SCP-1186-JP
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クレジット

タイトル: SCP-1186-JP - ムスビのほらあな
著者: ©︎snoj snoj
作成年: 2017


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アイテム番号: SCP-1186-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: 現在、SCP-1186-JPを含む山地一帯はサイト-8128に指定され、収容施設が建設されています。施設は気象庁の特別地域気象観測所として偽装し、警備員を配置して民間人の立ち入りを禁止しなければなりません。実験を行う際は投入物の材料及び形状、投入者、排出物の内容を実験記録に詳細に記述してください。

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SCP-1186-JP

説明: SCP-1186-JPは和歌山県██山に存在する、直径70cmの空洞です。空洞の地上部分から50cm下がった位置に異常な空間が発生しています。異常空間に侵入した一切の光・電磁波・音は吸収ないし歪曲されるため、目視や機器による底部の調査は困難です。SCP-1186-JPはポータル的性質を備えていると考えられており、掘削調査はオブジェクトの予期せぬ変異を招く恐れがあることから、無期限に凍結されています。

SCP-1186-JP内の異常空間に物体を投入した場合、一定時間後に投入物が地上に向かって射出されます。多くの事例において、再出現した投入物には歯型や引っかき傷など、生物由来の損傷が見受けられます。一方、特定の物品を投入した場合、投入物とは無関係な物品が射出されることがあります。この時、SCP-1186-JPの半径10mにて樹木の形状変化や不明な音声の発生等、小規模な改変現象が併せて発生することが確認されています。詳細は実験ログ及び補遺を参照してください。

SCP-1186-JPは20██年9月██日、██山にて遭難していた██大学の登山グループによって発見されました。彼らは遭難中、オブジェクトを用を足す目的で使用しており、その際異常空間から射出された火矢によって大学生1名が負傷、辺り一帯にて小火騒ぎを引き起こしました。これが捜索隊の目を引いたことで、登山グループの発見に繋がりました。事後処理においてオブジェクトの異常性が判明したため、県警及び消防に潜伏していた財団エージェントが関係者に記憶処理を実施、火事についてはカバーストーリー"火の不始末"が適用されました。

その後の調査により、██山の麓に位置する█集落では「ムスビのほらあな」と呼称される、既存の寓話から派生したとみられる民間伝承の存在が確認されました。伝承の内容とSCP-1186-JPには一定の類似点が存在することから、財団は検証のための投下実験を実施しました。以下に伝承の要約を記載します。

今は昔、█村に住んでいた翁が、筍を取りに山に分け入ったときのことだ。道中、翁はぽつりと開いている奇妙な洞穴を見つけた。中を覗くと、底も見えないほどの真っ暗闇だ。しかしよくよく耳を澄ましてみれば、小さな啜り泣く声が聞こえてくるではないか。「ははぁ、さては間抜けなネズミでも落っこちたのだな」。心優しい翁は腹を空かせたであろうネズミのために、持参していた握り飯を穴に放り込んだ。すると突然、空洞内に大合唱が響き渡った。

"おむすびころりん すっとんとん おむすびころりん すっとんとん"

翁が驚きのあまり腰を抜かしていると、空洞の中から数え切れないほどの金銀財宝が飛び出してきた。翁は家族に知らせようと急ぎ山を下りたが、再び戻った時にはもう、空洞も宝も見当たらなくなっていた。それを見て孫がこう言った。「じさまが見つけたのは、きっと"ホラ穴"に違いない」。翁はまんまと一杯、ネズミに食わされてしまったのだ。

実験1

投入物: D-5348

投入物詳細: 31歳男性。探索機器を装備し、巻き上げ用のケーブルに繋がれている。

結果: 投入から2分後、ケーブルが切断され、D-5348が消失。

排出物: 気絶状態の高齢男性。調査により、男性は江戸時代にこの地周辺で暮らしていた農民・██ 喜兵衛氏であり、宝探しを目的としてSCP-1186-JPに侵入した後、行方不明となっていたことが判明。異常空間内の様子について、██氏は「緩やかに傾斜した土壁が続く」「四方八方から鳴き声が聞こえる」「何か柔らかいものに当たった瞬間、意識が薄れていき、気付いたらここにいた」等と供述した。██氏の衣服には大量の齧歯類のものと見られる毛が付着していた。

メモ: 人間が出てきたことには驚いたが、伝承との類似性がより高まった。次からはいよいよ、おにぎりの投下実験を行っていく。

付記: 実験後、空洞に隣接した樹木の幹には動物に齧られたような切り口で、以下の文章が出現した。

おしかけ・ねこおことわり

実験2

投入物: 塩むすび

投入物詳細: 炊いた白米を握り、塩をまぶした簡素なおにぎり。D-5011が投下。

排出物: 大判金貨1枚。

メモ: 伝承通り、おにぎりに対しては良好な反応を示すようだ。しかし、塩むすびでこれほどの返礼なら、他のおにぎりでは一体何が出て来るのだろうか。

付記: 実験後、空洞周辺に音源の不明な鳴き声が発生。音声分析の結果、カピバラ(Hydrochoerus hydrochaeris)がリラックス時に発する声であることが判明した。以降の実験においても度々齧歯類の鳴き声が記録されている。

