アイテム番号: SCP-1150
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: イージスプロトコルのSafeカテゴリ追跡プロトコルに基づいて、新たにSCP-1150に指定された全実体を登録し、半年毎の再確認対象にしてください。Dクラス職員の全SCP-1150感染者は、標準収容セルか他のSCP-1150実体のみが住む寮に移送してください。承認済みの試験プロトコル以外での、SCP-1150のDクラスと他の人間や知覚動物との、長時間(15秒以上)の身体的な、あるいは、薄層・導電的生地を通じた接触は許可されません。SCP-1150が未容認・未認識の被験者に移動するのは、研究ログに記されているような稀な状況下のみなので、これはただ用心の為のものであると留意してください。
説明: SCP-1150は、人間に類似した精神構造を持つ、殆ど未解明な方法で、容認した人間と肉体を共有する知覚存在たちです。SCP-1150は宿主の全行動・意思疎通・感情状態を認識しているものの、個人的思考・記憶は通常把握できません。全記憶処理薬に免疫を持っているようですが、僅かに█████████に対する感受性が有り、これはその多用が宿主の神経損害を引き起こすためだと考えられています。宿主はその存在を認識できるものの、SCP-1150を検出できる方法は、一部の被験者に時折起きる短期間のレム睡眠に類似する異常な脳波記録(すなわち、睡眠紡錘波とK複合波)以外には知られていません。財団は現在SCP-1150の38実体を追跡し、Dクラス職員の中に居る3実体を実験の為に所有し、2実体を(宿主と共に)雇用し、セキュリティーの為に1実体をレベル3監禁状態下に置いています。
SCP-1150実体の宿主の人間が眠りに落ちると、彼らは即座にレム睡眠状態になり、SCP-1150存在は5-16時間に渡って、宿主の身体の主導権を握ります。この期間は宿主の精神抵抗値と容認の度合、そして、存在との関係の深さに左右されます。SCPが主導権を持つ間、それは行動し、一般的には通常の人間と同様な精神的反応をしますが、その記憶や個性は宿主と異なったものとなります。主導権が失われる際、SCP-1150は緩慢になり、そして眠るようです。1-2分後、宿主は目覚め、身体の主導権を取り戻します。一般的に、宿主は完全に休まったと報告し、寝ている間に何が起きたのかに気付きません。とはいえ、長期(数年以上)に渡ってSCP-1150の宿主である人物は、徐々に"旅人"の行動を認識するようになる、ということは注目に値します。
SCP-1150は物理的接触によって宿主同士を移動することができます。肌同士の接触でも移動に十分のようですが、額同士の接触では15秒未満の時間での移動が可能です。逆に、手足の接触では凡そ4分掛かります。移動が完了する前に接触が中断した場合、存在は元の宿主に留まります。SCP-1150の受取人は"嬉しいざわめき"の感覚を報告し、僅かに緊張状態の高まりを示しますが、それ以外には移動によって影響されないようです。付属の実験ログに記載されたものを除き、全ての場合で、SCP-1150の受取人は移動されることを容認していなくてはなりません。SCP-1150実体を破壊する手段は知られていませんが、宿主を殺害・埋葬することで永久的に無力化することができます。
財団が最初にSCP-1150を認知したのは、1982年6月27日のアーカンソー州ブルームヒルのカルト団体"宿命の戸口Kismet Doorway"へのFBIによる襲撃の直後でした。FBIの財団情報源は、拘留されているカルト団員幹部にSCPの可能性が有ることを察知しました。財団は、██████との近さを考慮してサイト-40への、現在SCP-1150-1と分類されている存在の移送を決定し、最初のインタビィーが行われることとなりました。その後、SCP-1150-1は宿命の戸口に関わった更なる3体のSCP-1150の特定に助力しました。
補遺: 2008年12月10日、マーシャル・カーター&ダーク株式会社への襲撃の最中に回収された機密文書によると、MC&Dが現在少なくとも2体のSCP-1150を雇用し、SCP及び財団セキュリティーの機密情報を入手する為の"眠り草sleeper agent"として財団に浸透させていることが示されていました。これらの存在は、それが使用する宿主に全く知られること無く侵入し、宿主が見聞きし経験したものを全て共有できます。それらが共犯者の宿主に"便乗"する際に現れる兆候を財団が突き止められていないことを考慮すると、これらの工作員が情報をMC&Dに持ち帰る方法は不明です。
SCP-1150-1のインタビューログ
インタビュー対象: SCP-1150-1"ジョナスJonas・██████"
インタビュー実行者: エージェント・アドリアンAdrian・バートンBarton
<開始ログ、1982年7月15日、22:45>
バートン: よし、記録しているぞ。
ジョナス: これに向かって喋るのかい?
