調査、回収時の██製作所
アイテム番号: SCP-1040-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: 全てのSCP-1040-JPはサイト-81██の低脅威度物品保管コンテナに収容されます。回収された物品はコンテナに併設された保管ロッカーに収容します。誤認を防ぐためにコンテナ周辺の半径1km以内には如何なる大きさであっても発泡スチロール製の箱を持ち込むことは禁止されます。SCP-1040-JPの内部に物を投入することは許可されません。製作所関係者にはクラスB記憶処理が施され、随時適切なカバーストーリーが適用されます。
説明: SCP-1040-JPは様々な大きさの発泡スチロール製の箱です。SCP-1040-JPの内部は完全に空である様に見えますが、不可視の物体(以下SCP-1040-JP-1と表記)が存在しています。箱を構成している物質は一般的に流通しているビーズ法発泡スチロール(EPS)梱包材と完全に一致しています。SCP-1040-JPは現在157個が存在しています。
SCP-1040-JPの内1つ
SCP-1040-JP-1は冷たく、弱い弾性を示す固形の物質であることが確認されています。SCP-1040-JP-1の温度は概ね21.0±0.7°Cの範囲で推移しています。この温度は周囲の環境によって殆ど変化しません。SCP-1040-JP-1は未知の手段によって内部に隙間無く固定されており、取り出そうとする試み及びサンプルの採取を含む部分的な摘出の試みは何れも失敗しています。
SCP-1040-JPが発見されたのは██県██市にある██製作所です。20██/██/██、常駐警備員である███氏による通報があり、その内容に不審な点が幾つもあることから財団の注意を惹き調査、回収に至りました。██製作所は通報直前まで通常通りの操業を行っていた事が███氏へのインタビューにより判明しています。製作所内部に人影は無く、本来使用されているであろう機械類の一切が存在しませんでした。代わりにSCP-1040-JPを含む███個の発泡スチロール製の箱が堆く積み上げられていました。以下のリストは調査時に発見された物品の一部です。
発見された鋏
物品 | 特筆事項 |
---|---|
コーヒー2杯 | 従業員の休憩室で発見、湯気が立っていた |
食事4人分 | 同上、手を付けた痕跡がある |
作業靴15足 | 製作所で使用されているもの |
煙草2箱 | 喫煙所から発見。灰皿には火の付いた煙草が置いてあった |
作業報告書2枚 | 事務室のデスクから発見。記入していた途中だったとみられる |
[編集済]社製のスマートフォン1台 | ゲームアプリケーションが起動されたままだった |
上着67着 | ロッカールームで発見。従業員が着用して来たものと思われる |
古びた鋏136挺 | 製作所全域で発見。未知の指紋が付着 |
未知の言語で構成された書類12枚 | 工場長室のデスクから発見。解読には成功していない |
未知の言語が印刷された紙片1枚 | ×ばつ55mmで、上記の鋏が突き立てられていた |
工場長██ ██氏の遺体 | 補遺を参照 |
補遺: 工場長室にて発見された遺体は██氏であると特定されました。遺体は死後硬直した状態で見つかっています。目立った外傷は見受けられませんでしたが、右手には発見されたものと同様の鋏を握りしめていて若干の出血がありました。検死の結果直接の死因は従業員██名分の社員証を飲みこんだ事による窒息死であるとわかりました。工場長室内には来客用テーブルに温かいコーヒー2杯が残されており、██氏が直前まで何者かと面会していた可能性を示唆しています。
インタビュー記録:1040-A
対象: 警備員███ ██氏
インタビュアー: ██研究員補佐
付記: 第一発見者である警備員███氏へのインタビュー。対象は著しい混乱と動揺の兆しを見せている。
<録音開始>
██研究員補佐: 貴方が知っている事を詳しく話していただけますか?
███氏: え、えーっと、その、箱、箱が。██研究員補佐: 落ち着いてください。
███氏: す、すみません。[対象は3度深呼吸を行う]███氏:その、通報する前はいつも通りだったんです。皆さんが出勤してきて、朝礼をして。
██研究員補佐: その際はおかしなことはありませんでしたか?
███氏: [考え込む]ありませんでした。操業が始まって私は詰所に戻ったんです。
██研究員補佐: その間はどうしましたか?
███氏: 次の見回りまでは時間がありましたから。えっと、その間は休憩時間の様なものなので詰所でテレビを見るなどをしていました。
██研究員補佐: 異変に気づいたのはいつですか?
███氏: だいたいお昼頃だったと思います。その、突然静かになったんです。詰所に居ても機械の音や皆さんの話声とか、普段は聞こえるんです。それが、それが急にぴたりと途切れて。
██研究員補佐: 急に、ですか。
███氏: [動揺が見受けられる]はい、そりゃもうぴたっと。そ、それで変だと思って見に行ったんです。
[対象は激しい動揺の兆候を見せる。インタビューは一時中断し、27分後に再開]
██研究員補佐:落ち着かれましたか?
███氏: はい、はい、すいません。それで見に行ったら工場の中の何もかもが無くなっていて、箱がたくさん。
██研究員補佐:はい、我々も確認しています。
███氏: そ、そういえば、声が。
██研究員補佐: 声、ですか?
███氏: 静かになる前だったと思います。工場長の声がしたんです。確か[考え込む]、確か「もう少し待ってくれ」とかなんとか。
██研究員補佐: ふむ。どなたか来客の予定などはありましたか?
███氏: 無かった筈です。その、少なくとも私は聞いていません。あ、えっと、それで、静かになって。
██研究員補佐: 確認に行かれた、と。
███氏: はい。箱、調べたんです、私。だっておかしいじゃないですか、あんなに発泡スチロールが大量に積まれてるんですよ。
██研究員補佐: ええ、誰しも不審に思うでしょう。調べて何か発見しましたか?
███氏: 空の箱ばかりだと思ったのですが、いくつかは凄く重かった。持ち上げるのが大変なくらいで。
██研究員補佐: はい、我々も確認しています。
███氏: きっと何か入っているんだと思って、開けたんです。そしたらやっぱり空で。でも[対象は言葉に詰まる]
██研究員補佐: でも?
███氏: でも、でも、ああ。
[この時点で対象は過呼吸発作を起こしインタビューは再び中断、2時間後に病室にて再開された]
██研究員補佐: 落ち着いて、教えてください。貴方は箱を開けたのですね?
███氏: はい、開けました。思わず手を入れたんです、そしたらその、触れたんです。
[対象は32秒沈黙]
██研究員補佐: 大丈夫、落ち着いて話してください。貴方は何に触れたのですか?
███氏: あれは、あれは、柔らかくて、あれはまるで。
[対象は78秒沈黙]
██研究員補佐: ███さん?
███氏: あの感触は一度触ったら忘れません。あ、あの感触は、あんな物を触ったのは祖母の葬式以来です。
<録音終了>
追記: 調査の結果、全従業員157名の行方が分かっていません。