実験3

投入物: 食品サンプル

投入物詳細: おにぎりを精巧に模した樹脂製の食品サンプル。D-5192が投下。

排出物: 粉々に分解された食品サンプルと、色褪せた麻製のスカーフ1枚。

メモ: 形がおにぎりであれば何でも良いという訳ではないようだ。今後はおにぎりの種類を替える方向で実験することにする。

実験4

投入物: 焼きおにぎり

投入物詳細: おにぎりを焦げ目が付くまで焼き、醤油を塗ったもの。D-5157が投下。

付記: D-5157は殺人罪により死刑判決を受けている。

排出物: D-5157の冤罪を証明する記録資料。倫理委員会にて検討した結果、D-5157は記憶処理を施され、一般社会に復帰した。

メモ: 返礼の内容は投入者の持つ願望/欲望に応じて変化するが、概ね投入者にとって有益なものとなると考えられる。...しかし、投入者個人に関する物品なんて、一体どこからどうやって調達しているんだ?現実改変により生成している可能性も拭えない。

実験5

投入物: ツナマヨおにぎり

投入物詳細: コンビニで購入した市販品。D-5186が投下。

付記: D-5186は財団忠誠度テストにおいて低い点数を記録している。

排出物: 複数の噛み跡が付いたおにぎりの包装と、錆びた青銅製の長剣1本。

メモ: 開封に随分と手こずったようだ。剣が意味するのは......これを使って脱走しろ、ということだろうか?新品や更に強い武器が出てこなかったあたり、返礼の品質はおにぎりの食べやすさに左右されるのかもしれない。Dクラスにとってはほとんど無用の長物だが、博物館辺りなら欲しがる所は多いだろうな。

実験6

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カメラを凝視する鼠型実体

投入物: 揚げチーズおにぎり

投入物詳細: ピザ用チーズを入れたおにぎりに片栗粉をまぶし、サラダ油で揚げたもの。D-5214が投下。

排出物: 女性の人型実体1体。D-5214は当実体について「非常に魅力的な容姿」と回答した。射出時、異常空間との境界部にはロボロフスキーハムスター(Phodopus roborovskii)の頭部が出現し、10分の間地上を見つめ続けた。人型実体については異常性の確認の為、収容房にて拘置中。実体は紀州弁による発話が可能だが、語る内容の大部分が「おにぎりの美味しさ」についての称賛や質問となっており、身元に関する情報は得られていない。

メモ: ネズミがチーズ好きというのは迷信であり、むしろ避けるという話だが......SCP-1186-JPが何者かの創作由来であるから、ということもありうる。これまでの実験で、投入者によっては取り扱いが面倒な返礼品が出現することもあることが分かった。今後は人の手に頼らない投入手段を試してみることにする。


実験7

投入物: 揚げチーズおにぎり

投入物詳細: 実験6と同様。遠隔操作を用いたロボットアームによって投下。投入者の有無による反応の違いを確認する。

排出物: 1枚の和紙を括り付けられた、気絶状態のD-5348。和紙には以下の文章が日本語で書かれていた。

ご協力、本当にありがとうございました!
試行錯誤の末、遂に我が家でもこの素晴らしい料理を再現することに成功しました!家族一同、喜びに湧き上がっています。最近ボケ気味なウチの父ちゃんも、ご近所に広めようと元気に外を駆け回っている始末です。そちらは何も望みが無いようですが、このままではこちらの面目が立たないので、我が家自慢の握り飯をお裾分けしようと思います。お口に合えば良いのですが。

追伸:
ハヤサスラ姉さんへ。久々の上での暮らしはどうですか?たまにはこちらにも顔を出してくださいね。


実験7の終了後、SCP-1186-JPの周囲には食器に載せられた未知の物体(SCP-1186-JP-1)が不定期に出現するようになりました。実験7での排出物の内容を見るに、SCP-1186-JP-1は異常空間において作られた食品であると推測されています。

また現在、特異な臨死体験を経て生還した重傷者/重病患者の発生が、世界で相次いで報告されています。彼らは意識の混濁中、信仰する宗教の神格に遭遇し、「神が食事に夢中であったため、現世に送り返された」等といった証言を共通して述べています。一部の事例では、アジア系の壮年男性がSCP-1186-JP-1に酷似した物体を神格に渡す場面が目撃されていることから、SCP-1186-JPとの関連が指摘されています。

SCP-1186-JP-1を用いた摂食実験は現在凍結中です。

Footnotes
. 投入から射出までの間隔は、投入物によって異なります。
ページリビジョン: 17, 最終更新: 21 Feb 2024 12:32
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