整理し、SCP-138-JPが出現を待った。
エージェントG█████:ああ、入れ替わるのは「道路」だけだって話だったからな。それほど道路の本数もないから夜間に軽く巡視程度で。あの日は月が綺麗に出てたよ・・・薄気味悪いくらいにな。
████ ██博士:簡潔に話してくれればいい。
エージェントG█████:ああ、そうかい。まあ█月██日に出現したSCP-138-JPを発見したのさ。哀れなワルガキと一緒にな。
████ ██博士:彼はすでに侵入していた?
エージェントG█████:ああ、もう膝まで埋まってたよ。ひたすら叫んでた。「助けてー!!」ってな・・・
████ ██博士:そして君は救助しようとしてSCP-138-JPに侵入を試みた。
エージェントG█████:そうさ、今思えば軽率だったことは確かだ。一応命綱を付けていたが、相手の事を何も知らずに飛び込んだからな。
████ ██博士:そして君は声を聞き・・・
エージェントG█████:ああ、そうだ!一歩入った瞬間耳元で「コラァ!田んぼに入るなぁ!!」って声が聞こえたんだよ!俺は日本語が得意じゃねえが完璧に分かっちまった!その声を聞いたら分かっちまったんだよ!こんな仕事してるからな!!こいつは無理だってな!!████ ██博士:落ち着いてくれ、君の行動は正しい。情報を持ち帰ることは何よりも優先されるべきだ。特に我々の業務においてはね・・・
エージェントG█████:(嗚咽)
<録音終了>
終了報告書:このような悲劇を二度と出さないように早急に封鎖体制を確立し、脱出手段も研究しなくてはなりません。 — ████ ██博士
実験記録138-JP-1 - 19██/██/██
対象:ラジコンヘリ 1台
目的:案山子の近距離での観察、およびサンプルの回収
結果:SCP-138-JPの近辺ではエンジン不調、コントローラーの不調などにより離陸不能。距離を取り離陸させ接近させた場合は、コントロールを失い墜落。
考察:どうやら簡単には入らせてもらえないようだ。 — 責任者████ ██博士
実験記録138-JP-2 - 19██/██/██
対象:Dクラス 1名
目的:沈み始めた後の脱出方法の模索。
結果:沈むことを考え、元陸上選手のDクラスを用意し実施した。被験者は沈み始めた後に方向転換し外に向かおうとしたが、「田んぼがどこまでも広がってやがる!!」と叫び、足踏みを始め外に出ることはなかった。また埋没する前に案山子の方を振り返り「こっちに来るな!!」と叫んだ。頭部に装着させたカメラの映像や周囲の職員による視認には異常はなく、水田の大きさも変わらず、案山子も動いてはいなかった。
考察:案山子に何か秘密があるのだろうか・・・だが、今は調査のために脱出方法を考えなくてはな。 — 責任者████ ██博士
実験記録138-JP-3 - 19██/██/██
対象:Dクラス 4名
目的:侵入者が沈み始めた後、水田の外から安全に救助する。
結果:Dクラス1名を侵入させ、ロープにより救助するようDクラス3名に指示した。侵入したDクラスは実験記録138-JP-2と同じ幻覚を見たが、投げ込まれたロープは認識した。何とか侵入したDクラスがロープに捕まることに成功。引っ張り上げようとしたが、足しか埋まっていない状態にも関わらず引き上げは難航。ロープを持っていたDクラスより協力が要請され、責任者である████ ██博士を含む職員6名が協力し合計9名で引っ張ったところ、[削除済]。
補遺:実験後、責任者を████ ████博士に引継ぎ。特別収容プロトコルの一部改定。
補遺:SCP-138-JPに対する全ての実験を禁止とする。少なくとも我々のうちの誰かが首を縦に振る理由がない限りは永遠に、だ。 — O5-██