バートン: いや、そいつは放っとけ。この部屋の中の音全部を拾ってくれるからな。よし、質問に答えてくれるそうじゃないか。
ジョナス: 妥当な範囲内ならね。
バートン: お前はジョナス・██████なのか?
ジョナス: ある意味では。彼と体を共有しているんだ。彼が同居にとても同意しているということも保証するよ。
バートン: もっと詳しく説明してくれるか?
ジョナス: 良いだろう。ジョナスは私が体を使うことを許可しているんだ。彼は私を、彼の神の顕現だと考えていて、私が仕事できるようにするのを幸せに感じている。
バートン: お前は神なのか?
ジョナス: もちろん違う。私が知る限りでは、████が神というものをでっち上げたんだが、奴は以前からそれを覚えていたらしい。
バートン: 宿命の戸口の頭の████か? どうやってあの団体に関与した?
ジョナス: お偉方は皆私と同じさ。お望みの奴の体に乗る。私は6人中4人目の統率者だった。
バートン: 6人共が、あー、身体強奪者だと?
ジョナス: 私たちは自分たちを旅人と呼んでいる。時間が経つに連れて、体を入れ替えるのさ。████は私たちが王のように生きられると言い、私はそれを信じた。奴が凄まじく狂っていると今になって分かったがね。奴の馬鹿げたカルトはもうごめんだ。
バートン: ████が"以前から覚えていた"かもしれないと言ったな。何の以前だ?
ジョナス: 私たちが目覚める以前だ。1911年、英国人のデービーズDaviesがペルセポリスPersepolisに埋まっていた私たちの骨を発掘した時さ。
バートン: それ以前のことは何も思い出せないんだな?
ジョナス: いや、少しは。闇、その前に嘆きと叫び、さらに前に大きな喰らい尽くす炎。あとは痛みだ。だが、あれは多分夢なんだろう。████はその時私たちが神の如く崇められていたんだと言った。全く正気じゃない。
バートン: 話を少し変えて良いか? 今の体はどうやって手に入れた?
ジョナス: ジョナスが何年も前に、彼自らくれたのさ。それ以前はアニーAnnie・ペイジPaigeで、当時████の妻だった。それに疲れてジョナスに移動したんだ。
バートン: どうやって移動した?
ジョナス: 触れば良い。大抵は、祈りながら頭同士をくっ付ける。そうするとすんなり行くんだ。自分を片方からもう片方の器に滴らせる。水がボウル同士を移るようにね。その後、ジョナスの目で見て、ジョナスの口で喋って、彼の性器を弄るようになる。私が使っていないときは、彼自身が彼だ。誰も傷付けていないだろう?
バートン: 今はここまででいいかな。ありがとうよ、██████さん。
ジョナス: エージェント・バートン、最後にもう1つ。今度からは、もっと大きな部屋に行きたいんだ。ここでは私の必要を満たせない。
バートン: 頑張ってみるよ。
<終了ログ>
SCP-1150の実験ログ
実験SCP-1150-5A
日付: 2003年9月16日
説明: 当時D1905の中に居たSCP-1150-5は、被験者D2002と物理的接触をさせられ、移動を開始するように指示された。D2002は薬物発作によって網様体が損傷し、その結果回復不能な昏睡状態である以外には健康な27歳のヒスパニック系の男性である。
結果: 四肢の接触の凡そ65秒後、SCP-1150-5はD2002への移動に成功した。移動の間、被験者から1メートル離れて設置されたセンサーは、被験者から極めて低い振幅(凡そ25mW)の電波雑音を検出した。その後、SCP-1150-5が身体の主導権を握ると共にD2002は"目覚めた"。検査では昏睡状態から回復した患者にしばしば見られる認知障害も運動障害も見つからなかった。D2002の脳波記録は、網様体が損傷している状態では不可能な、他のSCP-1150の記録に典型的な波形を見せた。SCP-1150-5が不活性になると、D2002は再び昏睡し、脳波は深い昏睡状態を示した。D2002が宿主である場合、SCP-1150-5は16.15時間の活性状態と8時間の不活性状態を示した。これは、通常のSCP-1150実体の普段の活性・不活性の分配とは大きく異なる。
研究者による注記: 電波"雑音"のコンピューター分析は、高度な組織性とパターン性を示している。これらのパターンの表現・意味は未だに特定されていない。 - Dr.ビムストンBimston
実験SCP-1150-5B
日付: 2003年9月29日
説明: 昏睡状態に入って3時間後、被験者D2002(SCP-1150-5の現在の宿主)が、致死量のナトリウム・ペントバルビタールで安楽死させられた。
