アイテム番号: SCP-1338-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1338-JPは現在サイト-8122の低脅威度オブジェクト収容ロッカー内に収容されています。SCP-1338-JPを用いた実験にはセキュリティレベル2の職員の許可が必要です。
説明: SCP-1338-JPはレンズが取り付けられていない赤色のフレームの眼鏡です。フレームはアセテートで形成されています。
SCP-1338-JPの異常性は装着することで発現します。SCP-1338-JPを装着した人物が他の人物(以下"対象者"と呼称)を見た場合、対象者の首に取り付けられた首輪と単語が記されたプレート、それらを繋ぐ鎖が具現化します。便宜上この3点をSCP-1338-JP-A、このうちプレートをSCP-1338-JP-A-1と呼称します。
これまでの実験により対象者によってSCP-1338-JP-Aの数及びSCP-1338-JP-A-1に記されている単語が異なることが確認されています。現在までに███個の単語が確認されていますが、このうち"法律"のみが全対象者に共通した単語であることが判明しています。また、Dクラス職員を対象にした実験では全員のSCP-1338-JP-A-1に"SCP財団"が確認されています。
回収当時、SCP-1338-JPは精神的な影響を及ぼすと考えられていましたが実験によってそのような影響は存在しないことが判明しています。
補遺1: 以下は財団職員に対して行われたSCP-1338-JPの実験記録(一部抜粋)です。なお、先述の"法律"と"SCP財団"は省略して記載されています。
対象者: ██研究員
SCP-1338-JP-A-1に書かれていた単語: "報告書"
付記: 実験当時、██研究員は13件の未完成の報告書を抱えていた。
対象者: D-1178
SCP-1338-JP-A-1に書かれていた単語: "アルコール"
付記: D-1178はアルコール依存症であり、実験当時も治療が続けられていた。
対象者: D-836
SCP-1338-JP-A-1に書かれていた単語: "█千万円"
付記: D-836は借金返済のために█名を殺害していたことが判明。SCP-1338-JP-A-1に記載されていた金額と実験当時のD-836の借金は一致していた。
対象者: █博士
SCP-1338-JP-A-1に書かれていた単語: "█ ██"
付記: 実験当時、█博士は夫である█ ██からのDVをきっかけに離婚調停中であった。
追記: 離婚完了後、該当のSCP-1338-JP-Aは消失していた。
補遺2: SCP-1338-JPは20██/9/29に██県██市内の住宅にて2体の遺体と日記、及び1枚のメモ用紙と共に発見されました。発見された遺体に関しては腐敗が進行していたため、身元確認は難航しています。
以下は日記及びメモの内容です。
5/6
今日、地元のフリーマーケットに行ってみた。
GW最後の良い気晴らしになった
ついでと言ってはなんだがおしゃれな赤いだて眼鏡を購入してみた。
ただ、この眼鏡何かおかしい。
この眼鏡を通じていろんな人を見ると首に鎖が付けられている。
その鎖の先には文字が書かれたプレートがあった。
これは一体何なんだ?
5/7
昨日買った眼鏡で自分の姿を見てみた。
......見なかった方が良かったと思った。
僕の首に付けられた鎖の先には"大学受験"の文字があったからだ。
やめてよ、もう緊張してきてしまうじゃないか。
5/10
なんとなく眼鏡をかけた状態で父の姿をこっそり見た。
父の首にも鎖が付けられていた。
宙に浮かぶプレートには"上司"の文字があった。
最近父が上司のことで酷く愚痴を言っていることに何か関係があるのだろうか。
5/13
父が今までにない顔で帰ってきた。
どうしたのと聞いてみても「今は話す気分じゃない」と告げられた。
何かあったのかと思いこの前買った眼鏡を使って父の姿を見た。
"上司"のプレートとそれを繋ぐ鎖が消えていた。
5/16
家に警察が来た。
父が事情聴取で連れて行かれた。
母に聞いても嗚咽を漏らすばかりで何も教えてはくれなかったから眼鏡で母の姿を見た。
見るべきじゃなかった。
5/18
噂はあっけなく広がっていった。
僕の通う高校も例外ではなかった。
気づけば僕は孤立していた。
どうして、どうしてなんだ。
僕は何も悪い事なんてしていないじゃないか。
そんな思いを胸に、眼鏡をかけて自分の姿を見た。
"殺人犯の息子"が加わっていた。
(月日記載なし)
学校に行かなくなってもう何日経っただろうか。
部屋の中にどんどんゴミがたまる。
家に来るマスコミ共も増える。
そして、僕を繋ぐ鎖とプレートも増えていく。
今日は"自己嫌悪"が増えていた。
見なくても良いことなのに、どうして見てしまうのか。
これが怖いもの見たさってやつなのか。
(月日記載なし)
気づけば僕を繋ぐ鎖は38本になっていた。
外そうにも実際にその場にあるわけじゃないから外れるわけもない。
焦れったい日々がただ続く。
誰か外す方法を教えてください。
(月日記載なし)
リビングで母は冷たくなっていた。
何一つ感情が湧かなかった俺は何を思ったか、母をあの眼鏡越しに見た。
だが見て良かった。
なんだ、鎖はこんな簡単なことで外れてくれたんだ。
ありがとう母さん。だったら僕も、さっさとこの鎖たちから解き放たれることにしよう。
我々人間は常に"飼い犬"の如く鎖に繋がれている。
鎖が全て外れたとき、この作品は完成する。Are We Cool Yet?