アイテム番号: SCP-1109
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1109は標準取扱法に従い、サイト-██ のSafeクラス保管場所に保管されなければなりません。実験目的でSCP-1109を保管場所から移動させる場合はLevel-2監督研究員(現在は████████博士)から承認を得る必要があります。
SCP-1109内に入れられた器具の先端による負傷を防ぐため、先端部分を覆い保管しなければなりません。実験後、損傷していない器具は全てSCP-1109内部に戻す必要があります。損傷した器具、もしくは目的に合わない器具は処分しても問題ありませんが、使用は禁止されています。器具の撤去・移動を行っている間は、SCP-1109との接触による影響を受けないよう、器具を覆い、耐切断容器に保管する必要があります。
SCP-1109の影響を受けた職員はSCP-1109との接触で受けた傷を見つけるため、標準基本医療検査を受けなければなりません。更に、影響を受け3か月の段階にある職員は標準精神鑑定セッションに参加する必要があります。これらの検査には、自傷行為を防ぐため、いかなる場合でも基本応急処置訓練を受けた別の職員が同伴しなければなりません。SCP-1109の影響を受けた職員は、微細運動技能や戦闘力を必要とする任務、または壊れやすい物体を扱うテスト等に参加することを禁止されます。
説明: SCP-1109は約44cm x 21cm x 22cmの黒皮製医師用バッグで、金属製ファスナーのついた開口部と革製のハンドルからなります。鞄の底面には「あなたの痛みを消し去ります」というAceso Medicalの言葉が印字されています。Aceso Medicalは19██ 年に閉鎖され、オブジェクトに関する情報や性質について知るメンバーは見つかっていません。
SCP-1109の異常効果は鋭利な先端のある器具や道具が対象に入れられた際に明らかになります。実験では、SCP-1109の効果が明らかになるまで器具を約30秒間対象に入れておかなければいけません。対象の内部にある全ての医療器具は次に対象から取り出されると殺菌され、清潔な状態になります。
しかし、鋭利な器具が対象の中に入れられると、対象は即座にその特性を露わにします。人間に対するこれらの器具を用いた切開、注射は全て痛みを感じなくなるようです。被験者は手術を受けていることは自覚していますが何かが触れている感触や麻酔効果が緩和されるとの報告はありません。被験者は不快な経験であると述べましたが、何かしらの痛みを認識したわけではありません。
一度目の接触から約2週間の間、被験者はいかなる状況においても痛みを感じることがなくなります。これは痛覚を抑圧し、被験者が痛みを認識できないことに起因する負傷事故や深刻な判断ミスに繋がる可能性があります。接触から約1か月で、被験者は肉体的満足を知覚することができなくなります。精神的満足への影響はなく、被験者は大抵の日常的活動が楽しいと感じることができますが、あらゆる肉体的刺激からも喜びや楽しみを享受することができなくなります。食べ物における味覚と触感の違いを区別できなくなる事例からもわかる通り、この影響は味覚、少なくとも嗅覚の一部分にまで広がります。
接触から約3か月後、被験者は全ての触感喪失に苦しみを感じ始めます。これは段階的な四肢の麻痺から始まりますが、数日で急速にあらゆる種類の触感を感じることができなくなります。この症状が進行している被験者の中にはマゾヒスティックな傾向を示す者もいることがわかっています。そして肉体的刺激を求めて自傷行為にはしる可能性もあります。しかし状態が悪化すると、暴力的もしくは耐え難い刺激に対しても完全に無感覚になってしまいます。この段階になると、多くの被験者はひどい憂鬱状態になり、周囲からの孤立感や疎外感を感じるようになります。これは異常効果とはみなされておらず、感覚の部分的喪失による精神的反応とされています。味覚と触覚のみが影響を受けた場合、身体的能力の低下は見られません。この結果、被験者は触感あるいは痛覚への刺激に対する反射反応の欠如と同様に運動技能の大半を喪失しています。この段階にある被験者は他者との接触を認識できないため、他者へも被害を及ぼす可能性があります。被験者への過剰な実力行使は怪我の原因になります。
SCP-1109内にあり上記のような異常性がみられる器具は、対象から取り出された場合でも永遠にその性質が残ります。この性質は器具の切れ味が何らかの方法により悪くなったときに失われます。損傷でギザギザになった部分は異常性を示しません。器具の主要な先端だけがその影響を受けます。効果は皮膚を傷つけうる鋭利な先端を持つ器具にのみ広がります。例えば、SCP-1109内に入った先の尖った鉛筆で人間の皮膚を傷つけても、異常な性質は表しません。一方でSCP-1109内に入ったパン切りナイフは異常な性質を示します。
A1-1109-1: ████/██/██ 午後11:12、エージェント████████が睡眠中に死亡しました。検死の結果、死因は出血場所不明の大量の内出血だと判明しました。現場の詳細な調査から、エージェント████████は死亡する13日前、SCP-1109から取り出した器具を処分するために移動している際に小さな切り傷を負いました。エージェント████████は痛みを感じなかったため、怪我に気づきませんでした。死亡する前日、彼はDクラスの集団が財団への抵抗を試みた事件に巻き込まれました。エージェント████████はDクラスの人間とのもみ合いで負傷し、その際、致命的な内臓損傷を受けましたがSCP-1109の影響によりそれを認識できませんでした。エージェント████████が適切な治療を受ければ死亡することはなかったと考えられますが、誤って口論を避けたため、最初に負傷してから約10時間後の夜中に死亡しました。財団職員への被害を最小限にする封じ込め手順を再検討するため、SCP-1109の実験は延期されました。
A1-1109-2: エージェント█████は████/██/██、在宅中午後8:00から10:30のある時点で死亡しました。死因は右目こめかみへの銃撃による傷で、これを自傷行為によるものだと思われます。財団の同僚への録音メッセージが入ったオーディオレコーダーが死体の傍で発見されました。メッセージの内容は「死人のような感じがするのなら生きていてることに何の意味があるのか?」という彼の精神状態は対象の影響が原因であるというものでした。封じ込め手順は修正され、現在、SCP-1109に接触した職員は例外なく精神鑑定が必要となります。
A1-1109-3: 財団職員による調査でSCP-1109との接触による症状に苦しむ市民を発見しました。更なる調査の結果、何らかの方法で████████ ██ ██████病院の手術室へ移動されたSCP-1109の影響下にある外科用メスが発見されました。もしSCP-1109に類似するものが存在するとすれば、或いは、SCP-1109から何らかの方法で取り出されたものであるとすれば、そのメスがSCP-1109回収前に影響を受けたのかは不明です。現在、調査中ですが、エージェントは意識下でも痛みを伴わない手術や痛みを認識できない人間に関する報告に注意するよう警告されています。
補遺1109-2: ████████博士は激しい肉体的苦痛を伴うオブジェクトの管理を担当するDクラスの要員からSCP-1109使用の要請を受けました。この要請は現在承認待ちです。