結果: 心停止の後、SCP-1150-5はD2002の主導権を得て、拘束から逃れようとし、D2002の四肢と手に重大な損傷を負わせた。脳波はSCP-1150に典型的な波形になった。注目すべき点として、心機能は復活せず、SCP-1150-5はより無気力になり、620秒後崩れ落ちた。この間、脳波振幅は徐々に小さくなっていった。
実験SCP-1150-5C
日付: 2003年9月29日
説明: 完全に動きが停止してから2時間後、34歳のIQ70の白人女性であるDクラス被験者D1968に、脈を測らせるように思わせて、D2002の腕を触るように指示した。
結果: 最初の接触から凡そ5秒後、D1968は跳び上がり、"衝撃を受けた"と言及した。被験者から1メートル離れて設置されたセンサーは、0.3秒続く中程度の振幅(凡そ700mW)の電波雑音を検出した。その後のD1968の観測では、何ら行動にも認知にもアノマリーの存在は示されなかったが、脳波分析ではSCP-1150の存在に関与する小規模なアノマリーが示された。
実験SCP-1150-5D
日付: 2003年10月13日
説明: 観測から2週間後、その間にSCP-1150-5の症状は現れなかったが、被験者D1968は、実験SCP-1150-5Cの最中に彼女が善良な"天使の魂"に暴露したと告げられた。さらに2週間の観測の後、被験者D1968は、Dクラス職員のふりをしたSCPの協力者によって、彼女は逆に"悪魔"に憑依されたと納得させられた。
結果: SCP-1150-5のことを知らされた後、次のD1968の睡眠中に"旅人"が顕現した。次の2週間に渡って、SCP-1150-5は毎夜に平均10.5時間顕現した。この間、D1968はIQの少々の上昇(83まで)と運動協調を経験した。SCP-1150-5が悪魔であると告げられた後、顕現の期間は8.0時間まで減り、IQは元に戻った。
研究者による注記: これは、(A)SCP-1150は未認識の宿主への高速移動が可能であるが、宿主に一定の認知・同意が無いと安定して主導権を握れないこと、(B)宿主の容認の度合がSCP-1150が活性状態である時間量と関連していること、を示している。 - Dr.ビムストン
実験SCP-1150-18A
日付: 2008年1月11日
説明: SCP-1150-18は、複数のDクラス職員の間を繰り返し移動し、移動が可能な条件を特定するように指示された。
結果: SCP-1150-18は現在の宿主の状態に関わらず移動が可能だったが、どのような場合でも意識の無い宿主には移動できなかった。新たな宿主への移動後、SCP-1150-18はその時に活性状態であるかどうかに関わらず、休止状態になった。
実験SCP-1150-18B
日付: 2008年1月21日
説明: SCP-1150-18は、50-100MHzの電波干渉(SCP-1150が移動する際に計測された周波数帯)で満たされた実験室で、複数のDクラス職員の間を繰り返し移動するように指示された。
結果: SCP-1150-18はあらゆる状況で移動が可能だったが、干渉のレベルが上昇するに連れて、移動に掛かる時間は顕著に増加し、100kW以上の電力では700秒台で安定した。
研究者による注記: 電波バーストは、移動に必要な条件というよりは、促進作用(あるいは副作用かも)であるようだ。
実験SCP-1150-18C
日付: 2008年3月6日
説明: SCP-1150-18の宿主は、糖尿病と冠動脈性心疾患を患う68歳の黒人男性のD1412である。実験SCP-1150-18AはD1412の自然死(心臓発作)後に行われた。死後の宿主同士のCSP-1150の移動の限界を探るため、複数の操作プロトコルが用いられた(要参照: 実験SCP-1150-5C)。
結果: 凡そ死後4時間、絶縁手袋と標準化学災害対策スーツを着用したレベル1研究技術者ゴメズGomez女氏によって死体が操作された。彼女は死体をサイト-40の火葬場に運んだ。この時点では、SCP-1150の移動は観測されなかった。完全な火葬後5週間、50歳の白人女性の被験者D2333は素手で遺灰を掬うように指示された。凡そ4秒後、彼女は素早く手を骨箱から引き離し、"サボテンのような尖った棘の有る"何かに触れたと報告した。その後の分析では、実験SCP-1150-5Cの最初の移動のように、SCP-1150-18がD2333に"受動的"状態で移動したのが明らかになった。
研究者による注記: 一体全体、どうやってこいつらを殺せばいいんだ? - Dr.ローゼンバーグRosenberg